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1巻
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「ホー! ホー!!」
「そうだな、このままにはしておきたくないよな」
フー太が両方の翼を上下させながら興奮している。言葉はわからないけれど、怒っていることはよくわかる。
「俺はこの村からコレットちゃんを引き離したいと思っている。これから俺達はいろんな場所を旅するつもりだ。だから、コレットちゃんがもっと幸せに暮らせる場所を見つけるまでは彼女を預かりたいと思う」
ジーナとフー太には俺の正直な話を聞いてもらった。
もちろん、これは完全に俺のエゴだ。
この村で育ってきたコレットちゃんはこの村から離れたくない可能性もあるだろうし、俺がこの村から連れ出したことによって、もっと不幸な目に遭う可能性だってある。
それに、この世界には両親がいない子供や貧しい孤児なんて俺の想像以上に大勢いるかもしれない。そんな中で、コレットちゃんと同じような境遇の子供を、いちいち引き取っていられないことくらいわかっている。
だけど、それがわかっていることと、今コレットちゃんに手を差し伸べないこととは別問題だ。ハーキム村でドルダ病に苦しんでいたエリナちゃんを助けようとした時と同じで、俺は俺自身が明日からも旨い飯を食うために、自分の思った通りに行動してやる!
「ホーホー!」
「そうか、フー太も賛成してくれるのか」
何度も頷いてくれるフー太。
どうやらフー太はコレットちゃんと一緒に旅をしても大丈夫なようだ。
「もちろん私も賛成です。ですが、慣れ親しんだ村を出るということは覚悟のいることです。それに数年前に亡くなったというあの子の父親のお墓もあるでしょうから、難しいところですね……」
「もちろん無理強いをするつもりはないよ。それにジーナも知っている通り、あのキャンピングカーは一日でかなりの距離を進むことができるから、コレットちゃんが望めばすぐに村に戻ってくることもできるしね」
「そうでしたね。それなら大賛成です!」
確かにジーナの言う通り、家族のお墓や帰る故郷というのはとても大事だ。
まずは本人に確認してみるとしよう。
「……肝心のコレットちゃんはどこにいるんだろう?」
「こちらにもいませんね」
「ホー?」
村の中を探してみたけれどコレットちゃんが見つからない。
フェビリーの滝がある森の入口付近には露店が並んでいた。その反対側には、村の外から来た人が泊まる宿がある。そしてそのさらに奥には、村の人達が住んでいると思われる住居があった。
ロッテルガの街ほどではないけれど、ジーナが住んでいたハーキム村よりも立派そうな家が立ち並んでいる。村を一通り見て回ったけれど、そこにコレットちゃんの姿は見えなかった。
「しょうがない、人に聞いてみよう」
露店や宿の方を歩いている時は大丈夫だったけれど、普段は観光客が来ない村の住人の生活区域を部外者の俺達が歩いていると、住人達からチラチラと横目で見られてしまっていた。
「すみません、コレットという獣人の女の子はどこにいますか?」
「ああ、コレットのやつか。あいつならあっちの方にいるよ」
村の住人と思われる若い男性に聞いてみると、すぐにコレットちゃんがいる場所を指差して教えてくれた。
「ありがとうございます」
「いいってことよ。なあ、そちらの肩に留まっているのは、やっぱり森フクロウ様なのか?」
「ええ。怪我をしているのを助けたら、なぜかとても懐かれてしまって。それ以降一緒に旅をしているんですよ」
「へえ~そりゃすっげーな! 森の遣いの森フクロウ様をこんな近くで見られたのは初めてだぜ」
「ホー?」
男性はフー太を拝むように両手を合わせているが、肝心のフー太はよくわかっていない様子だった。
……森フクロウであるフー太を敬ったり、黒狼族であるコレットちゃんを不吉の象徴と冷遇したり、この世界の風習は本当によくわからないものだ。
「……ここか」
村の男性が指差した方向へ進んでいくと、村の住人が生活している場所からだいぶ離れたところに小屋があるのを見つけた。
木でできた小屋、言葉にすればその通りだが、そこは人が暮らす小屋ではなく馬小屋だった。
「ヒヒーン!」
そしてそこには当然のことながら馬がいて、俺達が近付くといなないた。
コレットちゃんがここにいるということは、馬の世話をしているのか。
「あっ、シゲトお兄ちゃん! それにジーナお姉ちゃんにフー太様!」
馬がいなないたのを聞いてか、コレットちゃんが馬小屋の外へ顔を出した。相変わらず黒い狼の耳がピーンと張っていて可愛らしい。
「コレットちゃん、少し話したいことがあるんだけれど、今大丈夫かな?」
「うん、大丈夫だよ」
そう言いながらコレットちゃんは馬小屋から出てきた。
……さて、勢いよく飛び出してきたはいいが、どう切り出したものか。
