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猫がしゃべった⁉︎
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あれから、一週間が経った。
早朝から日付が切り替わったあとまでずっと働き通しだった都会の頃と比べて、行き交うお客さんの数は何千…いや、何万分の一にまで減っていた。
まあ、そりゃ都会と田舎の人口からして大きな違いがあるんだから、当然だといえば当然なんだけど。
そしてやっぱり違うのは、お客さんの人柄だろうか。
改札兼窓口で毎朝僕は「おはようございます!」とあいさつ。
……スルーする人なんてここにはほとんどいない。とは言っても朝ラッシュなんてここじゃ名前だけ。数人程度しかいないんだけどね。
「おっ、新入りさんか、頑張れよ!」ってみんなあたたかい言葉をかけてくれる。
うん、都会じゃそんなこと一度もなかったわけでして。だからなんか恥ずかしかったり。でも気分はすごく良くて。
そうそう、気分がいい理由はもう一つあるんだ。
それは空気。とてもおいしいんだ。そして朝昼晩と、みんな違う風の匂いを見せてくれる。
……ひとりぼっちで仕事するのはとても不安だし、それに心細かったりもしたけれど、うん。大丈夫。だんだんと慣れていける……かも。
さてさて、都会の駅と唯一同じなのは、いわゆる勤務パターンだ。
駅を開ける前に出勤して、そのまま昼過ぎまで仕事をする、通称A番。
反対に午後に出勤して、最終電車(とはいえここの最終は22時までしかないけど)を見てから、駅の電源を全て落とし、そして事務所内の寝室で仮眠を取るB番。
AとBが一緒になった……つまり初電から最終、そして翌朝まで仕事をするC番。
とどめに一番厄介なのが、月に1.2回ばかしある「コンビニ番」だ。
その名のとおり、駅ではなく……そう、事務所の奥とつながってた、あのコンビニで仕事をする番なんだ。
幸運なことに、僕が受け持つ勤務サイクルの中には、そのコンビニ番は入ってはいなかった。だけど……この仕事に慣れたら、近いうちに欠員サポートとして入らされるかもしれない、との事。
いやだなあ……駅の仕事だけでもまだ頭がいっぱいだっていうのに、これ以上のことなんて。しかも全然異なる職だし。
村雨先輩は「そっか? コンビニ番めっちゃ楽しいぜ。だって近くの学校の女の子とか結構来るしな」って。
いや、なんかそれ、違う……
そういえば、村雨先輩の勤務表をちらっと見たことあったんだけど、僕のとさらに違って「案内」って番が入ってたんだ。
そんな仕事もあるんだな……観光客とか来るから、その相手をするのかな、なんて。
でもここ、旅行に選ぶほどのものなんて皆無に等しいし…やっぱり不思議。
僕と村雨先輩の他にも、まだ見てない先輩方はたくさんいることに気づいた。
時雨先輩に陰踏先輩、まだ読めない漢字を使った人が何人か。いつかご挨拶できる日が来るのかな。
とかあれこれ考えを巡らすうちに、ゴーンと、外の通りから正午を知らせる鐘の音の放送が響いてきた。
今のとこお客さんゼロだし、僕も今のうちにお昼にしようかな。
早朝から日付が切り替わったあとまでずっと働き通しだった都会の頃と比べて、行き交うお客さんの数は何千…いや、何万分の一にまで減っていた。
まあ、そりゃ都会と田舎の人口からして大きな違いがあるんだから、当然だといえば当然なんだけど。
そしてやっぱり違うのは、お客さんの人柄だろうか。
改札兼窓口で毎朝僕は「おはようございます!」とあいさつ。
……スルーする人なんてここにはほとんどいない。とは言っても朝ラッシュなんてここじゃ名前だけ。数人程度しかいないんだけどね。
「おっ、新入りさんか、頑張れよ!」ってみんなあたたかい言葉をかけてくれる。
うん、都会じゃそんなこと一度もなかったわけでして。だからなんか恥ずかしかったり。でも気分はすごく良くて。
そうそう、気分がいい理由はもう一つあるんだ。
それは空気。とてもおいしいんだ。そして朝昼晩と、みんな違う風の匂いを見せてくれる。
……ひとりぼっちで仕事するのはとても不安だし、それに心細かったりもしたけれど、うん。大丈夫。だんだんと慣れていける……かも。
さてさて、都会の駅と唯一同じなのは、いわゆる勤務パターンだ。
駅を開ける前に出勤して、そのまま昼過ぎまで仕事をする、通称A番。
反対に午後に出勤して、最終電車(とはいえここの最終は22時までしかないけど)を見てから、駅の電源を全て落とし、そして事務所内の寝室で仮眠を取るB番。
AとBが一緒になった……つまり初電から最終、そして翌朝まで仕事をするC番。
とどめに一番厄介なのが、月に1.2回ばかしある「コンビニ番」だ。
その名のとおり、駅ではなく……そう、事務所の奥とつながってた、あのコンビニで仕事をする番なんだ。
幸運なことに、僕が受け持つ勤務サイクルの中には、そのコンビニ番は入ってはいなかった。だけど……この仕事に慣れたら、近いうちに欠員サポートとして入らされるかもしれない、との事。
いやだなあ……駅の仕事だけでもまだ頭がいっぱいだっていうのに、これ以上のことなんて。しかも全然異なる職だし。
村雨先輩は「そっか? コンビニ番めっちゃ楽しいぜ。だって近くの学校の女の子とか結構来るしな」って。
いや、なんかそれ、違う……
そういえば、村雨先輩の勤務表をちらっと見たことあったんだけど、僕のとさらに違って「案内」って番が入ってたんだ。
そんな仕事もあるんだな……観光客とか来るから、その相手をするのかな、なんて。
でもここ、旅行に選ぶほどのものなんて皆無に等しいし…やっぱり不思議。
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時雨先輩に陰踏先輩、まだ読めない漢字を使った人が何人か。いつかご挨拶できる日が来るのかな。
とかあれこれ考えを巡らすうちに、ゴーンと、外の通りから正午を知らせる鐘の音の放送が響いてきた。
今のとこお客さんゼロだし、僕も今のうちにお昼にしようかな。
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