キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ

文字の大きさ
54 / 87
連載

【番外編】キャンピングカーとアウトドアショップ③

しおりを挟む

「うおおお、これがキャンピングカーか! 想像していたよりも遥かに大きいんだな!」

「キャンピングカーの中でも、これはバスコンといってマイクロバスをベースにしたキャンピングカーなんだ」

「ホー!」

 シゲトたちはその日テツヤの店に泊めてもらい、翌日アレフレアの街から少し離れた場所へ移動し、キャンピングカーを出した。

「な、何もない空間からこれほど大きな物を取り出せるとは……。それになんだか魔物みたいだな」

「び、びっくりしたです!」

 一緒にキャンプに参加をしてくれるリリアとフィアも突然現れた大きな車にとても驚いている。この世界には車がないため、リリアのようにキャンピングカーを魔物と思ってしまう人が大半だ。

「テツヤお兄ちゃんも不思議な道具や食べ物を何もない場所から取り出せてすごいね!」

「本当にシゲトと同郷の者はみんな不思議な力を使えるのですね……それにフー太様に言葉を伝えられますし、羨ましいです」

「ホー?」

 テツヤのアウトドアショップの能力はすでに昨日見せていた。シゲトだけでなく、ジーナもコレットもとても驚いたようだ。

 そしてテツヤの言葉もまたフー太には伝わるようで、ジーナやコレットには羨ましがられていた。

「それじゃあ、もう少し移動しよう」

 キャンピングカーへ乗り込む際、リリアとフィアは最初怖がっていた。やはりこの異世界の住人にとっては通過儀礼らしい。



「うわあ~すっごく速いです!」

「……これはすごいな。フェリーの召喚獣よりも速いとは驚いた」

「やっぱり車は速いよなあ。でも振動は結構大きいか……」

 初めてキャンピングカーへ乗った3人の反応は様々であったが、3人とも楽しめたようだ。

「テツヤさん、この辺りで大丈夫か?」

「ああ、この辺りの川まで人は来ないからね。一応魔物はたまに出るけれど、アレフレアの周りにはそんなに強い魔物はいないから、リリアがいれば大丈夫だよ」

「了解」

 無事に目的地である人のいない川へとやってきた。この辺りに出る魔物といえばゴブリンやスライムくらいだ。

「リリア殿は元Bランク冒険者ですよね! ぜひあとでご指南をお願いしたいです!」

「いや、私はそれほどの者ではないぞ。だが、最近はあまり鍛錬ができていないから、こちらこそよろしく頼む」

 ジーナとリリアは同じ剣を持つ者同士ですでに意気投合している。

「うわあ~フィアちゃんの尻尾はすごくふわふわだね!」

「コレットちゃんの尻尾はサラサラしていて羨ましいです!」

 フィアとコレットも同じ獣人ということと歳が近いということもあってすでに仲良しだ。

「それにしてもフー太くんは本当に可愛いな。それに身体が大きくなるなんてすごいよ」

「ホー♪」

「やっぱり同郷の人にはフー太の言葉が伝わるんだよなあ」

 キャンプ場にいたユウスケと同様、異世界からやってきたテツヤの言葉は森フクロウのフー太に届くようだ。

 そして日本から同じ異世界に転生し、キャンプ好き仲間であるテツヤとシゲトも昨日の夜は同じ部屋で色々とこれまでのことを語りあったこともあり、すでに打ち解けた関係となっていた。