コレットちゃんがどのくらい長くこの村で育ってきたかわからないが、父親と一緒に過ごしてきたこの村を悪く思っていない可能性もある。
そんな中で、この村のことを悪く言って、俺達と一緒に村を出ようなんて誘うのはよくないかもしれない。まずはコレットちゃんがこの村をどう思っているかをそれとなく聞いて、それから俺達と一緒に来ないかと誘って――
「コレットちゃん、この村の人達はあなたのことをよく思っていないようです。この村を出て私達と一緒に来ませんか?」
「ええっ!?」
「ちょっ、ジーナ!?」
単刀直入にもほどがあるだろ!? もう少しいろいろと考えてコレットちゃんに話さないと……
「この村にいてもあなたは幸せになれないと思います。私達と一緒に来て別の住む場所を探しませんか? もし良ければ私の村も紹介します」
……いや、ジーナなりにコレットちゃんのことを思って、はっきりと言ってくれたみたいだ。
俺も前世では人の顔色を窺うことが多かったが、ジーナみたいに自分の感情をまっすぐに伝えることができる人は羨ましいと思っていた。
こちらの世界では、人の顔色を窺っているよりも、自分の気持ちをまっすぐに伝えることが大事なのかもしれない。
「ジーナの言う通りだ。さっき村の人達と話をしたんだけれど、どうやらこの辺りは黒狼族のことをよく思っていない人が多いみたいだね。今俺達は旅をしているんだが、よかったらコレットちゃんも一緒に来ないかい?」
「ホー!」
フー太も俺の言葉にうなずいてくれている。
「え、ええ~と……」
コレットちゃんはものすごく狼狽している。そりゃ今日会ったばかりの男にいきなりこんなことを言われても困るだろう。だけど俺は構わず続ける。
「お父さんとずっと過ごしてきたこの村から出るのは嫌かもしれないけれど、一度だけでも外に出てみないかい? いきなり今日会ったばかりの怪しい男にそんなことを言われても怖いと思うけれど――」
「ううん、シゲトお兄ちゃんはとっても優しかったから全然怖くないよ! それにジーナお姉ちゃんもフー太様も、僕なんかにとっても優しかったし、すっごく嬉しい! でも……」
俺の言葉を遮るようにコレットちゃんが叫ぶ。
そして、とても嬉しそうな顔をした後に表情が曇ってしまった。やはりお父さんと過ごしたこの村を離れたくないのだろうか?
「僕なんかと一緒にいると、こんなに優しいシゲトお兄ちゃん達にまで不幸が移っちゃうかもしれないよ……」
「………………」
こんな状況でも俺達のことを気にしているんだな。本当に優しくて良い子じゃないか。
きっとこれまでに散々不吉の象徴と言われ続けてきたから、本当にそうだと思ってしまったのだろう。
不吉の象徴なんて知ったことじゃない!
「俺達のことは気にしなくていい。別にこの村から一生離れるわけじゃないし、戻りたくなったらすぐにここまで送ってあげるよ。だから、もしもコレットちゃんがこの村を出てみたいと思うのなら一緒に行こう!」
「本当にいいの? 僕がシゲトお兄ちゃんに渡せるものは何もないんだよ?」
「別に何か見返りがほしいわけじゃないんだ。単なる俺の自己満足だから、コレットちゃんが気にする必要はない」
「……本当に本当?」
「ああ。だからコレットちゃんが少しでも村を出たいと――」
「行く! シゲトお兄ちゃんについていく!」
「おっと」
言葉の途中でコレットちゃんが俺に抱き着いてきた。そしてその黒い瞳から大粒の涙を流しながら泣き始めた。
……やっぱり、この村で生活するのはとても辛いことだったんだろうな。こんなに幼いのにこれまでずっと耐えてきたに違いない。
「あ、あの! 服を汚しちゃってごめんなさい」
「ああ、こんなの気にすることはないよ」
コレットちゃんが泣き止むまでしばらく時間がかかった。本当にこれまでずっと辛かったんだろうな。
俺の服はコレットちゃんの涙と鼻水でぐしょぐしょになってしまったが、こんなものは洗濯すればいいだけの話だ。
「それじゃあ、一緒にこの村を出るとしよう。一度コレットちゃんの家に荷物を取りに行こうか」
「うん! シゲトお兄ちゃん。ちょっとだけ待ってて」
「うん?」
そう言いながら、なぜかコレットちゃんは馬小屋の中へ戻っていく。そして馬小屋にいた二頭の馬に別れを告げていた。
長い間この馬の世話をしていたのかもしれないな。なんだ、一瞬こんな馬小屋で暮らしているのかと思ってしまったぜ。
「お待たせしました。荷物はこれだけだから、大丈夫です!」
「「………………」」
コレットちゃんはそう言いながら馬小屋の藁の奥から、数着の服と先ほど俺があげたクッキーを持ってきた。どうやら本当にコレットちゃんはこの馬小屋で生活をしていたらしい。
さすがにこれには、俺もジーナも絶句してしまった。
「……お父さん、行ってきます」
村から少し離れた森の一角に、石が置いてある場所があった。ここがコレットちゃんの父親のお墓だ。お墓の前で俺とジーナも一緒に手を合わせた。
この世界は土葬らしいのだが、コレットちゃんの父親のお墓は村の人達のお墓とは別の場所にあった。本当にこういうのを見ると嫌な気持ちになる。
