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「……もう、疲れた」
その一言を最後に男の生涯は終わった。
戦場しか知らない人生だった。戦って、殺して、傷ついて、血と鉄と泥にまみれた生涯を過ごし、気が付けば心も体も限界だった。
次に目を覚ますと、異世界の貴族ジュダレーム家の三男に生まれ変わっていた。
飯はある、寝床もある、戦う必要もない。
「……最高じゃないか」
今度こそ自堕落に好き勝手に生きてやる。
うまいものを食って、好きなだけ眠って、家族とのんびり過ごす。それだけでよかった。
そのはずだった。
「もう少し、うまいものが食いたいな」
「もう少し、快適に暮らしたいな」
「家族が喜ぶなら……まあ、やるか」
なぜか自堕落な生活を求める度に、また一つ余計なことを始めてしまう。
……おかしい。楽をしたいだけだったのに。
前世の知恵を使うたび、食卓は豊かに、暮らしは便利に、家族の笑顔は増えていく。
その「もっと」は屋敷の外へ、村へと広がっていく。
料理。農園。祭り。誰も見たことのない娯楽まで。
けれど本人だけは最後まで気づかない。自分が頑張っていることに。その付随で誰かを幸せにしていることに。
今日も彼はつぶやく。
「自堕落に生きたい」
これはミットリオという少年が全力で自堕落を目指す、異世界スローライフ物語。
文字数 131,133
最終更新日 2026.09.18
登録日 2026.06.15
旧題
『祖父母に異世界をプレゼントされた俺 実は忘れてましたなんて言えません』
「あんのなはん潤平、おめさに異世界をけるじゃ」
事故で祖父母を亡くし、天涯孤独になった高校生の潤平。
ある日誰もいないはずの家に、死んだはずの祖父母が現れた。
「いせかいにいきたい」
幼い日の何気ない夢を、祖父母はずっと忘れずにいた。
そして死してなお、神様に頼み込みたった一人の孫のために、異世界を遺してくれたのだ。
「おめさにやるの、異世界だじゃ」
「……まじでどういう事?」
天涯孤独の少年が、亡き祖父母の最後の贈り物を抱えて、誰も知らない世界へ一歩を踏み出す。
文字数 484,586
最終更新日 2026.07.30
登録日 2026.05.07
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