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第6話 暗殺者を歓迎したら、なぜか影の軍団が増えました
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「ようこそ、暗殺者さん! 待っていたわ!」
私の歓喜に満ちた声が、夕暮れの生徒会室に響き渡った。
バルコニーの手すりに立つ、黒装束の男。 顔を覆う仮面。手には怪しく光る短剣。 どこからどう見ても不審者であり、命を狙う刺客だ。 普通なら悲鳴を上げて逃げ惑うか、腰を抜かす場面だろう。
けれど、私の目はこれ以上ないほど輝いていた。 まるで、待ち焦がれたサンタクロースを迎える子供のように。
「……は?」
仮面の男――自称『黒の使徒』の動きが止まった。 殺気を放っていたはずの肩が、ガクッと下がったように見える。
「き、貴様……何を言っている? 俺は暗殺者だぞ? お前の命を奪いに来た死神だぞ?」
「ええ、わかっているわ! だからこそ素晴らしいのよ!」
私はドレスの裾を翻し、彼に向かって一歩踏み出した。 背後でアレクセイ様が「リリス! 下がるんだ!」と叫んでいるが、無視だ。 今、この千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかない。
「あなたは私のことを『偽りの聖女』と呼んだわね? つまり、私が猫を被った性悪女だという真実を知っているのね?」
「あ、ああ……調査済みだ。貴様が裏で何をしているか、全てな」
「ブラボー!」
私はパチパチと拍手をした。
「求めていた人材だわ! この学園の人間はどいつもこいつも節穴ばかりで、私の悪事(ピンクタイツ強制や激辛テロ)をすべて善行だと勘違いしているの。でも、あなたなら! 第三者の視点を持つあなたなら、私の本性を白日の下に晒してくれるはず!」
私は両手を広げ、彼を招き入れた。
「さあ、入ってらっしゃい! お茶でも飲みながら、私の罪状を大声で発表してちょうだい! 特にあのアレクセイという男に聞こえるように、具体的にお願いね!」
「……狂っているのか?」
暗殺者がドン引きしている。 仮面の下の瞳が、獲物を見る目から、理解不能な生物を見る目(または同情)に変わっていくのがわかった。
「お姉様……? 何を言って……?」
マリアがおろおろとしている。 アレクセイ様が剣の柄に手をかけたまま、険しい表情で私と暗殺者を交互に見ている。
「リリス。まさか、自らを囮にして、彼の注意を引きつけようとしているのか? 僕やマリアを守るために……」
「違います! 自分のために断罪されたいだけです!」
「……そうか。恐怖で錯乱したふりをして、相手を油断させる高等戦術か。君の度胸には恐れ入る」
ダメだ、通じない。 もういい、暗殺者さんに頼るしかない。
「さあ、『黒の使徒』さん! 遠慮はいらないわ。私の悪逆非道を、ここですべて暴いて!」
私は彼を煽った。 さあ、言え。「こいつは生徒を苦しめる悪魔だ」と。 そうすれば、私の「聖女メッキ」は剥がれ落ち、婚約破棄への道が開ける!
暗殺者はためらいがちにバルコニーから降り立つと、咳払いを一つした。
「……いいだろう。貴様がそこまで言うなら、冥土の土産に教えてやる。貴様の罪をな!」
来た! 断罪タイムの始まりよ!
暗殺者が指を突きつける。
「罪状その一! 貴様は、神聖な学園の風紀を乱した! 生徒たちに、あの見るも無惨な『ピンク色のタイツ』を履かせ、視覚的な暴力を振るった罪!」
「そうよ! その通りよ! あれはダサいでしょう!? 私の悪趣味の結晶よ!」
私はブンブンと首を縦に振った。 さあ、みんな聞いた!? あのタイツは「視覚的な暴力」なのよ!
しかし。
「異議あり!」
叫んだのは、副会長のシドだった。 彼はメガネをクイッと押し上げ、冷徹な声で反論した。
「視覚的暴力? 笑わせないでいただきたい。あの色は、最新の研究に基づいた『色彩療法』の一環です。事実、タイツ導入後、学園内のうつ病発生率はゼロになり、生徒たちの幸福度は過去最高を記録しています。貴様ごときの美的感覚で、リリス会長の深遠な色彩戦略を否定するなど、言語道断!」
「なっ……!?」
暗殺者が言葉に詰まる。
「そ、そうか……では罪状その二! 貴様は、食堂のメニューを激辛料理に変え、生徒たちの胃腸を破壊しようとした!」
「ええ、そうよ! お腹を壊して苦しめばいいと思ってやったの!」
「甘いな」
今度はガストンが腕組みをして前に出た。
「あの激辛料理のおかげで、冷え性の女子たちが救われたんだ。それに、発汗作用で夏バテも解消された。何より、あの刺激的な味が『生きている実感』を呼び覚ますと、男子生徒の間じゃ大ブームだぜ。リリス様の料理は、魂を熱くする『命のメシ』なんだよ!」
「ぐぬぬ……!」
暗殺者が後ずさりする。 頑張れ暗殺者! 負けるな暗殺者! まだあるでしょう? マリアへのいじめとか!
