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7 エピローグ
心も体も結ばれた翌日、二人は黙々と早熟みかんの処理をしていた。早めに収穫しておいたみかんは結局追熟せず、シロップ漬けとジャムにして、落ちた中生みかんも全てジャムに加工していく。あれだけあった実は2日かけて全て綺麗に瓶詰めされ、瀬戸の店に発送された。
「本当に全部無駄になんなかった」
「せっかくの橙矢の美味しいみかんだからね」
にっこりと笑った瀬戸に、ぎゅうと抱きつく。橙矢の大切なものを等しく大切にしてくれる瀬戸に感謝しかなかった。ぽんぽんと優しく頭を撫でられ、心地よさに目を瞑る。
「ずっと橙矢と居たいけど、柴田くんからも怒られたしそろそろ帰らないと」
「うん。もう今日出る?」
「明日の午後にしようかな。もう少し、橙矢と過ごしたい」
「俺も・・・」
また離れ離れになってしまうのは寂しいが、仕事を大切にしている瀬戸の姿も好きだ。もう少しここに居てほしいなんていう自分のわがままで迷惑をかけたくない。
「向こうに戻ったら、婿入りの準備しておくから」
「う、俺も瀬戸さんのご両親に挨拶、行く」
「うん。また調整して連絡するよ。僕がゲイなのはカミングアウトしてるから反対されないと思うけど」
「それでも緊張する・・・」
胸に顔を埋めると、顎を掬い上げられ口付けられた。舌を吸い上げられると途端に腰が重くなる。
「俊介さん、やめて、したくなる、から」
「僕は朝からずっと橙矢としたいと思ってた」
「~~~~~っ!」
耳元で囁かれた言葉にたまらなくなって、瀬戸の胸を叩いた。
陽子に瀬戸が明日に帰ることを伝え、二人並んで家を出る。向かったのは先日二人が利用したあのラブホテルだ。
「ん、ん、俊介さん、俺、またぁ・・・っ」
「うん、何回でもイッて」
「うああんっ、イく、イくッ、はああっ、ゔぅ゙、ッ!」
瀬戸が今日はちゃんとゴムをつけるね、と言って繋がった1回目。やっぱりつけないで、と橙矢がねだった2回目。3回目の今は、胡座をかいた瀬戸の上に橙矢が向かい合って座り、深くまで貫かれて揺すられている。後孔が息をするようにくぱくぱと蠢くと、瀬戸の吐き出した精液がとろりと漏れた。
固く閉ざされていたはずの結腸口はすっかり瀬戸の陰茎を愛撫する肉襞と化し、今も吸いついてカリ首を柔らかく食んでいる。瀬戸は激しく突き上げたくなるのを堪え、橙矢の中を味わうようにゆっくりと腰を振った。
「俊介さん、はあっ、ん゙ーーー・・・」
「はあ、橙矢とずっとこうしてたい」
「ゔ~~~、ああっ、また、イキそ、う・・・ッ」
「僕も、出そう、ッ、は、あ゙っ」
ゆったりとした動きのまま、二人が絶頂に達する。とぷとぷと漏らすように射精し、深く長い快感に浸った。余韻にしばらく揺蕩った後、また瀬戸が橙矢の腰を支えて上下に揺らし始める。
「もう、俺、変になるっ」
「気持ちいい?」
「ずっと気持ちいッ、やばい、やばい、あああっ」
「橙矢の中とろとろで、僕も気持ちいい・・・」
溶け合って一つになってしまいそうなほど、体を寄せ合って夜更けまで愛し合った。明日からまた元の生活に戻ってしばらく離れ離れになる。愛しい人に自分を刻みつけるように、互いに肌を吸ってマークをつけた。
「見送りありがとう。それじゃ、また連絡するね」
「うん。気をつけて」
次の日、二人は駅で一時の別れの挨拶をした。浮かんだ笑顔に曇りはない。橙矢は瀬戸が電車に乗り込むまでその姿を見送った。
「というわけで、僕は向こうに婿入りするから、店は柴田くんに任せるよ」
「というわけで、じゃないっすよ!急にいなくなってやっと戻ってきたと思ったら何の話ですか!」
突然の話に柴田が大きな声を上げる。集めたバイトの子達も困惑しているようだ。
「本当に急な話でごめん。しばらくはまだこっちにいるから」
「そんな・・・俺には無理ですよ。瀬戸さんに何一つ追いついてないのに」
「柴田くんは腕がいいし、覚えも早い。もちろん僕が向こうに行くまで、持ってるレシピや技術は全部教えるつもりだよ。というか、そもそも僕と全く同じじゃなくていいしね」
「でも」
「そんなに柴田くんが寂しいなら、たまに顔を出して偉そうにアドバイスとかしちゃおうかな。今生の別れでもないんだし」
「寂しいとかそう言う話じゃないでしょ!」
話し合いの結果、店は実質柴田が経営するが、瀬戸はオーナーとして監修していくこととなった。瀬戸の名前が残ると聞き、バイトの子達も少し安心した様子だ。
「じゃあまず今回の新作から説明するね」
パチンと両手を合わせ、瀬戸が立ち上がった。
その後の二人はというと。
