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第6章 あなたは私の宝物
7. 贈り物
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優れた魔法詠唱者は予知に長け、直感力が優れているとも聞くが……
護衛の騎士たちが慌ててこちらに駆け寄ってくるのが、目の端に映っている。
「おまえの手の中にあるものを見せろ」
「いえ……しかしこれは……」
手紙は問答無用でひったくられた。
そして――グラヴィスの顔から表情が消えた。
「行くぞ」
「陛下!冷静になってください。手紙の内容はおそらく、追い詰められた敵軍が我らを陥れんと、苦し紛れに弄した稚拙な策略です。信憑性は低いかと……」
「ラウルス。この首飾りが、わからないのか?」
「これが一体、なんだと言うのです?」
「これは、ノアが私に作ってくれたものだ!」
グラヴィスは私の手の中の首飾りを、壊れ物を扱う手つきでそっと、取り上げた。
彼の最愛の弟がまるでそこにいるかのように、愛おし気にうっとりと、赤い宝石に見入っている。
「その石はたしかに我が国を象徴する石、ガーネットですが……それが皇子の作られたものであると、どうしてわかるのですか」
「わかるとも。この首飾りは魔法彫金で作られている。この細工には……ルクスからの私への愛を感じるのだ。私のことを想いながら、あの子はこれを作ってくれた。かわいそうなルクス……捕えられ、ひどい目に合わされているのだ。ああ……なんということだ。どうしてこうなったのだ。やはり、冒険者などさせるのではなかったのか……?」
「陛下……」
かける言葉は、見当たらなかった。
グラヴィスは目に涙を溜めつつも、甲冑を緩め、首飾りを身に着けた。
「私は行く。ルクスを――ノアを助けに」
グラヴィスの目には、決意が宿っていた。
一体誰が、こうなった彼を止められる?
「陛下……兵らは先の戦いで疲弊しています。休息が必要です」
「勝手に休んでいるがいい。私はひとりでも行く」
「ではせめて、動けるものを選別し、回復魔法をかけてやる時間をください。一時間だけでも……」
「……一時間だ。それ以上は待てん」
「御意!」
部下に指示を与える。一秒でも時間が惜しい。披露した兵らには酷なことだが、早急に準備を整えねば。
ザハブルハームは、完全に見誤った。
彼らは触れてはいけないものに、そうとは知らず手を出してしまったのだ。
その愚かさは、自らを滅びの道へと駆り立てる――
今宵、王都ミーナマディーナの空は、魔法の灯火によって明るく照らされた。
数多の帝国軍兵士達が、王都を囲う城壁を包囲している。
「ハディール・ニケ・ザハブルハーム……ハディール・ニケ・ザハブルハーム……ハディール・ニケ・ザハブルハーム……」
呪詛のように手紙の送り主の名を唱えるグラヴィスに、一抹の不安を覚えずにはいられなかった。
護衛の騎士たちが慌ててこちらに駆け寄ってくるのが、目の端に映っている。
「おまえの手の中にあるものを見せろ」
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手紙は問答無用でひったくられた。
そして――グラヴィスの顔から表情が消えた。
「行くぞ」
「陛下!冷静になってください。手紙の内容はおそらく、追い詰められた敵軍が我らを陥れんと、苦し紛れに弄した稚拙な策略です。信憑性は低いかと……」
「ラウルス。この首飾りが、わからないのか?」
「これが一体、なんだと言うのです?」
「これは、ノアが私に作ってくれたものだ!」
グラヴィスは私の手の中の首飾りを、壊れ物を扱う手つきでそっと、取り上げた。
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「その石はたしかに我が国を象徴する石、ガーネットですが……それが皇子の作られたものであると、どうしてわかるのですか」
「わかるとも。この首飾りは魔法彫金で作られている。この細工には……ルクスからの私への愛を感じるのだ。私のことを想いながら、あの子はこれを作ってくれた。かわいそうなルクス……捕えられ、ひどい目に合わされているのだ。ああ……なんということだ。どうしてこうなったのだ。やはり、冒険者などさせるのではなかったのか……?」
「陛下……」
かける言葉は、見当たらなかった。
グラヴィスは目に涙を溜めつつも、甲冑を緩め、首飾りを身に着けた。
「私は行く。ルクスを――ノアを助けに」
グラヴィスの目には、決意が宿っていた。
一体誰が、こうなった彼を止められる?
「陛下……兵らは先の戦いで疲弊しています。休息が必要です」
「勝手に休んでいるがいい。私はひとりでも行く」
「ではせめて、動けるものを選別し、回復魔法をかけてやる時間をください。一時間だけでも……」
「……一時間だ。それ以上は待てん」
「御意!」
部下に指示を与える。一秒でも時間が惜しい。披露した兵らには酷なことだが、早急に準備を整えねば。
ザハブルハームは、完全に見誤った。
彼らは触れてはいけないものに、そうとは知らず手を出してしまったのだ。
その愚かさは、自らを滅びの道へと駆り立てる――
今宵、王都ミーナマディーナの空は、魔法の灯火によって明るく照らされた。
数多の帝国軍兵士達が、王都を囲う城壁を包囲している。
「ハディール・ニケ・ザハブルハーム……ハディール・ニケ・ザハブルハーム……ハディール・ニケ・ザハブルハーム……」
呪詛のように手紙の送り主の名を唱えるグラヴィスに、一抹の不安を覚えずにはいられなかった。
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