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第7話 隣国の皇太子を誘惑したら、なぜか帝国の『女帝』として崇められました
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「いいこと? 今回のミッションは『浮気』よ。それも、国を揺るがすレベルの大スキャンダルを巻き起こすの」
学園のサロン(かつては空き教室だったが、ガストンとシドによって王宮の一室のように改装された生徒会室)で、私は高らかに宣言した。
目の前にいるのは、私の忠実な下僕たち。 副会長のシド、用心棒のガストン、情報屋のレン、聖女マリア、そして元暗殺者のゼクス。 彼らは真剣な表情で私の言葉をメモしている。
「会長、確認ですが」 シドが手を挙げた。 「その『浮気』というのは、アレクセイ殿下に対する戦略的牽制、あるいは嫉妬心を煽ることで恋の炎を燃え上がらせる『愛の着火剤』作戦ということでしょうか?」
「違うわよ! ガチの浮気よ! 不貞行為よ! 泥沼の愛憎劇よ!」
私は机をバンと叩いた。
「わたくしはもう、聖女扱いされるのに疲れたの。アレクセイの溺愛にも胃もたれしているの。だから、他の男とイチャイチャして、彼に『不潔だ! 顔も見たくない!』と三行半を突きつけさせる。これぞ完璧な婚約破棄計画!」
「なるほど……」 ゼクスが腕組みをして頷く。 「つまり、リリス様は自らの貞操というリスクを冒してまで、王太子の慢心を諌め、国の未来のために『汚れ役』を演じようというのですね。……泣ける自己犠牲だ」
「だから違うって言ってるでしょ!?」
私の叫びは無視され、会議は進む。 今回のターゲットは、今日この学園にやってくる「超大物留学生」。
隣国バルドゥール帝国の皇太子、ハインリヒ・フォン・バルドゥール。
軍事大国である帝国の次期皇帝であり、『雷帝』の異名を持つ男。 噂によれば、性格は傲慢不遜、好戦的で、女好き。 気に入った女性は力ずくで自分のものにし、飽きたら捨てるという、絵に描いたような「クズ男」らしい。
(……最高じゃない!)
私は心の中でガッツポーズをした。 そんな男なら、私が少し色目を使えばすぐに食いつくはず。 そして、公衆の面前で彼と腕を組んで歩けば、アレクセイ様もさすがにプライドが許さないだろう。 「帝国の男に寝取られた女」なんて、王妃になれるはずがない。
「いい? 作戦名は『ハニートラップ・イン・ザ・スクール』よ。私がハインリヒを誘惑している間、あなたたちは決して邪魔をしないこと。アレクセイが来ても、うまく足止めをして、決定的瞬間(キスシーンとか)を目撃させるのよ!」
「承知いたしました」 「任せてくだせぇ」 「お姉様……無理はしないでくださいね」
全員が神妙な顔で頷いた。 よし、準備は万端だ。
待っていなさい、ハインリヒ。 あなたのその「女好き」という才能、私が有効活用してあげるわ!
◇
歓迎式典が行われる講堂は、異様な熱気に包まれていた。 帝国の皇太子を一目見ようと、全校生徒が集まっている。 特に女子生徒たちは、「帝国の美男子らしいわよ」「でも野蛮なんでしょう?」と、期待と不安が入り混じった声を上げていた。
壇上の最前列には、生徒会長である私と、王太子アレクセイ様が並んで座っている。 アレクセイ様はいつものように涼しい顔をしているが、その目は笑っていない。 帝国の皇太子に対する警戒心がありありと見て取れる。
(ふふふ、警戒なさい。あなたの最大の敵は、帝国ではなく、隣に座っている婚約者の浮気心なのだから)
やがて、重厚なファンファーレが鳴り響いた。 扉が開き、帝国の使節団が入場してくる。 屈強な騎士たちに守られ、中央を歩いてくる一人の男。
ハインリヒ・フォン・バルドゥール。
でかい。 第一印象はそれだった。 身長は百九十センチくらいあるだろうか。 鍛え上げられた肉体は、軍服の上からでもわかるほど分厚い。 燃えるような赤髪を短く刈り込み、瞳は肉食獣のような金色。 そして、その口元には不敵な笑みが張り付いている。
「よう。ここが噂の『お上品な』学園か」
ハインリヒは壇上に上がると、マイクも使わずに大声で言い放った。 その声だけで、ビリビリと空気が震える。
「俺はハインリヒ。帝国の次期皇帝だ。この国に『愛』とかいう甘っちょろいものを学びに来てやった。……ま、俺を満足させる奴がいればの話だがな」
挑発的すぎる挨拶。 会場がざわつく。 教師たちは顔をしかめ、男子生徒たちはムッとし、女子生徒たちは「ワイルド……!」と黄色い声を上げる。
ハインリヒの視線が、壇上の私たちに向けられた。 まずアレクセイ様を見て、鼻で笑う。
「お前がアレクセイか。噂通りの優男だな。その細腕で剣が振れるのか?」
「歓迎するよ、ハインリヒ殿下。剣の腕が気になるなら、いつでも手合わせしよう。……君が泣いて帰ることにならなければいいが」
アレクセイ様も負けていない。 笑顔のまま、さらりと煽り返す。 火花が散る。
そして、ハインリヒの視線が私に移った。 金色の瞳が、じろりと私を舐め回す。
(来たわ! アピールタイム!)