「罪状その三! これが決定的だ! 貴様は、転入してきたばかりの無垢な少女、マリア・キャンベルに対し、数々の嫌がらせを行った! カバンを侮辱し、雑草を送りつけ、さらには毒入りの茶を飲ませようとしたな!」
「はい! やりました! 全部やりました!」
私は胸を張った。 これなら言い逃れできないはずだ。 マリア本人もここにいるし、証言してくれれば……!
「嘘よ!」
叫んだのは、当のマリアだった。
「リリスお姉様は、私をいじめてなんていません! カバンの真の価値を見抜き、亡き母への敬意を示してくださいました! 雑草ではなく、高貴な心を表す野の花をくださいました! そしてお茶は、私の魔力を目覚めさせるための愛の試練でした!」
マリアの体が、感情の高ぶりと共に淡く発光し始める。 聖女のオーラだ。 眩しい。直視できない。
「お姉様を悪く言うなんて、許しません! この人は、誰よりも優しくて、不器用なだけなんです!」
「ち、違うのよマリア! 私は本当に意地悪で……!」
「黙れ、下郎!」
最後の一撃を放ったのは、アレクセイ様だった。 彼は抜刀し、切っ先を暗殺者に向けた。 その瞳は、絶対零度。
「僕のリリスを愚弄することは、この国の未来を愚弄することと同義だ。彼女の行動はすべて、慈愛と英知に基づいている。それを理解できない貴様の目は、腐っているとしか思えないな」
「ば、馬鹿な……」
暗殺者は膝から崩れ落ちた。 物理攻撃を受ける前に、まさかの「全肯定論破」で精神的ダメージを受けたようだ。
「な、なぜだ……俺の調査では、確かに嫌がらせの事実があったはず……なぜ全員が、こいつを崇拝しているんだ……!? 洗脳か? 集団催眠なのか!?」
ある意味、正解だ。 これは「溺愛」という名の強力な集団催眠だ。 そして、その催眠術師(本人に自覚なし)である私は、今、絶望の淵に立たされていた。
(終わった……)
せっかくの断罪チャンスが、ファン感謝祭みたいになってしまった。 もう誰も私の「悪」を信じてくれない。
「……くそっ! こうなれば実力行使だ!」
追い詰められた暗殺者が、ヤケクソ気味に立ち上がった。 短剣を構え、一直線に私に向かってくる。
「死ねぇぇぇ! 偽りの聖女め!」
速い。 さすがはプロ(?)の暗殺者。 護衛のガストンやアレクセイ様が動くよりも早く、その刃が私に迫る。
「リリス!」
「お姉様!」
死ぬ。 今度こそ、物理的に死ぬ。 いや、死にたくはないの! ただ嫌われたいだけなの!
(逃げなきゃ!)
私はとっさに身を翻そうとした。 しかし、慌てすぎて足がもつれた。 さらに、テーブルの上に置いてあったティーセット(マリアが飲んで覚醒した激苦茶のポット)に手が当たった。
「あ」
ガシャン!
ポットが宙を舞う。 中に入っていた熱々の、そして粘り気のある真っ黒な液体が、放物線を描いて飛んでいく。
バシャッ!
「ぐあぁぁっ!?」
液体は、見事に突っ込んできた暗殺者の顔面を直撃した。
「あ、熱っ!? なんだこれ、目に入っ……痛っ! 苦っ!?」
暗殺者が顔を押さえてのたうち回る。 「竜の根」を煮詰めた激苦茶は、目に入れば催涙スプレー並みの激痛をもたらし、口に入れば味覚を麻痺させる凶悪な兵器だ。
「え、うそ、当たっちゃった……」
私は呆然とした。 ただ逃げようとして、お茶をこぼしただけなのに。
「隙ありィィッ!」
その隙を見逃すガストンではなかった。 巨体が砲弾のように突進し、暗殺者にタックルをかます。
ドガァァン!
