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あなたのお仕事
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可愛く手を振りながら、カエデくんはお店のキッチンへと向かった。
私の座る席からはキッチンが少し見えて、カエデくんが準備作業をしているのが見える。昼11時の開店から15時まで提供しているランチの準備らしい。
お店にはカエデくんの他にも三人のスタッフがいて、時々カエデくんに指示を仰ぎながら作業を進めている。
黒のカフェエプロンをして少し長めの髪を後ろで小さく縛っているカエデくんは、控えめに見てもとても格好良くて、思わずドキリとしてしまうほどだ。テキパキと働く姿はとても素敵で、思わず見とれてしまう。
ずるい。普段あんなにふわふわ笑ってるのに、ギャップありすぎ。
そう思って、やっぱり苦しくなる胸をぎゅっと押さえた。
仕込みが終わったのだろう、「バタバタしてごめんねー?」とカエデくんが私に謝りながら私の前にやって来たけれど、謝られるようなことは何もない。
私が「ううん、大丈夫だよ」と答えると、彼はふわりと笑った。
彼の笑顔にやっぱり胸が苦しくなった。
彼の笑顔は、どうしても私の気持ちをかき回す。胸がギュッと苦しくなって、ドキッとして、暖かくなって、……愛しくなる。
つい先日まで「もう誰ともつき合わない、男なんていらない」なんて思っていた矢先にこんな気持ちになるなんて……。人生何が起こるか分からない。
「なに食べる~?」
渡されたメニューブックには美味しそうなランチメニューやスイーツがたくさん載せられていて、思わず目移りしてしまう。
悩みながらもメニューを決めて「じゃあ、これで」とお願いすると、カエデくんは「かしこまりました」と恭しく頭を下げた。それがまたとても素敵で、こんなイケメンな店員に接客されたら女の子たちはイチコロなんだろうなぁ、なんて思って、なんだかモヤモヤしてしまったほどだった。
ひとり無意味にモヤモヤしてる間に開店時間になったらしく、スタッフの「いらっしゃいませ」と言う声と共にたくさんの女性客が店内へと入って来る。途切れることなく次々と入ってきてお店はあっという間にいっぱいになり、かなり人気のお店なのだと初めて知った。
この辺りは普段まったく来ないし、たとえ話題のお店があったとしても方向音痴の私には一人で足を運ぶのは難しい。
私が座るカウンター席もすぐに埋まってしまって、私の隣には大学生ぐらいの女の子二人が座っていた。
若いって素晴らしいね、きゃぴきゃぴ可愛いのなんのって……。私にもあんな頃があった……かも知れない、多分、きっと。
「お待たせ致しました」
普段とは違う余所行きの声と表情で私の前にランチプレートを置くカエデくん。
ふーん、いつもこんな感じで仕事してるんだ……。なんか、いいね。ふわふわ笑ってるカエデくんも可愛くていいけど、こうやって凛々しいのも、本当に素敵だと思う。
私が「ありがとう」と返すとカエデくんはニッコリと営業スマイルをする。普段の仕事ぶりをちゃんと見せてくれてるのだと分かって、ますます彼のことが愛おしくなった。
私が音を立てないように小さく拍手をするとカエデくんはいつものふわふわの笑顔になったあと、「ごめんね、先に食べてて」と私にひっそりと耳打ちをした。
「うん、分かった。大丈夫、カエデくんは自分の仕事の方を優先して?」
「ほんとごめんね。もう少ししたらバイトの子が来て交代できるから」
「私のことは気にしないで。わ、すごくおいしそう。いただきます」
「亜矢さんありがとう」
ごゆっくりどうぞ、と言って下がっていくカエデくんを、私はつい目線で追ってしまう。
……重症だ。
私の座る席からはキッチンが少し見えて、カエデくんが準備作業をしているのが見える。昼11時の開店から15時まで提供しているランチの準備らしい。
お店にはカエデくんの他にも三人のスタッフがいて、時々カエデくんに指示を仰ぎながら作業を進めている。
黒のカフェエプロンをして少し長めの髪を後ろで小さく縛っているカエデくんは、控えめに見てもとても格好良くて、思わずドキリとしてしまうほどだ。テキパキと働く姿はとても素敵で、思わず見とれてしまう。
ずるい。普段あんなにふわふわ笑ってるのに、ギャップありすぎ。
そう思って、やっぱり苦しくなる胸をぎゅっと押さえた。
仕込みが終わったのだろう、「バタバタしてごめんねー?」とカエデくんが私に謝りながら私の前にやって来たけれど、謝られるようなことは何もない。
私が「ううん、大丈夫だよ」と答えると、彼はふわりと笑った。
彼の笑顔にやっぱり胸が苦しくなった。
彼の笑顔は、どうしても私の気持ちをかき回す。胸がギュッと苦しくなって、ドキッとして、暖かくなって、……愛しくなる。
つい先日まで「もう誰ともつき合わない、男なんていらない」なんて思っていた矢先にこんな気持ちになるなんて……。人生何が起こるか分からない。
「なに食べる~?」
渡されたメニューブックには美味しそうなランチメニューやスイーツがたくさん載せられていて、思わず目移りしてしまう。
悩みながらもメニューを決めて「じゃあ、これで」とお願いすると、カエデくんは「かしこまりました」と恭しく頭を下げた。それがまたとても素敵で、こんなイケメンな店員に接客されたら女の子たちはイチコロなんだろうなぁ、なんて思って、なんだかモヤモヤしてしまったほどだった。
ひとり無意味にモヤモヤしてる間に開店時間になったらしく、スタッフの「いらっしゃいませ」と言う声と共にたくさんの女性客が店内へと入って来る。途切れることなく次々と入ってきてお店はあっという間にいっぱいになり、かなり人気のお店なのだと初めて知った。
この辺りは普段まったく来ないし、たとえ話題のお店があったとしても方向音痴の私には一人で足を運ぶのは難しい。
私が座るカウンター席もすぐに埋まってしまって、私の隣には大学生ぐらいの女の子二人が座っていた。
若いって素晴らしいね、きゃぴきゃぴ可愛いのなんのって……。私にもあんな頃があった……かも知れない、多分、きっと。
「お待たせ致しました」
普段とは違う余所行きの声と表情で私の前にランチプレートを置くカエデくん。
ふーん、いつもこんな感じで仕事してるんだ……。なんか、いいね。ふわふわ笑ってるカエデくんも可愛くていいけど、こうやって凛々しいのも、本当に素敵だと思う。
私が「ありがとう」と返すとカエデくんはニッコリと営業スマイルをする。普段の仕事ぶりをちゃんと見せてくれてるのだと分かって、ますます彼のことが愛おしくなった。
私が音を立てないように小さく拍手をするとカエデくんはいつものふわふわの笑顔になったあと、「ごめんね、先に食べてて」と私にひっそりと耳打ちをした。
「うん、分かった。大丈夫、カエデくんは自分の仕事の方を優先して?」
「ほんとごめんね。もう少ししたらバイトの子が来て交代できるから」
「私のことは気にしないで。わ、すごくおいしそう。いただきます」
「亜矢さんありがとう」
ごゆっくりどうぞ、と言って下がっていくカエデくんを、私はつい目線で追ってしまう。
……重症だ。
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