文字の大きさ
大
中
小
6 / 56
第6話 温泉宿の朝食
「ふう……とてもおいしかったです」
「お粗末さま。口にあったようでよかったよ」
それにしてもこの天使さん、見た目は細身なのに結構な量を食べたな。少し多めに作っておいたのだが、すべて完食した。俺よりもポエルのほうが食べていたくらいだ。
「なるほど……確かに温泉宿というものの魅力が少しわかったような気がします。人の身であればなおのこと、この温泉と食事の良さがわかるのでしょうね」
「少しでも温泉宿の魅力が分かってくれたみたいでよかったよ。温泉は従業員も使って大丈夫だから、毎日仕事が終わったあと自由に入っていいからね」
「わかりました」
「それと天使は食事を取らなくてもいいって言ってたけれど、俺もひとりで食べるのなんだか寂しいし料理の感想も聞きたいから、もしポエルが良ければ食事は一緒に……」
「よろしくお願いします」
はええな!
俺まだ最後まで言ってないんだけど。まあ、それほど俺が作った料理をおいしいと思ってくれたのならなによりだ。
「え~と、それじゃあ食事は一緒に食べるってことでいいね。温泉宿の営業が始まったら昼は順番に休憩を取るようになると思うけれど、朝ご飯と晩ご飯は決まった時間で一緒に食べることにしよう」
「わかりました」
「明日は温泉宿の細かい装飾なんかを準備したりしていこう。それじゃあお休み」
「はい、明日もよろしくお願いします」
さて、俺は今からゆっくりと温泉を楽しむとしよう。なにせ温泉の泉質をワンタッチで変えられるのだ。
元の世界では遠くて簡単に行くことができなかったあんな場所やこんな場所にある温泉の泉質を楽しむことができるんだからな、ひゃっほー!
このあと滅茶苦茶温泉に入った。
「やっぱり夢じゃなかったか……」
目が覚めると、そこには見知らぬ天井があった。むしろ俺の部屋よりも綺麗な天井だったのが、なお悔しいところだ。
そういえば昨日はいろんな温泉を楽しみまくっていたら、少しのぼせ気味になってそのままベッドへとダイブしたんだっけな。
ここは温泉宿の客室だ。従業員用の部屋も作る予定だが、営業が始まるまでは客室に泊まってみて足りないものがないかを確認する。
「しかしいい部屋だよな」
クリエイトで作った客室は俺の思った通りの間取りや壁を作ることができるため、この宿のそれぞれの客室はうちの実家の宿よりも大きな部屋にしてある。今俺が寝ている部屋は4~5人が寝られるくらいの広さとなっている。
ポエルに聞いたところ、この世界の冒険者達は複数人のパーティが基本らしいので、ひとつのパーティがこの客室に泊まれることを想定している。
そして温泉宿のベッドや布団はとても大切である。だからこそ寝具に関してはかなり良いものを購入した。そのため昨日はぐっすりと眠ることができたみたいだ。
「よし、今日も頑張りますかね!」
「おはようございます」
「おやよう、ポエル」
朝ご飯を作っていると厨房へポエルがやってきた。今日は朝から最初に見た時と同じメイド服である。浴衣もいいけれどメイド服もいいよね!
意外と温泉宿とマッチしているんだよなあ……まあメイド服も給仕服と言えば給仕服だからな。う~ん、温泉宿の制服とかはどうしよう。
「ちょうど朝ご飯ができたところだよ。運ぶのを手伝ってくれ」
「わかりました」
「これがこの温泉宿で出そうとしている朝食だよ。ご飯が駄目な場合にはパンと合わせた洋食系も考えているから、今度の朝食は洋風のものにしてみるかな」
「この白い穀物がご飯ですよね? 薄い味ですが、噛めば噛むほどほんのり甘くて、他の料理と合わせればとてもおいしいと思いますよ」
「俺の世界のほうでは朝食はご飯派とパン派に分かれるんだ。どちらかが合わない人もいるだろうし、うちの旅館でもどちらか選べるようにしようと思っているんだ」
「なるほど」
最近の宿やホテルの食事はビュッフェスタイルが多かったりもするが、そこまでの規模の宿にする気はないので、朝食は人数分の食事を部屋に持っていく予定だ。
「豪華絢爛というわけではないですが、とてもおいしいですね。それにこちらの世界では見慣れない食材や調理法を使っているので、泊まりに来てくれたお客様も満足してくれると思いますよ」
今日の朝食はうちの温泉宿の和風の朝食そのままだ。ご飯に味噌汁、焼き魚、焼き海苔、卵焼き、煮物、豆腐、おひたし、漬物。ポエルの言う通り、豪華絢爛と言うわけではないが、様々な料理を少量ずつ食べられるようにしてある。
その分手間はかかるから、料理は他の従業員にも手伝ってもらう予定だ。
天使であるポエルはご飯も味噌汁も大丈夫なようだが、この世界の人達の口に合うかは気になるところだな。
「さて、今日はフロントや客室の内装や装飾なんかを進めよう」
「はい」
「よし、最初はこんなもんでいいかな。豪華に見えるようにしながらも、予算的にはこんなところが妥当だとは思うけど」
「ええ、十分だと思いますよ。フロントや客室にある絵画や掛け軸、壺、花瓶などはこちらの世界にはないものなので、こちらの世界のお客様にはとても珍しく美しいものに見えるでしょうね」
ストアで購入した日本独自の芸術品などは当然レプリカのような安い物だ。本物だったら何百万円もするような品物なんてザラにあるからな。
「さて、まだ細かく詰めるところはあるけれど、とりあえず営業ができるくらいの形にはなった。次は従業員を雇いたいと思う」
感想 18
あなたにおすすめの小説
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
※本作は小説家になろうでも投稿しています。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
祖父母に異世界をプレゼントされた俺 実は忘れてましたなんて言えません
鏑右いなだ『おれ、あのせかいにいってみたい』
事故で祖父母を失った事で、天涯孤独の身になってしまった高校生の潤平。
ある日学校から帰ると、家が見慣れない部屋に繋がっていた。
慌てる潤平、そんな彼の背後に亡くなった筈の祖父母が現れると、こう告げられた。
「あんのなはん潤平、おめさに異世界をプレゼントだ」
「えっ、どういう事?」
これは、神様からある使命を渡された主人公が、自由気ままに異世界を生きていくお話。
捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~
荒井竜馬@書籍発売中 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。
それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。
「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」
『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。
しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。
家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。
メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。
努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。
『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました
カムイイムカ(神威異夢華)僕の名前はジーニアス
優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました
お父さんは村の村長みたいな立場みたい
お母さんは病弱で家から出れないほど
二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます
ーーーーー
この作品は大変楽しく書けていましたが
49話で終わりとすることにいたしました
完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい
そんな欲求に屈してしまいましたすみません
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?