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 影は走る。
 久方ぶりである主からの直命、期待以上の成果を出さなければいけない。

 (まずは、あそこを探ってみるか)
  カゲロウが訪れたのはゼクスの街中心から北部にある、飲食店が並んでる通り。そこの一角にひっそりと営業しているバーである。カランコロンと響く扉を開けると、店内にはゆったりとした曲が流れ、落ち着いた照明がムードのある静かな空間を作り出している。中心にあるバーカウンターには店主がグラスを磨いており、他の客はいないようだ。
 
 「……いらっしゃい、そこに座りな」
 物静かな印象を受けるマスターだが、眼光鋭くこちらを凝視し、観察している。

「ハニージュースを頼む」
 カゲロウは店主に促された、カウンターの真ん中の席に座り、1つの注文をした。

「そうか、今日の店は終いだな。……それで、何が聞きたい」
 店主はカゲロウの注文を受けた後、店の扉に掲げてある〔OPEN〕の文字を〔CLOSE〕に切り替え、外扉に照らされていた入り口の照明を落とした。

「3つある。近年変動した周辺地形、現在の国の情勢、モンスターの生態変化について知りたい」
「それは、結構なことで。……代わりに何を差し出せる」
 情報というものは得たい内容こそに付加価値があり、金品や情報でのトレードが主流である。カゲロウも忍びとして多くの情報を扱ってきており、情報屋の店主に先に一つの情報を開示した。

「……我が主、シュガー様がご帰還なされた」
「……おい、それは本当か。巷の噂では聞いていたが、これで確定したな。あの英雄が戻ってきたとなると……国も動くかもしれん。」
 
「……どういうことだ」
「お前の知りたいことに繋がる話かもしれないが……」

 店主から聞いた話はこうだった。
 ・最近”ゼクステリア王国”のゼクスの街から北にある”アヴァロンヘイム王国”との国境間に、1つの城跡が見つかった。
 ・城跡から表すモンスターが、世界各地にいるレアモンスターに近い姿をしていると報告があった。
 ・国は急務調査の為、軍を派遣したが敵が強く、負傷者が多数続出。確かな情報を持って帰ってくる者が少なかった。

「そうか、助かった。」
 (一度拙者の方でも、確かめる必要がありそうだな)

 情報を得たカゲロウは店を後にし、自身で直接確認することを決める。


 
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