暗殺者は吹き飛び、壁に激突して動かなくなった。
「確保しました、会長」
ガストンが親指を立てる。 シドが冷静にポットを拾い上げる。
「見事なカウンターです、リリス会長。敵の突進力を利用し、視界を奪い、味方の攻撃へ繋げる……まさに電光石火の連携プレー。最初から計算済みだったのですね」
「……ええ、まあね(震え声)」
私は引きつった笑顔で頷くしかなかった。 計算なんてしていない。 私の人生設計における計算は、いつだって答えが合わないのだ。
◇
数分後。 気絶した暗殺者は、ガストンによって縄でぐるぐる巻きにされ、生徒会室の床に転がされていた。 仮面は剥がされ、その下から現れたのは、意外にも若い青年の顔だった。 歳は私たちと同じくらいか。 少し野暮ったいが、目鼻立ちは整っている。
「さて……どうしましょうか」
私は腕組みをして彼を見下ろした。
通常なら、王宮騎士団に引き渡して終わりだ。 国家反逆罪、王族暗殺未遂罪。 間違いなく極刑だろう。
しかし、それでは面白くない。 それに、彼を処刑してしまったら、私の「悪女ポイント」が稼げない。 悪女たるもの、敗者を無慈悲に切り捨てるか、あるいは……もっと残酷な運命を与えるべきだ。
そうだ。 彼を私の「私兵」にしてしまおう。
暗殺者としての腕は確かなようだ(お茶で負けたけど)。 彼を脅迫し、弱みを握り、無理やり服従させる。 そして、今度こそ私の手足となって、本当に汚い仕事(アレクセイ様の部屋へのゴキブリ投入とか)をやらせるのだ。
「ふふふ……」
私は悪い顔を作り、目を覚ました青年の前にしゃがみ込んだ。
「う……ここは……」
青年が目を開ける。 目の前に、私の顔がある。
「お目覚めかしら、失敗した暗殺者さん」
扇で口元を隠し、冷ややかに見下ろす。
「ひっ……!」
彼は怯えて後ずさろうとしたが、縄で縛られていて動けない。 周囲には、アレクセイ様、ガストン、シド、レン、そして聖女発光中のマリアが立ちはだかっている。 四面楚歌だ。
「殺せ……! 捕虜になるくらいなら、舌を噛んで死んでやる!」
青年が叫ぶ。 お決まりのセリフだ。 ここで「まあ待ちなさい」と止めるのが悪女の流儀。
「死? そんな楽な逃げ道、許すわけないでしょう?」
私は彼の顎を扇でクイッと持ち上げた。
「あなたは私の命を狙った。その代償は、体で払ってもらうわ」
「なっ……!?」
青年が顔を赤くする。 アレクセイ様が「リリス、その言い回しは少し誤解を招くかもしれないが……君なりの『奉仕活動への強制参加』という意味だね?」とフォローを入れるが、無視だ。
「名前は?」
「……ゼクス」
「そう、ゼクス。あなたには二つの選択肢があるわ」
私は指を二本立てた。
「一つ。このまま騎士団に引き渡され、拷問の末に処刑される道」
「くっ……」
「二つ。私の『犬』となり、一生こき使われる道。……どちらがいい?」
どうだ。 究極の二択。 プライドの高い暗殺者なら「殺せ!」と言うかもしれないが、そこは上手く言いくるめて……
「……なぜだ」
ゼクスが震える声で尋ねてきた。
「なぜ、俺を殺さない? 俺はお前の命を狙ったんだぞ? お前を『偽物』だと罵ったんだぞ? それなのに、なぜ生きるチャンスを与える?」
「それは……」
私があなたを利用したいから。 あなたの隠密スキルで、悪事を働きたいから。 そう言おうとした。
しかし、私の口から出る前に、シドが勝手に解説を始めた。
「わからないのか、三流暗殺者。リリス会長は、お前の『才能』を惜しんでいるのだ」
「才能……?」
「お前の身のこなし、そして王宮の警備を潜り抜けてここまで来た潜入能力。それは得難い資質だ。会長は、お前のようなドロップアウトした人間にこそ、更生の機会と輝ける場所を与えたいと考えておられるのだ。我々と同じようにな」
シドたちがウンウンと頷く。 ガストンが「俺も昔は暴れん坊だったが、会長に拾われて生徒会役員になれたんだ」と語り、レンが「俺も……居場所をくれた」とボソッと言う。
「……そうなのか?」
ゼクスの瞳が揺れる。 疑念が、希望へと変わっていく。
「俺のような……日陰者でも、必要としてくれるのか?」
「ええ、もちろんよ(悪事の実行犯としてね)」
私はニッコリと微笑んだ。 あくまで「利用価値がある」という意味だが、彼には「存在価値を認めてくれた」と聞こえたらしい。
ゼクスの目から涙が溢れ出した。
「ううっ……! 今まで、道具としてしか扱われてこなかった俺に、そんな温かい言葉を……!」
彼は縛られたまま、器用に土下座の姿勢をとった。
「負けました……完敗です、聖女リリス様! 俺の命、あなたに預けます! これからはあなたの『影』となり、あなたに仇なす全ての敵を排除する剣となりましょう!」
「だから違うのよー! 敵を排除しなくていいの! むしろ敵を連れてきて!」
私の心の叫びは届かない。 こうして、私の手持ちポケモン……じゃなくて、配下に、新たに『元暗殺者(隠密特化)』が加わってしまった。
◇
一件落着……にはならなかった。 ゼクスを縄から解いた後、アレクセイ様が鋭い質問を投げかけたからだ。
「さて、ゼクス。君がリリスに忠誠を誓ったのはいいが、一つ明らかにしておかなければならないことがある。君の雇い主は誰だ?」
「……っ」
ゼクスの顔が強張る。
「単独犯ではないだろう? 『黒の使徒』などという組織名、そして王族暗殺のための装備。背後に国家規模の支援がなければ不可能だ」
さすが王太子。 こういう時の勘は鋭い。
ゼクスは迷うように私を見た。 私が「言いなさい」と目で促すと、彼は観念したように口を開いた。
「……隣国、バルドゥール帝国だ」
「帝国……!」
場に緊張が走る。 バルドゥール帝国は、我が国と国境を接する軍事大国だ。 近年、不可侵条約を結んでいるはずだが……。
「俺は帝国の諜報機関に所属する下っ端だった。上からの命令は、『王太子アレクセイを暗殺し、その罪を悪名高い公爵令嬢リリスになすりつけろ』というものだった」
「なっ……!」
私は絶句した。 私になすりつける? つまり、私がアレクセイ様を殺したことにして、国内を混乱させようとしたってこと?
