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#3 家族みたいだな

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部屋に入ると、大きなベッドが2つ。化粧台や洗面所、お風呂、トイレ、冷蔵庫まであった。
しかも、お風呂とトイレが別々と言う、なんとも高級なホテルだ。

年齢は若すぎると言われたが、事情を説明したら、入れた。しかも無料と言うのだ。その代わり、ご飯は自分達で、という訳だ。
ご飯ぐらい、近くのコンビニで買えばいいから、結構得をした。
「眠い」
妹はそう呟いた後、ベッドにダイビングし、そのまま眠りについてしまった。一方、ソウの弟も、ハルが眠ったベッドに崩れ落ち、眠りについた。
いいなぁ。小三は。
誰と寝ようと気にしない年齢だからな…
それに対して私達は、もう中一。
初体験をしてもいい年齢だと、母さんは言っていた。
ソウは、イケメンで高身長で、優しいし、面白いし…一緒にいるだけで笑える。
昔は好きだったが…今は恋愛対象内ではあるけど、好きなのはまた別の人…
現在は、夜の八時。
「…散歩でも行こう」
ソウからの誘いだった。ちょうど沈黙が続いていたから、外に出たら名一杯話そう。
「いいよ」
部屋を出る前に、妹たちが起きた時のために、置き手紙を書いた。

エレベーターで降り、ロビーへ出る。
自動ドアをくぐり抜け。外に出た。
「…どこ行くの?」
「そこら辺歩こう」
私は頷き、歩き始めた。
ここは都会で、正直空気が吸いにくい…
大会の時もこのせいで体調を少し崩したのを覚えている。
なんの大会かって言うのは、皆の想像しだいだね。
川を突き当たり、左折すると、小さな公園が見えた。私は昔幼なじみの男子とイオンへ遊びに行って、付き合ってると誤解されたことがある。
もちろん、ここでも誤解されるんじゃ…とは思っている。でもここには皆はいない。
旅行でここに来てない限り、出会うことは絶対にない。そう言えば、先輩が「着いたら連絡してね」って言ってたな…
公園のベンチに座ったら電話しよ。

公園のベンチに座る。今にも壊れそうなほどボロボロのベンチ。恐る恐る座り、先輩方に連絡した。

「もしもし」
『あ、もしもし!アヤ遅かったじゃん!』
「ごめんごめん…」
『まぁいいや、今どこ?』
「…んー、それは秘密!まぁ、県外なんだけどね。」
『け、県外!?どんだけ壮大にしてるの!でも、なんか楽しそうだね。いいなぁ。羨ましい』
「ちょ、何が羨ましいの」
先輩ったら…でも今まで辛いことしかなかったから、こうやって楽しく電話できるの嬉しいな。
『え?だって…』

──────今、男子と二人きりでしょ…?

…え?
『ごめんごめん!怖がらせちゃったね。まぁ、女の勘ってやつ?アハハハ』
「アハハハ」
作り笑顔を作り、偽の笑い声で笑った。
女の勘にしては、かなり自信があったな…
それほど、自分を信じてるって事だよね?
先輩は、今私たちの故郷にいる。
それに、さっき居場所を聞いてきたから、近くにはいないだろう。
「そろそろきるね~」
『はーい』
私は通話を終了した。
通話が終わっても、やっぱり〝女の勘〟が忘れられなかった。
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