いじめられて死のうとしていた俺が大魔導士の力を継承し、異世界と日本を行き来する

タジリユウ

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第111話 生理的に無理

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 疾風迅雷パーティがボス部屋に入ってからしばらくが経過した。リリスさん達と一緒にボス部屋の前で疾風迅雷パーティの戦闘を待っているが、今のところは助けを呼ぶ声も悲鳴もしていない。
 
「っ!!」

 いきなり危機察知スキルが反応した。ボス部屋の中にいる疾風迅雷パーティの一人が負傷し、結構なダメージを負っているようだ。

「……すみません。疾風迅雷パーティのひとりが負傷してしまったので、助太刀に行ってきます。みなさんはここにいてください。戦闘中のボス部屋に入るのは冒険者的には問題行為であっても、俺は冒険者じゃありませんからね」

「っておい、マサヨシ!」

「マサヨシ様!」

 リリスさん達が制止するのを無視してボス部屋の中に入る。たとえ冒険者として問題行為であっても、俺は冒険者じゃないから問題ない。何か言いがかりをつけられたとしても、最悪逃げればいいだけだからな。

 以前に起きた日本での交通事故のことを少し思い出す。たとえ大魔導士の力を継承していたとしても、すでに死んでいる人間を蘇らすことはできない。

 目の前で亡くなってしまった血だらけの人が、レスキュー隊の人達によって車の外に出されるのを少しだけ見た。どうにもならないということはわかっていても、少しだけ無力感を抱いてしまった。自己満足でもいいから目の前に傷付いている人がいるなら助けたい。

「助太刀に来ました! 負傷者を治療しま……」

 カサカサカサカサ

「ぎゃああああああ!」

 ちょ、嘘だろ! うわっ、キモいキモいキモい!

 危うく地下のダンジョンの中なのに、反射的に極大魔法をぶっ放そうとしてしまった!

 さすがにこれは想定外だ! いや、ろくな魔物が出てこないこのダンジョンなら、こいつらが出てきてもおかしくはないのか!

 このダンジョンの最下層のボス、それはだった。

 ……いや、高校生の男がゴキブリぐらいで悲鳴をあげるなよと思うかもしれないが、これはヤバい!

 1mくらいの大きさの黒と茶色のゴキブリ共がカサカサと音を立てながら高速で動き、疾風迅雷パーティを襲っていた。そりゃうちにもゴキブリくらいは出没することもあるが、このサイズでかつ集団で動いている姿は常軌を逸していた!

 これまで出てきたネズミとか蛾とかクモとかなら、多少大きくなったところでそれほど思うことはなかっのたが、大きくなったこいつらは生理的に無理だ!

「おい、てめえ! 何勝手に部屋に入ってきてんだ!」

「ここは俺達だけでやる! さっさと出ていけ!」

 疾風迅雷パーティが戦っているところを見て少しだけ冷静さを取り戻す。ボス部屋は思ったよりも広く、入り口と彼等の間には大量のゴキブリ共がその行く手を阻んでいた。戦闘している間に少しずつ奥に追いやられてしまったのだろうか?

 3人が前に出て戦闘不能になったひとりを庇いながらゴキブリ共の猛撃を抑えている。こんな状況なのによくそんなこと言えるよ。だが俺は俺自身のために勝手に助太刀するとしよう。

 しかし俺も治療するため彼等の近くまで行く必要があるのだが、そのためには大量のゴキブリ共を越えていかなければならない。くそ、早く治療をしなくちゃいけないってのに!

「ホー」

「フー助!?」

 突然肩に乗っていたフー助が飛び出して、空を飛びながら奴らを越えて疾風迅雷パーティのところまで辿り着いた。

 そうか、馬鹿正直に正面から戦わなくても空から彼等の方に向かえばよかったのか。ゴキブリ共も飛べるはずだが、彼等と俺に気を向けていたためかフー助は素通りだった。

「ホーホー!!」
 
「うおっ、こりゃ障壁魔法か!」

「おい、何勝手なことしてんだよ!」

 何それ、フー助ってそんなことができたのか!? 今まで戦わせたことがなかったから、召喚した俺も知らなかったぞ!?

 彼等の前に障壁ができて、ゴキブリ共の突進から彼等を守っている。いいぞ、そのまましばらく耐えていてくれ!

 風魔法で宙に足場を作ってゴキブリ共を飛び越えていく。……今だけは下を見てはいけない。おそらく高層マンションのベランダから下を見るよりも恐ろしい光景が広がっているはずだ!

「フー助、ちょっとそのまま障壁を頼むな! ハイキュア、ハイヒール!」

「す、すげえ! みるみるうちに毒も消えて傷が塞がっていく!」

「て、てめえ、荷物持ちじゃなくて高位の魔法使いだったのか!?」

「う……うう……」

 下を見ずになんとかゴキブリ共の群れを避けて疾風迅雷側へ渡ってくることができて、解毒魔法と回復魔法をかけた。よし、危機察知スキルの反応も消えたし、もう大丈夫そうだ。タチの悪いことに、ゴキブリ共の中には毒を持つ個体もいるようだ。

「こいつらの弱点はわかりますか?」

「あ、ああ。それほど固くないから頭を潰せば動かなくなる。ただ動きが速く数が多くて毒を持っている個体もいてとにかく厄介なんだ」

 大斧を構えていたリーダーに話を聞く。頭を潰すかあ……グロいから見ないようにしていたが、すでにそこら中に潰れたゴキブリの死骸がいくつもある。

 ……弱点がわかったとはいえ、これだけの数のゴキブリの頭を潰すとか精神的に嫌すぎる。

「マサヨシ、大丈夫か!」

「お兄ちゃん!」

 リリスさん達もボス部屋に入ってきてくれたようだ。ゴキブリ……ゴキブリ……とりあえず早くこいつらをなんとかしたい。異世界のゴキブリに効くかはわからないが、とりあえず氷魔法だ!
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