私は扇を広げ、流し目で彼を見つめ返した。 媚びるように、かつ大胆に。 唇を少し湿らせ、上目遣いで「誘って」みる。
さあ、どうよ。 この美貌、この色気。 女好きのあなたなら、無視できないはず!
ハインリヒが、私に向かって歩いてくる。 ドス、ドス、と足音が響く。 私の目の前で立ち止まり、巨体で見下ろしてくる。
「ほう……」
彼は私の顎を、無遠慮に指で持ち上げた。
「お前がリリス・フォン・ローゼンバーグか。面白い顔をしているな」
「……は?」
面白い顔? 美しい、じゃなくて?
「噂は聞いているぞ。『悪女』だの『聖女』だの、正体不明の女だとな。……ふん、だが俺の目には、ただの強欲な女にしか見えねぇな」
ビンゴ! そうよ、私は強欲な悪女よ! わかってるじゃない、この人!
「あら、ご明察ですこと」
私は彼の手をパシンと払いのけた。 誘惑するつもりだったが、顎を持たれたのがムカついたので、つい反射的に叩いてしまった。 いけない、これじゃ嫌われる……いや、嫌われてもいいのか? でも浮気相手としては好かれないと……。
「触らないでくださる? あなたの手、血と鉄の臭いがしますわ。……野蛮で素敵ですけれど」
最後に付け足したフォロー。 これが「ツンデレ」と解釈されるか、「誘惑」と取られるか。
ハインリヒの目が丸くなった。 そして次の瞬間、彼は腹を抱えて爆笑した。
「ギャハハハハ! 払いのけやがった! 俺の手を! しかも『野蛮で素敵』だと!? おいおい、この国の女はみんなこうなのか?」
彼は涙を拭いながら、ニヤリと笑った。 その目は、獲物を見つけた猛獣の目だった。
「気に入った。……おい、女。俺の女になれ」
「えっ」
早っ。 まだ出会って五分よ? さすが帝国、展開がスピーディーすぎる。
「俺の側室にしてやる。帝国に来れば、宝石でもドレスでも、欲しいものはなんでもくれてやるぞ」
これだ。 求めていた展開だ。 公衆の面前での、強引なナンパ。 ここで私が「まあ、素敵! アレクセイ様よりお金持ちなのね!」と言ってなびけば、作戦完了だ。
私は口を開きかけた。 「喜んで」と言うために。
しかし。
「――お断りします」
私の口から出たのは、氷のように冷たい拒絶の言葉だった。
(なんでぇぇぇ!?)
私の脳内の「悪女リリス」が叫ぶ。 違うのよ、口が勝手に! 貴族としてのプライドと、長年染み付いた王妃教育の成果が、自動防御システムのように作動してしまったのよ!
「側室? ふざけないでちょうだい。わたくしは公爵令嬢リリス。誰かの『おまけ』になるつもりはありませんわ」
私は立ち上がり、ハインリヒを真っ直ぐに見据えた。
「わたくしを手に入れたいのなら、側室なんて半端な地位ではなく、正妃……いいえ、『女帝』の椅子を用意していらっしゃい! それくらいの覚悟がなくて、よくも私の前に立てましたわね、この子犬ちゃん」
言っちゃった。 「子犬ちゃん」って言っちゃった。 相手は「雷帝」と呼ばれる巨漢なのに。
会場が凍りつく。 帝国の騎士たちが殺気立つ。 「貴様、殿下になんて口を!」
しかし、ハインリヒは……震えていた。 怒りで? いや、顔が赤い。
「……女帝……」
彼は恍惚とした表情で呟いた。
「俺に『国を寄越せ』と言った女は、お前が初めてだ。……ゾクゾクしやがる」
え?
