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第二十章
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この章では鬼平犯科帳の登場人物にスポットライトを当てた。
そうして清左衛門と鬼平が一緒になり江戸の街を悪の世から治安の良い世の中にしていくのである。
それではこの物語で登場する人物をご紹介しよう。
ー(火付盗賊改方)ー
長官は長谷川平蔵宣以。通称・鬼平こと長谷川平蔵である。
石高400石の旗本で火付盗賊改方のお役料40人扶持を別途支給されている。
その愛刀は「粟田口国綱」「井上真改」。
脇差に「備前兼光」。無頼時代は家督相続以前に名乗っていた銕三郎に由来する「本所の銕」の名で通っていた。目白台に私邸があるが、普段は清水門外の役宅に住んでいる。
平蔵の実母であるお園は巣鴨村の大百姓である三沢仙右衛門の娘。父である宣雄は長谷川家の断絶を回避する為、断腸の思いで銕三郎とお園を置いて実の姪である波津と再婚する。落胆した母は翌年に病で死去してしまうが、父が近親婚で子を為す事を忌避した事により波津との間に跡取が生まれなかった為、17歳の時に長谷川家に呼び戻される。しかし義母の波津は平蔵を当初から「妾腹の子」と手酷く蔑み、その反発から後に家を飛び出す。
本所・深川界隈の無頼漢の頭となり、放蕩三昧の日々。「本所の鬼」「入江町の銕さん」などと恐れられるようになるが、その間も剣術の鍛錬は怠らず続け、一刀流を高杉銀平に学び、腕を磨き後に目録を授かる。また小野田治平より不伝流居合術を学び習得している。
父が亡くなると、家督を継ぎ、後に堀帯刀の後任として火付盗賊改方の長官に就任。幕閣からは特に若年寄京極高久の後援を受ける。
放蕩無頼の経験から鋭い推理力と観察眼を持ち、峻厳なる取り締まりに悪党からは「鬼の平蔵」と恐れられるようになる。一方で犯罪者であっても義侠心に厚い者や止むに止まれぬ事情で罪を犯したものらに対しては、寛容で情け深い配慮を見せる一面もある。犯罪者の更生施設である石川島の人足寄場を老中松平定信に言上して敷設させ、一時寄場奉行も兼任する。
妻は旗本の大橋与惣兵衛親英の娘である久栄。子供は久栄との間に2男2女(後に盗賊の遺児・お順を養女に迎える)。また、後に生母と同名の腹違いの妹「お園」の存在が明らかになり、「お園」と結婚した部下の同心、小柳安五郎は義弟にあたることになった。
昼夜を問わず続く火付盗賊改の激務のせいで平蔵は体調を崩す。
酒と煙草を嗜むが甘味も好み、久栄に砂糖の多量の使用をたしなめられることもある。なにより美食家であり旨いものには目がなく、料理について熱く語ったり江戸の名物を食べ歩いたりしている。
(佐嶋忠介)
筆頭与力,同心達を束ねる。平蔵より4、5歳年上の腹心。本来堀組に所属していたが、有能のため平蔵が借り受けた。平蔵が最も信頼する副官的人物として登場し、仕事の遂行能力は平蔵にも匹敵するほど高く、平蔵が外勤する際は役宅で在所指揮を執ることが多い。非番の時は1日で3升も空けてしまう酒豪だが普段は節制しており、彼が酒豪だと知る者は少ない。
(天野甚造(甚蔵))
与力。佐嶋に比べると大仰で融通が利かない与力。
(富田達五郎)
与力。有能で実直。同心の木村とはそりが合わず、目が非常に細いため「細目の達ちゃん」と陰口を叩かれている。旗本の子息を殺害したことがきっかけで脅迫され悪事に手を染めるようになり、平蔵に成敗される。借金を重ねていた高利貸しを殺害した現場を盗賊に見られ、その事をダシにして脅迫していた盗賊と相打ちになって死亡。
(小林金弥)
亡父の後を継いだ与力。若さに似合わず慎重で、部下の進言に対しても柔軟に対応する。
(秋本源蔵)
与力。人格者で周囲の評判も良かったが、猫間の重兵衛一味の手にかかり、首筋に矢を射られて殺害される。
(猪子進太郎)
与力。年も若く小柄ながら柔術の達人。木村から”うり坊”と揶揄されている。
(酒井祐助)
筆頭同心。冷静な男で柳剛流の使い手。尺八が得意。佐嶋に次いで同心達を束ねる。
(沢田小平次)
同心。平蔵からも「まともにやり合ったら勝つ自信がない」と深く認める剣の腕を持つ小野派一刀流免許皆伝の達人。独身で老母と二人暮らし。
(木村忠吾)
同心。色白でぽっちゃりしており、芝にある菓子屋の「うさぎ饅頭」に似ていることから同僚からは「兎忠」と呼ばれてからかわれることも多い。旨い物や酒と女に目が無い為の失敗もあるが、憎めない性格とここぞという時の働きで、平蔵に叱り飛ばされながらかわいがられてもいる。同僚の同心・吉田籐七の娘であるおたかと結婚、やがて一女をもうける。頼りない半人前のマスコット的な人物。成長して最終期にかけては別人のように逞しく成長する。長谷川辰蔵と並んで最も成長幅が広いキャラクター。30俵2人扶持の薄給であり、「瓶割り小僧」で1年分の給金が5両。但し、実際には40俵相当の米が支給されており、当時の金額に直すと16両になり「おせん」で50両が給料三年分という発言と符合する。
(小野十蔵)
同心。寡黙なところから「啞の十蔵」と呼ばれる。「むっつり十蔵」で、掛川の太平の手下助次郎を殺した女房おふじを前に40俵2人扶持と語り、出世には縁遠く美男に生まれなかったことを自嘲している。妻帯者で、身分違いの妻に仕事や妻の気の利かなさの愚痴をこぼすが、逆に妻は薄給を嘆いて「支度金の100両が目当てだったのでしょう」と毒吐かれる始末。妻帯以前は、内職や借金で首が回らなかった。同情から身重のおふじを匿うが、次第に同情が愛情に変わり関係を持ってしまう。平蔵からは「気に病むな」と諭されるが後ろめたさを持ちながらも職務を続け、太平の手下仙吉におふじを誘拐され強請られる。一味は一網打尽にされるが、平蔵に詫び状を残して改方役宅内で自刃。おふじは、深川の仙台掘に絞殺死体で発見される。残された娘は平蔵から久栄に託され、長谷川平蔵の養女となる。この娘がお順である。
(松永弥四郎)
同心。変装が得意。一時期倒錯的な嗜好に熱を上げたこともあったが、男女の浅ましい姿を見たことで改心する。竹内流捕手術の名手。
(山田市太郎)
同心。4人の子持ち。30俵2人扶持の薄給の上、末娘と妻が病気の為、高利貸しから五両の金を借りる程困窮していた。生活苦から盗みに入ろうかとまで思いつめていたが、事情を察した平蔵から十両の見舞金を貰い感涙する。泥棒をしなかったのである。
(小柳安五郎)
同心。以前はおっとりして剣術の腕もそれほどではなかったが、任務中の留守に妻子を出産で亡くし、この悲しみから心身共に筋金入りの男に変貌した。また、人の機微を捉える事に長けており平蔵から同心達の疑心暗鬼を鎮める事を託されたり盗賊への思いやりから心を動かし事件を解決に導くなどし、貢献する。後にお園と再婚し、平蔵の義弟となる。
(佐々木新助)
同心。幼少の頃発病した天然痘の痕が顔に残っており「あばたの新助」と呼ばれる。若き日の平蔵から弟のように可愛がられて来たが、網切の甚五郎の女に手をつけたことで一味の手伝いをさせられた上に斬死。
(竹内孫四郎)
同心。この男については不明。
(寺田又太郎)
同心。鹿熊の音蔵を尾行中に襲撃され殺害された。平蔵の思い出話で登場する。
(寺田金三郎)
同心。又太郎の弟。沢田小平次と肩を並べるほどの腕前だったが、鹿熊の音蔵が放った刺客に奇襲を受け重傷を負う。音蔵の一件が終わった後に御役御免となり、義姉と結婚した。
(久保田源八)
同心。天神谷の喜佐松一味を尾行中に頭部を殴られ記憶喪失になり数か月行方不明になる騒動を起こす。記憶喪失以前は無口で性格も陰気でだったが、火盗改に復職してからは「おしゃべり源八」のあだ名を忠吾から付けられるほど饒舌で明るい人間になった。捕り物に支障をきたすほど心臓に疾患を抱えていたが、井上立泉が「自分の体が悪いと思い込むことによってますます悪くなってしまっている」と心因性によるものが大きいと見立てた通り、記憶喪失の後は心臓の病も影を潜めている。