「だが、来てみてわかった。リリス様は悪名高いどころか、聖女そのものだった。帝国の情報は間違っていたんだ」
ゼクスが悔しそうに拳を握る。
「許せねぇ……俺を捨て駒にして、あんな素晴らしい方を陥れようとした帝国の上層部が許せねぇ!」
「落ち着いて、ゼクス」
アレクセイ様が冷静に制する。
「事情はわかった。帝国は、我が国の内乱を誘発し、その隙に侵攻するつもりなのだろう。……だが、彼らは誤算を犯した」
アレクセイ様が私の肩を抱き寄せ、不敵に笑う。
「リリスという『規格外』の存在を読みきれなかったことだ。彼女のカリスマ性は、暗殺者さえも味方につけてしまう」
「ええ、そうですね」
シドが眼鏡を光らせる。
「帝国が仕掛けてくるなら、我々生徒会も黙ってはいられません。リリス会長を中心に、学園全体で迎撃態勢を整えましょう」
「戦争!? やめてよ、たかが学園生活でしょう!?」
私が慌てて止めようとするが、ガストンはすでに拳を鳴らし、レンはどこかへ情報収集に消え、マリアは「祈ります!」と拝み始めている。
そしてゼクスは、私の足元に跪き、熱い瞳で見上げてきた。
「リリス様。俺は帝国の情報を全て吐きます。あっちの手口も、スパイ網も全部知っている。……今度は、あなたのためにこの力を使わせてください」
「はぁ……もう好きにして」
私は深い深いため息をついた。
嫌われたい。 ただそれだけなのに、気づけば私は「帝国と戦うレジスタンスのリーダー」みたいなポジションに立たされている。
「リリス」
アレクセイ様が私の耳元で囁く。
「怖い顔をしなくていい。どんな敵が来ようとも、僕が君を守る。……いや、君と共に戦うよ。僕たちの愛の力で、帝国なんて蹴散らしてしまおう」
「愛の力とか言わないでください。寒気がします」
「照れ屋さんだなあ」
ちゅっ、と頬にキスされる。 私は白目を剥きそうになった。
◇
その夜。 公爵邸の自室に戻った私は、ベッドにダイブした。
「疲れた……」
今日は本当に疲れた。 暗殺者が来て、お茶をぶっかけて、下僕が増えて、戦争の気配まで漂ってきた。 怒涛の展開すぎる。
「でも、一つだけ収穫があったわ」
私は枕に顔を埋めながら呟いた。
「隣国の帝国……。そこには、まだ見ぬ『攻略対象』がいるはずよ」
乙女ゲームやラノベのお約束。 隣国の皇太子や、留学生キャラ。 彼らは大抵、傲慢で、俺様で、主人公(リリス)を強引に奪おうとする「当て馬」キャラだ。
もし、その彼が私に興味を持ち、強引にアプローチしてくれば……。 アレクセイ様と私の間に亀裂が入るかもしれない! あるいは、私がその隣国皇太子と浮気(のふり)をすれば、今度こそ婚約破棄できるかも!
