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抱きしめられたい、キスしたい
(攻の潮吹きがあります。)
散々尿道を責められたあの日、菊池が意識を取り戻したのは30分ほど経ってからだった。シーツは取り替えられて、身体も綺麗に拭かれている。着ているシャツも新しいものだ。渡瀬が全てやってくれたのだろう。
「イオ……?」
部屋を見回してみても、彼はいなかった。洗濯をしに行ってくれたのかもしれない。
まだかき回されていた胎の奥がじくじくと熱を持っている。腹筋に力を入れるだけでぶり返してきそうで、菊池は何度か深呼吸をした。
菊池はもう一度渡瀬のベッドに横になり、掛け布団を鼻まで被る。鼻腔いっぱいに彼の匂いが広がって、またじぃんと腰に響いた。
すっかり渡瀬に与えられる快感の虜になっている。もう、匂いだけで身体が反応するほどに。
この関係は何なのだろうと、最近たまに考える。前までは幼馴染で、クラスメイトで、ルームメイトだった。でも今はそれだけじゃない。快感と好奇心を満たすために身体に触れてもらっている、この関係は。
——このままでいいのだろうか。
こんな関係を続けていていいのだろうか。否、そうではなく。
(俺がイオとどうなりたいか、だよな……)
菊池はぎゅっと拳を握り、大きく息を吐いた。
渡瀬に触れられるのは嫌じゃない。
少し前、夜中に後孔がおかしくなって勝手に身体が絶頂し始めた時、訳が分からなくてパニックになっていたのを、渡瀬が一晩中後ろから抱きしめてくれていたことがある。性的な触れ合いじゃないそれも、菊池にはとても心地よかった。
そもそも男の渡瀬に触れてほしいと言い出したのは自分だ。思えば、吉澤や高嶋に頼む選択肢などなかった。それは、ただ渡瀬が幼馴染だからという理由だったのだろうか。これまで男と触れ合うことなど想像すらしていなかったのに。
以前、渡瀬のものを口に含み、精液を飲んだ時、嫌悪感どころか達成感、いや、快感さえ感じた。他の男に同じことができるかと考えれば、絶対に無理だと断言できる。
脳裏に浮かぶ渡瀬の顔。少し軽薄そうに見えるが、彼はいつも菊池を優先してくれた。優しくて、頼りになる。でもどこか周囲と一線引いているような感じもする。
渡瀬とはこれからもずっと一緒にいたい。高校を卒業しても、大人になっても。渡瀬の一番は、自分でありたい。他の誰にも、渡瀬を渡したくない。
結局、なんとなく認めたくなくて、意地を張っていただけだ。
(俺は、最初からずっと、イオが、好き……だったんだ)
それは胸にストンと落ちてきた。しかし認めた途端、全身が熱を帯びる。指先までじんじんしていた。今更ながら、彼に身体の中をいじられて、痴態を晒して、よがり狂ってしまったのが恥ずかしくてたまらない。
ひとしきり羞恥心と闘った後、ふと、渡瀬の気持ちはどうなのだろうと考えた。抱きしめてくれた腕の温もり、的確に弱いところを探る指の動き、たまに菊池に向ける瞳の熱さ。
菊池はぶるりと身体を震わせた。渡瀬も自分を憎からず思ってくれているだろうという、大きすぎる期待に。
(イオ……はやく、帰ってこいよ……)
欲は発散し尽くしたと思っていたが、このままでは燻った身体が再び火を灯しそうだ。渡瀬の布団に包まり、枕に顔を押し付ける。シビビビ、と、全身に電流が走った気がした。
「ただいまー」
「……!」
待ち望んだ声。起きて迎えに行きたかったが、残念ながら下半身は使い物になりそうになかった。
「遅くなった。洗濯機結構混んでて……って、ヒロ?!」
「あ、おかえり……」
「めっちゃ顔赤いぞ!やりすぎたか?!いや、やりすぎたのはわかってるけど、熱ある?!」
