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夢と現実の交わるところ
第四日
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第四日
昨日ごめんとつぶやいて走り去ってしまった彼女が、またここにきてくれるのかと、不安に思いながらも、また同じ時間、同じ場所に俺は来ていた。
しばらく待ってみたが彼女はこない。
もう少し待っていたらくるかもしれない、もうちょっとだけ、そう思いながら俺は腰をおろした。
昨日のことを後悔しても意味のないことだとはわかっているが、どうしても考えてしまう。
昨日キスなんてしようとしなければ、彼女はたち去らなかったのではないか。
そういえば彼女は、前にも苦しそうに胸を押さえていたことがあった。
彼女はなにかの病気なのだろうか?
次逢えたときにはそのことを、聞いてみよう。
そういえば、今日も同じ夢を見た。
なんでこうも、毎日毎日同じ夢を見続けるのかわからない。
彼女のいうとおり、この夢になにか大切な意味があるのか?
考えてみても、さっぱりわからない。
そういうことをもんもんと考え続け、ふと腕時計を見ると、ここに来てからもう三十分がたっていた。
今日彼女はこないのかもしれない。
あきらめて家に帰ろうとたち上がり、ぱんぱんと尻の砂を払って振り返ると、なんと俺から離れたところに彼女がたっていて目があった。
彼女は、少しあたふたとどうしたものかといった風情で動くと、再び俺の顔を見て、てれたようにほほえみ俺の元に走り寄って来た。
「漱くんがここにくる姿見て、ずっと後ろにいたんだけど、昨日あんな別れかたしちゃったし、なんて声かけていったらいいのかわかんなくて……」
そういいながらうつむく彼女を、たまらなく愛しいと思い、抱きしめたくなったがぐっと我慢した。
「そんなことなんにも考えず、普通におはようとでもいってくれたらよかったんだよ。俺、昨日のこと、全然気にしてないし」
本当はやっぱり、少しは気にしている。避けられたんじゃないかって。でも、俺の言葉に笑顔でうなずいた彼女を見たら、どうでもよくなってしまった。
しかし、やっぱり病気のことは気になる。
「昨日とその前にも一回、苦しそうにしていたけど、なにか病気を患っているのか?」
そう唐突に聞いた俺に、彼女は一瞬焦ったような表情を浮かべたが、すぐに笑顔に戻るとこういった。
「この前もいったけど、本当に心配するようなことじゃないんだって」
「でも、苦しくなるのにはなにかわけがあるはずだろう?」
「それはそうだけど……。本当になんでもないんだって」
それから、俺がどういうふうに聞いても、彼女は、なにも心配はいらないの一点張りだった。
そんな不毛なやりとりを続け時間がただ過ぎていった。
やりとりに夢中になりすぎて気がついていなかったが、ふと見ると、彼女は胸を押さえていた。
俺が言葉をつまらせていると、彼女の荒い息づかいが聞こえた。
「だ、大丈夫か?」
そう俺がいったのと、彼女が砂浜に膝を着き座りこんだのは、ほぼ同時だった。
俺もあわてて膝を着いて、彼女の肩を支えた。
「だ、大丈夫よ。心配しないで」
荒い息で苦しそうにそういう彼女の言葉に、説得力なんていうものはなかった。
「全然大丈夫そうになんて見えない。無理するなよ。家まで送るから、道教えて」
そういった俺に、彼女は首を振ると、
「私は本当に大丈夫だから、漱くんは家に帰って」
なんていった。
もちろん帰るつもりなんてまったくなかった俺は、とりあえず彼女の近くにいるしかなかった。
どれだけ聞いても彼女は家を教えるのを拒み、俺にただ帰ってと懇願した。
そんなに俺は嫌われているのか?