俺が最初に訪れた村がハーキム村で心からよかったと思う。
「それじゃあ行こうか。とはいえ、その前に村長には話しておいた方がいいな。さすがに引き留められる可能性は低いと思うけど、一応は話しておこう」
「ホー!」
「安心してください、シゲト。もしも無理に引き留めるようなら、私が力尽くでもコレットちゃんをこの村から連れ出しますから!」
「ふえっ!?」
「ジーナ、ちょっと落ち着いてくれ」
さっきは自分の感情をまっすぐに伝えればよかったけれど、世の中にはそれだけじゃどうにもならないこともある。特にこっちの世界では暴力は本当に危険なものだ。そう簡単にこちらから手を出していいものではない。
まあ、コレットちゃんやその父親の扱いを見ると、ジーナの憤る気持ちも大いにわかるけれどな。
「ここはコレットちゃんがお父さんと暮らしていた村だし、お父さんのお墓だってある。俺もアテのない旅をしているわけだし、またここに戻れるようにはしておきたい」
「うっ……」
俺の言葉にジーナは先ほどまでの勢いと言葉を失う。
うん、感情的に動きすぎるのは時として良くない場合もあるからな。
大丈夫、もしも村の人達がそれを許さない場合には、キャンピングカーを出してコレットちゃんを攫って逃げるから。キャンピングカーなら間違いなく逃げ切れるだろうし、俺もそれくらいの覚悟は持っている。
あれだけ不吉の象徴として忌避していたコレットちゃんが村を出ようとするなら、特に何も言われないと思うけれど……あの村長のことだから素直にコレットちゃんを送り出してくれない可能性もある。
少し疑いすぎかもしれないが、これまでの扱いが扱いだからな。村を出ようとしたら、お金なんかを要求してくる可能性もあるとさえ思えてしまう。
円満にコレットちゃんを村から連れ出しつつ、コレットちゃんが今後も穏便に里帰りできるようにするためには……
「フー太、すまないがちょっと協力してくれないか?」
「ホー?」
俺の右肩に留まっているフー太が首を傾げる。相変わらずその仕草はとても可愛らしい。この可愛さなら、もふもふや小動物好きの人なら即オチは間違いないだろう!
もちろん、この可愛さで落とすという作戦は冗談だが、この村の人達は黒狼族を忌避する一方で、森フクロウであるフー太を敬っているからたぶんいけるだろう。
「おや、皆様いかがされましたか?」
みんなと打ち合わせをしてから村へ戻り、村長であるダリアルさんを見つけた。
「そろそろ村を出ようと思っていたので、改めてご挨拶をしたかったのと、一つご相談がありましてね」
「はあ、相談ですか。それにしても、どうしてコレットのやつに……?」
俺とジーナ、そして俺の横にいるコレットちゃんを怪訝な目で見るダリアルさん。
「実はですね、俺に懐いているこちらの森フクロウ様が、どうやらコレットちゃんにもとても懐いてしまったようなんですよ」
そう、今フー太は定位置である俺の肩ではなく、コレットちゃんの肩に留まっている。そして打ち合わせ通りにコレットちゃんにその頭を預けている。
「ほう、コレットのやつに!」
ダリアルさんはとても驚いた表情をしている。ジーナにも改めて聞いたのだが、そもそも森フクロウはとても警戒心が強く、人に懐くようなことはほとんどないらしい。
フー太の場合は怪我を治療するのを手伝ってあげたらすぐに懐いてくれたし、俺だけではなくジーナやコレットちゃんにも気を許しているから、全然そんなふうには見えないけれど。
「そこでご相談なのですが、森フクロウ様のお世話係として、この子をしばらくの間お借りできないでしょうか?」
「コ、コレットのやつを森フクロウ様のお世話係にですか!? ……いえ、しかし本当に大丈夫なのですか?」
「もちろん、コレットちゃんに難しいことや危険なことをさせるつもりはありませんよ。食事を作る手伝いをしてもらったりするだけです。それにコレットちゃんはだいぶ耳や鼻が利くそうなので、護衛のジーナと一緒に周囲を警戒する手伝いをしてもらえると助かります。当然コレットちゃんの食事や服などはこちらで用意させていただきます」
「あ、いえ。コレットのやつではなく、森フクロウ様は本当にこいつと一緒で大丈夫なのでしょうか?」
「………………」
考えてみれば、ダリアルさんがコレットちゃんの心配なんてするわけがないか……
「こちらの森フクロウ様と出会った地域では、黒狼族が不吉の象徴だという話は聞いたこともないので大丈夫ですよ。それに、コレットちゃんもいざとなれば、命を懸けて森フクロウ様を守ってくれるようですから」
俺の言葉にコレットちゃんが力強く頷く。この辺りも予め打ち合わせをしていた。
「そうですな。いざとなれば、こいつでも森フクロウ様の盾くらいにはなりそうですな!」
「………………」
相変わらず酷い言い草だが、ここは穏便にすませるためにも我慢だ。
「それでしたら、シゲト様とそちらのエルフの女性の方も、このフェビリー村で一緒に暮らすというのはいかがでしょうか? 我々一同は森フクロウ様ともども歓迎いたしますよ!」