手に持ったシーツを床に投げて、渡瀬は菊池の元に飛んできた。布団から出した顔が随分と朱に染まっていたらしい。自分のことでこんなにも慌てふためいている姿が、なんだかたまらなかった。
「熱は……ないか?きつい?」
「んん」
両手で頬を包まれて、まじまじと顔を見られる。恥ずかしくてどこを見ていいのかわからず、うろうろと視線を泳がせた後耐えられずに瞼を閉じた。
こくり、と、渡瀬が息を呑む音がした。
「や、やっぱ疲れてるよな……そのまま寝てていいぞ」
「イオ」
菊池が、慌てて立ち上がった渡瀬の腕を掴む。もう、期待は確信に変わっていた。
「イオ、俺、イオが好き……なんだけど」
「あ、え……?」
「そーゆー、好きみたいなんだけど」
視線が交わる。渡瀬の目が見開かれ、顔の下側からどんどん赤く染まっていく。何か言われる前に、菊池が耐えきれず吹き出した。
「あははは!イオも俺のこと好きだよな?」
「なっ、おま、冗談か?!タチ悪ぃぞ!」
我に帰った渡瀬が、少し涙を浮かべて菊池を睨む。思いもよらぬ誤解に、握った腕に力を込めた。
「冗談じゃねぇし。今のは、イオの顔が先に返事くれたから嬉しかっただけで」
「ヒロ、何、急に……!?どした?!」
「いや、マジでさっき急に気づいちゃって」
「ま、じ、なのか……?」
おずおずと渡瀬が菊池の手を取り、躊躇いながらもそっと握る。それを強く握り返し、大きく頷いた。
「そういう、付き合いたいとか、キスしてぇとかの、好き?」
「そーそー」
「マジ……?うわ……」
ぎゅうっと抱きしめられる。そうだ、これが特に好きなんだ。全身を渡瀬のぬくもりに包まれるのが心地よくてたまらない。背中に腕を回し、胸に顔を埋める。そこは、ドコドコとお祭り騒ぎのような心音が響いていた。
「はは、イオの心臓壊れそう」
「あんま聞くなよ」
渡瀬が菊池の髪に顔をすりすりと擦り付けてくる。
「で、イオは?」
「なに?」
「イオもちゃんと言えよ」
菊池が顔を上げると、そこには渡瀬の困ったような笑顔があった。
「俺は……ずーーーっと前からヒロが好き」
「……やっぱりな」
「え、気づいてたのか?」
「んーん。さっき色々考えてた時に、イオもそうかなーって思っただけ」
ふっと笑うと、渡瀬が真剣な顔で見つめてくる。どちらからともなく、顔が近づき、唇が重なった。
「すげ……ドキドキする」
「な」
これまで散々変態チックなプレイをしてきたというのに、二人は顔を真っ赤にして目を逸らす。それでもすぐに相手の唇に視線が引き寄せられて、何度も何度も口付けをした。
緩んだ隙間に渡瀬が舌を差し込むと、決壊したように一気にキスが深くなる。一緒にベッドに倒れ込んで、夢中で吸い、絡めた。流れ込んでくる唾液が甘い。
「イオ……ん、好き……」
「やっべ、たまんね……っ」
キスの合間に渡瀬の口から荒い息が漏れる。
「イオは?イオも言え、よぉ」
「んん、ヒロ、好き」
「は、っあ……」
歓喜からか、欲情からか、菊池の目に涙が浮かんだ。うるうるとこぼれ落ちそうな瞳を見て、渡瀬の眉間に皺が寄る。ぐうっと喉の奥から呻き声がした。
「はーー……やべ、一回抜いていい?」
「え?」
「勃ちすぎてちんこ痛てぇの」
カチャカチャとベルトを緩める音が聞こえ、覗き込むと渡瀬の大きな手が彼自身の陰茎を包んで上下していた。あふれた我慢汁で亀頭がぬらぬらと光っている。
「イ、オ……」
「は、は、は……っ」
目の前で渡瀬が悩ましげに眉を寄せ、熱い息を吐いた。既に限界が近いらしくぴゅっと何度か細く先走りが飛び散る。忙しげに上下する胸が視界に入り、菊池はそっと手を伸ばした。薄く筋肉のついた胸板を撫で、鎖骨に指を滑らせる。小さいがふっくらと尖った胸の突起を擽れば、腹筋がびくびくと脈打った。
