7 / 7
7
しおりを挟む
結局翌日、オリヴィアは見事に熱を出した。
申し訳ありませんと、真っ赤な顔でしょんぼりと落ち込んだ様子の彼女の額にカイルは絞ったタオルを乗せた。
「気にするな。きっと疲れが出たんだろう。まだこちらに来て半年ほどだしな」
「……カイル、様は……」
「俺はこの通り元気だ」
「よかったです。私のせいでお風邪を召されたらと思ったら……」
「そんなに軟弱ではない」
フン、とカイルは胸を張って答えて汗で張り付いたオリヴィアの前髪を指ではらう。
「その、昨日の話しなんだが」
「はい」
「ブルーベリーの木を守りたかった理由だ」
なんと聞けばいいか、カイルは昨夜からずっとぐるぐると考えていた。
あれは本当にただの気まぐれだった。オリヴィアと、一緒に何かしたいなと思ったのだ。だから二人で相談してブルーベリーを植えた。
それだけのことだったのだ。
まさかそれをオリヴィアがそんなに大切に思ってくれていたなんて。
それは『上辺だけの夫婦』がすることだろうか?
「二人で植えたものがそんなに大切だったのか?」
「……それ、は」
元々熱で赤かったオリヴィアの顔がさらに赤くなる。
じっと至近距離で見つめれば、彼女はがばりを布団を頭からかぶってしまった。
「風邪がうつりますので」
「あ、こら! 逃げるな! ちゃんと答えてくれ!」
「た、大切なのは、記念ですから。最初に二人で植えたものですし……」
くるまった布団の中からモゴモゴと声が聞こえる。さらにコンコンと小さな咳が聞こえてきた。
これ以上追及するのは、風邪の身にはかわいそうだろうとカイルはため息をついた。
ぽん、とオリヴィアの布団に手を置く。
「オリヴィア、風邪が治ったらじっくりと話しをしよう」
「は……ぃ」
いつもあっさりとしているオリヴィアでは考えられないほど、自信なさげなか細い返事が聞こえてきた。
ところがオリヴィアは風邪がすっかり良くなると、とんでもない行動に出た。
「離縁してくださいませ」
「…………」
農地開拓の仕事もひと段落し、久しぶりにゆっくりと過ごせる休日。オリヴィアの部屋に呼び出されたカイルの前に、離婚届が突き付けられた。
なんだこれ。
「り、理由を聞いても?」
「私がカイル様との結婚生活を送っていく自信がなくなりました。父には私からこれ以降も今までどおり援助を続けるようお願いしますので……」
「いやだ」
カイルは目の前の離婚届を真っ二つに破り捨てた。
あっとオリヴィアが目を丸くする。
「俺は君と離婚するつもりはない。これからも君だけを愛するつもりだ」
「そ、そんなこと、言われても……。この先、別に好きな人ができたらどうするんですか? フレデリカ様とか……」
「そんな相手は現れないし、フレデリカは仕事上の関係でしかない」
「先のことはわからないです」
オリヴィアの瞳は不安で揺れていた。
平気な顔をしていたが、本当はフレデリカのこともずっと気にしていたのだろう。
結婚式当日のあの夜、彼女の考えていることがさっぱりわからなかった。けれど今は手に取るようにわかる。今は彼女もカイルと同じように恋をしているからだ。
カイルはオリヴィアの隣に座って彼女の両手を握った。
「君は人を愛するのが怖いんだろう? どうせ愛したって裏切られると思っているんだろう」
「……ええ、そうです。だって、皆そうでしたもの」
オリヴィアが苦しげに顔をゆがめて涙を零した。
「お母様は、最初お父様に愛人がいるとわかったとき、とても苦しんで泣いていました。そしてお父様が愛人と別れる気がないと知ると、自分も外に愛人を作りました。兄の奥様だってそう。いつも辛そうで……。友人も」
「家族や友人のそんな様子、見るのはとても辛かったんだろう」
そういうものだ、と納得しないと心が保てなかったのだろう。
浮気なんて当たり前。貴族の結婚はただの契約。夫婦は上辺だけのもの。そう思い込んでオリヴィアは自分の心を守ってきたのだ。
「私は、本当に好きな人にそんな裏切りをされたら耐えられません。だから、離縁してください」
「……ああもう! オリヴィア、君は本当に可愛いな!」
「へ?」
たまらなくなってカイルはオリヴィアを抱きしめた。
本当に好きな人、だなんて言われたら、それは天にも昇る心地だ。
オリヴィアの言葉は、愛の告白でしかない。
「オリヴィア、お願いだ。勇気を出してくれ。俺は絶対に君以外を好きになることなんてない」
「カイル様……」
カイルはオリヴィアから一度離れて跪いた。
そっと彼女の細い手を取る。
「俺に君を、君だけを愛する権利をくれないか?」
はっとオリヴィアが青空のような瞳を見張ってカイルを見つめる。その瞳からポロポロと雫がいくつかこぼれた頃、ゆっくりと彼女は頷いた。
「オリヴィア」
「私以外の誰かを好きになった時は許しませんからね」
「そのときは、この心臓に剣を突き立てたててくれていい」
泣き笑いのオリヴィアを抱きしめてカイルは笑った。
彼女を裏切る自分など、きっと自分でも嫌悪するだろうから、この胸を貫いてもらってかまわない。
我ながら恥ずかしいセリフだなと思った。
けれど疑いようもなくそれが本音だったので、カイルは苦笑したのだった。
――それから数年後。
ブランシュ家の屋敷にはタルトの焼ける良い香りが漂っていた。
「カイル様、ブルーベリーのタルトが焼けましたよ」
「ああ、では休憩にするか」
控えめにノックされた執務室の扉からオリヴィアが顔を出す。
先日収穫したブルーベリーでタルトを焼いていたのだ。ちなみに残ったブルーベリーはジャムにして朝食のパンと一緒に食べる予定だ。
「おとうさまー!!」
「おとしゃま」
カイルがテラスに顔を出すと、すでに可愛い息子と娘がテーブルに着いていた。
それまでキリリと仕事用の顔を保っていたのが、少しだけふにゃりと崩れる。特に娘はオリヴィアに似ているので、つい甘くなってしまう。
駆け寄って来た娘を抱っこして席に座る。
「たくさん実が収穫できるようになったなあ」
「本当ですね。最初はちゃんと実がなるのかも不安でしたけど」
テラスから見えるオリヴィアの花壇は今日もたくさん花や植物でにぎわっている。その中でも立派に成長したブルーベリーには今年もたくさんの実がなっていたが、最初の数年は花は咲くが実は少なく、小さかった。それでも二人で根気強く世話した結果、ここ一年ほどで料理に使えるほど収穫できるようになったのだ。
焼きたてのタルトはとても美味しかった。
上に乗ったブルーベリーは瑞々しくて甘酸っぱい。
二人であのブルーベリーの苗を植えた日のことをカイルは思い出していた。
あの頃はまだ、こんな日が来るなんて思いもしなかった。
タルトを食べ終えた子供達が花壇のそばで遊んでいる姿を眺めていると、ぽつりとオリヴィアが呟いた。
「カイル様、私、幸せです。あの日、勇気を出してあなたの手を取って本当に良かった」
「ああ、俺も幸せだ。君やあの子達に会えた」
ふふ、と笑うオリヴィアの瞳には涙が浮かんでいる。そっとカイルは彼女の肩を抱き寄せた。
あの告白から二人は本当の夫婦になった。
それからも大変なことは色々あるが、カイルは領主としてようやく一人前になり、オリヴィアは伯爵夫人として彼を支えている。
そういえばあの後、どうして自分を好きになってくれたのかと聞いたらオリヴィアは『なんとなく、気がついたらいつの間にか』という曖昧な答えをくれた。特に決定打とかは無かったらしい。
なんだか拍子抜けをしたのだけれど、オリヴィアはカイルが自分に向ける愛情や優しさに気づいていたらしい。
だからきっとそれが積み重なった結果なのだと彼女は笑った。
これからもそうやって二人で色々なものを積み重ねていけたらとカイルは思っている。
「ねえ、カイル様。お願いがあるのですけれど……」
「お願い?」
「はい、あのですね」
珍しく恥ずかしがる様子は結婚したばかりの頃のようで可愛らしい。
一体どうしたのだろうとカイルが覗き込むと、思い切ったようにオリヴィアが顔を上げた。
「あの、この先ずっと、ずっと先まで、私だけが、カイル様を愛する権利をいただけないでしょうか?」
ぽかんとして、ぱちりと一度瞬いて、それからぶわりと頬が熱くなった。
彼女から、そんな言葉を貰えるなんて。嬉しすぎてこのまま天に昇ってしまいそうだと思った。もちろん、そんなことはもったいないのでしないけれど。
だからカイルはオリヴィアを思いきり抱き締めた。
「それはこれまでも、これからもずっと君だけの権利だ!」
END
申し訳ありませんと、真っ赤な顔でしょんぼりと落ち込んだ様子の彼女の額にカイルは絞ったタオルを乗せた。
「気にするな。きっと疲れが出たんだろう。まだこちらに来て半年ほどだしな」
「……カイル、様は……」
「俺はこの通り元気だ」
「よかったです。私のせいでお風邪を召されたらと思ったら……」
「そんなに軟弱ではない」
フン、とカイルは胸を張って答えて汗で張り付いたオリヴィアの前髪を指ではらう。
「その、昨日の話しなんだが」
「はい」
「ブルーベリーの木を守りたかった理由だ」
なんと聞けばいいか、カイルは昨夜からずっとぐるぐると考えていた。
あれは本当にただの気まぐれだった。オリヴィアと、一緒に何かしたいなと思ったのだ。だから二人で相談してブルーベリーを植えた。
それだけのことだったのだ。
まさかそれをオリヴィアがそんなに大切に思ってくれていたなんて。
それは『上辺だけの夫婦』がすることだろうか?
「二人で植えたものがそんなに大切だったのか?」
「……それ、は」
元々熱で赤かったオリヴィアの顔がさらに赤くなる。
じっと至近距離で見つめれば、彼女はがばりを布団を頭からかぶってしまった。
「風邪がうつりますので」
「あ、こら! 逃げるな! ちゃんと答えてくれ!」
「た、大切なのは、記念ですから。最初に二人で植えたものですし……」
くるまった布団の中からモゴモゴと声が聞こえる。さらにコンコンと小さな咳が聞こえてきた。
これ以上追及するのは、風邪の身にはかわいそうだろうとカイルはため息をついた。
ぽん、とオリヴィアの布団に手を置く。
「オリヴィア、風邪が治ったらじっくりと話しをしよう」
「は……ぃ」
いつもあっさりとしているオリヴィアでは考えられないほど、自信なさげなか細い返事が聞こえてきた。
ところがオリヴィアは風邪がすっかり良くなると、とんでもない行動に出た。
「離縁してくださいませ」
「…………」
農地開拓の仕事もひと段落し、久しぶりにゆっくりと過ごせる休日。オリヴィアの部屋に呼び出されたカイルの前に、離婚届が突き付けられた。
なんだこれ。
「り、理由を聞いても?」
「私がカイル様との結婚生活を送っていく自信がなくなりました。父には私からこれ以降も今までどおり援助を続けるようお願いしますので……」
「いやだ」
カイルは目の前の離婚届を真っ二つに破り捨てた。
あっとオリヴィアが目を丸くする。
「俺は君と離婚するつもりはない。これからも君だけを愛するつもりだ」
「そ、そんなこと、言われても……。この先、別に好きな人ができたらどうするんですか? フレデリカ様とか……」
「そんな相手は現れないし、フレデリカは仕事上の関係でしかない」
「先のことはわからないです」
オリヴィアの瞳は不安で揺れていた。
平気な顔をしていたが、本当はフレデリカのこともずっと気にしていたのだろう。
結婚式当日のあの夜、彼女の考えていることがさっぱりわからなかった。けれど今は手に取るようにわかる。今は彼女もカイルと同じように恋をしているからだ。
カイルはオリヴィアの隣に座って彼女の両手を握った。
「君は人を愛するのが怖いんだろう? どうせ愛したって裏切られると思っているんだろう」
「……ええ、そうです。だって、皆そうでしたもの」
オリヴィアが苦しげに顔をゆがめて涙を零した。
「お母様は、最初お父様に愛人がいるとわかったとき、とても苦しんで泣いていました。そしてお父様が愛人と別れる気がないと知ると、自分も外に愛人を作りました。兄の奥様だってそう。いつも辛そうで……。友人も」
「家族や友人のそんな様子、見るのはとても辛かったんだろう」
そういうものだ、と納得しないと心が保てなかったのだろう。
浮気なんて当たり前。貴族の結婚はただの契約。夫婦は上辺だけのもの。そう思い込んでオリヴィアは自分の心を守ってきたのだ。
「私は、本当に好きな人にそんな裏切りをされたら耐えられません。だから、離縁してください」
「……ああもう! オリヴィア、君は本当に可愛いな!」
「へ?」
たまらなくなってカイルはオリヴィアを抱きしめた。
本当に好きな人、だなんて言われたら、それは天にも昇る心地だ。
オリヴィアの言葉は、愛の告白でしかない。
「オリヴィア、お願いだ。勇気を出してくれ。俺は絶対に君以外を好きになることなんてない」
「カイル様……」
カイルはオリヴィアから一度離れて跪いた。
そっと彼女の細い手を取る。
「俺に君を、君だけを愛する権利をくれないか?」
はっとオリヴィアが青空のような瞳を見張ってカイルを見つめる。その瞳からポロポロと雫がいくつかこぼれた頃、ゆっくりと彼女は頷いた。
「オリヴィア」
「私以外の誰かを好きになった時は許しませんからね」
「そのときは、この心臓に剣を突き立てたててくれていい」
泣き笑いのオリヴィアを抱きしめてカイルは笑った。
彼女を裏切る自分など、きっと自分でも嫌悪するだろうから、この胸を貫いてもらってかまわない。
我ながら恥ずかしいセリフだなと思った。
けれど疑いようもなくそれが本音だったので、カイルは苦笑したのだった。
――それから数年後。
ブランシュ家の屋敷にはタルトの焼ける良い香りが漂っていた。
「カイル様、ブルーベリーのタルトが焼けましたよ」
「ああ、では休憩にするか」
控えめにノックされた執務室の扉からオリヴィアが顔を出す。
先日収穫したブルーベリーでタルトを焼いていたのだ。ちなみに残ったブルーベリーはジャムにして朝食のパンと一緒に食べる予定だ。
「おとうさまー!!」
「おとしゃま」
カイルがテラスに顔を出すと、すでに可愛い息子と娘がテーブルに着いていた。
それまでキリリと仕事用の顔を保っていたのが、少しだけふにゃりと崩れる。特に娘はオリヴィアに似ているので、つい甘くなってしまう。
駆け寄って来た娘を抱っこして席に座る。
「たくさん実が収穫できるようになったなあ」
「本当ですね。最初はちゃんと実がなるのかも不安でしたけど」
テラスから見えるオリヴィアの花壇は今日もたくさん花や植物でにぎわっている。その中でも立派に成長したブルーベリーには今年もたくさんの実がなっていたが、最初の数年は花は咲くが実は少なく、小さかった。それでも二人で根気強く世話した結果、ここ一年ほどで料理に使えるほど収穫できるようになったのだ。
焼きたてのタルトはとても美味しかった。
上に乗ったブルーベリーは瑞々しくて甘酸っぱい。
二人であのブルーベリーの苗を植えた日のことをカイルは思い出していた。
あの頃はまだ、こんな日が来るなんて思いもしなかった。
タルトを食べ終えた子供達が花壇のそばで遊んでいる姿を眺めていると、ぽつりとオリヴィアが呟いた。
「カイル様、私、幸せです。あの日、勇気を出してあなたの手を取って本当に良かった」
「ああ、俺も幸せだ。君やあの子達に会えた」
ふふ、と笑うオリヴィアの瞳には涙が浮かんでいる。そっとカイルは彼女の肩を抱き寄せた。
あの告白から二人は本当の夫婦になった。
それからも大変なことは色々あるが、カイルは領主としてようやく一人前になり、オリヴィアは伯爵夫人として彼を支えている。
そういえばあの後、どうして自分を好きになってくれたのかと聞いたらオリヴィアは『なんとなく、気がついたらいつの間にか』という曖昧な答えをくれた。特に決定打とかは無かったらしい。
なんだか拍子抜けをしたのだけれど、オリヴィアはカイルが自分に向ける愛情や優しさに気づいていたらしい。
だからきっとそれが積み重なった結果なのだと彼女は笑った。
これからもそうやって二人で色々なものを積み重ねていけたらとカイルは思っている。
「ねえ、カイル様。お願いがあるのですけれど……」
「お願い?」
「はい、あのですね」
珍しく恥ずかしがる様子は結婚したばかりの頃のようで可愛らしい。
一体どうしたのだろうとカイルが覗き込むと、思い切ったようにオリヴィアが顔を上げた。
「あの、この先ずっと、ずっと先まで、私だけが、カイル様を愛する権利をいただけないでしょうか?」
ぽかんとして、ぱちりと一度瞬いて、それからぶわりと頬が熱くなった。
彼女から、そんな言葉を貰えるなんて。嬉しすぎてこのまま天に昇ってしまいそうだと思った。もちろん、そんなことはもったいないのでしないけれど。
だからカイルはオリヴィアを思いきり抱き締めた。
「それはこれまでも、これからもずっと君だけの権利だ!」
END
30
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
お飾りな妻は何を思う
湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。
彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。
次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。
そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。
悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
氷の王妃は跪かない ―褥(しとね)を拒んだ私への、それは復讐ですか?―
柴田はつみ
恋愛
亡国との同盟の証として、大国ターナルの若き王――ギルベルトに嫁いだエルフレイデ。
しかし、結婚初夜に彼女を待っていたのは、氷の刃のように冷たい拒絶だった。
「お前を抱くことはない。この国に、お前の居場所はないと思え」
屈辱に震えながらも、エルフレイデは亡き母の教え――
「己の誇り(たましい)を決して売ってはならない」――を胸に刻み、静かに、しかし凛として言い返す。
「承知いたしました。ならば私も誓いましょう。生涯、あなたと褥を共にすることはございません」
愛なき結婚、冷遇される王妃。
それでも彼女は、逃げも嘆きもせず、王妃としての務めを完璧に果たすことで、己の価値を証明しようとする。
――孤独な戦いが、今、始まろうとしていた。
さよなら私の愛しい人
ペン子
恋愛
由緒正しき大店の一人娘ミラは、結婚して3年となる夫エドモンに毛嫌いされている。二人は親によって決められた政略結婚だったが、ミラは彼を愛してしまったのだ。邪険に扱われる事に慣れてしまったある日、エドモンの口にした一言によって、崩壊寸前の心はいとも簡単に砕け散った。「お前のような役立たずは、死んでしまえ」そしてミラは、自らの最期に向けて動き出していく。
※5月30日無事完結しました。応援ありがとうございます!
※小説家になろう様にも別名義で掲載してます。
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
誰も愛してくれないと言ったのは、あなたでしょう?〜冷徹家臣と偽りの妻契約〜
山田空
恋愛
王国有数の名家に生まれたエルナは、
幼い頃から“家の役目”を果たすためだけに生きてきた。
父に褒められたことは一度もなく、
婚約者には「君に愛情などない」と言われ、
社交界では「冷たい令嬢」と噂され続けた。
——ある夜。
唯一の味方だった侍女が「あなたのせいで」と呟いて去っていく。
心が折れかけていたその時、
父の側近であり冷徹で有名な青年・レオンが
淡々と告げた。
「エルナ様、家を出ましょう。
あなたはもう、これ以上傷つく必要がない」
突然の“駆け落ち”に見える提案。
だがその実態は——
『他家からの縁談に対抗するための“偽装夫婦契約”。
期間は一年、互いに干渉しないこと』
はずだった。
しかし共に暮らし始めてすぐ、
レオンの態度は“契約の冷たさ”とは程遠くなる。
「……触れていいですか」
「無理をしないで。泣きたいなら泣きなさい」
「あなたを愛さないなど、できるはずがない」
彼の優しさは偽りか、それとも——。
一年後、契約の終わりが迫る頃、
エルナの前に姿を見せたのは
かつて彼女を切り捨てた婚約者だった。
「戻ってきてくれ。
本当に愛していたのは……君だ」
愛を知らずに生きてきた令嬢が人生で初めて“選ぶ”物語。
不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない
翠月 瑠々奈
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。
始めは夜会での振る舞いからだった。
それがさらに明らかになっていく。
機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。
おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。
そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる