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第7章 命の代償
10. ドラゴン
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これが、ドラゴン――
10メートルは優に超えているであろう巨躯。そして底知れぬ魔力に、低く轟く咆哮――
足が震えてしまい、立っているのがやっとだ。
ドラゴンに応えたのはラウルスだった。
「偉大なるドラゴンよ。あなたの平穏を妨げてしまったことをまず、お詫びいたします。私はこの地より南の大陸から来ました。ラウルス・アダマースと申します」
さすが――帝国軍近衛騎士団騎士団長。手負いだと言うのに、未知の存在を前にしてもまったく物怖じしていない。
『フン……口のきき方は弁えてはいるようだな。だが、小さく命短き人間の名前などに興味はない。用があるのならさっさと言え』
ドラゴンの口から出る声というか唸りのような音は、言葉かどうかもわからず、とうてい理解できるものではなった。それとは別に、耳を介さず頭の中に直接声が響いてくる。おそらく、魔法の力によるものだろう。
「並ぶ者のいない賢者であるあなたの知恵をお借りしたく、懇願にとやってまいりました。どうか、こちらをご覧ください」
そう言ってラウルスは腕の包帯を解き、左腕の傷をドラゴンに見せた。
『ほう――呪いか』
「ええ……これを解く方法をご存じではありませんか?」
『我にとっては容易いことだが……たかが人間のために我が魔力を使ってやる気はない。だが……解呪の薬の作り方ならば教えてやらんでもない』
「ぜひご教授願いたい」
『見返りは?』
ドラゴンが金銀財宝を好むのは、前世とこの世界でも共通項らしい。
「山ほどの金銀宝石ならばすぐにでもお渡しできますが――」
『そんなくだらないもの、我が欲しがるとでも?』
「失礼いたしました。では、何をご用意しましょうか」
『杖だ……そこの、赤毛のおまえ……』
ドラゴンの金色に光る眼が、俺を鋭い視線で射抜いた。
『いい杖を持っているじゃないか』
「こ、これは……」
兄上からいただいた大切な……
『なんだ……渡せぬというのか?ではこの話は――』
「ま、待ってください!」
考えるまでもない。杖の一本でラウルスの命が助かるのだから……
兄上――ごめんなさい……
「どうぞ、お納めください」
杖を両手で掲げ持ち、ドラゴンに差し出すようにすると、杖は宙に浮かび、ドラゴンの元へと吸い寄せられるように飛んでいってしまった。
杖は新しい主の目の前で止まり、くるくると回っている。
『たしかにこれは、素晴らしい杖だ。どれ――薬の作り方を教えてやろう』
ドラゴンの告げる薬の作り方と必要な材料を、片手しか使えないラウルス以外の全員が書き留めた。
「偉大なるドラゴンよ。あなたの慈悲深さに感謝します」
『ああ……良い取引だった』
「では、これにて失礼いたします」
『うむ。さっさと帰るがよい。だが……』
ドラゴンは一拍置いて、こう続けた。
『また困ったことがあれば、我を頼るとよい。良き見返りを差し出すというのなら、また力を貸してやろう』
ドラゴンの粘りつくような視線を感じ、背筋を悪寒が駆け抜けた。
早くここから離れたい――
それだけを願った。
10メートルは優に超えているであろう巨躯。そして底知れぬ魔力に、低く轟く咆哮――
足が震えてしまい、立っているのがやっとだ。
ドラゴンに応えたのはラウルスだった。
「偉大なるドラゴンよ。あなたの平穏を妨げてしまったことをまず、お詫びいたします。私はこの地より南の大陸から来ました。ラウルス・アダマースと申します」
さすが――帝国軍近衛騎士団騎士団長。手負いだと言うのに、未知の存在を前にしてもまったく物怖じしていない。
『フン……口のきき方は弁えてはいるようだな。だが、小さく命短き人間の名前などに興味はない。用があるのならさっさと言え』
ドラゴンの口から出る声というか唸りのような音は、言葉かどうかもわからず、とうてい理解できるものではなった。それとは別に、耳を介さず頭の中に直接声が響いてくる。おそらく、魔法の力によるものだろう。
「並ぶ者のいない賢者であるあなたの知恵をお借りしたく、懇願にとやってまいりました。どうか、こちらをご覧ください」
そう言ってラウルスは腕の包帯を解き、左腕の傷をドラゴンに見せた。
『ほう――呪いか』
「ええ……これを解く方法をご存じではありませんか?」
『我にとっては容易いことだが……たかが人間のために我が魔力を使ってやる気はない。だが……解呪の薬の作り方ならば教えてやらんでもない』
「ぜひご教授願いたい」
『見返りは?』
ドラゴンが金銀財宝を好むのは、前世とこの世界でも共通項らしい。
「山ほどの金銀宝石ならばすぐにでもお渡しできますが――」
『そんなくだらないもの、我が欲しがるとでも?』
「失礼いたしました。では、何をご用意しましょうか」
『杖だ……そこの、赤毛のおまえ……』
ドラゴンの金色に光る眼が、俺を鋭い視線で射抜いた。
『いい杖を持っているじゃないか』
「こ、これは……」
兄上からいただいた大切な……
『なんだ……渡せぬというのか?ではこの話は――』
「ま、待ってください!」
考えるまでもない。杖の一本でラウルスの命が助かるのだから……
兄上――ごめんなさい……
「どうぞ、お納めください」
杖を両手で掲げ持ち、ドラゴンに差し出すようにすると、杖は宙に浮かび、ドラゴンの元へと吸い寄せられるように飛んでいってしまった。
杖は新しい主の目の前で止まり、くるくると回っている。
『たしかにこれは、素晴らしい杖だ。どれ――薬の作り方を教えてやろう』
ドラゴンの告げる薬の作り方と必要な材料を、片手しか使えないラウルス以外の全員が書き留めた。
「偉大なるドラゴンよ。あなたの慈悲深さに感謝します」
『ああ……良い取引だった』
「では、これにて失礼いたします」
『うむ。さっさと帰るがよい。だが……』
ドラゴンは一拍置いて、こう続けた。
『また困ったことがあれば、我を頼るとよい。良き見返りを差し出すというのなら、また力を貸してやろう』
ドラゴンの粘りつくような視線を感じ、背筋を悪寒が駆け抜けた。
早くここから離れたい――
それだけを願った。
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