場違いなことを考える俺自身を、なに考えてんだと心の中でおこっていると、胸に彼女がもたれかかってきた。
さっきよりも彼女の息があらくなっている。
「おい、ことね! 大丈夫か!?」
なかば叫ぶようにいった俺に、彼女は小さな声でなにかいっている。
俺は彼女の口に耳を近づける。
「水……」
「水が欲しいのか? ちょっと、まってろよ」
俺は近くに自動販売機があったことを思い出し、買いにいこうとたち上がろうとした。すると、彼女は俺の服を引っ張り、首を横に振る。
彼女がまたかすかに口をひらいたが、声が聞こえないので、また俺は彼女の口に耳を近づけた。
「海へ……海へ連れてって……」
そう聞こえたが、どういうことなのかいまいちわからない。
黙っていると彼女がまた小さい声でいった。
「私を……海の中に……」
なんで海の中に? なんて思いながらも、苦しそうな彼女の助けに少しでもなるのならと、俺は彼女を抱き上げて、海の中に連れていった。
ざぶざぶと波に向かって進んでいき、抱えている彼女がいくらか海につかった。
彼女の顔を見ると、苦しげな表情は消え去り、安らかな顔になっていた。それを見て俺は肩から力が抜け、彼女を落としそうになってしまった。
俺はあわてて彼女を抱え直して、ことねと呼びかけた。すると、彼女は小さく反応した。
まだ、呼びかけにちゃんと答えられるほど回復していないのか? と思い、俺は、なに気なくあたりを見回した。
ふと、彼女の足があるはずのところに大きな魚のヒレがあることに気づく。
「え!?」
驚きの声を上げてしまった俺に驚いて、彼女が目を開く。
固まってしまっている俺の腕から彼女は海にすべりこみ、俺を一瞬見つめると、沖に向かって泳いでいってしまった。
彼女の足のヒレについて混乱している頭の片隅で、またおいてかれてしまったと、ぼんやりと考えている自分がいた。
家に帰ってからも混乱はまだ続いていた。
しかしそれは、彼女の足がヒレに変わったからもたらされたものではなく、彼女は人魚だったのかと、あれからすぐに受けいれてしまった自分に対してのものだった。
元々、臨機応変に何事も慌てず、受けいれていくのに、時間がかかるほうではないが、あまりにも非現実的なこのことに関して、あまりにも受けいれるのが早すぎるんじゃないかと焦る。
でも、家で座って考えていたって、なにもわからないし、混乱していくだけだと思い、今日はたまってしまっている宿題をちょっとでも減らすことに専念して、後はさっさと寝てしまうことにした。
また明日彼女に逢いにいってみよう。
昨日ごめんとつぶやいて走り去ってしまった彼女が、またここにきてくれるのかと、不安に思いながらも、また同じ時間、同じ場所に俺は来ていた。
しばらく待ってみたが彼女はこない。
もう少し待っていたらくるかもしれない、もうちょっとだけ、そう思いながら俺は腰をおろした。
昨日のことを後悔しても意味のないことだとはわかっているが、どうしても考えてしまう。
昨日キスなんてしようとしなければ、彼女はたち去らなかったのではないか。
そういえば彼女は、前にも苦しそうに胸を押さえていたことがあった。
彼女はなにかの病気なのだろうか?
次逢えたときにはそのことを、聞いてみよう。
そういえば、今日も同じ夢を見た。
なんでこうも、毎日毎日同じ夢を見続けるのかわからない。
彼女のいうとおり、この夢になにか大切な意味があるのか?
