ラビュステル 〜呼ばれし者と死者たちの王国〜

くー

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第一章 失くした記憶と巡り会う運命

10. 適性検査

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 ギルドには、冒険者の魔法の習得適正や魔力を計測する機器が設置されていた。ルークの口利きで、僕たちは冒険者登録の前に各々の適正を計測をしてもらうことになった。
 
 計測器である腕輪を装着し、椅子に着席する。ギルドの術士が魔法を唱え、見慣れない機器を何やら操作している。しばらくすると羽ペンがひとりでに動き出し、紙に何かを書き付け始めた。
 あれも魔法か——?すごいな……
 
「計測は終わりです。次の方どうぞ」
 次はクロの番だ。クロの計測を待つ間に僕の検査結果が出たようで、魔法の羽ペンによって自動筆記された結果用紙を渡された。細かい文字がぎっしりと並んでいる。
 
「アルシュ……わかる?」
「どれどれ…………あ!」
 アルシュが嬉しそうな声を上げた。
「ミツキは治癒魔法の才能があるって!」
 
「治癒魔法?」
 治癒魔法を使えば、傷を癒し、魔物などから受けた毒を解毒し、疲れを軽減させたりすることができるそうだ。極めれば瀕死の傷すらも治癒できるらしい。
 
「僕にそんな力が……」
「よかったね、ミツキ!」
「でも、どうやったら使えるようになるんだろう……」
「魔術を使うための道具はいくつかあるが、初歩学習に適しているのはやはり、杖だろう」
「クロ!」
 なんでも知っているんだなあ……記憶喪失なのに……
 
「次はぼくの番だ!行ってくるね」
 アルシュは計測係の術士に大きな声で、お願いします!と挨拶していた。
「明日、街にある店に杖を見に行こう」
「……けっこう高い?」
「いや……初級者用の杖ならば、それほどかからないだろう」
 よかった……心苦しいけれど、アルシュにお願いして立て替えてもらおう。
「クロは検査どうだった?」
「まだ結果待ちだ。そろそろ……ああ、ちょうどいま出たようだ」
 
 クロは検査の結果、治癒魔法と四大元素魔法、両方の適正があるらしい。四大元素魔法とは、火、水、風、地を司る四つの元素を操る魔法で、魔物との戦闘時には主に攻撃魔法として用いられている。また、日常生活においても多岐に渡って応用が可能で、明かりを点けたり水を生成したりと、工夫次第で生活を極めて便利にできるという。
 
「私は治癒魔法よりも、四大元素魔法の方が適正値が高いようだ。ふむ……ソーサラーを目指すべきかな」
「クロはどっちの適正もあっていいなあ」
 でもまあ、異世界出身であるにもかかわらず、魔法の適正があっただけよかった。もしも、適正ゼロと検査結果が出ていたら……これといった特技もないし…………考えるのはよそう。

「どれ……」
 クロは身を乗り出して、僕の結果用紙を覗き込んだ。
「ミツキは私よりも治癒魔法の適正値が高いぞ」
「えっ……ほんと?」
「それに、四大元素魔法の素質も僅かだがある。努力次第で十分に習得可能なはずだ」
 
 クロと自分の結果を見比べてみたが、まだ不慣れな文字のせいでよくわからなかった。けれども、クロがどちらかといえば不得意な分野の方に適正があるらしきことは嬉しい。これから先、冒険者としてパーティを組んだとき、お互いの弱点を補って助け合えれば……何だか、少し希望が見えた気がした。
「ミツキはヒーラーだな」
「ヒーラーかあ……」

 計測の準備を待っている間に教えてもらったのだが、この世界の冒険者にはジョブという、扱える技能をにちなんだ呼称があるようだ。近接武器による物理攻撃を主体とするならばファイター、治癒魔法を用いてパーティの回復・補助役を担うならばヒーラー、四大元素魔法を自在に操り魔法で敵を攻撃するならば、ソーサラーといった具合らしい。