ダリアルさんの性格からして、間違いなくそう言ってくると思っていた。
おそらくだが、森フクロウが暮らしている村などと銘打って、さらに観光客を集めるつもりなのだろう。当然俺やジーナはおまけというわけだ。
「いえ、申し訳ないのですが、旅をしている身ですから」
「そうですか……それでは数日間はこちらの村で過ごしていただいてはいかかでしょうか? もちろんお代はいりませんので。きっとお二人にもこの村のすばらしさを感じていただけると思いますよ」
なおもグイグイとくるダリアルさん。
冗談じゃない、これ以上この村にはいたくないぞ。
「すみません、時間もそれほどございませんから。一月後にまたこの村に寄らせてもらいますので」
「一月後ですか……承知しました。コレット、森フクロウ様の世話係という光栄な大役を、見事に果たしてくるのだぞ!」
「は、はい!」
ふう~。とりあえずはなんとかなったようだ。
あまりよく思っていない黒狼族のコレットちゃんに対して、森フクロウの世話係という光栄な役割が与えられれば、喜んでコレットちゃんを差し出してくると思っていたぞ。
仮に俺達が一月後に来なくても、ちょうどいい厄介払いができると思っているのだろうな。
無事にコレットちゃんをこの村から連れ出せそうでほっとした。
「……この辺りまで来ればもう大丈夫か。ジーナ、尾行してくる村の人はいなさそうか?」
「はい、大丈夫ですよ」
無事にコレットちゃんをあの村から連れ出すことができ、現在は村を出てだいぶ離れたところまでやってきている。
ダリアルさんは最後まで俺達――というよりは、森フクロウのフー太を村に留めようと勧誘してきた。まあ、商売とかをするなら、あれくらい強引な性格の方が向いているのかもしれないけれどな。
「あ、あの! シゲトお兄ちゃん、ジーナお姉ちゃん、フー太様。僕を連れ出してくれて、本当にありがとうございます!」
「私達がしたいことをしただけです。そうですよね、シゲト?」
「ああ、俺達がしたいようにしただけだから、コレットちゃんは気にしなくていい」
「ホー!」
「あ、ありがとうございます……」
またしても涙ぐんでしまうコレットちゃん。
やっぱりあの村での生活はよっぽど辛かったのか。
村から出たくても、お金なんかもらっていないだろうし、幼いコレットちゃん一人では出たくても出られなかったのだろうな。
「さて、もう少ししたら日も暮れてくるだろうし、さっさと移動するとしよう。コレットちゃん、今から見せることは他の人には秘密にしてほしい――」
「はい、絶対に誰にも言いません!」
「う、うん。よろしくね」
ものすごく食い気味で承諾された。
さて、それじゃあいきますか。
「え、ええ~!?」
車体収納機能によって収納していたキャンピングカーを取り出す。
今まで何もなかった空間に巨大なキャンピングカーが現れて、コレットちゃんはとても驚いている。
「シ、シゲトお兄ちゃんは魔物を召喚できたんだね……」
「えっとね、これはキャンピングカーと言って、魔物じゃなくて乗り物なんだ。馬車のすごく大きなやつだと思ってくれればいいよ」
「えっ、これに乗れるの!?」
う~む、やはりこちらの世界の人は初めてキャンピングカーを見ると魔物だと思うらしい。
まあ、こんなに巨大で変な形をしている乗り物は見たことがないだろうからな。
「詳しい説明は走りながらするよ。コレットちゃん、これからよろしくね!」
「コレットちゃん、これからよろしくお願いしますね!」
「ホーホー♪」
「はい! シゲトお兄ちゃん、ジーナお姉ちゃん、フー太様、よろしくお願いします!」
そう言いながら、コレットちゃんは俺が差し出した手を取ってくれた。
一緒に旅する仲間がまた一人増えた。
相棒のキャンピングカー、森フクロウのフー太、エルフのジーナ、そして黒狼族のコレットちゃん。
長年の夢だったキャンピングカーを購入した次の日に、俺はいきなりこの異世界へとやってきた。最初はどうなることかと思ったけれど、みんなのおかげで、今では楽しみながらこの世界を回れるようになっている。
元の世界でブラック企業にこき使われて働いていた頃と比べると、毎日が最高に楽しい。
おいしいご飯に、初めて見る美しい景色、毎日新しい出来事が起こって一日一日が本当に新鮮だ。もちろんいろいろなトラブルもあったけれど、それもみんなで乗り越えてきた。
もう少し走ればキャンピングカーのレベルが上がる。
新しい拡張機能が増えるのか、これまでの機能が強化されるのか、はたまたキャンピングカー自体が強化されるのか。
レベルアップするとどうなるのかとても気になるところである。
観光名所のフェビリーの滝も見たし、次は魚料理が有名な、北にある大きな湖へと向かう予定だ。そこにはどんなおいしいご飯や、どんな光景が待っているのかを考えるだけでワクワクしてくる。
これからもキャンピングカーとみんなと一緒に、この異世界を目一杯楽しみながら旅をしていくとしよう!