「そうよ! ピンチはチャンス! 帝国の介入を利用するのよ!」
私はガバッと起き上がった。
ゼクスの話では、帝国はまだ諦めていないらしい。 近いうちに、正式な使節団、あるいは「留学生」として、帝国の要人が送り込まれてくる可能性が高い。
「待っていなさい、帝国の皇太子(たぶんイケメン)。わたくしが、あなたの誘惑に乗って差し上げますわ!」
私は窓の外、東の空(帝国の方向)に向かって不敵に笑った。
しかし私は知らなかった。 帝国から来るのが、ただのイケメン皇太子ではなく、もっと厄介な『リリス・ファンクラブ帝國支部』の会員第一号になる男だということを。
そして、私自身が蒔いた種(善行の数々)が、国境を超えて帝国にまで轟いており、 「ローゼンバーグの聖女を手に入れた国が世界を制す」 という伝説になっていることを。
私の逃亡生活(スローライフへの道)は、まだまだ遠い。
私の歓喜に満ちた声が、夕暮れの生徒会室に響き渡った。
バルコニーの手すりに立つ、黒装束の男。 顔を覆う仮面。手には怪しく光る短剣。 どこからどう見ても不審者であり、命を狙う刺客だ。 普通なら悲鳴を上げて逃げ惑うか、腰を抜かす場面だろう。
けれど、私の目はこれ以上ないほど輝いていた。 まるで、待ち焦がれたサンタクロースを迎える子供のように。
「……は?」
仮面の男――自称『黒の使徒』の動きが止まった。 殺気を放っていたはずの肩が、ガクッと下がったように見える。
「き、貴様……何を言っている? 俺は暗殺者だぞ? お前の命を奪いに来た死神だぞ?」
「ええ、わかっているわ! だからこそ素晴らしいのよ!」
私はドレスの裾を翻し、彼に向かって一歩踏み出した。 背後でアレクセイ様が「リリス! 下がるんだ!」と叫んでいるが、無視だ。 今、この千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかない。
「あなたは私のことを『偽りの聖女』と呼んだわね? つまり、私が猫を被った性悪女だという真実を知っているのね?」
「あ、ああ……調査済みだ。貴様が裏で何をしているか、全てな」
「ブラボー!」
私はパチパチと拍手をした。
「求めていた人材だわ! この学園の人間はどいつもこいつも節穴ばかりで、私の悪事(ピンクタイツ強制や激辛テロ)をすべて善行だと勘違いしているの。でも、あなたなら! 第三者の視点を持つあなたなら、私の本性を白日の下に晒してくれるはず!」
私は両手を広げ、彼を招き入れた。
「さあ、入ってらっしゃい! お茶でも飲みながら、私の罪状を大声で発表してちょうだい! 特にあのアレクセイという男に聞こえるように、具体的にお願いね!」
「……狂っているのか?」
暗殺者がドン引きしている。 仮面の下の瞳が、獲物を見る目から、理解不能な生物を見る目(または同情)に変わっていくのがわかった。
「お姉様……? 何を言って……?」
マリアがおろおろとしている。 アレクセイ様が剣の柄に手をかけたまま、険しい表情で私と暗殺者を交互に見ている。
「リリス。まさか、自らを囮にして、彼の注意を引きつけようとしているのか? 僕やマリアを守るために……」
「違います! 自分のために断罪されたいだけです!」
「……そうか。恐怖で錯乱したふりをして、相手を油断させる高等戦術か。君の度胸には恐れ入る」
ダメだ、通じない。 もういい、暗殺者さんに頼るしかない。
「さあ、『黒の使徒』さん! 遠慮はいらないわ。私の悪逆非道を、ここですべて暴いて!」
私は彼を煽った。 さあ、言え。「こいつは生徒を苦しめる悪魔だ」と。 そうすれば、私の「聖女メッキ」は剥がれ落ち、婚約破棄への道が開ける!
暗殺者はためらいがちにバルコニーから降り立つと、咳払いを一つした。
「……いいだろう。貴様がそこまで言うなら、冥土の土産に教えてやる。貴様の罪をな!」
来た! 断罪タイムの始まりよ!
暗殺者が指を突きつける。
「罪状その一! 貴様は、神聖な学園の風紀を乱した! 生徒たちに、あの見るも無惨な『ピンク色のタイツ』を履かせ、視覚的な暴力を振るった罪!」
「そうよ! その通りよ! あれはダサいでしょう!? 私の悪趣味の結晶よ!」
私はブンブンと首を縦に振った。 さあ、みんな聞いた!? あのタイツは「視覚的な暴力」なのよ!
しかし。
「異議あり!」
叫んだのは、副会長のシドだった。 彼はメガネをクイッと押し上げ、冷徹な声で反論した。
「視覚的暴力? 笑わせないでいただきたい。あの色は、最新の研究に基づいた『色彩療法』の一環です。事実、タイツ導入後、学園内のうつ病発生率はゼロになり、生徒たちの幸福度は過去最高を記録しています。貴様ごときの美的感覚で、リリス会長の深遠な色彩戦略を否定するなど、言語道断!」
「なっ……!?」
暗殺者が言葉に詰まる。
「そ、そうか……では罪状その二! 貴様は、食堂のメニューを激辛料理に変え、生徒たちの胃腸を破壊しようとした!」
「ええ、そうよ! お腹を壊して苦しめばいいと思ってやったの!」
「甘いな」
今度はガストンが腕組みをして前に出た。
「あの激辛料理のおかげで、冷え性の女子たちが救われたんだ。それに、発汗作用で夏バテも解消された。何より、あの刺激的な味が『生きている実感』を呼び覚ますと、男子生徒の間じゃ大ブームだぜ。リリス様の料理は、魂を熱くする『命のメシ』なんだよ!」
「ぐぬぬ……!」
暗殺者が後ずさりする。 頑張れ暗殺者! 負けるな暗殺者! まだあるでしょう? マリアへのいじめとか!