 魔法の修行を積まないとな……でも、一体どうやるんだろう……
 
「ミツキ、クロ!見て見てー!」
 検査を終えたアルシュが、結果用紙を掲げて小走りに駆けてきた。
 
「ぼくはね、ほんのちょっぴりだけど四大元素魔法の適正があるんだって!」
「ふうん……アルシュは弓の才能に加えて、魔法適正まであるのか」
「えへへへ…まあね!ぼくは弓が専門のアーチャーを鍛えたいんだ。それでね、四大元素魔法を使えると、色んな技が使えるようになるんだって、シャルロ兄ちゃんが言ってたの」
 へえ……魔法には色々な使い方があるんだなあ。
 
「よかったね、アルシュ」
「うん!」
「明日はみなの装備を、店に見繕いに行かなければな」
「みんなで買い物⁉︎何それ楽しそう!」
「……だね!」
 お金の心配をせずにはいられないけど……なんとかなるといいなあ……


 
「よっ!終わったみたいだな」
 部屋の隅の方でギルドの職員と何事か話し込んでいたルークが、僕らの方へ近づいてきた。
 
「ルーク!聞いて聞いて!ぼくたちみんな、魔法が使えるようになるんだって!」
「おぉっ!すげぇじゃん。俺にも見せてくれよ」
 ルークに僕らの検査結果をまとめて渡した。
 
「ふんふん…………ミツキはヒーラー、クロはソーサラー、アルシュはアーチャーか。悪くないバランスだが、できれば前衛で戦えるファイターがほしいな」
「うーん。たしかに……ミツキとクロが呪文を詠唱している間、魔物を前に出て食い止めないとね……」
「実は俺、ファイターなんだよな」
「え……じゃあ……」
「ああ!俺たちでパーティ組もうぜ。盾役は任せときな」
「やったー‼︎」

 アルシュは素直に喜んでいるが、問題は……。僕は恐る恐る、クロの方へと振り返った。
 
「…………」
 
 クロは腕を組み目を伏せ、何事か思案しているようだ。
「クロ?」
「ルーク……」
「なんだよ、クロ?」
「きみは余程のお人好しで、かつ暇人のようだな。一体……」
「もう、クロったら!ルークはとってもいい人なの!失礼なこと言ったらダメ!」
 クロの言葉を遮り、アルシュは強い口調でいった。どうやらアルシュはルークの味方らしい。

「アルシュ……」
「ははは。ありがとうな、アルシュ」
 くしゃり、と少年の金色の髪を撫でるルーク。チッ……という、クロの舌打ちが聞こえた。
「ミツキはどう思う」
「僕は……」
 
 クロはルークをかなり疑っている。何か裏があるのではないか、と……
 うーん……
 
「ルークはギルドに顔がきくし、経験のある冒険者だよね。駆け出しの僕たちとパーティを組んでも、あまりメリットがない気がするんだけれど」
 ルークは片眉を上げ、肩を竦めた。
「メリットね……"仕事は楽しく"が俺のモットーなんだ。あんたたちとなら楽しくやれそうだと思ったんだが……それだけじゃだめか?」
「だめじゃないよう!」
「まあ……正直、盾役がいてくれると有難い……気がするなあ」
 
 クロにちらりと目線をやると、ああもう——ルークを鋭く睨みつけていた。対するルークは薄笑いを浮かべ、クロの剣幕を前にしても常と変わらず飄々としている。
 クロとルークの視線がぶつかり合う。重苦しい空気が場に流れ——先に目を逸らしたのはクロだった。
 
「勝手にすればいい……」
 顔を逸らし、不承不承といった態度を崩さないクロ。ルークはアルシュの方へと振り返り、ニッと笑いかけた。
「……だってさ」
「やったー!ルークが仲間だー!」
 
 
 クロとルーク……残念な事に、二人はあまり相性がよくなさそうだ。クロは警戒心が強いから、出会って間もないルークを警戒しているんだろうな。パーティを組んで一緒に過ごしていく内に、良い方向に関係が変わっていってくれるといいんだけど……
 
 ——ん?
 
 僕とアルシュともクロと出会ったばかりじゃないか。ルークと一体何が違うんだろうか……


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