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第一七章
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ー(清左衛門の考え)ー
江戸の街は如月に入り、一層底冷えのする寒さであった。
この時代は、地球全体が「小氷期」と呼ばれるミニ氷河期であった。冬の寒さは現代以上に厳しかったのである。エアコンや床暖房といった暖房器具がない江戸時代に於ける寒さ対策の暖房器具と言えば火鉢であった。
さて、この小氷期は14世紀半ばから19世紀半ばの約500年の長期間にわたって続き、特に江戸時代中期頃は非常に寒かった。
家屋の機密性も低く隙間風が“ピュー、ピュー、ピュー“と吹くなか、寒さに震える体を温めたい時に使ったのが火鉢であった。
この火鉢のなかでも「長火鉢と呼ばれるタイプがあったのだ。因みに江戸っ子は「ひ」と「し」の誤用が見られたので「ながしばち」と言ったそうな。
火鉢の歴史は古く、一説には奈良時代には既に原型があったとも言われている。平安時代の女流作家・清少納言の代表作『枕草子』にも、火鉢の前身である「火桶」が登場する。ずいぶん昔から人々を暖めるという知恵があったということだ。とはいえ使える人は貴族や武士など特権階級に限られていた、というのもまた、事実である。
松平定信の治世、火鉢はバラエティ豊かに進化し、庶民にも広く使われるようになっていた。先程の長火鉢。木枠の長火鉢は江戸など都市部の庶民に最もよく使われた暖房器具だ。その理由は長火鉢の多機能性にあった。暖房器具として活躍したのは勿論湯を沸かしたり、家族で鍋を囲み楽しむことも出来た。餅を焼くことだって出来た。更に火鉢の本体部分には三段程の引き出しが付いていて煙草を入れるなどちょっとした収納箱としての用途もあった。正に便利箱であった。一つで多機能型の長火鉢は狭小住宅の都市市民にぴったりだったのだ。
平蔵宅にはこの長火鉢があった。平蔵は煙管で煙草を美味しそうに吸っていた。
「清左衛門殿、よくぞお越し下された。
この平蔵、この通りじゃ。今回の雲霧の一件、やはり其方のお力をお借りせねばならなくなり申した。この通りでござる。是非とも其方のお力をお借りしたい。」
「いやはや、よく分かっておりまする。拙者も将軍家を支える旗本でございまする。雲霧仁左衛門のような天下の御正道を乱す輩は放っておく訳にいきませぬ。なんとしても雲霧一家をお縄にし、江戸市民の皆が安心して暮らしていけるようにすることが我ら旗本の御役目。平蔵様だけにこの御役目を押し付ける訳にも行きますまい。ここは、この清左衛門も加勢いたしますそ。」
「おう。これは有難い。清左衛門殿にそのように言って頂き、誠に有難い。さて、今宵はこの平蔵と鍋などつつきながら酒など酌み交わそうぞ。おーい、久栄、鍋の準備じゃ。鍋じゃ。酒も頼むぞ。」
「はーい、今すぐに。」
久栄のいつもの声が居間にまで響き渡る。
こうして清左衛門は平蔵と一緒に居間にある長火鉢で暖を取りながら、温かい鴨鍋を一緒に食べ、酒を飲み交わすのであった。
一方女密偵のおまさは、日本橋周辺の探索をしていた。
また、火付盗賊改方同心の木村忠吾は江戸中の両替商を中心に日中は聞き込みをし、夜は見廻りをしていたのである。
江戸の街は如月に入り、一層底冷えのする寒さであった。
この時代は、地球全体が「小氷期」と呼ばれるミニ氷河期であった。冬の寒さは現代以上に厳しかったのである。エアコンや床暖房といった暖房器具がない江戸時代に於ける寒さ対策の暖房器具と言えば火鉢であった。
さて、この小氷期は14世紀半ばから19世紀半ばの約500年の長期間にわたって続き、特に江戸時代中期頃は非常に寒かった。
家屋の機密性も低く隙間風が“ピュー、ピュー、ピュー“と吹くなか、寒さに震える体を温めたい時に使ったのが火鉢であった。
この火鉢のなかでも「長火鉢と呼ばれるタイプがあったのだ。因みに江戸っ子は「ひ」と「し」の誤用が見られたので「ながしばち」と言ったそうな。
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松平定信の治世、火鉢はバラエティ豊かに進化し、庶民にも広く使われるようになっていた。先程の長火鉢。木枠の長火鉢は江戸など都市部の庶民に最もよく使われた暖房器具だ。その理由は長火鉢の多機能性にあった。暖房器具として活躍したのは勿論湯を沸かしたり、家族で鍋を囲み楽しむことも出来た。餅を焼くことだって出来た。更に火鉢の本体部分には三段程の引き出しが付いていて煙草を入れるなどちょっとした収納箱としての用途もあった。正に便利箱であった。一つで多機能型の長火鉢は狭小住宅の都市市民にぴったりだったのだ。
平蔵宅にはこの長火鉢があった。平蔵は煙管で煙草を美味しそうに吸っていた。
「清左衛門殿、よくぞお越し下された。
この平蔵、この通りじゃ。今回の雲霧の一件、やはり其方のお力をお借りせねばならなくなり申した。この通りでござる。是非とも其方のお力をお借りしたい。」
「いやはや、よく分かっておりまする。拙者も将軍家を支える旗本でございまする。雲霧仁左衛門のような天下の御正道を乱す輩は放っておく訳にいきませぬ。なんとしても雲霧一家をお縄にし、江戸市民の皆が安心して暮らしていけるようにすることが我ら旗本の御役目。平蔵様だけにこの御役目を押し付ける訳にも行きますまい。ここは、この清左衛門も加勢いたしますそ。」
「おう。これは有難い。清左衛門殿にそのように言って頂き、誠に有難い。さて、今宵はこの平蔵と鍋などつつきながら酒など酌み交わそうぞ。おーい、久栄、鍋の準備じゃ。鍋じゃ。酒も頼むぞ。」
「はーい、今すぐに。」
久栄のいつもの声が居間にまで響き渡る。
こうして清左衛門は平蔵と一緒に居間にある長火鉢で暖を取りながら、温かい鴨鍋を一緒に食べ、酒を飲み交わすのであった。
一方女密偵のおまさは、日本橋周辺の探索をしていた。
また、火付盗賊改方同心の木村忠吾は江戸中の両替商を中心に日中は聞き込みをし、夜は見廻りをしていたのである。
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