いじめられて死のうとしていた俺が大魔導士の力を継承し、異世界と日本を行き来する

タジリユウ

文字の大きさ
103 / 189

第103話 早い者勝ち

しおりを挟む

「冒険者ランクはそっちのパーティのほうが上だが、俺達もわざわざ遠くから来てんだ。あんたらに譲る気はねえな!」

「ああ、わかっている。冒険者ギルドの規定通り早い者勝ちでいこう。当然だが相手の妨害はなしだ」

「……しょうがねえか。ちょっとうちのやつらと話してくるぜ」

「ああ、俺も仲間と少し話してくる」

 一度リリスさんが戻ってきた。向こうのリーダーの男との話し合いは少し聞こえていたが、どうやら依頼が重なった場合には早い者勝ちとなるらしい。

「少し聞こえていたかもしれないが、どうやら冒険者ギルドの手違いだな。このダンジョン踏破の依頼が重なっちまったらしい。あいつらはBランク冒険者パーティの『疾風迅雷』だな」

「ああ、聞こえていたぜ。早い者勝ちになるんだろ? ま、仮に負けたとしてもギルドから依頼料の1/3は補償としてでるからな」

「いいのではないですか。別に今はお金には余裕がありますし、譲ってもいいくらいですわ。今回はマサヨシ様がいらっしゃいますから、ダンジョン攻略はしたいですけれどね」

「のんびり行けばいいニャ! 負けても別に構わないニャ!」

 どうやらみんなそれほど勝敗にはこだわっていないようだ。うん、俺もダンジョンに一度行ってみたいだけで勝敗はどっちでもいいな。それよりも全員が無事に帰ってきて、このダンジョンが閉じられて周囲の街が安全に暮らせるようになるほうが大事だ。

「もちろん俺も負けても構いませんよ。それよりも安全に行きましょう!」

「ホー!」

「よし。勝負は受けるが安全第一で焦らずに行くとしよう。最終的に俺達かあいつらのどちらかがこのダンジョンを踏破できればそれでいい。

 ま、Bランク冒険者パーティに負けたとか言ってくる奴等もいるかもしれないが、そんな奴等は放っておけばいいさ」

 そうかリリスさん達はAランク冒険者パーティだ。もしかするとBランク冒険者パーティに負けたとか言ってくる人達もいるかもしれない。

 リリスさん達が悪く言われるのはあまり好ましくない。負けてもいいとは言ったが、できる限りは勝てるように協力するとしよう。



「そんじゃあ俺達から行かせてもらうとするぜ」

「ああ。一応勝負ということにはなっているが、安全に行こう。場合によっちゃあ協力するのもありだからな」

「けっ……Aランク冒険者様は余裕だな。せいぜい足をすくわれないようしておけよ!」

 リリスさんの忠告を無下にあしらって、ダンジョンの階段を降りていく疾風迅雷のパーティ。男4人のパーティでリーダーは大柄なマッチョな男で大きな斧を背負っている。リリスさん達やドレインさんとは違ってだいぶガラが悪いな。高ランク冒険者にもこういう人達もいるんだな。

「それじゃあ俺達は10分後くらいに中に入るぞ」

「本当に申し訳ありません。万緑の猫の皆さまは昨日から来てくれていたのに……」

「あんたらの責任じゃないさ。冒険者ギルドの責任なんだから気にするな。それに人数も増えて、踏破できる可能性も更に上がったんだから、ここは喜んでいいところさ」

 さすがリリスさん、門番の人達へのフォローも忘れてはいない。こういう心遣いができるのは素晴らしいと思う。

「――ついてねえな、まさかAランク冒険者パーティと依頼が重なるなんてよ!」

「――本当だぜ。遠いけど稼ぎのいい依頼だと思っていたのによ!」

 ダンジョンの入り口から先に進んだ疾風迅雷の人達の声が聞こえてきた。そうか、確かダンジョンの入り口は狭くて細長い道だったから声が響いてここまで声が届いてくるのか。

「――そういや1人いたあのヒョロっちい男はなんだったんだ? 確か万緑の猫は女獣人4人のパーティだったはずじゃねえか?」

 どうやら俺の話題になったようだ。リリスさん達はAランク冒険者ということもあって、パーティのことも知られているくらい有名なんだな。

「――装備だけは一丁前に高そうなやつだったぜ」

「――どこかの貴族のボンボンじゃねえか? 金でも積んでダンジョン踏破の経験がほしいとかよ」

「――なるほどな。金の力でAランク冒険者に寄生してやがるのか。けっ、金持ちは金でなんでも買えると思っていやがるからタチが悪いぜ」

「――それか顔だけはマシだったからよ、もしかしたらあの女どもの夜の相手でもしてんじゃねえか?」

「――ぷっ、猫の獣人達のペットってわけか!? だっはっは、ちげえねえ!」

「――ま、あの男がなんだったとしてもあんなやつらに負けるわけにはいかねえぞ! おまえら気合い入れてけよ!」

「「「――おう!」」」



「「「………………」」」

 どうやら奥まで進んだようで声が遠くなっていったな。なんだか散々陰口を叩かれていたようだが、それくらいで俺のメンタルは揺るがないよ。

 なにせ太っていじめられていた頃はそんなことはしょっちゅうだ。陰口どころかわざわざ聞こえる場所で話しているやつらも大勢いたしな。むしろ顔は格好いいと褒められた気分だぜ。

「みなさん、気にしないでいいですからね。安全第一でのんびり行きましょう!」

「負けるわけにはいかなくなったな!」

「おう、この勝負絶対に勝つぞ!」

「ええ、マサヨシ様を侮辱するとはいい度胸ですね。完膚なきまでに叩き潰してやりましょう!」

「お兄ちゃんを悪く言うやつは全員ぶっ潰すニャ!」

「ホー!!」

「いやいやいや!」

 みんな沸点低すぎるよ! さっきまで安全第一でゆっくり行こうって言ってたじゃん! ただ俺のために怒ってくれているのは少し嬉しい。でもそれで怪我などしてしまったら本末転倒だ。

「みなさんが怒ってくれる気持ちはとても嬉しいですけど安全第一でいきましょう。焦って怪我をしたりするほうが俺は嫌ですからね!」

「ああ、わかっているから安心してくれ。冷静にかつ最速でダンジョンを踏破して勝負に勝つぞ! いいな!」

「おう!」

「ええ!」

「おうニャ!」

「ホー!」
 
 ……全員が怪我なく無事にダンジョンを攻略できることを祈ろう。
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

処理中です...