(川村弥助)
勘定方同心。6尺近い関取のような大男。「泣き味噌屋」と呼ばれるほど臆病であったが妻を殺害した和田木曾太郎を討取って以後は落着きがついた、と周囲から言われている。それでも雷鳴は大の苦手である。
(細川峯太郎)
同心。元々は優秀な勘定方だったが命懸けで働く同僚達に対して引け目を感じ、卑屈な態度を取り続けていた。しかし同僚の同心・伊藤清兵衛の娘であるお幸と結婚してからは捕り方に回され手柄を上げるも、昔の女への未練を平蔵に見透かされて勘定方に戻され、また手柄を立てて捕り手に回される。しかしその後のエピソードでは、潜入捜査に入った賭場で博打に狂ってしまい、三たび平蔵の逆鱗に触れてしまう。また結婚後の夫婦間も徐々に冷え切っていった描写になっており、同心の中では最も頼りなく、不安要素満載の人物として描かれた。色が黒く、木村同心からは「佃煮男」と呼ばれている。
(田中貞四郎)
同心。手柄を立てようと暴走し、密偵の源助と共謀して無実の亀吉を放火犯に仕立てあげた。役目を取り上げられ、江戸を追放される。
(青木助五郎)
同心。佐嶋の部下であり元は堀組所属。配属されてから間髪いれず盗賊を次々と召し取って来るが、亡父が殺害した狐の亡霊に取り憑かれ、そのからくりを白状させられてしまう。平蔵の乾坤一擲の打ち込みで亡霊は体から抜け出るが、精神を蝕まれた彼の命は長く持ちそうにない。平蔵は狐憑きは芝居だった、と判断した。またこちらでは、幼少時の彼を知っている本格の頭が、彼に手柄を立てて欲しいという理由で情報を提供し、また彼の部下夫婦が、乱暴な父親のため家に居場所の無かった助五郎を我が子のように面倒を見、助五郎も彼らを親として慕った。
(片山慶次郎)
同心。沢田と同門。腕利きだったが、堀本虎太郎により殺害される。
(金子清五郎)
同心。片山に続いて殺害される。
(黒沢勝之助)
同心。目的を達するためには手段を選ばず、同僚や密偵からも嫌われている。元盗賊で今は琴師の妻になっている網虫のお吉を脅迫し、体どころか金まで奪っていた。余罪も次々と発覚するに及んで平蔵から見放され、切腹の沙汰を受ける。
(大島勇五郎)
同心。尾行や聞き込みに優れている有能な男。しかし自身が使っている密偵・雪崩の清松から博打の味を教えられたことで借金がかさみ、盗賊の片棒を担がされる。最後はことが露見して自害した。
(山崎庄五郎)
同心。功名心が激しく同僚や密偵からも評判が悪い。手柄を立てるために仁三郎に圧力を掛け、死に追いやった。平蔵はこのことを把握していない。
(村松忠之進)
同心。あだ名は「猫どの」。料理が趣味で、張り込みや宿直の同心達に弁当夕食・夜食を作ったりしている。その腕前は玄人はだしで、美食家の平蔵すらうならせるほど。穏やかな性格で普段はもの分かりがいい人物だが、食のことになると妥協を許さず、平蔵や木村忠吾と丁々発止に激しく言い合う。
(鬼平の密偵達)
(小房の粂八)
野槌の弥平一味で捕縛されたが、かつての親分であった血頭の丹兵衛の名を汚す凶賊の探索を志願し放免され密偵に。ある事件の後からは普段は船宿「鶴や」の亭主となる。子供の頃軽業一座で芸を仕込まれた経験から身が軽く、尾行や捕物の際にはその機動力と人手が重宝されている。平蔵の為なら命も要らぬ、という忠誠心の持ち主。
(相模の彦十)
平蔵より10歳ほど年上の老人で、無頼時代の取り巻きの一人。平蔵と二人だけの時は「彦」・「銕っつぁん」と呼び合う程の昔なじみ。元は流ればたらきの盗人。それなりに顔が広く、聞き込みには欠かせない存在である。
(大滝の五郎蔵)
元々は蓑火の喜之助配下であり、「盗みの三ヶ条」を頑なに守る本格派の盗賊(義賊)の首領だった。命の危険を救われたことで平蔵配下に。後におまさと結婚。
(おまさ)
鶴の忠助という元盗賊の娘。無頼時代の平蔵が父親の居酒屋をねぐらにするなど深い付き合いだったため、幼少期からずっと平蔵に思慕の念を抱いていた。父親の死後は諸方の盗賊一味の引き込み役を勤めていたが、平蔵の盗賊改方長官就任を知り、密偵となって平蔵を助けた。
