15 / 56
第15話 風呂上がりには…
しおりを挟む振り払おうとするがまったく引き離せない。こんなに小さい姿なのになんてパワーだ!
「しかもあのシャンプーやリンスとかいうものもすごかったぞ! ほれ、いつもベタベタしていた妾の髪の毛がサラサラじゃぞ!」
ぐいぐいと頭を押し付けてくるロザリー。というか角の先が尖っていて痛い……
「わかったから1回落ち着こう。髪の毛どころか、角が刺さりそうになっているからな」
「おお、すまん! なにぶん長い間魔族や人と関わらぬ生活を送っていたからのう」
ようやくロザリーが腕を離してくれた。よほどの力だったようで、腕が少し赤くなっている。
20年間ヒキニートを続けてきた弊害というやつだな……まあ対人恐怖症とかよりはまだマシか。
「……やはり駄女神の言う通り、ヒトヨシ様はロリコンのようですね」
「おい、人聞きの悪いことを言うな!」
気が付くと温泉から上がって浴衣姿のポエルが俺のことをゴミを見るような目で見ていた。こちらの世界ではスライムを見てるような目とでもいうべきなのだろうか……
それにしても駄女神のやつは勝手に人のことをロリコン扱いしやがって! あの駄女神は俺の心が読めたんだから、俺の好みのことは知っていたくせに!
そもそもロザリーは239歳だからむしろババ……ごほん、成熟した女性だからロリコンにはならないはずだ。
「ポエルさん、ロリコンとはなんなのだ?」
「ヒトヨシ様のように幼い姿の女性しか愛せない性癖を持った悲しい男性のことです」
「うわあ……」
「ちょい待てや!」
しれっと、変なことをフィアナに吹き込むんじゃない!
「なにっ、そうじゃったのか! しかし、妾たちはまだ出会ったばかり、いくらなんでも結婚はまだ早いのじゃ!」
「落ち着け、ロザリー! 誰も結婚の話なんて1ミリもしていないからな!」
「はっ、しかしこのプロポーズを受ければ、妾はずっとこの温泉に入って働かずに生きていけるのか! それは少し悩むのう……」
そんな理由で悩むなよヒキニート魔王!
というか勝手に俺がプロポーズしたことにしないでくれ……
「さて、それじゃあ晩ご飯にしよう。今晩の食事もこの温泉宿で出す予定だから、率直な感想を頼む」
ポエルからは冷たい視線を送られるわ、フィアナからは不審な視線を送られるわ、ロザリーは暴走しまくるわ、先ほどのカオスな状況をなんとか収めた俺を褒めてほしい。
というか本当に従業員はこの3人で大丈夫なのだろうか。なんだか大きな間違いをしている気がしなくもない……
「ほう、これが食事なのか! なんとも色とりどりで美しいのう! 食べるのがもったいないくらいじゃ!」
「確かに料理だけでなくお皿もとても綺麗です。それに盛り付けもちゃんと考えているみたいですね」
温泉宿で提供する料理は目で見ても楽しめるように、彩り豊かな食材を使っている。もちろん味も大事だが、見た目も非常に大事なのである。
「こっちのほうは昨日食べた鍋かな?」
「おしいね、フィアナ。今日のは鍋と似ているけれど、しゃぶしゃぶという料理なんだ」
今日のメイン料理はしゃぶしゃぶだ。それもただのしゃぶしゃぶではなく、カニしゃぶである。それもカニしゃぶだけではない。そう、今日の料理はカニ尽くしである。
ちょっと豪華すぎる気もするが、今日は従業員が揃ったお祝いだ。それに後ほどこの温泉宿でも目玉となる高級料理のコースとして提供する予定だから、従業員のみんなにも味を見てもらい、感想を教えてもらうとしよう。
「それと今日はお酒を用意したんだけど、3人はお酒を飲める?」
「私は大丈夫です。ヒトヨシ様の国のお酒には少し興味がありますね」
ポエルはオッケーと。俺としては天界のお酒も気になるところだ。
「僕も大丈夫だよ。状態異常耐性もあるから酔うこともないからね。偉い人との食事会ではよく飲まされていたなあ……」
フィアナもオッケーと。相変わらずの社畜っぷりである。
勇者がアルハラを受けるってどういうことだよ……この世界の勇者の立場が弱すぎて泣けてくるんだが……
「妾も大丈夫じゃ。酒など久しぶりじゃな!」
ロザリーもオッケーと。……もしかして引きこもっていた20年ぶりの酒とかになるのかな。
「一応全員大丈夫みたいだな。味についての感想もほしいけれど、無理はしないでくれよ。俺の故郷の酒は少し酒精が強いらしいから、少しずつ飲んでくれ」
天界のほうのお酒の事情については知らないが、こちらの世界のお酒の情報についてはポエルから聞いている。酒自体は存在するが、蒸留酒などの酒精の強い酒はまだ存在しないらしい。
そんな中で、俺の世界の酒精の強い酒なんかを飲ませたら、一発でダウンしてしまってもおかしくない。
「ほう、これがヒトヨシの国の酒か。とても綺麗な色な黄金色をしておるのう」
「僕の国のエールとは色がだいぶ違うよ。うわっ、それにとても冷たいんだね」
「表面にはキメ細かな白い泡がありますね。冷えたお酒は初めて飲みますがおいしいのでしょうか」
「ふっふっふ、これが俺の国の酒である『ビール』だ!」
そう、これこそが風呂上がりの火照った体に最強無敵のキンキンに冷えたビールである!
25
あなたにおすすめの小説
才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!
にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。
そう、ノエールは転生者だったのだ。
そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
無能認定され王宮から追放された俺、実は竜の言葉が話せたのでSSS級最凶竜種に懐かれ、気がついたら【竜人王】になってました。
霞杏檎
ファンタジー
田舎の村から上京して王宮兵士となって1年半……
まだまだ新人だったレイクは自身がスキルもろくに発動できない『無能力者』だと周りから虐げられる日々を送っていた。
そんなある日、『スキルが発動しない無能はこの王宮から出て行け』と自身が働いていたイブニクル王国の王宮から解雇・追放されてしまった。
そして挙げ句の果てには、道中の森でゴブリンに襲われる程の不遇様。
だが、レイクの不運はまだ続く……なんと世界を破壊する力を持つ最強の竜種"破滅古竜"と出会ってしまったのである!!
しかし、絶体絶命の状況下で不意に出た言葉がレイクの運命を大きく変えた。
ーーそれは《竜族語》
レイクが竜族語を話せると知った破滅古竜はレイクと友達になりたいと諭され、友達の印としてレイクに自身の持つ魔力とスキルを与える代わりにレイクの心臓を奪ってしまう。
こうしてレイクは"ヴィルヘリア"と名乗り美少女の姿へと変えた破滅古竜の眷属となったが、与えられた膨大なスキルの量に力を使いこなせずにいた。
それを見たヴィルヘリアは格好がつかないと自身が師匠代わりとなり、旅をしながらレイクを鍛え上げること決める。
一方で、破滅古竜の悪知恵に引っかかったイブニクル王国では国存続の危機が迫り始めていた……
これは"無能"と虐げられた主人公レイクと最強竜種ヴィルヘリアの師弟コンビによる竜種を統べ、レイクが『竜人王』になるまでを描いた物語である。
※30話程で完結します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる