家族

水流見カンゴ

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「ゆかり」と「わたし」

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 ゆかりはいつも笑顔だ。いつも元気でニコニコしている。ゆかりは誰とも同じように話をする。誰か1人と話すことが多いということはなく誰とでも同じくらいの時間を話す。もちろんわたしも例外ではない。わたしにも他の人と同じくらいの時間をかけて話をしてくれる。記憶を辿ってみても怒っていることがあまりなかったと思う。ゆかりに会うとなぜか安心するのだ。
 
 ゆかりともたくさん一緒に散歩した。ゆかりとの散歩は大変だ。色んな人が話しかけてくる。「おばちゃん」と呼ぶ人や「友達」と呼ぶ人、毎回誰かしら声をかけてくる。正直、声を掛けられるのはあまり好きではない。反射的にいつも吠えてしまう。しかし、ゆかりはすぐにわたしを落ち着かせる。そして会った人にわたしの紹介をする。照れ臭くてしょうがない。でも、色んな人から話しかかられるゆかりを見るのは好きだった。なぜならみんなからゆかりは好かれていると実感ができるから。もちろんわたしもゆかりが大好きだった。

 ゆかりはおそらく「いい子」なのだと思う。周囲の誰もがゆかりを悪くいうことはなく、そしてなにか意見を聞く時、物事を頼む時には一番最初に名前が呼ばれる。それは利用してるのではなく頼られているとわたしは感じていた。そんなゆかりもわたしには愚痴を言った。公園に散歩に行くとベンチに座り、学校のことや働きだしてからは仕事の不満をわたしに話した。

「ビビにだけ話すんだけどさ~」

わたしはこの言葉から始まる話が大好きだ。実際に同じ内容を他の人間に話すことを聞いたことはなかった。わたしだけに打ち明けてくれている。ゆかりがわたしを頼ってくれている、そう思うと嬉しくて仕方がなかった。楽しそうに話すゆかり、俯いて話すゆかり、涙目になりながら話すゆかり。学校というところに行っていた時も会社というところに行くようになってもずっと変わらないゆかり。

 ゆかりの今日の表情は、、、あの話をした時の表情と似ている。これからも変わらないでいてほしい。
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