(舟形の宗平)
五郎蔵と同じく元々は蓑火の喜之助配下であり、初鹿野の音松の盗人宿の番人をしていたところを捕縛され密偵に。本所の相生町で煙草屋を構えながら火盗改の探索に協力している。後に五郎蔵の義理の父親となり、おまさと共に3人で暮らしている。
(伊三次)
2歳の時に伊勢・関宿で捨て子にされたが、そこの宿場女郎達に育てられた。
(友五郎(浜崎の友蔵))
飯留の勘八配下の元盗賊。川越船頭。別名・友五郎。火盗改役宅に侵入し平蔵の煙管を盗んだが粂八と知り合いであったことで露見してしまう。その後は密偵として働いていたが、鹿山の市之助に勘八の遺児であり自分が面倒を見ていた庄太郎を人質に取られ、心ならずも盗みの片棒を担ぎ、平蔵を裏切ってしまう。
(馬蕗の利平冶)
馬蕗とは牛蒡の異称であり、その名のとおり手足が細く色黒。元は大阪に本拠を置く高窓の久五郎一味の嘗役で、彦十とは旧知。しかし後に妙義の團右衛門に密偵であることを見破られ、殺害されることになる。
(夜兎の角右衛門(2代目))
元は蓑火の喜之助と肩を並べるほどの大盗賊の首領であったが、配下の盗賊が押し込みの際に人を殺害してしまったため、盗賊団を解散させ自首した。その後、密偵となる。
(仁三郎)
盗賊として捕縛された際に平蔵に見込まれて密偵となった。しかし、かつて配下だった船影の忠兵衛に義理を立てるためと山崎庄五郎の圧力の板挟みとなり、鹿谷の伴助を殺害後、自害する。
(帯川の源助(平野屋源助))
既に盗賊を引退し、扇屋の主人に納まっていた。しかし盗人の血が再び騒ぎ出して隣家の蔵を破る。しかし、その時の仕掛けを平蔵に突き止められ、目こぼしと引き換えに配下の茂兵衛と共に密偵となる。梅干が好物。
(泥亀の七蔵)
牛尾の太兵衛の盗人宿の番人。酷い痔を罹っている。太兵衛の妻子が窮状に陥っていることを知り、身を押して一人働きをしようとするが動きを平蔵に知られ、密偵となる。
(高松繁太郎)
かつて堀組同心で、佐嶋の部下だった。有能な男であり、堀の消極的な姿勢を嫌い盗賊の情婦であるお杉と共に逐電した。お杉が亡くなったことに伴い江戸に戻ったところを平蔵に捕縛され密偵となる。同心の時を髣髴とさせる仕事振りを見せたが、彼を敵と狙う盗賊が放った刺客に襲撃され死亡。
(岩吉)
時に捕縛や尾行も行うが、完全に盗賊界から足を洗った五郎蔵や粂八と異なり、半分は暗黒街に足を踏み込んだままの無頼。
(岩五郎)
元・錠前師の盗賊で捕縛後に佐嶋直属の密偵となる。心酔していた本格派の大盗、海老坂の与兵衛を裏切り捕縛に追いやったことで思い悩み、江戸を去ってしまう。
(高萩の捨五郎)
30年もの間、血を見ぬ盗みを続けた流れづとめの本格派盗賊で、相模の彦十とも旧知の仲。義侠心に溢れ、侍に無礼討ちにされそうになった子供を庇った際に足を斬られ、後遺症が残るほどの重傷を負う。その後は平蔵手作りの杖を渡されたことで心服し、密偵となる。
(玉村の弥吉)
元々は牛尾の太兵衛一味の盗賊。馬面。悪女房にやり込められている囲碁仲間の吉野屋清兵衛に同情し、その悪女房の頭を丸坊主にしてしまった。捕縛後はその人柄を平蔵に見込まれて密偵となり、五郎蔵の家に寄宿している。
(鶴次郎)
元々は大滝の五郎蔵配下の盗賊。密偵としても優秀で多くの事件解決に貢献する。
(雨引の文五郎)
かつては西尾の長兵衛の右腕だったが、長兵衛の死後は後を継がず一人働きで「隙間風」の異名をとった神出鬼没の盗賊。火盗改方の探索をかわしながら江戸を離れる際は自らの人相書きを平蔵に送りつけ挑発するほどの凄腕をみせた。一味のライバルであった落針の彦蔵との抗争の末密偵となるが、恩のあった犬神の権三郎を破獄させた責任を取って自殺する。
(砂井の鶴吉)
五郎蔵の部下だったが、押し込み先の女に手をつけたことで追放された。その後心を入れ替えていたが、掻掘のおけいの囲われ者になったことがきっかけで凶賊・和尚の半平の下に引き込まれる羽目になる。原作では半平一味と縁を切る為に自ら盗賊改方の捕手に助けを求め捕縛された後、密偵となった。
(桑原の喜十)
かつて盗賊だったが足を洗い妻子とともに煮売り酒屋を営んでいる。積極的な探索等は行わず、入った情報を五郎蔵にだけ伝える「漏らし屋」であり、五郎蔵も平蔵にその存在を告げていない。
さて、雲霧仁左衛門一味と対峙する火付盗賊改方と清左衛門の熾烈な死闘が今、まさに江戸の街で繰り広げられようとしていた。
雲霧仁左衛門の大盗賊団は平蔵と清左衛門達の罠を見破ることが出来るのか、この雲霧仁左衛門達の動きについては平蔵の密偵達によって見張られているのであった。
危ううし、雲霧仁左衛門。
そうして清左衛門と鬼平が一緒になり江戸の街を悪の世から治安の良い世の中にしていくのである。
それではこの物語で登場する人物をご紹介しよう。
ー(火付盗賊改方)ー
長官は長谷川平蔵宣以。通称・鬼平こと長谷川平蔵である。
石高400石の旗本で火付盗賊改方のお役料40人扶持を別途支給されている。
その愛刀は「粟田口国綱」「井上真改」。
脇差に「備前兼光」。無頼時代は家督相続以前に名乗っていた銕三郎に由来する「本所の銕」の名で通っていた。目白台に私邸があるが、普段は清水門外の役宅に住んでいる。
平蔵の実母であるお園は巣鴨村の大百姓である三沢仙右衛門の娘。父である宣雄は長谷川家の断絶を回避する為、断腸の思いで銕三郎とお園を置いて実の姪である波津と再婚する。落胆した母は翌年に病で死去してしまうが、父が近親婚で子を為す事を忌避した事により波津との間に跡取が生まれなかった為、17歳の時に長谷川家に呼び戻される。しかし義母の波津は平蔵を当初から「妾腹の子」と手酷く蔑み、その反発から後に家を飛び出す。
本所・深川界隈の無頼漢の頭となり、放蕩三昧の日々。「本所の鬼」「入江町の銕さん」などと恐れられるようになるが、その間も剣術の鍛錬は怠らず続け、一刀流を高杉銀平に学び、腕を磨き後に目録を授かる。また小野田治平より不伝流居合術を学び習得している。
父が亡くなると、家督を継ぎ、後に堀帯刀の後任として火付盗賊改方の長官に就任。幕閣からは特に若年寄京極高久の後援を受ける。
放蕩無頼の経験から鋭い推理力と観察眼を持ち、峻厳なる取り締まりに悪党からは「鬼の平蔵」と恐れられるようになる。一方で犯罪者であっても義侠心に厚い者や止むに止まれぬ事情で罪を犯したものらに対しては、寛容で情け深い配慮を見せる一面もある。犯罪者の更生施設である石川島の人足寄場を老中松平定信に言上して敷設させ、一時寄場奉行も兼任する。
妻は旗本の大橋与惣兵衛親英の娘である久栄。子供は久栄との間に2男2女(後に盗賊の遺児・お順を養女に迎える)。また、後に生母と同名の腹違いの妹「お園」の存在が明らかになり、「お園」と結婚した部下の同心、小柳安五郎は義弟にあたることになった。
昼夜を問わず続く火付盗賊改の激務のせいで平蔵は体調を崩す。
酒と煙草を嗜むが甘味も好み、久栄に砂糖の多量の使用をたしなめられることもある。なにより美食家であり旨いものには目がなく、料理について熱く語ったり江戸の名物を食べ歩いたりしている。
(佐嶋忠介)
筆頭与力,同心達を束ねる。平蔵より4、5歳年上の腹心。本来堀組に所属していたが、有能のため平蔵が借り受けた。平蔵が最も信頼する副官的人物として登場し、仕事の遂行能力は平蔵にも匹敵するほど高く、平蔵が外勤する際は役宅で在所指揮を執ることが多い。非番の時は1日で3升も空けてしまう酒豪だが普段は節制しており、彼が酒豪だと知る者は少ない。
(天野甚造(甚蔵))
与力。佐嶋に比べると大仰で融通が利かない与力。
(富田達五郎)
与力。有能で実直。同心の木村とはそりが合わず、目が非常に細いため「細目の達ちゃん」と陰口を叩かれている。旗本の子息を殺害したことがきっかけで脅迫され悪事に手を染めるようになり、平蔵に成敗される。借金を重ねていた高利貸しを殺害した現場を盗賊に見られ、その事をダシにして脅迫していた盗賊と相打ちになって死亡。
(小林金弥)
亡父の後を継いだ与力。若さに似合わず慎重で、部下の進言に対しても柔軟に対応する。
(秋本源蔵)
与力。人格者で周囲の評判も良かったが、猫間の重兵衛一味の手にかかり、首筋に矢を射られて殺害される。
(猪子進太郎)
与力。年も若く小柄ながら柔術の達人。木村から”うり坊”と揶揄されている。
(酒井祐助)
筆頭同心。冷静な男で柳剛流の使い手。尺八が得意。佐嶋に次いで同心達を束ねる。
(沢田小平次)
同心。平蔵からも「まともにやり合ったら勝つ自信がない」と深く認める剣の腕を持つ小野派一刀流免許皆伝の達人。独身で老母と二人暮らし。
(木村忠吾)
同心。色白でぽっちゃりしており、芝にある菓子屋の「うさぎ饅頭」に似ていることから同僚からは「兎忠」と呼ばれてからかわれることも多い。旨い物や酒と女に目が無い為の失敗もあるが、憎めない性格とここぞという時の働きで、平蔵に叱り飛ばされながらかわいがられてもいる。同僚の同心・吉田籐七の娘であるおたかと結婚、やがて一女をもうける。頼りない半人前のマスコット的な人物。成長して最終期にかけては別人のように逞しく成長する。長谷川辰蔵と並んで最も成長幅が広いキャラクター。30俵2人扶持の薄給であり、「瓶割り小僧」で1年分の給金が5両。但し、実際には40俵相当の米が支給されており、当時の金額に直すと16両になり「おせん」で50両が給料三年分という発言と符合する。
(小野十蔵)
同心。寡黙なところから「啞の十蔵」と呼ばれる。「むっつり十蔵」で、掛川の太平の手下助次郎を殺した女房おふじを前に40俵2人扶持と語り、出世には縁遠く美男に生まれなかったことを自嘲している。妻帯者で、身分違いの妻に仕事や妻の気の利かなさの愚痴をこぼすが、逆に妻は薄給を嘆いて「支度金の100両が目当てだったのでしょう」と毒吐かれる始末。妻帯以前は、内職や借金で首が回らなかった。同情から身重のおふじを匿うが、次第に同情が愛情に変わり関係を持ってしまう。平蔵からは「気に病むな」と諭されるが後ろめたさを持ちながらも職務を続け、太平の手下仙吉におふじを誘拐され強請られる。一味は一網打尽にされるが、平蔵に詫び状を残して改方役宅内で自刃。おふじは、深川の仙台掘に絞殺死体で発見される。残された娘は平蔵から久栄に託され、長谷川平蔵の養女となる。この娘がお順である。
(松永弥四郎)
同心。変装が得意。一時期倒錯的な嗜好に熱を上げたこともあったが、男女の浅ましい姿を見たことで改心する。竹内流捕手術の名手。
(山田市太郎)
同心。4人の子持ち。30俵2人扶持の薄給の上、末娘と妻が病気の為、高利貸しから五両の金を借りる程困窮していた。生活苦から盗みに入ろうかとまで思いつめていたが、事情を察した平蔵から十両の見舞金を貰い感涙する。泥棒をしなかったのである。
(小柳安五郎)
同心。以前はおっとりして剣術の腕もそれほどではなかったが、任務中の留守に妻子を出産で亡くし、この悲しみから心身共に筋金入りの男に変貌した。また、人の機微を捉える事に長けており平蔵から同心達の疑心暗鬼を鎮める事を託されたり盗賊への思いやりから心を動かし事件を解決に導くなどし、貢献する。後にお園と再婚し、平蔵の義弟となる。
(佐々木新助)
同心。幼少の頃発病した天然痘の痕が顔に残っており「あばたの新助」と呼ばれる。若き日の平蔵から弟のように可愛がられて来たが、網切の甚五郎の女に手をつけたことで一味の手伝いをさせられた上に斬死。
(竹内孫四郎)
同心。この男については不明。
(寺田又太郎)
同心。鹿熊の音蔵を尾行中に襲撃され殺害された。平蔵の思い出話で登場する。
(寺田金三郎)
同心。又太郎の弟。沢田小平次と肩を並べるほどの腕前だったが、鹿熊の音蔵が放った刺客に奇襲を受け重傷を負う。音蔵の一件が終わった後に御役御免となり、義姉と結婚した。
(久保田源八)