「罪状その三! これが決定的だ! 貴様は、転入してきたばかりの無垢な少女、マリア・キャンベルに対し、数々の嫌がらせを行った! カバンを侮辱し、雑草を送りつけ、さらには毒入りの茶を飲ませようとしたな!」
「はい! やりました! 全部やりました!」
私は胸を張った。 これなら言い逃れできないはずだ。 マリア本人もここにいるし、証言してくれれば……!
「嘘よ!」
叫んだのは、当のマリアだった。
「リリスお姉様は、私をいじめてなんていません! カバンの真の価値を見抜き、亡き母への敬意を示してくださいました! 雑草ではなく、高貴な心を表す野の花をくださいました! そしてお茶は、私の魔力を目覚めさせるための愛の試練でした!」
マリアの体が、感情の高ぶりと共に淡く発光し始める。 聖女のオーラだ。 眩しい。直視できない。
「お姉様を悪く言うなんて、許しません! この人は、誰よりも優しくて、不器用なだけなんです!」
「ち、違うのよマリア! 私は本当に意地悪で……!」
「黙れ、下郎!」
最後の一撃を放ったのは、アレクセイ様だった。 彼は抜刀し、切っ先を暗殺者に向けた。 その瞳は、絶対零度。
「僕のリリスを愚弄することは、この国の未来を愚弄することと同義だ。彼女の行動はすべて、慈愛と英知に基づいている。それを理解できない貴様の目は、腐っているとしか思えないな」
「ば、馬鹿な……」
暗殺者は膝から崩れ落ちた。 物理攻撃を受ける前に、まさかの「全肯定論破」で精神的ダメージを受けたようだ。
「な、なぜだ……俺の調査では、確かに嫌がらせの事実があったはず……なぜ全員が、こいつを崇拝しているんだ……!? 洗脳か? 集団催眠なのか!?」
ある意味、正解だ。 これは「溺愛」という名の強力な集団催眠だ。 そして、その催眠術師(本人に自覚なし)である私は、今、絶望の淵に立たされていた。
(終わった……)
せっかくの断罪チャンスが、ファン感謝祭みたいになってしまった。 もう誰も私の「悪」を信じてくれない。
「……くそっ! こうなれば実力行使だ!」
追い詰められた暗殺者が、ヤケクソ気味に立ち上がった。 短剣を構え、一直線に私に向かってくる。
「死ねぇぇぇ! 偽りの聖女め!」
速い。 さすがはプロ(?)の暗殺者。 護衛のガストンやアレクセイ様が動くよりも早く、その刃が私に迫る。
「リリス!」
「お姉様!」
死ぬ。 今度こそ、物理的に死ぬ。 いや、死にたくはないの! ただ嫌われたいだけなの!
(逃げなきゃ!)
私はとっさに身を翻そうとした。 しかし、慌てすぎて足がもつれた。 さらに、テーブルの上に置いてあったティーセット(マリアが飲んで覚醒した激苦茶のポット)に手が当たった。
「あ」
ガシャン!
ポットが宙を舞う。 中に入っていた熱々の、そして粘り気のある真っ黒な液体が、放物線を描いて飛んでいく。
バシャッ!
「ぐあぁぁっ!?」
液体は、見事に突っ込んできた暗殺者の顔面を直撃した。
「あ、熱っ!? なんだこれ、目に入っ……痛っ! 苦っ!?」
暗殺者が顔を押さえてのたうち回る。 「竜の根」を煮詰めた激苦茶は、目に入れば催涙スプレー並みの激痛をもたらし、口に入れば味覚を麻痺させる凶悪な兵器だ。
「え、うそ、当たっちゃった……」
私は呆然とした。 ただ逃げようとして、お茶をこぼしただけなのに。
「隙ありィィッ!」
その隙を見逃すガストンではなかった。 巨体が砲弾のように突進し、暗殺者にタックルをかます。
ドガァァン!
