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第一巻
しおりを挟む天才的オペラ歌手Mihoko Kuri
は鹿児島県指宿市の出身である。
武蔵野音楽大学および武蔵野音楽大学大学院で声楽を学ぶ。
第77回日本音楽コンクール声楽部門第1位を受賞。小澤正太郎指揮『ドン・ジョヴァンニ』のドンナ・エルヴィーラ役でのデビュー。
ベオグラード国立歌劇場の『蝶々夫人』でヨーロッパ・デビュー。
バンクーバー・オペラ、ソフィア国立歌劇場、デトロイト歌劇場、オペラ・サンタバーバラ、イタリア・ピサ ヴェルディ劇場、ロンドン・ロイヤル・アルバート・ホールなど世界各地でオペラに出演。東京都代官山在住。
将来を期待されていた美帆子は突然、声が出なくなった。
先ほど前まで声が出ていたのに。
驚いたのは美帆子本人だけでない。美帆子の母親も父親も驚いた。
「どうしたの?美帆子。返事しなさいよ!」
母親の史花は何も喋らない美帆子に業をにやした。
「いいかげんにしなさい。どうしたの」
美帆子はなんとか自分の異変を母親に伝えないのに声がでない。
思わず食卓のテーブルを離れ2階の自室に駆け上がった。
部屋に入るとペンとメモ用紙を手に取り一階の食卓に戻り慌てて自分の異変をメモに書いて訴えた。
「母さん、声が出ないの」
美帆子は目に涙を浮かべているのに泣き声すら出ないのだ。
母親の史花はやっと美帆子の異変に気づいた。
これは栗家にとっては大スキャンダルであった。
史花は早速今後のコンサートなどのスケジュール調整に入った。
兎に角このことはトップシークレット。
誰にも話すことは出来ない。
史花は翌日美帆子を連れて懇意にしている医師を訪ねた。
音声障害治療専門医山本太耳鼻咽喉科クリニックの院長である。
幸い東京の代官山にあった。美帆子の自宅から車で40分圏内である。
史花は以前医師から聞いていた心因性失声症という病気のことを思い出した。
心の風邪と言われる病気である。
鬱病と同じような病気である。
パニック障害や不安障害とも言われる。
この病気を発症した場合は暫く様子を見ながらその原因となった要因を取り除く必要がある。
史花はことの他美帆子のことを心配した。
美帆子は一人娘である。
折角オペラの世界で数々の功績を残しこれから世界へ羽ばたこうとしたのに突然の声を失う病気を発症した。
史花は完全に理性を失っていた。
この怒りを一体誰に向けたらいいのだろうか!
史花は気性の激しい女性であった。生まれた時からお嬢様。どんな望みも叶えて貰えた。
そんな彼女が自分の娘の異変には何もしてあげることが出来ない。史花はある苛立ちを感じていた。
この世に神はいるのであろうか。
史花は美帆子の失声症に頭を抱えたのであった。
史花と美帆子は父親の運転するベンツで山本太耳鼻咽喉科クリニックに向かったのであった。
「美帆子、しっかりしなさい。大丈夫だから。きっとまた、歌えるようになるから。」
ベンツは太陽の日差しに向かって走り出した。
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