同心。天神谷の喜佐松一味を尾行中に頭部を殴られ記憶喪失になり数か月行方不明になる騒動を起こす。記憶喪失以前は無口で性格も陰気でだったが、火盗改に復職してからは「おしゃべり源八」のあだ名を忠吾から付けられるほど饒舌で明るい人間になった。捕り物に支障をきたすほど心臓に疾患を抱えていたが、井上立泉が「自分の体が悪いと思い込むことによってますます悪くなってしまっている」と心因性によるものが大きいと見立てた通り、記憶喪失の後は心臓の病も影を潜めている。
(川村弥助)
勘定方同心。6尺近い関取のような大男。「泣き味噌屋」と呼ばれるほど臆病であったが妻を殺害した和田木曾太郎を討取って以後は落着きがついた、と周囲から言われている。それでも雷鳴は大の苦手である。
(細川峯太郎)
同心。元々は優秀な勘定方だったが命懸けで働く同僚達に対して引け目を感じ、卑屈な態度を取り続けていた。しかし同僚の同心・伊藤清兵衛の娘であるお幸と結婚してからは捕り方に回され手柄を上げるも、昔の女への未練を平蔵に見透かされて勘定方に戻され、また手柄を立てて捕り手に回される。しかしその後のエピソードでは、潜入捜査に入った賭場で博打に狂ってしまい、三たび平蔵の逆鱗に触れてしまう。また結婚後の夫婦間も徐々に冷え切っていった描写になっており、同心の中では最も頼りなく、不安要素満載の人物として描かれた。色が黒く、木村同心からは「佃煮男」と呼ばれている。
(田中貞四郎)
同心。手柄を立てようと暴走し、密偵の源助と共謀して無実の亀吉を放火犯に仕立てあげた。役目を取り上げられ、江戸を追放される。
(青木助五郎)
同心。佐嶋の部下であり元は堀組所属。配属されてから間髪いれず盗賊を次々と召し取って来るが、亡父が殺害した狐の亡霊に取り憑かれ、そのからくりを白状させられてしまう。平蔵の乾坤一擲の打ち込みで亡霊は体から抜け出るが、精神を蝕まれた彼の命は長く持ちそうにない。平蔵は狐憑きは芝居だった、と判断した。またこちらでは、幼少時の彼を知っている本格の頭が、彼に手柄を立てて欲しいという理由で情報を提供し、また彼の部下夫婦が、乱暴な父親のため家に居場所の無かった助五郎を我が子のように面倒を見、助五郎も彼らを親として慕った。
(片山慶次郎)
同心。沢田と同門。腕利きだったが、堀本虎太郎により殺害される。
(金子清五郎)
同心。片山に続いて殺害される。
(黒沢勝之助)
同心。目的を達するためには手段を選ばず、同僚や密偵からも嫌われている。元盗賊で今は琴師の妻になっている網虫のお吉を脅迫し、体どころか金まで奪っていた。余罪も次々と発覚するに及んで平蔵から見放され、切腹の沙汰を受ける。
(大島勇五郎)
同心。尾行や聞き込みに優れている有能な男。しかし自身が使っている密偵・雪崩の清松から博打の味を教えられたことで借金がかさみ、盗賊の片棒を担がされる。最後はことが露見して自害した。
(山崎庄五郎)
同心。功名心が激しく同僚や密偵からも評判が悪い。手柄を立てるために仁三郎に圧力を掛け、死に追いやった。平蔵はこのことを把握していない。
(村松忠之進)
同心。あだ名は「猫どの」。料理が趣味で、張り込みや宿直の同心達に弁当夕食・夜食を作ったりしている。その腕前は玄人はだしで、美食家の平蔵すらうならせるほど。穏やかな性格で普段はもの分かりがいい人物だが、食のことになると妥協を許さず、平蔵や木村忠吾と丁々発止に激しく言い合う。
(鬼平の密偵達)
(小房の粂八)
野槌の弥平一味で捕縛されたが、かつての親分であった血頭の丹兵衛の名を汚す凶賊の探索を志願し放免され密偵に。ある事件の後からは普段は船宿「鶴や」の亭主となる。子供の頃軽業一座で芸を仕込まれた経験から身が軽く、尾行や捕物の際にはその機動力と人手が重宝されている。平蔵の為なら命も要らぬ、という忠誠心の持ち主。
(相模の彦十)
平蔵より10歳ほど年上の老人で、無頼時代の取り巻きの一人。平蔵と二人だけの時は「彦」・「銕っつぁん」と呼び合う程の昔なじみ。元は流ればたらきの盗人。それなりに顔が広く、聞き込みには欠かせない存在である。
(大滝の五郎蔵)
元々は蓑火の喜之助配下であり、「盗みの三ヶ条」を頑なに守る本格派の盗賊(義賊)の首領だった。命の危険を救われたことで平蔵配下に。後におまさと結婚。
(おまさ)
鶴の忠助という元盗賊の娘。無頼時代の平蔵が父親の居酒屋をねぐらにするなど深い付き合いだったため、幼少期からずっと平蔵に思慕の念を抱いていた。父親の死後は諸方の盗賊一味の引き込み役を勤めていたが、平蔵の盗賊改方長官就任を知り、密偵となって平蔵を助けた。
(舟形の宗平)
五郎蔵と同じく元々は蓑火の喜之助配下であり、初鹿野の音松の盗人宿の番人をしていたところを捕縛され密偵に。本所の相生町で煙草屋を構えながら火盗改の探索に協力している。後に五郎蔵の義理の父親となり、おまさと共に3人で暮らしている。
(伊三次)
2歳の時に伊勢・関宿で捨て子にされたが、そこの宿場女郎達に育てられた。
(友五郎(浜崎の友蔵))
飯留の勘八配下の元盗賊。川越船頭。別名・友五郎。火盗改役宅に侵入し平蔵の煙管を盗んだが粂八と知り合いであったことで露見してしまう。その後は密偵として働いていたが、鹿山の市之助に勘八の遺児であり自分が面倒を見ていた庄太郎を人質に取られ、心ならずも盗みの片棒を担ぎ、平蔵を裏切ってしまう。
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馬蕗とは牛蒡の異称であり、その名のとおり手足が細く色黒。元は大阪に本拠を置く高窓の久五郎一味の嘗役で、彦十とは旧知。しかし後に妙義の團右衛門に密偵であることを見破られ、殺害されることになる。
(夜兎の角右衛門(2代目))
元は蓑火の喜之助と肩を並べるほどの大盗賊の首領であったが、配下の盗賊が押し込みの際に人を殺害してしまったため、盗賊団を解散させ自首した。その後、密偵となる。
(仁三郎)
盗賊として捕縛された際に平蔵に見込まれて密偵となった。しかし、かつて配下だった船影の忠兵衛に義理を立てるためと山崎庄五郎の圧力の板挟みとなり、鹿谷の伴助を殺害後、自害する。
(帯川の源助(平野屋源助))
既に盗賊を引退し、扇屋の主人に納まっていた。しかし盗人の血が再び騒ぎ出して隣家の蔵を破る。しかし、その時の仕掛けを平蔵に突き止められ、目こぼしと引き換えに配下の茂兵衛と共に密偵となる。梅干が好物。
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(玉村の弥吉)
元々は牛尾の太兵衛一味の盗賊。馬面。悪女房にやり込められている囲碁仲間の吉野屋清兵衛に同情し、その悪女房の頭を丸坊主にしてしまった。捕縛後はその人柄を平蔵に見込まれて密偵となり、五郎蔵の家に寄宿している。
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元々は大滝の五郎蔵配下の盗賊。密偵としても優秀で多くの事件解決に貢献する。
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五郎蔵の部下だったが、押し込み先の女に手をつけたことで追放された。その後心を入れ替えていたが、掻掘のおけいの囲われ者になったことがきっかけで凶賊・和尚の半平の下に引き込まれる羽目になる。原作では半平一味と縁を切る為に自ら盗賊改方の捕手に助けを求め捕縛された後、密偵となった。
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かつて盗賊だったが足を洗い妻子とともに煮売り酒屋を営んでいる。積極的な探索等は行わず、入った情報を五郎蔵にだけ伝える「漏らし屋」であり、五郎蔵も平蔵にその存在を告げていない。
さて、雲霧仁左衛門一味と対峙する火付盗賊改方と清左衛門の熾烈な死闘が今、まさに江戸の街で繰り広げられようとしていた。
雲霧仁左衛門の大盗賊団は平蔵と清左衛門達の罠を見破ることが出来るのか、この雲霧仁左衛門達の動きについては平蔵の密偵達によって見張られているのであった。
危ううし、雲霧仁左衛門。
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