暗殺者は吹き飛び、壁に激突して動かなくなった。
「確保しました、会長」
ガストンが親指を立てる。 シドが冷静にポットを拾い上げる。
「見事なカウンターです、リリス会長。敵の突進力を利用し、視界を奪い、味方の攻撃へ繋げる……まさに電光石火の連携プレー。最初から計算済みだったのですね」
「……ええ、まあね(震え声)」
私は引きつった笑顔で頷くしかなかった。 計算なんてしていない。 私の人生設計における計算は、いつだって答えが合わないのだ。
◇
数分後。 気絶した暗殺者は、ガストンによって縄でぐるぐる巻きにされ、生徒会室の床に転がされていた。 仮面は剥がされ、その下から現れたのは、意外にも若い青年の顔だった。 歳は私たちと同じくらいか。 少し野暮ったいが、目鼻立ちは整っている。
「さて……どうしましょうか」
私は腕組みをして彼を見下ろした。
通常なら、王宮騎士団に引き渡して終わりだ。 国家反逆罪、王族暗殺未遂罪。 間違いなく極刑だろう。
しかし、それでは面白くない。 それに、彼を処刑してしまったら、私の「悪女ポイント」が稼げない。 悪女たるもの、敗者を無慈悲に切り捨てるか、あるいは……もっと残酷な運命を与えるべきだ。
そうだ。 彼を私の「私兵」にしてしまおう。
暗殺者としての腕は確かなようだ(お茶で負けたけど)。 彼を脅迫し、弱みを握り、無理やり服従させる。 そして、今度こそ私の手足となって、本当に汚い仕事(アレクセイ様の部屋へのゴキブリ投入とか)をやらせるのだ。
「ふふふ……」
私は悪い顔を作り、目を覚ました青年の前にしゃがみ込んだ。
「う……ここは……」
青年が目を開ける。 目の前に、私の顔がある。
「お目覚めかしら、失敗した暗殺者さん」
扇で口元を隠し、冷ややかに見下ろす。
「ひっ……!」
彼は怯えて後ずさろうとしたが、縄で縛られていて動けない。 周囲には、アレクセイ様、ガストン、シド、レン、そして聖女発光中のマリアが立ちはだかっている。 四面楚歌だ。
「殺せ……! 捕虜になるくらいなら、舌を噛んで死んでやる!」
青年が叫ぶ。 お決まりのセリフだ。 ここで「まあ待ちなさい」と止めるのが悪女の流儀。
「死? そんな楽な逃げ道、許すわけないでしょう?」
私は彼の顎を扇でクイッと持ち上げた。
「あなたは私の命を狙った。その代償は、体で払ってもらうわ」
「なっ……!?」
青年が顔を赤くする。 アレクセイ様が「リリス、その言い回しは少し誤解を招くかもしれないが……君なりの『奉仕活動への強制参加』という意味だね?」とフォローを入れるが、無視だ。
「名前は?」
「……ゼクス」
「そう、ゼクス。あなたには二つの選択肢があるわ」
私は指を二本立てた。
「一つ。このまま騎士団に引き渡され、拷問の末に処刑される道」
「くっ……」
「二つ。私の『犬』となり、一生こき使われる道。……どちらがいい?」
どうだ。 究極の二択。 プライドの高い暗殺者なら「殺せ!」と言うかもしれないが、そこは上手く言いくるめて……
「……なぜだ」
ゼクスが震える声で尋ねてきた。
「なぜ、俺を殺さない? 俺はお前の命を狙ったんだぞ? お前を『偽物』だと罵ったんだぞ? それなのに、なぜ生きるチャンスを与える?」
「それは……」
私があなたを利用したいから。 あなたの隠密スキルで、悪事を働きたいから。 そう言おうとした。
しかし、私の口から出る前に、シドが勝手に解説を始めた。
「わからないのか、三流暗殺者。リリス会長は、お前の『才能』を惜しんでいるのだ」
「才能……?」
「お前の身のこなし、そして王宮の警備を潜り抜けてここまで来た潜入能力。それは得難い資質だ。会長は、お前のようなドロップアウトした人間にこそ、更生の機会と輝ける場所を与えたいと考えておられるのだ。我々と同じようにな」
シドたちがウンウンと頷く。 ガストンが「俺も昔は暴れん坊だったが、会長に拾われて生徒会役員になれたんだ」と語り、レンが「俺も……居場所をくれた」とボソッと言う。
「……そうなのか?」
ゼクスの瞳が揺れる。 疑念が、希望へと変わっていく。
「俺のような……日陰者でも、必要としてくれるのか?」
「ええ、もちろんよ(悪事の実行犯としてね)」
私はニッコリと微笑んだ。 あくまで「利用価値がある」という意味だが、彼には「存在価値を認めてくれた」と聞こえたらしい。
ゼクスの目から涙が溢れ出した。
「ううっ……! 今まで、道具としてしか扱われてこなかった俺に、そんな温かい言葉を……!」
彼は縛られたまま、器用に土下座の姿勢をとった。
「負けました……完敗です、聖女リリス様! 俺の命、あなたに預けます! これからはあなたの『影』となり、あなたに仇なす全ての敵を排除する剣となりましょう!」
「だから違うのよー! 敵を排除しなくていいの! むしろ敵を連れてきて!」
私の心の叫びは届かない。 こうして、私の手持ちポケモン……じゃなくて、配下に、新たに『元暗殺者(隠密特化)』が加わってしまった。
◇
一件落着……にはならなかった。 ゼクスを縄から解いた後、アレクセイ様が鋭い質問を投げかけたからだ。
「さて、ゼクス。君がリリスに忠誠を誓ったのはいいが、一つ明らかにしておかなければならないことがある。君の雇い主は誰だ?」
「……っ」
ゼクスの顔が強張る。
「単独犯ではないだろう? 『黒の使徒』などという組織名、そして王族暗殺のための装備。背後に国家規模の支援がなければ不可能だ」
さすが王太子。 こういう時の勘は鋭い。
ゼクスは迷うように私を見た。 私が「言いなさい」と目で促すと、彼は観念したように口を開いた。
「……隣国、バルドゥール帝国だ」
「帝国……!」
場に緊張が走る。 バルドゥール帝国は、我が国と国境を接する軍事大国だ。 近年、不可侵条約を結んでいるはずだが……。
「俺は帝国の諜報機関に所属する下っ端だった。上からの命令は、『王太子アレクセイを暗殺し、その罪を悪名高い公爵令嬢リリスになすりつけろ』というものだった」
「なっ……!」
私は絶句した。 私になすりつける? つまり、私がアレクセイ様を殺したことにして、国内を混乱させようとしたってこと?
