52 / 189
第52話 ドラゴンの肉
しおりを挟む「ド、ドラゴンの肉!?」
「そ、そりゃ興味はあるが……」
「すっごく高そうだニャ……」
「もちろんお金はいりませんよ。というか一人じゃ絶対に食べきれないので、むしろ手伝ってください」
「いや、それなら貴族や王族とかに売れば言い値で買い取ってくれるんじゃ……」
「いえ、もうお金は十分ありますので。それよりも見知った人達と一緒に楽しく食べた方が俺も幸せです」
もうこっちの世界のお金は十分だからな。
「そ、それじゃあ、ありがたくご馳走になる!」
「はい! 少し台所をお借りしますね」
リリスさん達の家の台所を借りる。思ったよりも綺麗な台所……というよりはほとんど使われていない感じだ。あんまり自炊とかしないのかな?
「最近はあまり使ってないから、包丁とかは一度洗った方がいいかもな。冒険者になりたての頃は節約のために毎日自炊していたんだけどな、最近は忙しくて外で食べることが多いんだ」
なるほど、確かに付き合いとかもいろいろあるだろうし、A級冒険者にもなると忙しいのだろう。ただ立派な台所なのに少しもったいない。高価な魔道具のコンロが二つもついている。
ちなみに冒険者ギルドに寄る前に見てきたが、俺が買った魔道具の値段は適切だった。麓の村まで行って俺が買った店に強制返金させずにすんで本当によかったよ。
「あれがドラゴンの肉か」
「解体をお手伝いしていた時にも思いましたが、結構赤みが深い肉なのですね」
「ワイバーンは食ったことはあるが、ドラゴンは初めてだ。どんな味がするんだろうなあ」
「楽しみニャ!」
……めっちゃ見られてる。いや確かに調理しているところを見ててもいいかと聞かれて、いいと答えたんだけどここまでガン見されるとは思っていなかった。
本当は肉を焼いて日本の調味料をかけるだけの予定だったんだけど、何かもう一品くらい作ってみるかな。うん、せっかく時間も調理器具もあるし、試してみるか。俺を含めて料理をする人って結構な割合で褒められたり注目されると凝った料理を作りたくなるんだよね。
「お待たせしました!」
「「「おおお~!」」」
大皿にこれでもかと乗せられたドラゴンの肉。前回のワイバーンの料理と同様に塩胡椒、黄金の味、おろしのタレの3種類を用意してある。
「こっちがドラゴンの肉を焼いたもので、味付けも3種類あるので好きなだけ食べてくださいね」
「そんなに味があるのか?」
「塩以外にも味があるのですね?」
「そしてこっちが俺の故郷の料理です」
そして3つの皿の他にもう1皿、今回新しく作った料理だ。
「こっちのは初めて見る料理だな」
「作り方を見ておりましたけれど、よくわかりませんでしたわね」
「まあまずは乾杯しましょう!」
「おう、みんな、飲み物は持ったな? それじゃあマサヨシ、頼む」
「あっ、はい。それでは領主様の回復と全員無事に戻れたことを祝って、乾杯!」
「「「乾杯!!」」」
ちなみに俺とネネアさんは果汁ジュースで他のみんなはお酒である。一応この世界には年齢によるお酒の年齢による販売制限みたいなものはないらしい。年齢確認とかやろうと思っても難しいものな。
確か元の世界でも海外とかに行ったら、飲酒の年齢制限はその国の法律に従うはずだ。つまりこの世界で俺は酒を飲んでもいいことになる。異世界を海外としてもよいかは微妙なところだがな。
そして先程少しだけこの世界のお酒をもらったのだが、とても美味しいとは思えなかった。今回はせっかくのドラゴンの肉だし、美味しいと思える果汁のジュースをいただこう。
「うわっ!! なんだこれ!!」
「うっま!!」
「ニャニャ!!」
「美味しいですわ!!」
うん、みんないい反応をしてくれる。
さあ、俺もいよいよドラゴンの肉をいただこうじゃないか! まずはシンプルな塩胡椒から。とはいえすでにワイバーンの肉は食べている。いくら美味いとはいえそれほどの感動があるとは思えないが……
ワイバーンより深い赤みがかったドラゴンの肉。しかし入っている白い脂のサシはワイバーンよりもさらに多く入っていた。
厚さはあえて均一にせずに様々な厚さでドラゴンの肉を楽しめるようにしておいた。一番最初は少し厚めのステーキくらいの厚さのこいつからだ! ナイフを通すとその柔らかな肉の繊維があっさりと断ち切れる。中からはまだ少し赤みが残った部分が姿を現す。
歯を入れるとなんの抵抗もなく噛み切れる。そして肉の脂の旨味が凝縮した味が口の中に広がっていく! ワイバーンの肉を食べた時はこれ以上の味はないと思っていたが、それをこうもあっさりと超えてくるとは!
確かにこの味は王族や貴族達しか食べられない贅沢の極みの味だ。夢にまで見たドラゴンの肉! これでひとつ異世界での夢が叶ったな!
「……こんな美味い肉があるんだな。それも3皿全部味が違ってどれも美味え!」
「どの味もとっても美味しいニャ! お兄ちゃん、こっちのお皿のはどう食べるニャ?」
「最初はそのまま食べてみてください。そのあとはこのうちの故郷のソースをつけてみても美味しいですよ!」
今回は焼いた肉だけではなく、ドラゴンのカツを作ってみた。ちゃんと卵とパン粉で衣をつくってしっかりと油で揚げたトンカツ……じゃなかった、ドラゴンカツだ。ルクセリアやエガートンの屋台を回ってみたが、揚げ物を出している屋台はひとつもなかった。もしかしたらこの世界ではまだ揚げ物という概念がないのかもしれない。
「んん!! サクサクとした食感からドラゴンの肉の旨味が溢れてきやがる! しかもこれはエールにめちゃくちゃ合うじゃねえか!」
「はい、リリスさん。ここでドラゴンカツにこの中濃ソースをつけてもう一口どうぞ」
しかもソースの定番、中濃ソースである。日本にはいろいろなソースがあるが、ぶっちゃけ個人的にはこれ一本あればすべて解決すると思っている。
「うん、このままでも美味いのに更に美味くなったぞ!!」
「マサヨシ様、私にもください!」
「マサヨシ兄さん、俺も欲しい!」
「お兄ちゃん、私も!」
「ええ、お腹いっぱい食べてくださいね!」
26
あなたにおすすめの小説
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。
もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる