最強の元トップランカー、転移後は仲間を集めます

おふとん

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7-1 メイドの噂

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 シュガー邸スタッフの朝は早く、夜も遅い。
 
 この大貴族にも負けない広い屋敷は、テナという絶対的な管理者がおり、執事長セルノスを筆頭とし、副執事、料理長2人、警備2人、庭師2人、メイド12人の20名で管理している。執事長が全体管轄を持ち、副執事は他スタッフの管理を担当している。メイドは4人で1グループになり、7日に1人1日の休暇を設けられている。週の4日は3人で1ブロックを担当することになり、3グループあるメイド達は週ごとに清掃ブロックをローテーションする。
 
 「フィー、おはよー。今週は何当番だっけー」
 週初めの早朝、眠そうに目を擦りながら制服に着替えたリリアはメイド室に向かう。そこには同じグループのフィリーとアリアンナが集まっていた。今日は1人休日の為、リリアが一番遅かったことになる。

 「リリー!おはー!……えーっと、インドア清掃だね!」
 昨日、休日だったフィリーは掲示されているシフト表を確認しながら元気そうに答えた。

「インかー……、改めて思うけど、ここのお屋敷、部屋数多くて大変だよねー」
「さすが、英雄シュガー様のお屋敷ですわよね」

 インドア清掃はロビーや客間はもちろん、応接室やトレーニングルーム、シュガーも使用している客室用大浴場などの清掃である。不在時のシュガーの自室に限りテナが清掃をし、執務室、書庫などは秘匿書類などもある為、執事長が務めている。また、これに含まれないテラスやバルコニーといったアウトドア清掃は別グループ、洗濯やその他雑事を別グループがする。庭やキッチンはその専属が居るのでそこには立ち入らない。
 
「あ、アリアもおはよー!」
「でもわたくし、まだシュガー様にお会いしたことないですの」
 
「フィーはね、すごい前にちらっとだけ見かけたことあるよー!リリーはー?」
「わたしはお会いしたことあるけど、恐れ多くて話かけるのは無理だったわ。もうね、オーラ?がすごいのよ」

「わかる! フィーは見かけただけだけど、なんかこう、見えない何かがブワーって出てるよね!」
 フィリーはすごさをアピールしたいのか、身振り手振りでオーラを表現する。その姿は彼女の楽天的な無邪気さを表しているようでもある。
 
「二人とも羨ましい限りですわ、やはりここで勤めさせて頂いている以上、私も是非、家長様にお会いしてみたいですわ。」
 メイドの中にはシュガーに出会ったことがない者も多く、この中ではアリアンナだけシュガーの面影すら感じたこともないことに落胆している。

「……にしても、最近ご帰宅されないのはどうしてなのかしら」
「なんか色んな噂が飛び交ってるよね。ずっと同じドラゴンと戦い続けてるとか、別の国でご結婚されたとか、迷宮に潜り続けてるだとか、お亡くなりになられたとか」
「さすがにシュガー様に限って最後のは無いと思うのだけれど、もし本当にそうでしたら、将来私が亡くなる前に英雄シュガーの冒険譚を”メイドのみやげ”として、知りたいですわね。」
 
「……アリア、不謹慎だけどうまいこというね! でも確かにメイド内で色んな噂や憶測があるのは事実だよねー」
「フィーももう一度会ってみたいなー」
 他の2人も同意見であることは彼女らの目線がものを言っている。
 
 彼女らは早朝のメイド室で一時の雑談を交えた後、清掃業務に取り掛かり始める。3人だけでこの数をやる為、時間に全くの余裕はなく、夕方でも終わらないことも多々あり、夜遅くまでかかる。また各グループがこの激務をこなせている以上、国でも一流のメイド達であることは見て取れる。

 そんな彼女達メイドや他スタッフは広い敷地内にちりじりにいるため、連絡手段として、腕時計型の無線機を身に着けている。普段は時計として時間も確認しているが、たまに副執事からの連絡もある。

 だがその日は執事長から直々に連絡がきた。
「副執事を含み、メイド達は直ちに今の作業を辞め、ロビーに集合せよ。繰り返す、直ちに全力で集合せよ」

 彼女達は執事長の指示通り、今までやっていた仕事を中断し、全速力でロビーに向かい整列する。ロビーから遠い屋外で作業していたメイド達は汗で顔が火照っている。
 普段は整列時、副執事を中心にメイド達は横一列になり、執事長が対面にいるが、この日は執事長自身も列の中心に入っている。その対面にいたのは執事長の上司であるテナであった。
 
「ただいま、家長であるシュガー様がご帰宅されます。お出迎える準備をしなさい」
 その一言で、自分の失態で顔を青ざめる執事長や、全力で走りまだ顔を火照らしてる者、シュガー帰宅の衝撃で笑みをこぼす者や、とっさのことで困惑する者に分かれた。だが、セルノスは自身のやるべきことを判断し、扉を開け、気合が入った声を出す。
 
「シュガー様! 皆一同、ご帰宅を心待ちにしておりました!」
 
 セルノスはテナからの今後の厳しい指導を覚悟し、冷や汗を流すのであった。


 
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