いじめられて死のうとしていた俺が大魔導士の力を継承し、異世界と日本を行き来する

タジリユウ

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第17話 冒険者ギルドで素材の買取

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「おはようございます、マサヨシ様! 今日はよろしくお願いしますね!」

「こちらこそ案内よろしくお願いします」

 昨日は晩ご飯をご馳走になったあとそのままサーラさんの屋敷に泊めてもらった。大きな屋敷だけあって客人を泊める部屋はいっぱいあるそうだ。今日は元の世界では土曜日だから、遅くとも明日の夕方までには帰らないとな。

 そして今日は朝からサーラさんが街を案内してくれる予定となっている。さすがに今日は昨日の夜のように美しいドレス姿というわけではなく、外に行くための軽装だ。

 帽子も被ってエルフの長い耳を隠しているところをみると、やっぱりエルフは狙われてるのだろうか。昨日街を馬車の中から眺めていた時も、獣人やドワーフは見かけたが、エルフの人は見かけなかった。

「マサヨシ殿、本日はどうぞよろしくお願いします」

「お二人の身は命をかけて守りますので」

「はいダルガさん、ジーナさん、こちらこそお手数をおかけしてすみません」

 当然ながらサーラさんと2人でデートというわけではない。王女であるサーラさんの護衛としてダルガさんとジーナさんも同行する。大丈夫、ちゃんとそれくらいのことは想定していたさ。もしかしたら生まれて初めて女性と2人きりでデートができるなんて考えていたわけではない。ないったらない。

「それではまずはどこに行きましょうか?」

「えっと、まずはこの国のお金を持っていないので、冒険者ギルドに寄って持っている武器か素材を換金したいですね」

「そういえば昨日仰っておりましたね。あの、まだ助けていただいたお礼もできておりませんし、本日の支払いはすべて私の方でさせていただきたいのですが」

「いえ、さすがにそこまでお世話になるわけにはいきません。それに、もしかしたらしばらくこの国に留まるかもしれないので、何にせよ多少の現金は必要ですから」

 さすがにいくら命の恩人だからといって、王女様からお金を借りるわけにはいかない。

「わかりました、それではご案内させていただきますね」



「そういえばダルガさん、捕まえた賊からは何か分かりましたか?」

「ええ、憲兵と共に尋問を行いましたところ、我が隊に潜入しておりました者から証言が取れました。やはり第二王子からの刺客で間違いなさそうです。敵も今回は相当自信があったのか、刺客の口を封じる手段が甘かったのでなんとか吐かせることができました」

 潜入に一年もかけたと言っていたからな。実際、俺がたまたま遭遇しなければみんな死んでいた可能性が高い。

「それはよかったです。それで第二王子はどうなるんですか?」

 第三王女を殺そうとしたのだ、死刑まではいかないまでも継承権の剥奪や懲役みたいな罰は与えられるだろう。

「……こちらの自作自演だと騒がれてしまいましてな。残念ながら証拠が賊の証言だけなのでこちらからもそれ以上深く追及することができませんでした」

 マジか……確かにこっちの世界じゃ科学捜査とかできないだろうし、物的証拠を見つけるのは難しいのかもしれない。

「ですが、これで敵もしばらくの間はそう簡単には姫様に手を出せなくなったはずです。以前にも何度か刺客が送り込まれておりますし、国王様も独自で調査をしてくださるようです」

 あれだけの出来事があっても、しばらくしたらまた刺客を送られてくる可能性があるのか。母親がエルフというだけで命を狙われるなんてさすがに可哀想だ。

「マサヨシ様、そんな顔をしなくてもマサヨシ様は私達を救ってくださいました。後のことは私達の問題ですので、そうお気になさらなくても大丈夫ですわ。さあ、もうすぐ冒険者ギルドに着きますわ!」

 おっと、サーラさんに気を使われてしまったようだ。それにしてもこの子は自分が命を狙われるというのに本当に優しい子だな。



 カランカラン

 扉を開けると扉の上についていた鐘の音が鳴った。冒険者ギルドの中にいる人達の視線が集まる。だが、定番のゴロツキ冒険者に絡まれるというイベントは起きずにそのままカウンターの方へ案内された。

 おそらく普通の服を着た女の子を連れていたので依頼者だと思われていたのかもしれない。本当は一人で入ろうと思っていたのだが、サーラさんが一緒に入りたがっていたので了承したが結果的にはよかった。