「そうだな、このままにはしておきたくないよな」
フー太が両方の翼を上下させながら興奮している。言葉はわからないけれど、怒っていることはよくわかる。
「俺はこの村からコレットちゃんを引き離したいと思っている。これから俺達はいろんな場所を旅するつもりだ。だから、コレットちゃんがもっと幸せに暮らせる場所を見つけるまでは彼女を預かりたいと思う」
ジーナとフー太には俺の正直な話を聞いてもらった。
もちろん、これは完全に俺のエゴだ。
この村で育ってきたコレットちゃんはこの村から離れたくない可能性もあるだろうし、俺がこの村から連れ出したことによって、もっと不幸な目に遭う可能性だってある。
それに、この世界には両親がいない子供や貧しい孤児なんて俺の想像以上に大勢いるかもしれない。そんな中で、コレットちゃんと同じような境遇の子供を、いちいち引き取っていられないことくらいわかっている。
だけど、それがわかっていることと、今コレットちゃんに手を差し伸べないこととは別問題だ。ハーキム村でドルダ病に苦しんでいたエリナちゃんを助けようとした時と同じで、俺は俺自身が明日からも旨い飯を食うために、自分の思った通りに行動してやる!
「ホーホー!」
「そうか、フー太も賛成してくれるのか」
何度も頷いてくれるフー太。
どうやらフー太はコレットちゃんと一緒に旅をしても大丈夫なようだ。
「もちろん私も賛成です。ですが、慣れ親しんだ村を出るということは覚悟のいることです。それに数年前に亡くなったというあの子の父親のお墓もあるでしょうから、難しいところですね……」
「もちろん無理強いをするつもりはないよ。それにジーナも知っている通り、あのキャンピングカーは一日でかなりの距離を進むことができるから、コレットちゃんが望めばすぐに村に戻ってくることもできるしね」
「そうでしたね。それなら大賛成です!」
確かにジーナの言う通り、家族のお墓や帰る故郷というのはとても大事だ。
まずは本人に確認してみるとしよう。
「……肝心のコレットちゃんはどこにいるんだろう?」
「こちらにもいませんね」
「ホー?」
村の中を探してみたけれどコレットちゃんが見つからない。
フェビリーの滝がある森の入口付近には露店が並んでいた。その反対側には、村の外から来た人が泊まる宿がある。そしてそのさらに奥には、村の人達が住んでいると思われる住居があった。
ロッテルガの街ほどではないけれど、ジーナが住んでいたハーキム村よりも立派そうな家が立ち並んでいる。村を一通り見て回ったけれど、そこにコレットちゃんの姿は見えなかった。
「しょうがない、人に聞いてみよう」
露店や宿の方を歩いている時は大丈夫だったけれど、普段は観光客が来ない村の住人の生活区域を部外者の俺達が歩いていると、住人達からチラチラと横目で見られてしまっていた。
「すみません、コレットという獣人の女の子はどこにいますか?」
「ああ、コレットのやつか。あいつならあっちの方にいるよ」
村の住人と思われる若い男性に聞いてみると、すぐにコレットちゃんがいる場所を指差して教えてくれた。
「ありがとうございます」
「いいってことよ。なあ、そちらの肩に留まっているのは、やっぱり森フクロウ様なのか?」
「ええ。怪我をしているのを助けたら、なぜかとても懐かれてしまって。それ以降一緒に旅をしているんですよ」
「へえ~そりゃすっげーな! 森の遣いの森フクロウ様をこんな近くで見られたのは初めてだぜ」
「ホー?」
男性はフー太を拝むように両手を合わせているが、肝心のフー太はよくわかっていない様子だった。
……森フクロウであるフー太を敬ったり、黒狼族であるコレットちゃんを不吉の象徴と冷遇したり、この世界の風習は本当によくわからないものだ。
「……ここか」
村の男性が指差した方向へ進んでいくと、村の住人が生活している場所からだいぶ離れたところに小屋があるのを見つけた。
木でできた小屋、言葉にすればその通りだが、そこは人が暮らす小屋ではなく馬小屋だった。
「ヒヒーン!」
そしてそこには当然のことながら馬がいて、俺達が近付くといなないた。
コレットちゃんがここにいるということは、馬の世話をしているのか。
「あっ、シゲトお兄ちゃん! それにジーナお姉ちゃんにフー太様!」
馬がいなないたのを聞いてか、コレットちゃんが馬小屋の外へ顔を出した。相変わらず黒い狼の耳がピーンと張っていて可愛らしい。
「コレットちゃん、少し話したいことがあるんだけれど、今大丈夫かな?」
「うん、大丈夫だよ」
そう言いながらコレットちゃんは馬小屋から出てきた。
……さて、勢いよく飛び出してきたはいいが、どう切り出したものか。
コレットちゃんがどのくらい長くこの村で育ってきたかわからないが、父親と一緒に過ごしてきたこの村を悪く思っていない可能性もある。
そんな中で、この村のことを悪く言って、俺達と一緒に村を出ようなんて誘うのはよくないかもしれない。まずはコレットちゃんがこの村をどう思っているかをそれとなく聞いて、それから俺達と一緒に来ないかと誘って――
「コレットちゃん、この村の人達はあなたのことをよく思っていないようです。この村を出て私達と一緒に来ませんか?」
「ええっ!?」
「ちょっ、ジーナ!?」
単刀直入にもほどがあるだろ!? もう少しいろいろと考えてコレットちゃんに話さないと……
「この村にいてもあなたは幸せになれないと思います。私達と一緒に来て別の住む場所を探しませんか? もし良ければ私の村も紹介します」
……いや、ジーナなりにコレットちゃんのことを思って、はっきりと言ってくれたみたいだ。
俺も前世では人の顔色を窺うことが多かったが、ジーナみたいに自分の感情をまっすぐに伝えることができる人は羨ましいと思っていた。
こちらの世界では、人の顔色を窺っているよりも、自分の気持ちをまっすぐに伝えることが大事なのかもしれない。
「ジーナの言う通りだ。さっき村の人達と話をしたんだけれど、どうやらこの辺りは黒狼族のことをよく思っていない人が多いみたいだね。今俺達は旅をしているんだが、よかったらコレットちゃんも一緒に来ないかい?」
「ホー!」
フー太も俺の言葉にうなずいてくれている。
「え、ええ~と……」
コレットちゃんはものすごく狼狽している。そりゃ今日会ったばかりの男にいきなりこんなことを言われても困るだろう。だけど俺は構わず続ける。
「お父さんとずっと過ごしてきたこの村から出るのは嫌かもしれないけれど、一度だけでも外に出てみないかい? いきなり今日会ったばかりの怪しい男にそんなことを言われても怖いと思うけれど――」
「ううん、シゲトお兄ちゃんはとっても優しかったから全然怖くないよ! それにジーナお姉ちゃんもフー太様も、僕なんかにとっても優しかったし、すっごく嬉しい! でも……」
俺の言葉を遮るようにコレットちゃんが叫ぶ。
そして、とても嬉しそうな顔をした後に表情が曇ってしまった。やはりお父さんと過ごしたこの村を離れたくないのだろうか?
「僕なんかと一緒にいると、こんなに優しいシゲトお兄ちゃん達にまで不幸が移っちゃうかもしれないよ……」
「………………」
こんな状況でも俺達のことを気にしているんだな。本当に優しくて良い子じゃないか。
きっとこれまでに散々不吉の象徴と言われ続けてきたから、本当にそうだと思ってしまったのだろう。
不吉の象徴なんて知ったことじゃない!
「俺達のことは気にしなくていい。別にこの村から一生離れるわけじゃないし、戻りたくなったらすぐにここまで送ってあげるよ。だから、もしもコレットちゃんがこの村を出てみたいと思うのなら一緒に行こう!」
「本当にいいの? 僕がシゲトお兄ちゃんに渡せるものは何もないんだよ?」
「別に何か見返りがほしいわけじゃないんだ。単なる俺の自己満足だから、コレットちゃんが気にする必要はない」
「……本当に本当?」
「ああ。だからコレットちゃんが少しでも村を出たいと――」
「行く! シゲトお兄ちゃんについていく!」
「おっと」
言葉の途中でコレットちゃんが俺に抱き着いてきた。そしてその黒い瞳から大粒の涙を流しながら泣き始めた。
……やっぱり、この村で生活するのはとても辛いことだったんだろうな。こんなに幼いのにこれまでずっと耐えてきたに違いない。
「あ、あの! 服を汚しちゃってごめんなさい」
「ああ、こんなの気にすることはないよ」
コレットちゃんが泣き止むまでしばらく時間がかかった。本当にこれまでずっと辛かったんだろうな。
俺の服はコレットちゃんの涙と鼻水でぐしょぐしょになってしまったが、こんなものは洗濯すればいいだけの話だ。
「それじゃあ、一緒にこの村を出るとしよう。一度コレットちゃんの家に荷物を取りに行こうか」
「うん! シゲトお兄ちゃん。ちょっとだけ待ってて」
「うん?」
そう言いながら、なぜかコレットちゃんは馬小屋の中へ戻っていく。そして馬小屋にいた二頭の馬に別れを告げていた。
長い間この馬の世話をしていたのかもしれないな。なんだ、一瞬こんな馬小屋で暮らしているのかと思ってしまったぜ。
「お待たせしました。荷物はこれだけだから、大丈夫です!」
「「………………」」
コレットちゃんはそう言いながら馬小屋の藁の奥から、数着の服と先ほど俺があげたクッキーを持ってきた。どうやら本当にコレットちゃんはこの馬小屋で生活をしていたらしい。
さすがにこれには、俺もジーナも絶句してしまった。
「……お父さん、行ってきます」
村から少し離れた森の一角に、石が置いてある場所があった。ここがコレットちゃんの父親のお墓だ。お墓の前で俺とジーナも一緒に手を合わせた。
この世界は土葬らしいのだが、コレットちゃんの父親のお墓は村の人達のお墓とは別の場所にあった。本当にこういうのを見ると嫌な気持ちになる。
俺が最初に訪れた村がハーキム村で心からよかったと思う。
「それじゃあ行こうか。とはいえ、その前に村長には話しておいた方がいいな。さすがに引き留められる可能性は低いと思うけど、一応は話しておこう」