「だが、来てみてわかった。リリス様は悪名高いどころか、聖女そのものだった。帝国の情報は間違っていたんだ」
ゼクスが悔しそうに拳を握る。
「許せねぇ……俺を捨て駒にして、あんな素晴らしい方を陥れようとした帝国の上層部が許せねぇ!」
「落ち着いて、ゼクス」
アレクセイ様が冷静に制する。
「事情はわかった。帝国は、我が国の内乱を誘発し、その隙に侵攻するつもりなのだろう。……だが、彼らは誤算を犯した」
アレクセイ様が私の肩を抱き寄せ、不敵に笑う。
「リリスという『規格外』の存在を読みきれなかったことだ。彼女のカリスマ性は、暗殺者さえも味方につけてしまう」
「ええ、そうですね」
シドが眼鏡を光らせる。
「帝国が仕掛けてくるなら、我々生徒会も黙ってはいられません。リリス会長を中心に、学園全体で迎撃態勢を整えましょう」
「戦争!? やめてよ、たかが学園生活でしょう!?」
私が慌てて止めようとするが、ガストンはすでに拳を鳴らし、レンはどこかへ情報収集に消え、マリアは「祈ります!」と拝み始めている。
そしてゼクスは、私の足元に跪き、熱い瞳で見上げてきた。
「リリス様。俺は帝国の情報を全て吐きます。あっちの手口も、スパイ網も全部知っている。……今度は、あなたのためにこの力を使わせてください」
「はぁ……もう好きにして」
私は深い深いため息をついた。
嫌われたい。 ただそれだけなのに、気づけば私は「帝国と戦うレジスタンスのリーダー」みたいなポジションに立たされている。
「リリス」
アレクセイ様が私の耳元で囁く。
「怖い顔をしなくていい。どんな敵が来ようとも、僕が君を守る。……いや、君と共に戦うよ。僕たちの愛の力で、帝国なんて蹴散らしてしまおう」
「愛の力とか言わないでください。寒気がします」
「照れ屋さんだなあ」
ちゅっ、と頬にキスされる。 私は白目を剥きそうになった。
◇
その夜。 公爵邸の自室に戻った私は、ベッドにダイブした。
「疲れた……」
今日は本当に疲れた。 暗殺者が来て、お茶をぶっかけて、下僕が増えて、戦争の気配まで漂ってきた。 怒涛の展開すぎる。
「でも、一つだけ収穫があったわ」
私は枕に顔を埋めながら呟いた。
「隣国の帝国……。そこには、まだ見ぬ『攻略対象』がいるはずよ」
乙女ゲームやラノベのお約束。 隣国の皇太子や、留学生キャラ。 彼らは大抵、傲慢で、俺様で、主人公(リリス)を強引に奪おうとする「当て馬」キャラだ。
もし、その彼が私に興味を持ち、強引にアプローチしてくれば……。 アレクセイ様と私の間に亀裂が入るかもしれない! あるいは、私がその隣国皇太子と浮気(のふり)をすれば、今度こそ婚約破棄できるかも!
「そうよ! ピンチはチャンス! 帝国の介入を利用するのよ!」
私はガバッと起き上がった。
ゼクスの話では、帝国はまだ諦めていないらしい。 近いうちに、正式な使節団、あるいは「留学生」として、帝国の要人が送り込まれてくる可能性が高い。
「待っていなさい、帝国の皇太子(たぶんイケメン)。わたくしが、あなたの誘惑に乗って差し上げますわ!」
私は窓の外、東の空(帝国の方向)に向かって不敵に笑った。
しかし私は知らなかった。 帝国から来るのが、ただのイケメン皇太子ではなく、もっと厄介な『リリス・ファンクラブ帝國支部』の会員第一号になる男だということを。
そして、私自身が蒔いた種(善行の数々)が、国境を超えて帝国にまで轟いており、 「ローゼンバーグの聖女を手に入れた国が世界を制す」 という伝説になっていることを。
私の逃亡生活(スローライフへの道)は、まだまだ遠い。
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