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第一章 失くした記憶と巡り会う運命
12. 魔術書
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朝食を食いはぐれてなるものかと二人を起こし(クロは低血圧らしく、寝起きが悪くて大変だった)なんとか食堂にたどり着いた。
朝食は焼き立てのふわふわなパンに自家製のジャム、カリカリに焼いたベーコン、絶妙な味つけの炒り卵、青野菜のサラダやじゃがいものポタージュなど、どれも素材の味を活かした心のこもった料理で、朝から大満足だった。
部屋に戻ろうとすると、宿の女将さんが「がんばんな!」という激励の言葉とともに、三人それぞれに紙包を渡してくれた。中を見てみるとサンドイッチと自家製ジュースのビンが入っていた。
これ、絶対おいしいやつ!
みんなで女将さんにお礼を言い、ホクホクで部屋に戻った。
「約束の時間までしばらく時間があるな。どうする?」
「街を見て回るとか?」
「ぼく、お店に行きたい!ミツキとクロの魔法の杖を買わないとだし、ぼくも魔術書がほしいな」
「よし、では街を見て回りながら店を覗いてみようか」
「さんせー!」
女将さんに見送られて宿を出発し、街の中心部へ向かってしばらく歩くと、目抜き通りにたどり着いた。武器屋、魔術用品店などが店を構えており、冒険者として活動するにあたり必要なものは一通り揃えることができそうだ。僕たちはまず、魔術用品店を覗いてみた。
「わ~!」
店内には所狭しと様々な魔術用品が展示されている。中には瓶の中で溶液漬けにあやしげな肉塊など、無気味なものも……
アルシュは目を輝かせて店内を見回している。
「すごいね!ぜ~んぶ欲しくなっちゃう!」
「何をお探しでしょうか?」
声をかけてきた店員に相談し、ちょうどいい品物を見繕ってもらった。冒険者ギルドで明日仕事の予定だと告げると、値段をおまけしてくれた。お礼を言って、店を出た。
「かなりまけてもらえたね」
「ね!得しちゃったね。早く読みたいな~」
アルシュは先ほどの店で買った二冊の魔術書を胸に抱えていた。一冊は四大元素魔法基礎学、もう一冊は弓使いのための魔法応用術だ。クロも二冊の魔術書を手に入れていた。一冊はアルシュと同じ四大元素魔法基礎学、そしてもう一冊は治癒魔法基礎学の魔術。僕が手に入れた……というか、アルシュにお金を借りて買ったのは一冊。クロと同じ、治癒魔法の魔術書だ。
「この本を読み終えたときには、魔法が使えるようになってるのかなあ……」
「どうだろう。魔法を学ぶための学校もあるらしいから、誰でもすぐに習得できるというものではないだろう」
「そ、そうなんだ……」
「だが、明日には仕事が控えている。アルシュは弓が扱えるからいいが、私たちは……」
「護衛任務だよね……魔法が使えなかったら、できること、と言えば身を挺して盾になるくらいしか……」
「ううむ……魔法が習得できなかった場合は、接近戦用の装備を揃えなければならないか……」
「接近戦……」
魔物とガチで戦うなんて……手のひらに乗るサイズの昆虫ですら倒せるかどうか微妙なのに……?というか、まだ魔物を直に見たこともないんだけれど……
「ふたりとも、心配しすぎだよ~。大丈夫!クロとミツキならすぐに使えるようになるよ」
「ありがと、アルシュ。そうだといいんだけどなあ……」
それから僕たちは公園に行き、お昼のサンドイッチを食べながら魔術書を読むことにした。昨日の夕食や今朝の朝食時は会話が絶えなかったが、いまは魔術書を読むため各々集中している。
この魔術書、厚さが辞書くらいあるんだけど……勉強って苦手なんだよなあ……
ページを開くと、見慣れない文字の羅列が目に飛び込んできた。