まず数か月後に橙矢が瀬戸の両親に挨拶に行き、瀬戸を自分の地元に迎え、生涯を共にしたいと伝えた。事前に瀬戸自身からも説明をしていたうえ、両親共に橘農園のみかんを使ったケーキや菓子をいたく気に入っていたこともあり話はスムーズにまとまった。終わってから橙矢は緊張したと言っていたが、堂々と瀬戸への想いを言葉にするその姿に、瀬戸が惚れ直したのは言うまでもない。
店の方も、柴田に代替わりするということで顧客には大層驚かれたが、彼の誠実さはこれまでの接客でも十分伝わっており売り上げに大きな影響はなかった。もちろんそれは、橘農園のみかんを使った新作商品が売り上げに貢献した結果でもある。
そして翌年の4月14日、瀬戸と橙矢はパートナーシップを宣誓した。養子縁組も考えたが、年齢の関係で瀬戸の戸籍に橙矢が入ることになるため、二人で相談してこの結論となったのだ。
その日の午後に、披露宴の代わりに親族と身近な友人だけの小さなガーデンパーティーを開いた。サプライズで登場したウエディングケーキはもちろん瀬戸のお手製で、以前二人で話したとおりメロンと苺を使ったとても豪華なものだ。橙矢は感極まって泣いてしまい、サプライズは大成功となった。
来月には、二人で小さなカフェをオープンする。橘農園のみかんをはじめ、近くで採れる新鮮なフルーツや野菜を使った洋菓子を提供する予定だ。週に2、3日ほど気まぐれに開店し、橙矢はウエイターとして手伝うことになっている。
「その件で、一つお願いがあるんだ」
『お願い?なんです?』
瀬戸が一人の女性と通話している。
「カフェを特集してもらうのもいいし、僕たちがパートナーシップを宣誓したことも書いていいけど、みかん農家で一緒に働いてくれる人を募集してるっていうのも載せてくれないかな」
「働き手の募集ですか」
「実質は後継者の募集ってとこだけどね」
「ああ、なるほど」
「橘農園のみかんの味はずっと残したい。僕たちに子どもはできないけど、未来に繋げることはできるから」
「わかりました。お任せください」
明るい声でそう言った女性ライターに、瀬戸が礼を言い通話を切った。
「そんなこと考えてたの」
「橙矢!聞かれちゃったかぁ」
「もー!また勝手に一人で話を進めて!俺にも一言相談してって、いっつも言ってるだろ」
「ごめん。人手がほしいって前に言ってたから」
「別に怒ってない。秘密にされてちょっと拗ねただけ」
「うん、ごめんね」
「言っとくけど、俊介さんとの未来を選んだのは俺だから。今、こうして一緒にいられて俺は幸せなの。後悔なんて一つもしてない。だから、俺が選ばなかったこと、子どもとか、後継者とか、そういうことで俊介さんにちょっとでも悩んだり悲しんだりしてほしくない」
一点の曇りもなく、橙矢の目がまっすぐに瀬戸を見る。瀬戸は眩しげに目を細めた。
「本当に、橙矢はかっこいいね」
「なんだよ、嫌味かぁ?」
「ふふ、そんなわけないでしょ」
瀬戸が橙矢を抱き寄せ、腕の中に閉じ込めてもう一度謝る。橙矢から香るみかんの爽やかな香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
雑誌の特集もあってカフェはすぐに人気店となり、熱心な若者がアルバイトで何人か来てくれた。
「本当に、俺の悩みは全部俊介さんが解決してくれた」
「それならよかった。僕はいつも橙矢に救われてるけどね」
「またそうやってすぐ恥ずいこと言う・・・」
後ろから橙矢を抱きしめ耳元に口を寄せると、橙矢が逃げようとして身を捩った。その首が赤く染まっているのが見える。
「今すぐ橙矢に元気をもらいたくなっちゃった」
「ば、かっ」
ぺろ、と首筋を舐め上げ、甘噛みをした。それだけで腰が砕けて、もたれかかってくる橙矢が愛おしい。
「明日、早いから」
「早いから?」
「あんまり、いっぱいは、しないで」
「・・・がんばる」
橙矢を抱き上げ、急いで仮住まいのアパートに帰る。すぐにベッドに雪崩れ込み、キスをしながら抱き合った。
煽られた瀬戸の理性が働いていたのは2回戦までで、結局橙矢は翌日腰が立たなくなってしまった。案の定怒られた瀬戸が、橙矢の指示を受けながら畑の手入れをする。
「今日は絶対にしない!」
「え・・・僕今日こんなにがんばったのに?ご褒美は?」
「自業自得だ」
「本当に、しない?」
「あ、声、ずるいっ、離してッ」
「ねえ橙矢、1回だけでも、だめ?」
「や、絶対1回じゃな・・・ああ、触んないで、ッ」
「橙矢、ここ、気持ちいいね」
こうして、気まぐれに開店するカフェは、週3回開くことはほとんどなく、むしろ週1回しか開かないこともよくあるのだった。
終わり。
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