「ホー!」
「安心してください、シゲト。もしも無理に引き留めるようなら、私が力尽くでもコレットちゃんをこの村から連れ出しますから!」
「ふえっ!?」
「ジーナ、ちょっと落ち着いてくれ」
さっきは自分の感情をまっすぐに伝えればよかったけれど、世の中にはそれだけじゃどうにもならないこともある。特にこっちの世界では暴力は本当に危険なものだ。そう簡単にこちらから手を出していいものではない。
まあ、コレットちゃんやその父親の扱いを見ると、ジーナの憤る気持ちも大いにわかるけれどな。
「ここはコレットちゃんがお父さんと暮らしていた村だし、お父さんのお墓だってある。俺もアテのない旅をしているわけだし、またここに戻れるようにはしておきたい」
「うっ……」
俺の言葉にジーナは先ほどまでの勢いと言葉を失う。
うん、感情的に動きすぎるのは時として良くない場合もあるからな。
大丈夫、もしも村の人達がそれを許さない場合には、キャンピングカーを出してコレットちゃんを攫って逃げるから。キャンピングカーなら間違いなく逃げ切れるだろうし、俺もそれくらいの覚悟は持っている。
あれだけ不吉の象徴として忌避していたコレットちゃんが村を出ようとするなら、特に何も言われないと思うけれど……あの村長のことだから素直にコレットちゃんを送り出してくれない可能性もある。
少し疑いすぎかもしれないが、これまでの扱いが扱いだからな。村を出ようとしたら、お金なんかを要求してくる可能性もあるとさえ思えてしまう。
円満にコレットちゃんを村から連れ出しつつ、コレットちゃんが今後も穏便に里帰りできるようにするためには……
「フー太、すまないがちょっと協力してくれないか?」
「ホー?」
俺の右肩に留まっているフー太が首を傾げる。相変わらずその仕草はとても可愛らしい。この可愛さなら、もふもふや小動物好きの人なら即オチは間違いないだろう!
もちろん、この可愛さで落とすという作戦は冗談だが、この村の人達は黒狼族を忌避する一方で、森フクロウであるフー太を敬っているからたぶんいけるだろう。
「おや、皆様いかがされましたか?」
みんなと打ち合わせをしてから村へ戻り、村長であるダリアルさんを見つけた。
「そろそろ村を出ようと思っていたので、改めてご挨拶をしたかったのと、一つご相談がありましてね」
「はあ、相談ですか。それにしても、どうしてコレットのやつに……?」
俺とジーナ、そして俺の横にいるコレットちゃんを怪訝な目で見るダリアルさん。
「実はですね、俺に懐いているこちらの森フクロウ様が、どうやらコレットちゃんにもとても懐いてしまったようなんですよ」
そう、今フー太は定位置である俺の肩ではなく、コレットちゃんの肩に留まっている。そして打ち合わせ通りにコレットちゃんにその頭を預けている。
「ほう、コレットのやつに!」
ダリアルさんはとても驚いた表情をしている。ジーナにも改めて聞いたのだが、そもそも森フクロウはとても警戒心が強く、人に懐くようなことはほとんどないらしい。
フー太の場合は怪我を治療するのを手伝ってあげたらすぐに懐いてくれたし、俺だけではなくジーナやコレットちゃんにも気を許しているから、全然そんなふうには見えないけれど。
「そこでご相談なのですが、森フクロウ様のお世話係として、この子をしばらくの間お借りできないでしょうか?」
「コ、コレットのやつを森フクロウ様のお世話係にですか!? ……いえ、しかし本当に大丈夫なのですか?」
「もちろん、コレットちゃんに難しいことや危険なことをさせるつもりはありませんよ。食事を作る手伝いをしてもらったりするだけです。それにコレットちゃんはだいぶ耳や鼻が利くそうなので、護衛のジーナと一緒に周囲を警戒する手伝いをしてもらえると助かります。当然コレットちゃんの食事や服などはこちらで用意させていただきます」
「あ、いえ。コレットのやつではなく、森フクロウ様は本当にこいつと一緒で大丈夫なのでしょうか?」
「………………」
考えてみれば、ダリアルさんがコレットちゃんの心配なんてするわけがないか……
「こちらの森フクロウ様と出会った地域では、黒狼族が不吉の象徴だという話は聞いたこともないので大丈夫ですよ。それに、コレットちゃんもいざとなれば、命を懸けて森フクロウ様を守ってくれるようですから」
俺の言葉にコレットちゃんが力強く頷く。この辺りも予め打ち合わせをしていた。
「そうですな。いざとなれば、こいつでも森フクロウ様の盾くらいにはなりそうですな!」
「………………」
相変わらず酷い言い草だが、ここは穏便にすませるためにも我慢だ。
「それでしたら、シゲト様とそちらのエルフの女性の方も、このフェビリー村で一緒に暮らすというのはいかがでしょうか? 我々一同は森フクロウ様ともども歓迎いたしますよ!」
ダリアルさんの性格からして、間違いなくそう言ってくると思っていた。