ああ~!そうだった……まず、文字を読むのですら、すごく時間がかかるんだった……これを今日中に⁉︎無理でしょ……
「ファイア!」
「え……?」
クロの呪文を唱える声が聞こえた。まさか……
背後を振り返ってみると、いつの間に集めたのか、木の葉の塊が燃えて焚き火となっていた。薪の正面には杖を構えたクロの姿。
「クロ、すごーい!」
「もう魔法が使えたの……⁉︎早すぎだろ‼︎」
「まあ……元々おおかたの理論は覚えていたんだ。だが、魔法を使うには体に流れる魔力の流れを意識しなければならない。そこさえ抑えることができれば……という状態だった。そして、そのやり方というかコツがこの魔術書に記されていたんだ」
そういえば、クロは昨日、街へ向かう道中でも魔法を使おうとしていた。そのときはあと一歩で、惜しかったんだっけ……
「本当にすごいよ!魔術書をほんのちょっと読んだだけで魔法を使えるようになるなんて……」
「う、うん……さすがクロだ」
「まずは第一歩というところだが……二人とも、ありがとう」
クロは目を細めて嬉しそうに微笑った。普段はつり目がちのきつい眼差しが、いまは穏やかに和らいでいrじゅ。
「クロ……お願いがあるんだけど」
「なんだ?」
「もし、時間が余ってたらでいいんだけど、僕に魔法の使い方を教えてくれない……?」
「もちろん、かまわない」
「あっ、そっか!ミツキは文字を読むのが苦手だったんだ……ぼくもミツキを手伝うよ」
「アルシュ……!ありがとう‼︎」
「私も協力を惜しまない。打ち合わせを終えて宿に戻ったら、さっそく取り掛かることにことにしよう」
「二人とも……っ!ありがとう~!」
仲間想いなクロとアルシュは頼もしく、もしかしたら今日中に……?なんて希望が湧いてきていた。気持ちを持ち直したところで、僕たちは公園から冒険者ギルドへと向かう。明日の任務の打ち合わせに出席するためだ。 ギルドの中に入ると、出入り口付近でルークが待っていてくれた。
「おう!」
「ルーク!」
「奥の個室を押さえてある。そっちで依頼人を待とう」
個室に通されてから程なくして、依頼人である初老の男性が、ギルドの職員に案内されて現れた。職員から紹介を受けた依頼人、ローウェル氏は人の良さそうな中年男性だ。
朝食は焼き立てのふわふわなパンに自家製のジャム、カリカリに焼いたベーコン、絶妙な味つけの炒り卵、青野菜のサラダやじゃがいものポタージュなど、どれも素材の味を活かした心のこもった料理で、朝から大満足だった。
部屋に戻ろうとすると、宿の女将さんが「がんばんな!」という激励の言葉とともに、三人それぞれに紙包を渡してくれた。中を見てみるとサンドイッチと自家製ジュースのビンが入っていた。
これ、絶対おいしいやつ!
みんなで女将さんにお礼を言い、ホクホクで部屋に戻った。
「約束の時間までしばらく時間があるな。どうする?」
「街を見て回るとか?」
「ぼく、お店に行きたい!ミツキとクロの魔法の杖を買わないとだし、ぼくも魔術書がほしいな」
「よし、では街を見て回りながら店を覗いてみようか」
「さんせー!」
女将さんに見送られて宿を出発し、街の中心部へ向かってしばらく歩くと、目抜き通りにたどり着いた。武器屋、魔術用品店などが店を構えており、冒険者として活動するにあたり必要なものは一通り揃えることができそうだ。僕たちはまず、魔術用品店を覗いてみた。
「わ~!」
店内には所狭しと様々な魔術用品が展示されている。中には瓶の中で溶液漬けにあやしげな肉塊など、無気味なものも……
アルシュは目を輝かせて店内を見回している。
「すごいね!ぜ~んぶ欲しくなっちゃう!」
「何をお探しでしょうか?」
声をかけてきた店員に相談し、ちょうどいい品物を見繕ってもらった。冒険者ギルドで明日仕事の予定だと告げると、値段をおまけしてくれた。お礼を言って、店を出た。
「かなりまけてもらえたね」
「ね!得しちゃったね。早く読みたいな~」