「いいぜ。受けて立ってやるよ。俺が皇帝になり、お前を隣に座らせてやる。いや、お前が俺を支配してみろ!」
ドンッ! ハインリヒが、いわゆる「壁ドン」をしてきた。 ただし壁がないので、空気をドンと叩くようなジェスチャーだったが、その迫力は凄まじかった。
「今日からお前は俺の獲物だ。アレクセイ、悪いがこの女は俺がもらう」
ハインリヒが宣言する。 アレクセイ様がすっと立ち上がり、私の腰に手を回す。
「断る。彼女は僕の魂の一部だ。……それに、君ごときに彼女が御せると思わないことだね」
二人の男が睨み合う。 その間で、私は冷や汗をダラダラ流していた。
(違うの……私はただの浮気がしたかっただけなの……なんで「国盗り物語」みたいになってるの……)
◇
翌日から、ハインリヒによる猛アプローチが始まった。
アレクセイ様のアプローチが「詩的でロマンチック」だとすれば、ハインリヒのアプローチは「暴力的で物理的」だった。
朝。 教室の私の机の上に、血の滴るような巨大な肉塊(高級な魔獣の肉らしい)が置かれていた。 『食え。精がつくぞ』というメモと共に。
昼。 中庭で休んでいると、空から黄金の雨が降ってきた。 ハインリヒが屋上から金貨をばら撒いていたのだ。 『拾え! 俺の財力を見せてやる!』
放課後。 下駄箱を開けると、中には靴ではなく、大量の宝石が詰め込まれていた。 『靴などいらん。俺が背負って歩いてやる』
「……バカなの?」
私は宝石まみれの上履きを見つめながら呟いた。 嫌がらせか? これは新手の嫌がらせなのか?
「いえ、これは帝国の求愛儀礼に基づいた、最上級のアプローチです」 背後から、ゼクス(元帝国スパイ)が解説する。 「魔獣の肉は『狩猟能力』の証明、金貨は『経済力』の証明、そして宝石は『永遠の支配』を意味します。殿下は本気です。リリス様を帝国に連れ帰る気満々です」
「迷惑よ! 肉は生臭いし、金貨が当たって痛かったし!」
「しかし、作戦通りではありませんか? 隣国の皇太子にこれほど執着されている。アレクセイ殿下も嫉妬で狂いそうになっているのでは?」
そう。 問題はそこだ。
アレクセイ様は、狂うどころか、妙に落ち着いているのだ。 ハインリヒが私にちょっかいを出すたびに、遠くでニコニコと見守っている。 まるで、子供の遊びを見守る父親のように。
(なぜ怒らないの? 婚約者が肉塊を送りつけられているのよ?)
私は焦りを感じた。 もっと決定的なシーンを見せつけなければ。
「よし。今夜の歓迎パーティーで勝負をかけるわ」
◇
その夜。 学園のホールで開催された歓迎パーティー。
私は、露出度の高い黒のドレスで参戦した。 背中が大きく開き、スリットからは太ももがチラ見えする。 王太子妃候補としては「はしたない」ギリギリのラインだ。
「ハインリヒ殿下」
私はワイングラスを片手に、ハインリヒに近づいた。
「あら、お一人? 寂しそうですわね」
ハインリヒは、群がる取り巻きの令嬢たちを無視して、私だけを見ていた。
「来たか、俺の女帝。……その格好、誘っているのか?」
「ええ、誘っていますのよ。……わたくしと、抜け出しませんこと?」
私は彼の耳元で囁いた。 甘い声で。 香水の香りを漂わせて。
「夜風が気持ちいいバルコニーで……二人きりで『外交』をしましょう?」
意味深な誘い。 これに乗らない男はいない。
ハインリヒはニヤリと笑った。
「いい度胸だ。食ってやるよ、骨までな」
彼は私の腰を強引に抱き寄せ、バルコニーへと連れ出した。 よし、成功! あとは、ここで抱き合っているところを、アレクセイ様に見られれば……!
バルコニーに出ると、ハインリヒはいきなり私を壁に押し付けた。
「待ちきれねぇ。ここで俺のものになれ」
顔が近い。 獣の匂いがする。 ちょ、ちょっと待って。 展開が早すぎる。 キスくらいでいいのに、いきなりクライマックス!?