考えてみても、さっぱりわからない。
そういうことをもんもんと考え続け、ふと腕時計を見ると、ここに来てからもう三十分がたっていた。
今日彼女はこないのかもしれない。
あきらめて家に帰ろうとたち上がり、ぱんぱんと尻の砂を払って振り返ると、なんと俺から離れたところに彼女がたっていて目があった。
彼女は、少しあたふたとどうしたものかといった風情で動くと、再び俺の顔を見て、てれたようにほほえみ俺の元に走り寄って来た。
「漱くんがここにくる姿見て、ずっと後ろにいたんだけど、昨日あんな別れかたしちゃったし、なんて声かけていったらいいのかわかんなくて……」
そういいながらうつむく彼女を、たまらなく愛しいと思い、抱きしめたくなったがぐっと我慢した。
「そんなことなんにも考えず、普通におはようとでもいってくれたらよかったんだよ。俺、昨日のこと、全然気にしてないし」
本当はやっぱり、少しは気にしている。避けられたんじゃないかって。でも、俺の言葉に笑顔でうなずいた彼女を見たら、どうでもよくなってしまった。
しかし、やっぱり病気のことは気になる。
「昨日とその前にも一回、苦しそうにしていたけど、なにか病気を患っているのか?」
そう唐突に聞いた俺に、彼女は一瞬焦ったような表情を浮かべたが、すぐに笑顔に戻るとこういった。
「この前もいったけど、本当に心配するようなことじゃないんだって」
「でも、苦しくなるのにはなにかわけがあるはずだろう?」
「それはそうだけど……。本当になんでもないんだって」
それから、俺がどういうふうに聞いても、彼女は、なにも心配はいらないの一点張りだった。
そんな不毛なやりとりを続け時間がただ過ぎていった。
やりとりに夢中になりすぎて気がついていなかったが、ふと見ると、彼女は胸を押さえていた。
俺が言葉をつまらせていると、彼女の荒い息づかいが聞こえた。
「だ、大丈夫か?」
そう俺がいったのと、彼女が砂浜に膝を着き座りこんだのは、ほぼ同時だった。
俺もあわてて膝を着いて、彼女の肩を支えた。
「だ、大丈夫よ。心配しないで」
荒い息で苦しそうにそういう彼女の言葉に、説得力なんていうものはなかった。
「全然大丈夫そうになんて見えない。無理するなよ。家まで送るから、道教えて」
そういった俺に、彼女は首を振ると、
「私は本当に大丈夫だから、漱くんは家に帰って」
なんていった。
もちろん帰るつもりなんてまったくなかった俺は、とりあえず彼女の近くにいるしかなかった。
どれだけ聞いても彼女は家を教えるのを拒み、俺にただ帰ってと懇願した。
そんなに俺は嫌われているのか?
場違いなことを考える俺自身を、なに考えてんだと心の中でおこっていると、胸に彼女がもたれかかってきた。
さっきよりも彼女の息があらくなっている。
「おい、ことね! 大丈夫か!?」
なかば叫ぶようにいった俺に、彼女は小さな声でなにかいっている。
俺は彼女の口に耳を近づける。
「水……」
「水が欲しいのか? ちょっと、まってろよ」
俺は近くに自動販売機があったことを思い出し、買いにいこうとたち上がろうとした。すると、彼女は俺の服を引っ張り、首を横に振る。
彼女がまたかすかに口をひらいたが、声が聞こえないので、また俺は彼女の口に耳を近づけた。
「海へ……海へ連れてって……」
そう聞こえたが、どういうことなのかいまいちわからない。
黙っていると彼女がまた小さい声でいった。
「私を……海の中に……」
なんで海の中に? なんて思いながらも、苦しそうな彼女の助けに少しでもなるのならと、俺は彼女を抱き上げて、海の中に連れていった。
ざぶざぶと波に向かって進んでいき、抱えている彼女がいくらか海につかった。
彼女の顔を見ると、苦しげな表情は消え去り、安らかな顔になっていた。それを見て俺は肩から力が抜け、彼女を落としそうになってしまった。
俺はあわてて彼女を抱え直して、ことねと呼びかけた。すると、彼女は小さく反応した。
まだ、呼びかけにちゃんと答えられるほど回復していないのか? と思い、俺は、なに気なくあたりを見回した。
ふと、彼女の足があるはずのところに大きな魚のヒレがあることに気づく。
「え!?」
驚きの声を上げてしまった俺に驚いて、彼女が目を開く。
固まってしまっている俺の腕から彼女は海にすべりこみ、俺を一瞬見つめると、沖に向かって泳いでいってしまった。
彼女の足のヒレについて混乱している頭の片隅で、またおいてかれてしまったと、ぼんやりと考えている自分がいた。
家に帰ってからも混乱はまだ続いていた。
しかしそれは、彼女の足がヒレに変わったからもたらされたものではなく、彼女は人魚だったのかと、あれからすぐに受けいれてしまった自分に対してのものだった。
元々、臨機応変に何事も慌てず、受けいれていくのに、時間がかかるほうではないが、あまりにも非現実的なこのことに関して、あまりにも受けいれるのが早すぎるんじゃないかと焦る。
でも、家で座って考えていたって、なにもわからないし、混乱していくだけだと思い、今日はたまってしまっている宿題をちょっとでも減らすことに専念して、後はさっさと寝てしまうことにした。
また明日彼女に逢いにいってみよう。
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