【ミステリー小説】 霊媒探偵事件簿 

蔵屋

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第三巻


 結衣は早速、高級クラブ六波羅に行った。
今回はホステスになって実際に働くことにある。
 殺された相方史花には何か特別なことをしていたのではないかと、思っていたからだ。
 そして史花の周囲には様々な人間ドラマがあった筈であると、結衣は思っていたからである。
 例えばクラブのママは安岡恵子は一体どのような女であり、交友関係はどのようなものであったのか?また、史花との関係は良好であったのだろうか?
 或いはチーママの住友順子には何か、金銭的トラブルがあったのではないのだろうか?
 また、殺された史花とは金銭的なトラブルはなかったのだろうか?
 そして最後にはクラブオーナーの山上健一とは一体どのような男であったのだろうか?
 結衣は特殊な能力がある為史花に関係した様々な交友関係の人物の霊魂を知ることが出来るのだ。
 結衣がクラブホステスとして実際に店に侵入し働くことが出来るなら人間界のすぐ近くにある幽界の中に侵入することが出来るのだ。
 この幽界は人間界の人間達の悪い想念、つまり悪事の想念がつくりだした世界で非常に厄介で怖い世界なのだ。
 結衣はその幽界の怖さをよく知っていた。
 幽界は人間の怨念、執念、我、或いは欲望など人間にはなくてはならない念である。
 そして悪事を働く為の猿知恵という奸智に長けた知恵の持ち主でもある。
 人間は自分の母親の体内に胎児としていた時から神から悪い魂と善の魂の二つを貰っているのだ。
 人間は常に善悪の葛藤があるものだ。  
 抑々この善悪にはその判断に直面する際の複雑な心の揺れや悩みがあるものだ。
 例えば自分に不利な秘密を他人という第三者に知られたとしよう。
 会社の上司にその秘密を知られてしまうと自分は一生出世どころかクビになるかも知れないとする。
 このようなことを考えると何とかしてこの状況を打開しなければならない。
 その為には第三者に罠を仕掛けて殺すことをしなければならない。
 このようなことを考えると自分の心の中に潜んでいる善悪の心の葛藤が始まることになる。
 そして彼の心の底にいる悪の頭目が善の心に打ち勝ち実行にうつして第三者を殺すことにより自分の秘密を知った人間をその都度排除して自分は生き残り益々自分の欲望という目標を手に入れていく。
 ついには自分に同調する悪の人間を一人、二人、三人とつくり出して自分の手下として彼らに命令をして自分にとって邪魔な人間を排除していく。
 このように欲望にまみれた人間は必ず悪事に手を染めて行くことになる。
 このような人間の霊魂は幽界の中に万といて人間界の人々に憑依して悪事をさせているのだ。
 結衣はこのことをよく知っていた。
これは、本来善の心を持っている人間が単に「正しいことをする」「悪いことをやめる」という単純なものではなく、感情や倫理など多角的な要素が絡み合っているのだ。
 だから結衣が対象とする人間をサニワすることにより殺人犯を見つけ出すことが出来るのだ。 
 この善悪の葛藤は、様々な状況や本作品の中で描かれ、人間に深い問いかけを投げかける内容になって行くことになる。
 だからこそ、私のミステリー小説は面白いし読者を物語の内容に釘付けにすることになるのだ。
 個人の善悪の葛藤は、感情や道徳観念、社会的スキルなどによって形成されるものが殆どである。
 人間の感情と行動。特に悪事を働く場合にその人間の葛藤は激しくなる。
 怒りなどの感情は、善悪の議論で見過ごされがちだが、行動の背景にあるそれは如実によく分かるものだ。
 感情に振り回されずに自律的な選択をする力が重要なのだが悪事の心が欲望に支配されていると人間が本来持っている規範意識と道徳的能力は悪の心が打ち勝ち、もう善の心を忘れてしまうのだ。
「善か悪か」を葛藤できる能力は、規範意識や社会的スキルと関連がある筈なのだが悪の心に支配されていると善という考えそのものが無くなり、常に悪事だけを考えるようになる。
 こうなればもう善の心が無いのだから恐ろしいことがなんでも出来るようになるのだ。本来なら普通の人間はこの善の心を失わないものなのだが。
 善の心は個人の成長や社会との関わりの中で育まれるのだが。
 作品中にはヒューマンドラマがあり家族のため、社会の不条理の中で善悪の境を見失って行くことになる。

 また、歴史ドラマに於いては腐敗した国への葛藤を抱えながら、民のために闘うという作品になる。

 或いは犯罪ドラマでは敵味方や善悪の境界を超え、思いがけず感応し合う人間関係を構築していく。

 或いはミステリーという作品に於いては誰かを守るための嘘や、逃げ場のない愛の中で善悪が曖昧になっていく。

 或いは社会派作品に於いては社会の不条理や個人の偏見の中で、善悪の境界線に立ち尽くす等等。

 私は常に善悪の対立を超えた視点で物事を観察しそして様々な人間模様を想像して私自身が想い描いた作品作りを目指している。
 だから時に、善悪という概念自体が、より深い問題の根源として捉えられることもあると言える。
 善悪を二項対立ではなく、多層的な構造として理解するとその作品は非常に面白い作品になるものだ。
 善悪という錯覚が、争いの原因となるという考え方も成り立つ。

 道徳観を持たない存在は、障害となるものを感覚的に排除する。
 結衣はこの幽界という恐ろしい、また、謎めいた世界に今足を踏み入れようとしているのであった。
 
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