「ちょ、ちょっと殿下! ムードというものが……」
「うるせぇ! 俺は欲しいものはすぐに手に入れる主義だ!」
彼は私の首筋に顔を埋めようとする。 ヤバい。 これは浮気ごっこじゃなくて、襲われている。
「や、やめ……!」
私が抵抗しようとした、その時。
「――そこまでだ、野良犬」
冷徹な声が響いた。 バルコニーの入り口に、アレクセイ様が立っていた。 月光を背負い、その手には抜き身の剣が握られている。
(来たーーーッ!!)
私は心の中で叫んだ。 修羅場! ついに修羅場!
「リリスから離れろ」 アレクセイ様が静かに告げる。 殺気が凄まじい。 空気が凍りつくようだ。
ハインリヒは私から離れ、面白そうにアレクセイ様を見た。
「ほう。ようやく来たか。自分の女が他の男に寝取られそうになって、どんな気分だ?」
「寝取られる? 勘違いするな」
アレクセイ様はフッと笑った。
「リリスは、君を『試して』いただけだ」
「あ?」
「彼女は、君が帝国の指導者として相応しい器かどうか、その身を呈して測っていたのだよ。……結果は不合格だ。欲望に任せてレディを襲うような理性のない獣に、帝国は任せられない」
「なんだと……?」
「リリス。もういいよ。十分だ」
アレクセイ様が私に手を差し伸べる。
「君の献身的な『潜入捜査』のおかげで、帝国の皇太子の本性がわかった。彼は交渉に値しない。……こっちにおいで」
待って。 潜入捜査? いつから私はスパイになったの? 私はただ、いかがわしい雰囲気になりたかっただけなのに!
「ち、違いますわ殿下! わたくしは本気で彼と……!」
「わかっている。君は、彼を骨抜きにして、帝国の情報を引き出そうとしていたんだろう? そのために、自分の評判さえも犠牲にして……『浮気女』の汚名を被ってまで、国を守ろうとした。なんて愛国心が強いんだ」
アレクセイ様の瞳が潤んでいる。
「だが、もういい。君が汚れる必要はない。僕が彼を排除する」
アレクセイ様が剣を構える。 本気だ。 このままでは、ハインリヒが斬られる。 そして国際問題になり、戦争になる!
(なんでこうなるのよーーッ!)
私はパニックになり、二人の間に割って入った。
「お待ちなさい! 二人とも、武器を収めて!」
「リリス、どくんだ!」 「どいてろ女、俺はこの優男をぶっ殺す!」
二人は止まらない。 私はとっさに、一番近くにあったものを掴んで振り回した。 それは、バルコニーに飾ってあった、重厚な石膏の彫像(天使像)だった。
「いい加減にしなさいよ、このバカ男どもがあぁぁぁッ!!」
ドガァァン!!
私のフルスイングした天使像が、ハインリヒの頭に直撃した。
「ぐべっ」
ハインリヒが白目を剥いて倒れる。 雷帝、陥落。
そして、その勢いのまま、私はアレクセイ様の方へ向き直った。
「あなたもよ! すぐに剣を抜く癖、直しなさいって言ってるでしょう!」
私は天使像(の残骸)をアレクセイ様に突きつけた。
「わたくしは! 平和に! 穏便に! ただ単に! 不純異性交遊がしたかっただけなんですのよーーッ!!」
シーン……。
バルコニーに沈黙が降りる。 気絶したハインリヒ。 ポカンとするアレクセイ様。 そして、息を切らして仁王立ちする、天使像を持った私。
あ。 やっちゃった。 隣国の皇太子を殴って気絶させちゃった。
これ、打ち首? 戦争?