「お、い、バカ、ヒロ……ッ!」
「イオ、イけよ」
「ゔ、っ?!」
ちゅ、ちゅ、と首元に吸い付き、ぺろりと舐める。今までずっと渡瀬にやられっぱなしだったが、いざこうして責めに転じてみると、思った以上に楽しい。
片手で突起を捏ね鎖骨の溝を舐めながら、そっと剥き出しの亀頭に触れる。2本の指で上下から挟んで軽く擦ると、渡瀬はぐっと息を詰めた。どろり、と先端から白濁混じりの先走りが漏れる。
「ふっ、ぐ!やばい、ヒロ、もう……っ」
「ん」
渡瀬の陰茎が一際大きくなり、ビンッと固くなる。手のひら全体で膨らみ切った亀頭を優しく包み、握り込んだ。
「イ、く……っ、ゔ!」
瞬間、手の中に熱いものがあふれる。そこはまるで生き物のように息づき震えながら、何度かに分けて大量の精液を吐き出した。全て出し切れるように撫で続けてやりながら、渡瀬の唇を塞ぐ。
「ふっ、はあっ、ヒロ、んんッ」
「イオ、ん、ん」
何も出なくなっても、なんとなく手の離すのが名残惜しかった。そのままくるくると指を動かし続けていると、カタカタとベッドが音を立て始める。膝をついている渡瀬の両腿がぶるぶると震えているのだ。陰茎を握っていた手は菊池の背中に回され、ぎゅっと抱きしめられる。渡瀬が肩口に顔を埋めて苦しげに呻いた。
「イオ、出した後触られんの気持ちいだろ?」
「きもち、っけど、つら、い……!」
「はは、わかるわかる」
射精後の敏感な亀頭を触られる辛さは、菊池も知っている。逃げたいのに、勝手に腰が前へ前へと突き出て愛撫を強請るのだ。今もきっとじたばたと暴れて泣き喚きたいだろう。
「ゔーーー!ッゔーーー!」
身体の震えが大きくなり、渡瀬の呻き声が止まらなくなった。多分、そろそろだ。菊池は少しだけ亀頭を撫で回す手を早める。絞るように扱き、くるくると円を描くように磨く。あくまでも手つきは優しく、でも容赦なく。
渡瀬が大きく身体を震わせて腰を引いた。同時に肩口を思い切り噛まれる。
「ッゔーーーーー!ぐ、うッ!!」
「痛って!」
「ゔゔ!ん゙!ん゙ぐ!」
渡瀬が、くんっ、くんっと腰を突き上げる度に、手の中でばしゃばしゃと液体がしぶく。それは先ほどとは違ってさらさらで、透明だ。
「ゔッ、ゔ!ゔ!」
「すげ、イオもめっちゃ噴くじゃん。気持ちいよな、大丈夫大丈夫」
「ゔ~~~~~!」
潮吹きがおさまっても、渡瀬は肩口を甘噛みしていて顔を上げようとしない。その不服そうな声は、有り余るほどの羞恥を含んでいた。
「イオ、キスしてぇんだけど」
「ゔ……」
そろそろと顔を上げた渡瀬は、案の定首まで真っ赤だった。まじまじと見ようとしたのに、すぐに唇を奪われる。性急なディープキスが彼の焦りを表していて、菊池は殺しきれなかった笑い声を零した。
「クソ……恥ず」
「潮吹いてるイオ、可愛かったー」
「うっせ、もっかいキスすんぞコラ」
「どーぞ」
「……ぅ、クソ」
下から覗き込んで笑うと、噛み付くようにキスをされた。ベッドに敷いていたタオルで手を拭き、渡瀬の背中に腕を回す。やっぱり落ち着く。ドキドキもするけれど。
「イオ、好き。付き合お」
「めっちゃ普通に言うじゃん……ずっと言えなかった俺が恥ずくなるだろ」
「俺はイオみたいに我慢強くねぇもん!」
にっこりと笑うと渡瀬が手で自分の顔を覆う。
「ね、付き合お?な?」
「……付き、合う」
「これからもよろしくな?」
「ん、よろ、しく」
またぎゅうっと強く抱きしめられて、その照れ隠しの可愛さに菊池も強く抱きしめ返した。