おそらくだが、森フクロウが暮らしている村などと銘打って、さらに観光客を集めるつもりなのだろう。当然俺やジーナはおまけというわけだ。
「いえ、申し訳ないのですが、旅をしている身ですから」
「そうですか……それでは数日間はこちらの村で過ごしていただいてはいかかでしょうか? もちろんお代はいりませんので。きっとお二人にもこの村のすばらしさを感じていただけると思いますよ」
なおもグイグイとくるダリアルさん。
冗談じゃない、これ以上この村にはいたくないぞ。
「すみません、時間もそれほどございませんから。一月後にまたこの村に寄らせてもらいますので」
「一月後ですか……承知しました。コレット、森フクロウ様の世話係という光栄な大役を、見事に果たしてくるのだぞ!」
「は、はい!」
ふう~。とりあえずはなんとかなったようだ。
あまりよく思っていない黒狼族のコレットちゃんに対して、森フクロウの世話係という光栄な役割が与えられれば、喜んでコレットちゃんを差し出してくると思っていたぞ。
仮に俺達が一月後に来なくても、ちょうどいい厄介払いができると思っているのだろうな。
無事にコレットちゃんをこの村から連れ出せそうでほっとした。
「……この辺りまで来ればもう大丈夫か。ジーナ、尾行してくる村の人はいなさそうか?」
「はい、大丈夫ですよ」
無事にコレットちゃんをあの村から連れ出すことができ、現在は村を出てだいぶ離れたところまでやってきている。
ダリアルさんは最後まで俺達――というよりは、森フクロウのフー太を村に留めようと勧誘してきた。まあ、商売とかをするなら、あれくらい強引な性格の方が向いているのかもしれないけれどな。
「あ、あの! シゲトお兄ちゃん、ジーナお姉ちゃん、フー太様。僕を連れ出してくれて、本当にありがとうございます!」
「私達がしたいことをしただけです。そうですよね、シゲト?」
「ああ、俺達がしたいようにしただけだから、コレットちゃんは気にしなくていい」
「ホー!」
「あ、ありがとうございます……」
またしても涙ぐんでしまうコレットちゃん。
やっぱりあの村での生活はよっぽど辛かったのか。
村から出たくても、お金なんかもらっていないだろうし、幼いコレットちゃん一人では出たくても出られなかったのだろうな。
「さて、もう少ししたら日も暮れてくるだろうし、さっさと移動するとしよう。コレットちゃん、今から見せることは他の人には秘密にしてほしい――」
「はい、絶対に誰にも言いません!」
「う、うん。よろしくね」
ものすごく食い気味で承諾された。
さて、それじゃあいきますか。
「え、ええ~!?」
車体収納機能によって収納していたキャンピングカーを取り出す。
今まで何もなかった空間に巨大なキャンピングカーが現れて、コレットちゃんはとても驚いている。
「シ、シゲトお兄ちゃんは魔物を召喚できたんだね……」
「えっとね、これはキャンピングカーと言って、魔物じゃなくて乗り物なんだ。馬車のすごく大きなやつだと思ってくれればいいよ」
「えっ、これに乗れるの!?」
う~む、やはりこちらの世界の人は初めてキャンピングカーを見ると魔物だと思うらしい。
まあ、こんなに巨大で変な形をしている乗り物は見たことがないだろうからな。
「詳しい説明は走りながらするよ。コレットちゃん、これからよろしくね!」
「コレットちゃん、これからよろしくお願いしますね!」
「ホーホー♪」
「はい! シゲトお兄ちゃん、ジーナお姉ちゃん、フー太様、よろしくお願いします!」
そう言いながら、コレットちゃんは俺が差し出した手を取ってくれた。
一緒に旅する仲間がまた一人増えた。
相棒のキャンピングカー、森フクロウのフー太、エルフのジーナ、そして黒狼族のコレットちゃん。
長年の夢だったキャンピングカーを購入した次の日に、俺はいきなりこの異世界へとやってきた。最初はどうなることかと思ったけれど、みんなのおかげで、今では楽しみながらこの世界を回れるようになっている。
元の世界でブラック企業にこき使われて働いていた頃と比べると、毎日が最高に楽しい。
おいしいご飯に、初めて見る美しい景色、毎日新しい出来事が起こって一日一日が本当に新鮮だ。もちろんいろいろなトラブルもあったけれど、それもみんなで乗り越えてきた。
もう少し走ればキャンピングカーのレベルが上がる。
新しい拡張機能が増えるのか、これまでの機能が強化されるのか、はたまたキャンピングカー自体が強化されるのか。
レベルアップするとどうなるのかとても気になるところである。
観光名所のフェビリーの滝も見たし、次は魚料理が有名な、北にある大きな湖へと向かう予定だ。そこにはどんなおいしいご飯や、どんな光景が待っているのかを考えるだけでワクワクしてくる。
これからもキャンピングカーとみんなと一緒に、この異世界を目一杯楽しみながら旅をしていくとしよう!
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