私は血の気が引いていくのを感じた。
しかし。 倒れていたハインリヒが、むくりと起き上がった。 頭から血を流しながら。
「……すげぇ」
彼は、朦朧とした意識の中で、私を見上げてニヤリと笑った。
「俺を一撃で……? しかも、あの堅物のアレクセイにも説教を……?」
彼の瞳に、ハートマークが浮かんでいるように見えた。
「本物の……女帝だ……」
「へ?」
ハインリヒはその場に土下座した。
「参った! 俺の負けだ! リリス、お前こそが最強だ! 俺はお前の強さに惚れた!」
「……は?」
「俺を殴った女は、母上(帝国のゴリラ女帝)以来だ! お前なら、俺の手綱を握れる! 頼む、俺を躾けてくれ! 俺をご主人様のものにしてくれ!」
「いやぁぁぁぁッ! なんでドMに覚醒してるのよーーッ!」
アレクセイ様が、納得したように頷く。
「なるほど。リリス、君は暴力によって彼を屈服させ、帝国の支配下ではなく、彼個人を君の配下に置くことで、戦争を回避したんだね。……『力による平和』。まさに帝国の流儀に合わせた完璧な外交だ」
「違う! もう何もかも違う!」
こうして。 私の「浮気作戦」は失敗に終わり、代わりに「帝国の皇太子(忠犬)」という、とてつもなく厄介なペットを手に入れてしまったのだった。
◇
翌日。 学園には、私の後ろをついて回る、巨大な赤髪の男の姿があった。
「リリス様! カバン持ちます!」 「リリス様! 邪魔な奴は消しますか?」 「リリス様! 今日の靴の味はいかがですか?(舐めようとしている)」
ハインリヒ。 完全に懐いている。 そして、その横には、ニコニコ顔のアレクセイ様。
「やあ、ハインリヒ。リリスの靴を舐めるのは僕の特権だから、君には譲れないな」 「ああん? 減るもんじゃねぇだろ。片足ずつシェアしようぜ」 「ふふ、君とはいい酒が飲めそうだ」
なぜか意気投合している。 私の所有権を巡る協定(平和条約)が結ばれたらしい。
私は空を見上げた。
「……お母様。私はただ、嫌われたかっただけなのに……どうして世界征服への道を歩んでいるのでしょうか」
帝国の脅威は去った(というか吸収した)。 しかし、私のストレスはマッハで加速していた。
そして、この騒動を遠くから見つめる、一人の影があった。 ハインリヒに付き従っていた、帝国の宰相補佐官である冷徹そうな男。
「……ほう。あのハインリヒ殿下を手懐けるとは。リリス・フォン・ローゼンバーグ。彼女こそが『予言の子』か……?」
男が怪しげな水晶玉を取り出す。
「計画を修正する。彼女を『魔王の器』として覚醒させるのだ」
新たな勘違いのフラグが立ったことに、私はまだ気づいていなかった。
学園のサロン(かつては空き教室だったが、ガストンとシドによって王宮の一室のように改装された生徒会室)で、私は高らかに宣言した。
目の前にいるのは、私の忠実な下僕たち。 副会長のシド、用心棒のガストン、情報屋のレン、聖女マリア、そして元暗殺者のゼクス。 彼らは真剣な表情で私の言葉をメモしている。
「会長、確認ですが」 シドが手を挙げた。 「その『浮気』というのは、アレクセイ殿下に対する戦略的牽制、あるいは嫉妬心を煽ることで恋の炎を燃え上がらせる『愛の着火剤』作戦ということでしょうか?」
「違うわよ! ガチの浮気よ! 不貞行為よ! 泥沼の愛憎劇よ!」
私は机をバンと叩いた。
「わたくしはもう、聖女扱いされるのに疲れたの。アレクセイの溺愛にも胃もたれしているの。だから、他の男とイチャイチャして、彼に『不潔だ! 顔も見たくない!』と三行半を突きつけさせる。これぞ完璧な婚約破棄計画!」
「なるほど……」 ゼクスが腕組みをして頷く。 「つまり、リリス様は自らの貞操というリスクを冒してまで、王太子の慢心を諌め、国の未来のために『汚れ役』を演じようというのですね。……泣ける自己犠牲だ」
「だから違うって言ってるでしょ!?」
私の叫びは無視され、会議は進む。 今回のターゲットは、今日この学園にやってくる「超大物留学生」。
隣国バルドゥール帝国の皇太子、ハインリヒ・フォン・バルドゥール。
軍事大国である帝国の次期皇帝であり、『雷帝』の異名を持つ男。 噂によれば、性格は傲慢不遜、好戦的で、女好き。 気に入った女性は力ずくで自分のものにし、飽きたら捨てるという、絵に描いたような「クズ男」らしい。
(……最高じゃない!)
私は心の中でガッツポーズをした。 そんな男なら、私が少し色目を使えばすぐに食いつくはず。 そして、公衆の面前で彼と腕を組んで歩けば、アレクセイ様もさすがにプライドが許さないだろう。 「帝国の男に寝取られた女」なんて、王妃になれるはずがない。
「いい? 作戦名は『ハニートラップ・イン・ザ・スクール』よ。私がハインリヒを誘惑している間、あなたたちは決して邪魔をしないこと。アレクセイが来ても、うまく足止めをして、決定的瞬間(キスシーンとか)を目撃させるのよ!」
「承知いたしました」 「任せてくだせぇ」 「お姉様……無理はしないでくださいね」
全員が神妙な顔で頷いた。 よし、準備は万端だ。
待っていなさい、ハインリヒ。 あなたのその「女好き」という才能、私が有効活用してあげるわ!
◇
歓迎式典が行われる講堂は、異様な熱気に包まれていた。 帝国の皇太子を一目見ようと、全校生徒が集まっている。 特に女子生徒たちは、「帝国の美男子らしいわよ」「でも野蛮なんでしょう?」と、期待と不安が入り混じった声を上げていた。
壇上の最前列には、生徒会長である私と、王太子アレクセイ様が並んで座っている。 アレクセイ様はいつものように涼しい顔をしているが、その目は笑っていない。 帝国の皇太子に対する警戒心がありありと見て取れる。
(ふふふ、警戒なさい。あなたの最大の敵は、帝国ではなく、隣に座っている婚約者の浮気心なのだから)
やがて、重厚なファンファーレが鳴り響いた。 扉が開き、帝国の使節団が入場してくる。 屈強な騎士たちに守られ、中央を歩いてくる一人の男。
ハインリヒ・フォン・バルドゥール。
でかい。 第一印象はそれだった。 身長は百九十センチくらいあるだろうか。 鍛え上げられた肉体は、軍服の上からでもわかるほど分厚い。 燃えるような赤髪を短く刈り込み、瞳は肉食獣のような金色。 そして、その口元には不敵な笑みが張り付いている。
「よう。ここが噂の『お上品な』学園か」
ハインリヒは壇上に上がると、マイクも使わずに大声で言い放った。 その声だけで、ビリビリと空気が震える。
「俺はハインリヒ。帝国の次期皇帝だ。この国に『愛』とかいう甘っちょろいものを学びに来てやった。……ま、俺を満足させる奴がいればの話だがな」
挑発的すぎる挨拶。 会場がざわつく。 教師たちは顔をしかめ、男子生徒たちはムッとし、女子生徒たちは「ワイルド……!」と黄色い声を上げる。
ハインリヒの視線が、壇上の私たちに向けられた。 まずアレクセイ様を見て、鼻で笑う。
「お前がアレクセイか。噂通りの優男だな。その細腕で剣が振れるのか?」
「歓迎するよ、ハインリヒ殿下。剣の腕が気になるなら、いつでも手合わせしよう。……君が泣いて帰ることにならなければいいが」
アレクセイ様も負けていない。 笑顔のまま、さらりと煽り返す。 火花が散る。
そして、ハインリヒの視線が私に移った。 金色の瞳が、じろりと私を舐め回す。
(来たわ! アピールタイム!)
私は扇を広げ、流し目で彼を見つめ返した。 媚びるように、かつ大胆に。 唇を少し湿らせ、上目遣いで「誘って」みる。
さあ、どうよ。 この美貌、この色気。 女好きのあなたなら、無視できないはず!
ハインリヒが、私に向かって歩いてくる。 ドス、ドス、と足音が響く。 私の目の前で立ち止まり、巨体で見下ろしてくる。
「ほう……」
彼は私の顎を、無遠慮に指で持ち上げた。
「お前がリリス・フォン・ローゼンバーグか。面白い顔をしているな」
「……は?」
面白い顔? 美しい、じゃなくて?
「噂は聞いているぞ。『悪女』だの『聖女』だの、正体不明の女だとな。……ふん、だが俺の目には、ただの強欲な女にしか見えねぇな」
ビンゴ! そうよ、私は強欲な悪女よ! わかってるじゃない、この人!