「いらっしゃいませ! 冒険者ギルドへようこそ。本日はご依頼でしょうか?」

 カウンターで受付嬢のお姉さんが笑顔で対応してくれる。やはり依頼者と思われているようだ。

「すみません、冒険者ではないのですが、素材の買取はできますか?」

「はい、素材の買取ですね。本日はどのような素材をお持ちでしょうか?」

「実は旅の途中で魔物の鱗のようなものを拾ったのですが、かなり良さそうなものだったので見てもらいたいと思いまして」

 背負っていた荷物入れから魔物の鱗を取り出す。ここで収納魔法を目立ってしまうから、あらかじめ売ろうとしていた素材は既に取り出して荷物入れにしまってあった。

「こっ、これは……」

 さて果たしてこの魔物の鱗はどんな評価になるだろう。正直に言って冒険者ギルドで売る物についてはかなり迷った。大魔導士の家にあった武器や防具についてはあまりにも性能が良すぎて騒がれてしまう可能性が高い。

 そこで破滅の森を走り抜けている時にちょこちょこ落ちていた魔物の素材を売ってみることにした。後で話を聞いたら破滅の森にいる魔物も相当やばいらしいが、大魔導士の作ったものよりはまだマシだろう。

 次点で最初に遭遇したオークやゴブリンが持っていた剣と鎧だな。あれも結構立派な物だったから、できれば拾った素材がそこまではやばい素材ではなく、そこそこの値段になってくれるとありがたい。

「すみません、ちょっと上の者を呼んで参りますね」

 ……あちゃあ、やっぱりやばい素材だったか。



 受付嬢が眼鏡をかけた40代くらいの男性を連れてきた。やっぱり素材を見る専門の人がいるようだ。

「……う~む、なるほど。差し支えなければ、こちらをどこで拾ったのか教えていただくことは可能でしょうか?」

「はい。細かい場所はわからないのですが、この街に来る途中の大きな森が見える場所でそれを拾いました。後で聞いたらこの辺りでは有名なあの破滅の森だったようですね」

「なるほど、破滅の森の近くですか。そうなるとこれはやはりあの魔鉄リザードの鱗で間違いなさそうです。お客様は大変運がよいのでしょう。同じようにあの森の付近で魔物の素材を拾った者も大勢いましたが、これほど良いものを持ってきたのはお客様が初めてですよ。それでこちらに関しましては200万Gの買取でいかがでしょうか?」

「200万Gですか……」

 確か昨日サーラさんからこの国の通貨を教えてもらったな。この辺りの宿が一泊2万Gくらいで安い食事だと一食1000Gくらいと言っていたから日本円で計算するとだいたい100万円……

 えっ、マジで? こんな30cmくらいの鱗一枚で100万もするのかよ!

「……あのいかがでしょうか? 大変申し訳ないのですが、買い取り金額につきましてはギルドの規定で決まっておりましてこれ以上買い取り金額を上げることは難しいのですが……」

 ああ、俺が考えていたから買い取り金額に不満があるとでも思われたのだろう。

「いえ、あまりの金額に驚いておりました。ぜひ、その金額でお願いします!」

「ありがとうございます。ちなみに冒険者登録を致しますと買い取り金額が5%ほど上乗せされますがいかがでしょうか?」

 冒険者登録か。どうしようかな、この世界で冒険者になるというのも悪くはないのかもしれない。

「試験とかはありますか?」

「最低限の依頼をこなせるくらいの力があるかは拝見させてもらいます。お客様のような立派な装備を持ってすれば問題ないかと思いますが」

 ……う~ん、冒険者登録は保留かな。まだこの世界の冒険者がどういうものか分かってないしな。5%は今回は諦めよう。まあ似たような拾った素材がまだたくさんあるし、これでお金には困らなくなりそうでよかった。

「今回はやめておきます」

「わかりました、それでは少々お待ちください」



「お待たせ致しました。また何か珍しい物などございましたら是非とも冒険者ギルドまでお持ちください。それとかなりの大金となりますのでお帰りの際はお気をつけください」

「はい、ありがとうございました」

 目の前には光り輝く金色の硬貨が山ほど積まれていた。ありがたいことに使いやすいように銀色の硬貨も加えてくれていた。最後の忠告といい、とても親切な職員さんだったようだ。
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