また汚れてしまったバスタオルを片付けて、渡瀬のベッドに二人で横になる。向かい合って抱き合うと、トクトクと鼓動が重なった。
「なぁ、吉澤らに報告する?」
「……あー」
じゃれるように互いの顔や身体にキスをしながら、見つめ合う。
「まー、隠しててもいつかバレそうだしな……」
「ん。じゃあ明日言お」
「おう。でも他のやつにはバレないようにしねぇと。同室解消されたら嫌だからな」
渡瀬の言葉に菊池はハッと我に帰った。確かにそうだ。性欲旺盛な男子高校生が恋人同士で同室など、学校側が許すはずがない。
「気をつける」
「ん」
じゅっと肩口を吸われた。そこには渡瀬の歯型が刻まれている。しつこく舐めてくる渡瀬に、菊池の胎がぎゅうっと引き攣った。胎から全身にぞわぞわと電流が走る。
「ぁ……」
「ヒロ?」
「は、は……ぁ゙、イオ、やばい、かも……」
前にも感じたことのある波だ。夜中、勝手に絶頂し始めて止まらなくなった、あの時と同じ。後孔が勝手に激しく収縮し、昼の間に捏ね回された前立腺が痙攣していた。
「あっ、あっ、やばい、かもッ!イオ、イオ、あれ、来そう……!」
「ん、大丈夫。抱きしめとくから」
「ああっ、ああっ、やばい……っ、やばいやばい、あ゙あ゙、ん、来る、ッ!イオっ!ゔあああん!」
渡瀬の腕の中で身体が暴れる。ガクガクと腰が動き、目の前が白んだ。絶頂に後孔が引き締まり、すぐにまた次の絶頂がやってくる。止めようもない、終わらない快感。
「ゔーーーッ!あっあっあっあっ」
「可愛い……ヒロ、可愛い」
「やっ、やっ、イオ、とまんねっ、あ゙ーー!イッてる、イッてる、イクイク、あ゙あ゙ッ、イ゙ぐ!ゔーー!」
渡瀬に抱きしめられて、頭を撫でられて、キスをされる。それがまた菊池を高みへと促した。前よりも絶頂の間隔が狭い。気持ちいいのに、辛い。菊池は助けを求めるように渡瀬を見つめ、必死に舌を絡めた。
渡瀬の片方の手が、菊池の引き攣る下腹部を優しく押さえつける。もう片方の手は尻に触れ、ヒクヒクと震える後孔の表面を擽った。
「ひっ、ぐ……!」
「すげ。もぐもぐしてる」
「ゔ、ゔーーー!ゔ、ぐう!」
「あー、もう可愛すぎ」
はあ、と熱い息を吐いて、渡瀬はゆっくりと指を沈めた。後孔は待ち侘びていたとばかりに歓喜に震え、指を必死に食い締めて奥へ奥へと誘う。
「ん゙ぐッ!ゔ、あ゙ーーーっ!」
「すっげ、うねってしゃぶってくる」
「あ゙ーーーッ!あ゙あ゙あ゙、んん!!」
「ん、ここだよな。ここ気持ちいいな」
「ん゙ーーー!ん゙ーーー!!」
菊池は必死に渡瀬の唇を食み、嬌声を殺す。その間も前立腺を優しく撫で回され、腹を押し込まれる。前後から挟み撃ちにされたそこが何度も弾けた。
両脚が藻搔くようにベッドを蹴る。逃げようと伸び上がると、渡瀬が体重をかけて押さえつけてきた。触られなくても達してしまうのに、的確に一点を責められ続け、菊池は狂うしかない。もう、早く意識を手放したかった。
「ん゙ーーーッ!ゔ、ぐぅ!ふ、ん゙ん゙ーー!」
「大翔、好きだ、好き……」
意識を失うまでの永遠とも思える時間、渡瀬は菊池に愛を囁き、全身にキスをしてくれた。
翌朝。目覚めた菊池が自分の身体を見下ろすと、至る所にキスマークが散っている。
「イオ!バカ、風呂行けねぇじゃねえか!」
「ヒロの裸、誰にも見せたくねぇし」
「そんなこと言ってる場合か!今後一切キスマはナシ!!」
「えーー」
不服そうな渡瀬のおでこにデコピンを一発。そして首元にじゅうっと吸い付き、仕返しとばかりに濃く跡を付けた。
「よし、これでお前も風呂行けねぇな」
「ヒロ、誘ってる……?」
「なんでだ!!」
わちゃわちゃと戯れながら身支度をしていく。こうして、二人の恋人としての生活が新しく始まったのだった。
