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第8章 呪われた世界
2. きみじゃない
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誰も口を開けなかった。
「フン……みんな、ノアじゃなくてぼくで、がっかりしてるんだろうね」
乗っ取られていた……?どういうことなんだ?
悪い冗談であってくれれば、どんなによかっただろうか。
「ルクス皇子……?」
「ラウルス!おまえはぼくの味方だよね?」
「……もちろんです。ですが、私は『ノア』に命を救われた身として、彼の為にできうる限りのことをするつもりです」
「できうる限り?……ぼくに何かするつもりなの?」
「そういうことでは……」
「……どうだか」
重たい空気が場に流れる。身の置きどころに困るような、気まずい沈黙を破ったのは、エトワールだった。
「私たちはまだ事態の全容を把握できていなくて……三日前、いったい何が起こったのでしょうか?」
ルクスは上体を起こし、枕に背を持たせかけて楽な姿勢を取った。そして、あの日何が起こったのかを話し始めた。
「きみたちは邪悪なドラゴン……サナトリオルムに騙されていたんだ。ノアは気づいていなかったけど、ぼくは船に乗ってるときにノアの中で目を覚ました。それからずっと、ノアの中からきみたちを見ていたよ。三日前――ラウルスに薬を飲ませた直後だったかな。やつはノアにだけ魔法を使って話しかけてきた。ぼくとノアは不思議な体験をした。からだはここにいたけれど、こころだけをドラゴンの住処の青い洞窟に飛ばされたんだ。そこは現実世界とは時間の流れも違う場所だった。それから……やつはドラゴンから姿を変え、黒いローブでフードを深く被った男の姿になった。ラウルスの呪いを解く薬なんて出鱈目で、きみたちが苦労して作らされたのはただの劇薬だったと言ってぼくたちを嘲笑っていた。サナトリオルムはラウルスを助けたければ、ノアに魂を差し出せと持ち掛けた。そしてノアは――あとはきみたちも知ってのとおりさ」
「ああ……なんてこった」
重い沈黙――…
なにかが引っかかる……
黒いローブでフードを深く被った男?
どこかで……
「サナトリオルム……?」
「閣下?何か、ご存知なのですか?」
閣下は眉根を寄せて何事かを思案されている。いつになく深刻そうな面持ちだった。
「サナトリオルムとは……」
そのときだった。
ドオオオオォン――!!!
轟音と大地を揺るがす振動が、二人の会話を妨げた。
「これは――」
閣下が扉に向かって走り出したので、俺たちもそれに続いた。
「いったい、何が起こったんだ!?」
「この魔力――あの人だ」
「ニケ?」
「もう十日以上前になるのか……僕はこの魔力の持ち主に殺されかけた」
「――グラヴィス陛下!?」
「じゃあさっきのは、里の魔法の扉が破壊された音か!?」
「まずい……っ!里のみんなが危ないぞ!」
魔族の治癒師、ミーカも俺たちの後に続いていた。
「急ぎましょう!」
「フン……みんな、ノアじゃなくてぼくで、がっかりしてるんだろうね」
乗っ取られていた……?どういうことなんだ?
悪い冗談であってくれれば、どんなによかっただろうか。
「ルクス皇子……?」
「ラウルス!おまえはぼくの味方だよね?」
「……もちろんです。ですが、私は『ノア』に命を救われた身として、彼の為にできうる限りのことをするつもりです」
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「そういうことでは……」
「……どうだか」
重たい空気が場に流れる。身の置きどころに困るような、気まずい沈黙を破ったのは、エトワールだった。
「私たちはまだ事態の全容を把握できていなくて……三日前、いったい何が起こったのでしょうか?」
ルクスは上体を起こし、枕に背を持たせかけて楽な姿勢を取った。そして、あの日何が起こったのかを話し始めた。
「きみたちは邪悪なドラゴン……サナトリオルムに騙されていたんだ。ノアは気づいていなかったけど、ぼくは船に乗ってるときにノアの中で目を覚ました。それからずっと、ノアの中からきみたちを見ていたよ。三日前――ラウルスに薬を飲ませた直後だったかな。やつはノアにだけ魔法を使って話しかけてきた。ぼくとノアは不思議な体験をした。からだはここにいたけれど、こころだけをドラゴンの住処の青い洞窟に飛ばされたんだ。そこは現実世界とは時間の流れも違う場所だった。それから……やつはドラゴンから姿を変え、黒いローブでフードを深く被った男の姿になった。ラウルスの呪いを解く薬なんて出鱈目で、きみたちが苦労して作らされたのはただの劇薬だったと言ってぼくたちを嘲笑っていた。サナトリオルムはラウルスを助けたければ、ノアに魂を差し出せと持ち掛けた。そしてノアは――あとはきみたちも知ってのとおりさ」
「ああ……なんてこった」
重い沈黙――…
なにかが引っかかる……
黒いローブでフードを深く被った男?
どこかで……
「サナトリオルム……?」
「閣下?何か、ご存知なのですか?」
閣下は眉根を寄せて何事かを思案されている。いつになく深刻そうな面持ちだった。
「サナトリオルムとは……」
そのときだった。
ドオオオオォン――!!!
轟音と大地を揺るがす振動が、二人の会話を妨げた。
「これは――」
閣下が扉に向かって走り出したので、俺たちもそれに続いた。
「いったい、何が起こったんだ!?」
「この魔力――あの人だ」
「ニケ?」
「もう十日以上前になるのか……僕はこの魔力の持ち主に殺されかけた」
「――グラヴィス陛下!?」
「じゃあさっきのは、里の魔法の扉が破壊された音か!?」
「まずい……っ!里のみんなが危ないぞ!」
魔族の治癒師、ミーカも俺たちの後に続いていた。
「急ぎましょう!」
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