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第一章 生霊
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この話は、岡田茂吉という霊能者の話である。私は彼の話を真実であると確信したために、ここに公表するものである。
読者の皆さんもそのつもりで読んで欲しい。
ー某大学生に女が生霊として憑依した怖い話ー
こういう事もあった。某大学生に霊の話をした処仲々信じない。「それなら僕に何か憑依霊があるか査べてくれ。」
というので、早速霊査法に取り掛かった。
間もなく彼は無我に陥り、若い女らしい態度で喋舌り出した。その憑依霊というのは、当時浅草公園の銘酒屋の女で時たま遊びに来るこの大学生に恋愛し、生霊となり、憑依したものである。
この霊の要求は「この人はちっとも来てくれないので、逢いたくて仕方がないから来るように言って欲しい。」というのである。
私も生霊とは言いながら惚れた男の言伝てを頼まれたという訳でまことにご苦労千万な次第である。
そうして覚醒するや彼は怪訝な顔をしている。私は「どうでしたか?」
と聞くと、彼は「無我に陥ったのか全然判らなかった。」というので、私はその女の話した所、彼はビックリして恥ずかしいそうに頭を掻きかき畏れいって霊の存在を確認したのである。
ー若い芸者の場合ー
或る所で若い芸者を霊査したことがあった。
すると旦那の霊が出てきたので、私は様々質問したところ、以下の如き事情が判かった。
その生霊は某砂糖問屋の主人で、「今晩この芸者に会う約束がしてあった処、拠ない用が出来、遇《あ》う事が出来ないから明晩遇うという事を伝えてくれ。」というのである。
その言葉も態度も先ず四、五十歳位の男性の通りであったから疑う余地はない。
その話をすると、彼女はびっくりした。
自分は無我に陥って何を喋舌ったか全然判らなかったので、私の話により、上記の生霊の言う通りに約束がしてあったというのであった。
ー二十歳位某家の令嬢、私の所へ来て訴えるには、「自分は近頃憂鬱症に罹ったようで世の中が味気なくて困る。」というので、私は「貴女のような健康そうで而も十人並み以上の美人でありながら、理屈にあわないではないか。何か余程の原因が無くてはならない。」と様々尋ねた処やっとそれがわかった。
と言うのは、近所にいるある青年が、その娘に恋慕し「手紙や様々の手段で自分を承知させようとするけれども、私はその青年が嫌いで何回も断ったところ、その青年は始終私の家の付近に来るので、恐ろしくてめったに外出もできない。」という。
私は「その男の生霊が貴女に憑くのだ。」
ということを聞かせたところ、彼女もなるほどと納得し、それから漸次快方に向かい全快したのである。
それは病気でないということがわかったので安心したからである。
現代人に死霊の存在を認識させるのさえ、余程困難であるが、生霊に至っては猶更困難である。しかし疑うことのできない事実である以上、そのつもりで読まれたいのである。生霊に於いてはまだ種々の例があるが、上記に述べてきた三霊だけで充分であると思うから、後は省略するが、生霊は総て男女間の恋愛関係が殆どである。
そうして先ほどご紹介した令嬢の憂鬱症は如何なる訳かというと、相手の男が、失恋のために悲観的想念が霊線を通じて、そのまま令嬢に反映するからである。
上記のように生霊は相手の想念が反映するわけである。故に、上記と反対に両者相愛する場合は、相互の霊線が交流し、非常な快感を催すもので、男女間の恋愛が離れ難い関係に陥るのは、この快感が大いに手伝うからである。又死霊が憑依する場合は悪寒を催し、生霊が憑依する場合は温熱を感ずるものである。
今までご紹介した生霊は他愛もない生霊であり、大して問題ではないが恐ろしい生霊もあるのだ。
それは本妻と妾等の場合や三角関係等で、一人の男を二人の女が相争う場合その嫉妬心が生霊となり闘争するのであるが、大抵は妻君の方が勝つものである。その理由は、正しい方が勝つのは当然であるからで、その場合妻君の執念によって妾の方は病気に罹患すると死亡するとか、又は情夫を作り逃げるとか結局、旦那と離れるようになるものである。
人間の生霊はそれ程でもないが、茲に恐るべきは管狐の生霊である。
これは昔から飯綱使といい、女行者が使うのであって人に頼まれ、怨みを晴らす等の事を引き受けるのであるが、管狐というのは大きさは、メロンの少し小さい位の大きさで白色の軟毛が密生した頗る軽くフワフワとしたもので、その霊は人間の言うことをよく聞き、命令すれば如何なる悪事でも敢行するのである。
飯綱使は昔から関西地方に多く、その地方では飯綱使と縁組するなというそうであるが、これは少し感情を害しでもすると返報返しをされるからである。
また、狐霊の生霊も多く、肉体だけが稲荷や野原に棲息し、生霊だけが活動するのである。
読者の皆さんもそのつもりで読んで欲しい。
ー某大学生に女が生霊として憑依した怖い話ー
こういう事もあった。某大学生に霊の話をした処仲々信じない。「それなら僕に何か憑依霊があるか査べてくれ。」
というので、早速霊査法に取り掛かった。
間もなく彼は無我に陥り、若い女らしい態度で喋舌り出した。その憑依霊というのは、当時浅草公園の銘酒屋の女で時たま遊びに来るこの大学生に恋愛し、生霊となり、憑依したものである。
この霊の要求は「この人はちっとも来てくれないので、逢いたくて仕方がないから来るように言って欲しい。」というのである。
私も生霊とは言いながら惚れた男の言伝てを頼まれたという訳でまことにご苦労千万な次第である。
そうして覚醒するや彼は怪訝な顔をしている。私は「どうでしたか?」
と聞くと、彼は「無我に陥ったのか全然判らなかった。」というので、私はその女の話した所、彼はビックリして恥ずかしいそうに頭を掻きかき畏れいって霊の存在を確認したのである。
ー若い芸者の場合ー
或る所で若い芸者を霊査したことがあった。
すると旦那の霊が出てきたので、私は様々質問したところ、以下の如き事情が判かった。
その生霊は某砂糖問屋の主人で、「今晩この芸者に会う約束がしてあった処、拠ない用が出来、遇《あ》う事が出来ないから明晩遇うという事を伝えてくれ。」というのである。
その言葉も態度も先ず四、五十歳位の男性の通りであったから疑う余地はない。
その話をすると、彼女はびっくりした。
自分は無我に陥って何を喋舌ったか全然判らなかったので、私の話により、上記の生霊の言う通りに約束がしてあったというのであった。
ー二十歳位某家の令嬢、私の所へ来て訴えるには、「自分は近頃憂鬱症に罹ったようで世の中が味気なくて困る。」というので、私は「貴女のような健康そうで而も十人並み以上の美人でありながら、理屈にあわないではないか。何か余程の原因が無くてはならない。」と様々尋ねた処やっとそれがわかった。
と言うのは、近所にいるある青年が、その娘に恋慕し「手紙や様々の手段で自分を承知させようとするけれども、私はその青年が嫌いで何回も断ったところ、その青年は始終私の家の付近に来るので、恐ろしくてめったに外出もできない。」という。
私は「その男の生霊が貴女に憑くのだ。」
ということを聞かせたところ、彼女もなるほどと納得し、それから漸次快方に向かい全快したのである。
それは病気でないということがわかったので安心したからである。
現代人に死霊の存在を認識させるのさえ、余程困難であるが、生霊に至っては猶更困難である。しかし疑うことのできない事実である以上、そのつもりで読まれたいのである。生霊に於いてはまだ種々の例があるが、上記に述べてきた三霊だけで充分であると思うから、後は省略するが、生霊は総て男女間の恋愛関係が殆どである。
そうして先ほどご紹介した令嬢の憂鬱症は如何なる訳かというと、相手の男が、失恋のために悲観的想念が霊線を通じて、そのまま令嬢に反映するからである。
上記のように生霊は相手の想念が反映するわけである。故に、上記と反対に両者相愛する場合は、相互の霊線が交流し、非常な快感を催すもので、男女間の恋愛が離れ難い関係に陥るのは、この快感が大いに手伝うからである。又死霊が憑依する場合は悪寒を催し、生霊が憑依する場合は温熱を感ずるものである。
今までご紹介した生霊は他愛もない生霊であり、大して問題ではないが恐ろしい生霊もあるのだ。
それは本妻と妾等の場合や三角関係等で、一人の男を二人の女が相争う場合その嫉妬心が生霊となり闘争するのであるが、大抵は妻君の方が勝つものである。その理由は、正しい方が勝つのは当然であるからで、その場合妻君の執念によって妾の方は病気に罹患すると死亡するとか、又は情夫を作り逃げるとか結局、旦那と離れるようになるものである。
人間の生霊はそれ程でもないが、茲に恐るべきは管狐の生霊である。
これは昔から飯綱使といい、女行者が使うのであって人に頼まれ、怨みを晴らす等の事を引き受けるのであるが、管狐というのは大きさは、メロンの少し小さい位の大きさで白色の軟毛が密生した頗る軽くフワフワとしたもので、その霊は人間の言うことをよく聞き、命令すれば如何なる悪事でも敢行するのである。
飯綱使は昔から関西地方に多く、その地方では飯綱使と縁組するなというそうであるが、これは少し感情を害しでもすると返報返しをされるからである。
また、狐霊の生霊も多く、肉体だけが稲荷や野原に棲息し、生霊だけが活動するのである。
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