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第2章 魔術師の試練
10. おぞましき正体
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「残念――お邪魔虫たちが、もう帰ってきちゃった」
え……?
階段を駆け上がってくるけたたましい靴音が、俺の耳にも届き始めた。
「「ノアーーーーーーーー!!!」」
扉を蹴り開け、俺の前に現れたのは――
「ウィ…ル……!エト…ワー…ル!」
ふたりが、俺を助けに来てくれた。助かった――のか?
「ノア!?」
「貴様ぁ!ノアに何をした!!」
ふたりの顔色が変わった気がした。俺の上半身の服が引きちぎられ半裸で、首が血に濡れているのに気づいたのだろうか。
「おっと、動くなよ」
魔物の腕に引き上げられ、椅子から立たされる。ヤツは背後から俺の首に腕を回し、羽交い絞めにした。
「ノアのかよわい首なんて、簡単に折れちゃうよ」
「く……っ!貴様!汚い手でノアに触るな!」
「ウィル…落ち着いて」
激高するウィルとそれを諫めるエトワール、人質にされた俺、そして俺のうしろで含み笑いをする魔物――
絶体絶命の状況は続いている。
膠着状態は、しばしの静寂をもたらした。
沈黙を破ったのは、エトワールだった。
「その姿、あなたは魔族ですね」
「ククク……その通り!命短きエルフにしては、物知りなことだ」
魔族――城で読んだ書物に記載があった――寿命は約1000年で、角と翼を持ち、人間の血を好む……めったに人間の前に姿を現すことのない種族――
だが今、俺たちの目の前に、それはいた。
「それで、あなたの望みは?」
「いいね…賢いエルフは好きだよ。そっちの、今にもこちらに飛びかかってきそうな人間だけだったら、返り討ちにしちゃっておしまいだった……せっかくキレイな子なのに、そんなのつまらないよねぇ」
ウィルの剣を握る手に、更なる力が込められたのがわかった。
エトワールは今まで見たことのない鋭い目つきで、俺を捕えている魔族を睨みつけている。
「ねぇ、知ってる?ノアの血って、すごく美味しいんだよ」
「き、貴様……っ!ノアに何をしたんだ!!」
魔族の口元と俺の首の両方が血まみれなのだから、ふたりもわかっているだろう。
「ウィル…っ!気持ちはわかりますが、挑発に乗ってはいけません。ここは私に任せてください」
エトワールがウィルを遮り、前に出る。
「…それで?あなたはどうしたいんですか?名も無き魔族よ」
「きみたちに俺の名前を教えてやる気はないね。俺の望みは……」
ぞっとする手つきで頬を撫でられ、背筋に悪寒が駆け抜ける。
「もっともっと、ノアの血が飲みたい。だから――」
魔族の指が俺の顎を持ち上げ、ヤツと視線の合う向きに顔を傾けられる。
赤い目の中の黒い瞳孔は縦に長く、目の光の強さも相まって、禍々しさを助長していた。
「俺をきみの使い魔にしてよ――ノア」
え……?
階段を駆け上がってくるけたたましい靴音が、俺の耳にも届き始めた。
「「ノアーーーーーーーー!!!」」
扉を蹴り開け、俺の前に現れたのは――
「ウィ…ル……!エト…ワー…ル!」
ふたりが、俺を助けに来てくれた。助かった――のか?
「ノア!?」
「貴様ぁ!ノアに何をした!!」
ふたりの顔色が変わった気がした。俺の上半身の服が引きちぎられ半裸で、首が血に濡れているのに気づいたのだろうか。
「おっと、動くなよ」
魔物の腕に引き上げられ、椅子から立たされる。ヤツは背後から俺の首に腕を回し、羽交い絞めにした。
「ノアのかよわい首なんて、簡単に折れちゃうよ」
「く……っ!貴様!汚い手でノアに触るな!」
「ウィル…落ち着いて」
激高するウィルとそれを諫めるエトワール、人質にされた俺、そして俺のうしろで含み笑いをする魔物――
絶体絶命の状況は続いている。
膠着状態は、しばしの静寂をもたらした。
沈黙を破ったのは、エトワールだった。
「その姿、あなたは魔族ですね」
「ククク……その通り!命短きエルフにしては、物知りなことだ」
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だが今、俺たちの目の前に、それはいた。
「それで、あなたの望みは?」
「いいね…賢いエルフは好きだよ。そっちの、今にもこちらに飛びかかってきそうな人間だけだったら、返り討ちにしちゃっておしまいだった……せっかくキレイな子なのに、そんなのつまらないよねぇ」
ウィルの剣を握る手に、更なる力が込められたのがわかった。
エトワールは今まで見たことのない鋭い目つきで、俺を捕えている魔族を睨みつけている。
「ねぇ、知ってる?ノアの血って、すごく美味しいんだよ」
「き、貴様……っ!ノアに何をしたんだ!!」
魔族の口元と俺の首の両方が血まみれなのだから、ふたりもわかっているだろう。
「ウィル…っ!気持ちはわかりますが、挑発に乗ってはいけません。ここは私に任せてください」
エトワールがウィルを遮り、前に出る。
「…それで?あなたはどうしたいんですか?名も無き魔族よ」
「きみたちに俺の名前を教えてやる気はないね。俺の望みは……」
ぞっとする手つきで頬を撫でられ、背筋に悪寒が駆け抜ける。
「もっともっと、ノアの血が飲みたい。だから――」
魔族の指が俺の顎を持ち上げ、ヤツと視線の合う向きに顔を傾けられる。
赤い目の中の黒い瞳孔は縦に長く、目の光の強さも相まって、禍々しさを助長していた。
「俺をきみの使い魔にしてよ――ノア」
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