終わり。
散々尿道を責められたあの日、菊池が意識を取り戻したのは30分ほど経ってからだった。シーツは取り替えられて、身体も綺麗に拭かれている。着ているシャツも新しいものだ。渡瀬が全てやってくれたのだろう。
「イオ……?」
部屋を見回してみても、彼はいなかった。洗濯をしに行ってくれたのかもしれない。
まだかき回されていた胎の奥がじくじくと熱を持っている。腹筋に力を入れるだけでぶり返してきそうで、菊池は何度か深呼吸をした。
菊池はもう一度渡瀬のベッドに横になり、掛け布団を鼻まで被る。鼻腔いっぱいに彼の匂いが広がって、またじぃんと腰に響いた。
すっかり渡瀬に与えられる快感の虜になっている。もう、匂いだけで身体が反応するほどに。
この関係は何なのだろうと、最近たまに考える。前までは幼馴染で、クラスメイトで、ルームメイトだった。でも今はそれだけじゃない。快感と好奇心を満たすために身体に触れてもらっている、この関係は。
——このままでいいのだろうか。
こんな関係を続けていていいのだろうか。否、そうではなく。
(俺がイオとどうなりたいか、だよな……)
菊池はぎゅっと拳を握り、大きく息を吐いた。
渡瀬に触れられるのは嫌じゃない。
少し前、夜中に後孔がおかしくなって勝手に身体が絶頂し始めた時、訳が分からなくてパニックになっていたのを、渡瀬が一晩中後ろから抱きしめてくれていたことがある。性的な触れ合いじゃないそれも、菊池にはとても心地よかった。
そもそも男の渡瀬に触れてほしいと言い出したのは自分だ。思えば、吉澤や高嶋に頼む選択肢などなかった。それは、ただ渡瀬が幼馴染だからという理由だったのだろうか。これまで男と触れ合うことなど想像すらしていなかったのに。
以前、渡瀬のものを口に含み、精液を飲んだ時、嫌悪感どころか達成感、いや、快感さえ感じた。他の男に同じことができるかと考えれば、絶対に無理だと断言できる。
脳裏に浮かぶ渡瀬の顔。少し軽薄そうに見えるが、彼はいつも菊池を優先してくれた。優しくて、頼りになる。でもどこか周囲と一線引いているような感じもする。
渡瀬とはこれからもずっと一緒にいたい。高校を卒業しても、大人になっても。渡瀬の一番は、自分でありたい。他の誰にも、渡瀬を渡したくない。
結局、なんとなく認めたくなくて、意地を張っていただけだ。
(俺は、最初からずっと、イオが、好き……だったんだ)
それは胸にストンと落ちてきた。しかし認めた途端、全身が熱を帯びる。指先までじんじんしていた。今更ながら、彼に身体の中をいじられて、痴態を晒して、よがり狂ってしまったのが恥ずかしくてたまらない。
ひとしきり羞恥心と闘った後、ふと、渡瀬の気持ちはどうなのだろうと考えた。抱きしめてくれた腕の温もり、的確に弱いところを探る指の動き、たまに菊池に向ける瞳の熱さ。
菊池はぶるりと身体を震わせた。渡瀬も自分を憎からず思ってくれているだろうという、大きすぎる期待に。
(イオ……はやく、帰ってこいよ……)
欲は発散し尽くしたと思っていたが、このままでは燻った身体が再び火を灯しそうだ。渡瀬の布団に包まり、枕に顔を押し付ける。シビビビ、と、全身に電流が走った気がした。
「ただいまー」
「……!」
待ち望んだ声。起きて迎えに行きたかったが、残念ながら下半身は使い物になりそうになかった。
「遅くなった。洗濯機結構混んでて……って、ヒロ?!」
「あ、おかえり……」
「めっちゃ顔赤いぞ!やりすぎたか?!いや、やりすぎたのはわかってるけど、熱ある?!」
手に持ったシーツを床に投げて、渡瀬は菊池の元に飛んできた。布団から出した顔が随分と朱に染まっていたらしい。自分のことでこんなにも慌てふためいている姿が、なんだかたまらなかった。
「熱は……ないか?きつい?」
「んん」
両手で頬を包まれて、まじまじと顔を見られる。恥ずかしくてどこを見ていいのかわからず、うろうろと視線を泳がせた後耐えられずに瞼を閉じた。
こくり、と、渡瀬が息を呑む音がした。
「や、やっぱ疲れてるよな……そのまま寝てていいぞ」
「イオ」
菊池が、慌てて立ち上がった渡瀬の腕を掴む。もう、期待は確信に変わっていた。
「イオ、俺、イオが好き……なんだけど」
「あ、え……?」
「そーゆー、好きみたいなんだけど」
視線が交わる。渡瀬の目が見開かれ、顔の下側からどんどん赤く染まっていく。何か言われる前に、菊池が耐えきれず吹き出した。
「あははは!イオも俺のこと好きだよな?」
「なっ、おま、冗談か?!タチ悪ぃぞ!」
我に帰った渡瀬が、少し涙を浮かべて菊池を睨む。思いもよらぬ誤解に、握った腕に力を込めた。
「冗談じゃねぇし。今のは、イオの顔が先に返事くれたから嬉しかっただけで」
「ヒロ、何、急に……!?どした?!」
「いや、マジでさっき急に気づいちゃって」
「ま、じ、なのか……?」
おずおずと渡瀬が菊池の手を取り、躊躇いながらもそっと握る。それを強く握り返し、大きく頷いた。
「そういう、付き合いたいとか、キスしてぇとかの、好き?」
「そーそー」
「マジ……?うわ……」
ぎゅうっと抱きしめられる。そうだ、これが特に好きなんだ。全身を渡瀬のぬくもりに包まれるのが心地よくてたまらない。背中に腕を回し、胸に顔を埋める。そこは、ドコドコとお祭り騒ぎのような心音が響いていた。
「はは、イオの心臓壊れそう」
「あんま聞くなよ」
渡瀬が菊池の髪に顔をすりすりと擦り付けてくる。
「で、イオは?」
「なに?」
「イオもちゃんと言えよ」
菊池が顔を上げると、そこには渡瀬の困ったような笑顔があった。
「俺は……ずーーーっと前からヒロが好き」
「……やっぱりな」
「え、気づいてたのか?」
「んーん。さっき色々考えてた時に、イオもそうかなーって思っただけ」
ふっと笑うと、渡瀬が真剣な顔で見つめてくる。どちらからともなく、顔が近づき、唇が重なった。
「すげ……ドキドキする」
「な」
これまで散々変態チックなプレイをしてきたというのに、二人は顔を真っ赤にして目を逸らす。それでもすぐに相手の唇に視線が引き寄せられて、何度も何度も口付けをした。
緩んだ隙間に渡瀬が舌を差し込むと、決壊したように一気にキスが深くなる。一緒にベッドに倒れ込んで、夢中で吸い、絡めた。流れ込んでくる唾液が甘い。
「イオ……ん、好き……」
「やっべ、たまんね……っ」
キスの合間に渡瀬の口から荒い息が漏れる。
「イオは?イオも言え、よぉ」
「んん、ヒロ、好き」
「は、っあ……」
歓喜からか、欲情からか、菊池の目に涙が浮かんだ。うるうるとこぼれ落ちそうな瞳を見て、渡瀬の眉間に皺が寄る。ぐうっと喉の奥から呻き声がした。
「はーー……やべ、一回抜いていい?」
「え?」
「勃ちすぎてちんこ痛てぇの」
カチャカチャとベルトを緩める音が聞こえ、覗き込むと渡瀬の大きな手が彼自身の陰茎を包んで上下していた。あふれた我慢汁で亀頭がぬらぬらと光っている。
「イ、オ……」
「は、は、は……っ」
目の前で渡瀬が悩ましげに眉を寄せ、熱い息を吐いた。既に限界が近いらしくぴゅっと何度か細く先走りが飛び散る。忙しげに上下する胸が視界に入り、菊池はそっと手を伸ばした。薄く筋肉のついた胸板を撫で、鎖骨に指を滑らせる。小さいがふっくらと尖った胸の突起を擽れば、腹筋がびくびくと脈打った。
「お、い、バカ、ヒロ……ッ!」
「イオ、イけよ」
「ゔ、っ?!」
ちゅ、ちゅ、と首元に吸い付き、ぺろりと舐める。今までずっと渡瀬にやられっぱなしだったが、いざこうして責めに転じてみると、思った以上に楽しい。
片手で突起を捏ね鎖骨の溝を舐めながら、そっと剥き出しの亀頭に触れる。2本の指で上下から挟んで軽く擦ると、渡瀬はぐっと息を詰めた。どろり、と先端から白濁混じりの先走りが漏れる。
「ふっ、ぐ!やばい、ヒロ、もう……っ」
「ん」
渡瀬の陰茎が一際大きくなり、ビンッと固くなる。手のひら全体で膨らみ切った亀頭を優しく包み、握り込んだ。
「イ、く……っ、ゔ!」
瞬間、手の中に熱いものがあふれる。そこはまるで生き物のように息づき震えながら、何度かに分けて大量の精液を吐き出した。全て出し切れるように撫で続けてやりながら、渡瀬の唇を塞ぐ。
「ふっ、はあっ、ヒロ、んんッ」
「イオ、ん、ん」
何も出なくなっても、なんとなく手の離すのが名残惜しかった。そのままくるくると指を動かし続けていると、カタカタとベッドが音を立て始める。膝をついている渡瀬の両腿がぶるぶると震えているのだ。陰茎を握っていた手は菊池の背中に回され、ぎゅっと抱きしめられる。渡瀬が肩口に顔を埋めて苦しげに呻いた。
「イオ、出した後触られんの気持ちいだろ?」
「きもち、っけど、つら、い……!」
「はは、わかるわかる」
射精後の敏感な亀頭を触られる辛さは、菊池も知っている。逃げたいのに、勝手に腰が前へ前へと突き出て愛撫を強請るのだ。今もきっとじたばたと暴れて泣き喚きたいだろう。
「ゔーーー!ッゔーーー!」
身体の震えが大きくなり、渡瀬の呻き声が止まらなくなった。多分、そろそろだ。菊池は少しだけ亀頭を撫で回す手を早める。絞るように扱き、くるくると円を描くように磨く。あくまでも手つきは優しく、でも容赦なく。
渡瀬が大きく身体を震わせて腰を引いた。同時に肩口を思い切り噛まれる。
「ッゔーーーーー!ぐ、うッ!!」
「痛って!」
「ゔゔ!ん゙!ん゙ぐ!」
渡瀬が、くんっ、くんっと腰を突き上げる度に、手の中でばしゃばしゃと液体がしぶく。それは先ほどとは違ってさらさらで、透明だ。
「ゔッ、ゔ!ゔ!」
「すげ、イオもめっちゃ噴くじゃん。気持ちいよな、大丈夫大丈夫」
「ゔ~~~~~!」
潮吹きがおさまっても、渡瀬は肩口を甘噛みしていて顔を上げようとしない。その不服そうな声は、有り余るほどの羞恥を含んでいた。
「イオ、キスしてぇんだけど」
「ゔ……」
そろそろと顔を上げた渡瀬は、案の定首まで真っ赤だった。まじまじと見ようとしたのに、すぐに唇を奪われる。性急なディープキスが彼の焦りを表していて、菊池は殺しきれなかった笑い声を零した。
「クソ……恥ず」
「潮吹いてるイオ、可愛かったー」
「うっせ、もっかいキスすんぞコラ」
「どーぞ」
「……ぅ、クソ」
下から覗き込んで笑うと、噛み付くようにキスをされた。ベッドに敷いていたタオルで手を拭き、渡瀬の背中に腕を回す。やっぱり落ち着く。ドキドキもするけれど。
「イオ、好き。付き合お」
「めっちゃ普通に言うじゃん……ずっと言えなかった俺が恥ずくなるだろ」
「俺はイオみたいに我慢強くねぇもん!」
にっこりと笑うと渡瀬が手で自分の顔を覆う。
「ね、付き合お?な?」
「……付き、合う」
「これからもよろしくな?」
「ん、よろ、しく」
またぎゅうっと強く抱きしめられて、その照れ隠しの可愛さに菊池も強く抱きしめ返した。
また汚れてしまったバスタオルを片付けて、渡瀬のベッドに二人で横になる。向かい合って抱き合うと、トクトクと鼓動が重なった。
「なぁ、吉澤らに報告する?」
「……あー」
じゃれるように互いの顔や身体にキスをしながら、見つめ合う。
「まー、隠しててもいつかバレそうだしな……」
「ん。じゃあ明日言お」
「おう。でも他のやつにはバレないようにしねぇと。同室解消されたら嫌だからな」
渡瀬の言葉に菊池はハッと我に帰った。確かにそうだ。性欲旺盛な男子高校生が恋人同士で同室など、学校側が許すはずがない。
「気をつける」
「ん」
じゅっと肩口を吸われた。そこには渡瀬の歯型が刻まれている。しつこく舐めてくる渡瀬に、菊池の胎がぎゅうっと引き攣った。胎から全身にぞわぞわと電流が走る。
「ぁ……」
「ヒロ?」
「は、は……ぁ゙、イオ、やばい、かも……」
前にも感じたことのある波だ。夜中、勝手に絶頂し始めて止まらなくなった、あの時と同じ。後孔が勝手に激しく収縮し、昼の間に捏ね回された前立腺が痙攣していた。
「あっ、あっ、やばい、かもッ!イオ、イオ、あれ、来そう……!」
「ん、大丈夫。抱きしめとくから」
「ああっ、ああっ、やばい……っ、やばいやばい、あ゙あ゙、ん、来る、ッ!イオっ!ゔあああん!」
渡瀬の腕の中で身体が暴れる。ガクガクと腰が動き、目の前が白んだ。絶頂に後孔が引き締まり、すぐにまた次の絶頂がやってくる。止めようもない、終わらない快感。
「ゔーーーッ!あっあっあっあっ」
「可愛い……ヒロ、可愛い」
「やっ、やっ、イオ、とまんねっ、あ゙ーー!イッてる、イッてる、イクイク、あ゙あ゙ッ、イ゙ぐ!ゔーー!」
渡瀬に抱きしめられて、頭を撫でられて、キスをされる。それがまた菊池を高みへと促した。前よりも絶頂の間隔が狭い。気持ちいいのに、辛い。菊池は助けを求めるように渡瀬を見つめ、必死に舌を絡めた。
渡瀬の片方の手が、菊池の引き攣る下腹部を優しく押さえつける。もう片方の手は尻に触れ、ヒクヒクと震える後孔の表面を擽った。
「ひっ、ぐ……!」
「すげ。もぐもぐしてる」
「ゔ、ゔーーー!ゔ、ぐう!」
「あー、もう可愛すぎ」
はあ、と熱い息を吐いて、渡瀬はゆっくりと指を沈めた。後孔は待ち侘びていたとばかりに歓喜に震え、指を必死に食い締めて奥へ奥へと誘う。
「ん゙ぐッ!ゔ、あ゙ーーーっ!」
「すっげ、うねってしゃぶってくる」
「あ゙ーーーッ!あ゙あ゙あ゙、んん!!」
「ん、ここだよな。ここ気持ちいいな」
「ん゙ーーー!ん゙ーーー!!」
菊池は必死に渡瀬の唇を食み、嬌声を殺す。その間も前立腺を優しく撫で回され、腹を押し込まれる。前後から挟み撃ちにされたそこが何度も弾けた。
両脚が藻搔くようにベッドを蹴る。逃げようと伸び上がると、渡瀬が体重をかけて押さえつけてきた。触られなくても達してしまうのに、的確に一点を責められ続け、菊池は狂うしかない。もう、早く意識を手放したかった。
「ん゙ーーーッ!ゔ、ぐぅ!ふ、ん゙ん゙ーー!」
「大翔、好きだ、好き……」
意識を失うまでの永遠とも思える時間、渡瀬は菊池に愛を囁き、全身にキスをしてくれた。
翌朝。目覚めた菊池が自分の身体を見下ろすと、至る所にキスマークが散っている。
「イオ!バカ、風呂行けねぇじゃねえか!」
「ヒロの裸、誰にも見せたくねぇし」
「そんなこと言ってる場合か!今後一切キスマはナシ!!」
「えーー」
不服そうな渡瀬のおでこにデコピンを一発。そして首元にじゅうっと吸い付き、仕返しとばかりに濃く跡を付けた。
「よし、これでお前も風呂行けねぇな」
「ヒロ、誘ってる……?」
「なんでだ!!」
わちゃわちゃと戯れながら身支度をしていく。こうして、二人の恋人としての生活が新しく始まったのだった。
終わり。
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