「あら、ご明察ですこと」
私は彼の手をパシンと払いのけた。 誘惑するつもりだったが、顎を持たれたのがムカついたので、つい反射的に叩いてしまった。 いけない、これじゃ嫌われる……いや、嫌われてもいいのか? でも浮気相手としては好かれないと……。
「触らないでくださる? あなたの手、血と鉄の臭いがしますわ。……野蛮で素敵ですけれど」
最後に付け足したフォロー。 これが「ツンデレ」と解釈されるか、「誘惑」と取られるか。
ハインリヒの目が丸くなった。 そして次の瞬間、彼は腹を抱えて爆笑した。
「ギャハハハハ! 払いのけやがった! 俺の手を! しかも『野蛮で素敵』だと!? おいおい、この国の女はみんなこうなのか?」
彼は涙を拭いながら、ニヤリと笑った。 その目は、獲物を見つけた猛獣の目だった。
「気に入った。……おい、女。俺の女になれ」
「えっ」
早っ。 まだ出会って五分よ? さすが帝国、展開がスピーディーすぎる。
「俺の側室にしてやる。帝国に来れば、宝石でもドレスでも、欲しいものはなんでもくれてやるぞ」
これだ。 求めていた展開だ。 公衆の面前での、強引なナンパ。 ここで私が「まあ、素敵! アレクセイ様よりお金持ちなのね!」と言ってなびけば、作戦完了だ。
私は口を開きかけた。 「喜んで」と言うために。
しかし。
「――お断りします」
私の口から出たのは、氷のように冷たい拒絶の言葉だった。
(なんでぇぇぇ!?)
私の脳内の「悪女リリス」が叫ぶ。 違うのよ、口が勝手に! 貴族としてのプライドと、長年染み付いた王妃教育の成果が、自動防御システムのように作動してしまったのよ!
「側室? ふざけないでちょうだい。わたくしは公爵令嬢リリス。誰かの『おまけ』になるつもりはありませんわ」
私は立ち上がり、ハインリヒを真っ直ぐに見据えた。
「わたくしを手に入れたいのなら、側室なんて半端な地位ではなく、正妃……いいえ、『女帝』の椅子を用意していらっしゃい! それくらいの覚悟がなくて、よくも私の前に立てましたわね、この子犬ちゃん」
言っちゃった。 「子犬ちゃん」って言っちゃった。 相手は「雷帝」と呼ばれる巨漢なのに。
会場が凍りつく。 帝国の騎士たちが殺気立つ。 「貴様、殿下になんて口を!」
しかし、ハインリヒは……震えていた。 怒りで? いや、顔が赤い。
「……女帝……」
彼は恍惚とした表情で呟いた。
「俺に『国を寄越せ』と言った女は、お前が初めてだ。……ゾクゾクしやがる」
え?
「いいぜ。受けて立ってやるよ。俺が皇帝になり、お前を隣に座らせてやる。いや、お前が俺を支配してみろ!」
ドンッ! ハインリヒが、いわゆる「壁ドン」をしてきた。 ただし壁がないので、空気をドンと叩くようなジェスチャーだったが、その迫力は凄まじかった。
「今日からお前は俺の獲物だ。アレクセイ、悪いがこの女は俺がもらう」
ハインリヒが宣言する。 アレクセイ様がすっと立ち上がり、私の腰に手を回す。
「断る。彼女は僕の魂の一部だ。……それに、君ごときに彼女が御せると思わないことだね」
二人の男が睨み合う。 その間で、私は冷や汗をダラダラ流していた。
(違うの……私はただの浮気がしたかっただけなの……なんで「国盗り物語」みたいになってるの……)
◇
翌日から、ハインリヒによる猛アプローチが始まった。
アレクセイ様のアプローチが「詩的でロマンチック」だとすれば、ハインリヒのアプローチは「暴力的で物理的」だった。
朝。 教室の私の机の上に、血の滴るような巨大な肉塊(高級な魔獣の肉らしい)が置かれていた。 『食え。精がつくぞ』というメモと共に。
昼。 中庭で休んでいると、空から黄金の雨が降ってきた。 ハインリヒが屋上から金貨をばら撒いていたのだ。 『拾え! 俺の財力を見せてやる!』
放課後。 下駄箱を開けると、中には靴ではなく、大量の宝石が詰め込まれていた。 『靴などいらん。俺が背負って歩いてやる』
「……バカなの?」
私は宝石まみれの上履きを見つめながら呟いた。 嫌がらせか? これは新手の嫌がらせなのか?
「いえ、これは帝国の求愛儀礼に基づいた、最上級のアプローチです」 背後から、ゼクス(元帝国スパイ)が解説する。 「魔獣の肉は『狩猟能力』の証明、金貨は『経済力』の証明、そして宝石は『永遠の支配』を意味します。殿下は本気です。リリス様を帝国に連れ帰る気満々です」
「迷惑よ! 肉は生臭いし、金貨が当たって痛かったし!」
「しかし、作戦通りではありませんか? 隣国の皇太子にこれほど執着されている。アレクセイ殿下も嫉妬で狂いそうになっているのでは?」
そう。 問題はそこだ。
アレクセイ様は、狂うどころか、妙に落ち着いているのだ。 ハインリヒが私にちょっかいを出すたびに、遠くでニコニコと見守っている。 まるで、子供の遊びを見守る父親のように。
(なぜ怒らないの? 婚約者が肉塊を送りつけられているのよ?)
