某国の皇子、冒険者となる

くー

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第8章 呪われた世界

3. 来訪

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私が、グラヴィスを止めなければ――

外への出入り口である岩を掘って造られた通路の付近には、たくさんの魔族たちが集まっていた。
角と翼を持った姿の魔族が多く、里は騒然としていた。無理もない……里を守る魔法の扉が外から壊されてしまったのだから。通路の先には元は扉だったろう瓦礫が積み重なり、陽の光が差し込んでいた。

ジンは殺気立つ魔族たちの前に進み出ると、手を上げて彼らの行く手を遮ろうとしている。

「みんな、落ち着いて!」
「ジン!これはどういうことなんだ!おまえの仲間の仕業なのか!?」
「ち、違う……たぶん違うけど!俺たちがなんとかするから、手出し無用で頼む!」
「はあ!?里が攻撃を受け破壊されたというのに、何もせず黙って見ていろと言うのか!?」
「難しいだろうけど……誰にも傷ついてほしくないんだ!」

魔族たちはざわめき、口々にジンの言動への疑問を唱えている。

「みんな!ここはジンに任せてみよう!」
ミーカがジンの隣へ並び立ち、魔族たちへと訴えかけた。

「ミーカ!おまえまで……」


魔族たちはジンとミーカの要望を渋々ながらも受け入れ、しばらくは事を静観すると約束してくれたのだった。

ひとまず、最悪の事態は避けることができたが、安堵するにはまだ早いだろう。
グラヴィスと魔族たちを争わせるわけにはいかない。

「閣下……俺たちに何かできることはありますか?」
ウィルが心配げな面持ちで伺いを立ててきた。

「私が単独で陛下と話をしてくる。悪いが……ニケ、きみはどこか……目につかない場所で待機していてくれ」
「……わかりました」

私は振り返って仲間たちににひとつ頷くと、通路の先へと歩を進めた。


破壊された扉の残骸がそこかしこに飛び散っている。
遠目からも確認できていたが、扉があった場所に立っているのは、ベルムデウス帝国皇帝であるグラヴィス・ベルムデウスだった。
その背後には少し距離をおいて十数名の騎士たちが控えていた。

少し――痩せたか?それに、顔色も悪い……無理もないが……

「グラヴィス」
「ラウルス……!」

グラヴィスはこちらに走り寄ってきた。

「おまえ、腕の怪我は……呪いを解いたのか?一体どうやって……」
「ああ、仔細は後程話すが……いきなり門を破壊するとは、まずいことをしてくれたな。住民たちは殺気立っているぞ」
「……ここにはノアがいるだろう。だが、人間ではない者たちの魔力を多数感じる。居ても立ってもいられなかったのだ」

グラヴィスは眉根を寄せ、苦悩しているようであった。

「王都で別れたときよりは落ち着いてはいるようだな。まあ……ここに来ている時点で冷静とは到底言えないが……」

今頃、帝国の軍務や政務を担う者たちは、どうしているのだろうか……。突然にもたらされた最高指導者の不在に、混乱せずにいられるわけがない。
考えると胃がキリキリと痛みだした。やめよう……

「ああ……あの日の私はどうかしていた。おまえが止めてくれなければ、取り返しのつかないことをしていただろう」
「……その言葉を信用していいものか、まだ確証は持てないが……こちらもかなり厄介なことになっている」
「どういうことだ?」
「サナトリオルムが絡んでいる」

グラヴィスの顔色が変わった。



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