アルシュは先ほどの店で買った二冊の魔術書を胸に抱えていた。一冊は四大元素魔法基礎学、もう一冊は弓使いのための魔法応用術だ。クロも二冊の魔術書を手に入れていた。一冊はアルシュと同じ四大元素魔法基礎学、そしてもう一冊は治癒魔法基礎学の魔術。僕が手に入れた……というか、アルシュにお金を借りて買ったのは一冊。クロと同じ、治癒魔法の魔術書だ。
「この本を読み終えたときには、魔法が使えるようになってるのかなあ……」
「どうだろう。魔法を学ぶための学校もあるらしいから、誰でもすぐに習得できるというものではないだろう」
「そ、そうなんだ……」
「だが、明日には仕事が控えている。アルシュは弓が扱えるからいいが、私たちは……」
「護衛任務だよね……魔法が使えなかったら、できること、と言えば身を挺して盾になるくらいしか……」
「ううむ……魔法が習得できなかった場合は、接近戦用の装備を揃えなければならないか……」
「接近戦……」
魔物とガチで戦うなんて……手のひらに乗るサイズの昆虫ですら倒せるかどうか微妙なのに……?というか、まだ魔物を直に見たこともないんだけれど……
「ふたりとも、心配しすぎだよ~。大丈夫!クロとミツキならすぐに使えるようになるよ」
「ありがと、アルシュ。そうだといいんだけどなあ……」
それから僕たちは公園に行き、お昼のサンドイッチを食べながら魔術書を読むことにした。昨日の夕食や今朝の朝食時は会話が絶えなかったが、いまは魔術書を読むため各々集中している。
この魔術書、厚さが辞書くらいあるんだけど……勉強って苦手なんだよなあ……
ページを開くと、見慣れない文字の羅列が目に飛び込んできた。
ああ~!そうだった……まず、文字を読むのですら、すごく時間がかかるんだった……これを今日中に⁉︎無理でしょ……
「ファイア!」
「え……?」
クロの呪文を唱える声が聞こえた。まさか……
背後を振り返ってみると、いつの間に集めたのか、木の葉の塊が燃えて焚き火となっていた。薪の正面には杖を構えたクロの姿。
「クロ、すごーい!」
「もう魔法が使えたの……⁉︎早すぎだろ‼︎」
「まあ……元々おおかたの理論は覚えていたんだ。だが、魔法を使うには体に流れる魔力の流れを意識しなければならない。そこさえ抑えることができれば……という状態だった。そして、そのやり方というかコツがこの魔術書に記されていたんだ」
そういえば、クロは昨日、街へ向かう道中でも魔法を使おうとしていた。そのときはあと一歩で、惜しかったんだっけ……
「本当にすごいよ!魔術書をほんのちょっと読んだだけで魔法を使えるようになるなんて……」
「う、うん……さすがクロだ」
「まずは第一歩というところだが……二人とも、ありがとう」
クロは目を細めて嬉しそうに微笑った。普段はつり目がちのきつい眼差しが、いまは穏やかに和らいでいrじゅ。
「クロ……お願いがあるんだけど」
「なんだ?」
「もし、時間が余ってたらでいいんだけど、僕に魔法の使い方を教えてくれない……?」
「もちろん、かまわない」
「あっ、そっか!ミツキは文字を読むのが苦手だったんだ……ぼくもミツキを手伝うよ」
「アルシュ……!ありがとう‼︎」
「私も協力を惜しまない。打ち合わせを終えて宿に戻ったら、さっそく取り掛かることにことにしよう」
「二人とも……っ!ありがとう~!」
仲間想いなクロとアルシュは頼もしく、もしかしたら今日中に……?なんて希望が湧いてきていた。気持ちを持ち直したところで、僕たちは公園から冒険者ギルドへと向かう。明日の任務の打ち合わせに出席するためだ。 ギルドの中に入ると、出入り口付近でルークが待っていてくれた。
「おう!」
「ルーク!」
「奥の個室を押さえてある。そっちで依頼人を待とう」
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