 
「それじゃあ、同郷のシゲトさんたちに出会えたことに乾杯!」

「「「乾杯!」」」

「ぷはあ! やっぱりキンキンに冷えた缶ビールは最高だな! まさか元の世界の酒が楽しめるとは思わなかったよ!」

「気持ちはわかるよ。ユウスケさんには本当に感謝だな。またあのキャンプ場へもう一度行くから、その時にちゃんとお礼を伝えないと」

 キャンプ場にいたユウスケからのお土産はストアという能力で購入した缶ビールや日本酒などといった元の世界のお酒だった。

 キャンピングカーの冷蔵庫でキンキンに冷やされた缶ビールの味はテツヤが久しく忘れていた味である。

「俺もぜひ会ってみたいな。今度長期の休みが取れたら、そのキャンプ場へ行ってみるよ」

「ああ、きっと喜んでくれるよ。そこにいたお客さんたちもすごく良い人たちで、みんなで宴会をして楽しかったなあ」

「ええ、本当にとても楽しかったです。ぜひまた行ってみたいですね!」

「みんなすごく優しかったし、おいしい料理がいっぱいだったよ!」

「ホー!」

 シゲト以外の者もそのキャンプ場という場所でとても楽しんできたようだ。

「テツヤ、すごいぞ! 魔法を使っていないのにこのジュースは本当によく冷えている!」

「こっちのお肉につけるタレもすっごくおいしいです!」

「キャンピングカーには冷蔵庫やオーブンレンジなんかの家電が付いていていいよなあ。それに焼肉のタレみたいな元の世界の調味料が補充できるのは羨ましい」

 テツヤが普段使っているタレは異世界の食材を使って自作したタレだが、やはり元の世界の市販の焼肉のタレに比べるとまだ改良の余地がある。エ◯ラ食品様の企業努力の成果は偉大なのだ。

「テツヤさんの能力はレベルアップするし、きっとポータブル冷蔵庫や他のキャンギアも出てきて、アウトドアショップで売っているインスタント食品なんかも買えるようになるんだろうなあ。この先がすごく楽しみな能力だ」

「そうなってほしいよ。今は大きなキャンプギアは販売できていないし、とてもじゃないけれど、アウトドアショップとはいえないからね」

「だけど、それを冒険者に安く売っているんだから本当に偉いと思う。駆け出し冒険者に助けられたって聞いたけれど、その恩を返すために店を出すなんて、俺にはとてもじゃないけれどできないな」

「そんな大層なものじゃないよ。俺の能力がちょうど商店に向いていただけだからさ。それに俺も我ながらだいぶ自由に生きていると思うし」

「……そのおかげでテツヤさんやみんなにも出会えたからな。うん、今日は楽しく飲もう!」

「ああ、今日は本当に良い日だ!」

 そう言いながら、2人は再び缶ビールで乾杯をする。いきなりこの異世界に転移してきた者同士であり、キャンプを愛する者同士、そこに壁のようなものはなかった。

 この日はいろいろなことを忘れ、お酒やお互いの自慢のキャンプ飯をみんなで楽しんだ。

 

「いやあ、フカフカのベッドで寝られるなんて最高だな! やっぱりキャンピングカーはこれが最高だよ!」

「テツヤ、後ろのベッドは本当に柔らかいぞ! それに日が暮れてもこんなに明るいなんて本当に不思議だ!」

「うわあ~おうちよりも快適です!」

 初めてキャンピングカーに乗るテツヤ一行は夜のキャンピングカーの快適さにとても驚いている。

 フィアとコレットは身体が小さいこともあって、女性陣4人は後ろの大きなベッドで寝ることになった。

 フー太とシゲトはいつものベッドで、テツヤは本人の強い希望でバンクベッドというキャンピングカーの運転席の上にある狭い場所で寝ることになった。狭くはあるが、ハシゴを登って眠る秘密基地感のあるそこで寝たい気持ちは男なら誰しもが少しわかるはずである。

「出たとしてもゴブリンやスライムなら、車体強化されたこの車なら大丈夫だから安心して寝て大丈夫そうだ」

「……改めて考えても、シゲトさんのキャンピングカーもだいぶチートだよな」

「おかげで楽しく旅ができているよ」

 キャンピングカーのあるキャンプはむしろ夜からが本番である。柔らかなベッドに包まれて、野営をしている時とは比べないほど快適にぐっすりと眠れることだろう。

 久しぶりに楽しい仲間と一緒にキャンプを楽しめたようである。
しおりを挟む
感想 57

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。 平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。 どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。