私は焦りを感じた。 もっと決定的なシーンを見せつけなければ。
「よし。今夜の歓迎パーティーで勝負をかけるわ」
◇
その夜。 学園のホールで開催された歓迎パーティー。
私は、露出度の高い黒のドレスで参戦した。 背中が大きく開き、スリットからは太ももがチラ見えする。 王太子妃候補としては「はしたない」ギリギリのラインだ。
「ハインリヒ殿下」
私はワイングラスを片手に、ハインリヒに近づいた。
「あら、お一人? 寂しそうですわね」
ハインリヒは、群がる取り巻きの令嬢たちを無視して、私だけを見ていた。
「来たか、俺の女帝。……その格好、誘っているのか?」
「ええ、誘っていますのよ。……わたくしと、抜け出しませんこと?」
私は彼の耳元で囁いた。 甘い声で。 香水の香りを漂わせて。
「夜風が気持ちいいバルコニーで……二人きりで『外交』をしましょう?」
意味深な誘い。 これに乗らない男はいない。
ハインリヒはニヤリと笑った。
「いい度胸だ。食ってやるよ、骨までな」
彼は私の腰を強引に抱き寄せ、バルコニーへと連れ出した。 よし、成功! あとは、ここで抱き合っているところを、アレクセイ様に見られれば……!
バルコニーに出ると、ハインリヒはいきなり私を壁に押し付けた。
「待ちきれねぇ。ここで俺のものになれ」
顔が近い。 獣の匂いがする。 ちょ、ちょっと待って。 展開が早すぎる。 キスくらいでいいのに、いきなりクライマックス!?
「ちょ、ちょっと殿下! ムードというものが……」
「うるせぇ! 俺は欲しいものはすぐに手に入れる主義だ!」
彼は私の首筋に顔を埋めようとする。 ヤバい。 これは浮気ごっこじゃなくて、襲われている。
「や、やめ……!」
私が抵抗しようとした、その時。
「――そこまでだ、野良犬」
冷徹な声が響いた。 バルコニーの入り口に、アレクセイ様が立っていた。 月光を背負い、その手には抜き身の剣が握られている。
(来たーーーッ!!)
私は心の中で叫んだ。 修羅場! ついに修羅場!
「リリスから離れろ」 アレクセイ様が静かに告げる。 殺気が凄まじい。 空気が凍りつくようだ。
ハインリヒは私から離れ、面白そうにアレクセイ様を見た。
「ほう。ようやく来たか。自分の女が他の男に寝取られそうになって、どんな気分だ?」
「寝取られる? 勘違いするな」
アレクセイ様はフッと笑った。
「リリスは、君を『試して』いただけだ」
「あ?」
「彼女は、君が帝国の指導者として相応しい器かどうか、その身を呈して測っていたのだよ。……結果は不合格だ。欲望に任せてレディを襲うような理性のない獣に、帝国は任せられない」
「なんだと……?」
「リリス。もういいよ。十分だ」
アレクセイ様が私に手を差し伸べる。
「君の献身的な『潜入捜査』のおかげで、帝国の皇太子の本性がわかった。彼は交渉に値しない。……こっちにおいで」
待って。 潜入捜査? いつから私はスパイになったの? 私はただ、いかがわしい雰囲気になりたかっただけなのに!
「ち、違いますわ殿下! わたくしは本気で彼と……!」
「わかっている。君は、彼を骨抜きにして、帝国の情報を引き出そうとしていたんだろう? そのために、自分の評判さえも犠牲にして……『浮気女』の汚名を被ってまで、国を守ろうとした。なんて愛国心が強いんだ」
アレクセイ様の瞳が潤んでいる。
「だが、もういい。君が汚れる必要はない。僕が彼を排除する」
アレクセイ様が剣を構える。 本気だ。 このままでは、ハインリヒが斬られる。 そして国際問題になり、戦争になる!
(なんでこうなるのよーーッ!)
私はパニックになり、二人の間に割って入った。
「お待ちなさい! 二人とも、武器を収めて!」
「リリス、どくんだ!」 「どいてろ女、俺はこの優男をぶっ殺す!」
二人は止まらない。 私はとっさに、一番近くにあったものを掴んで振り回した。 それは、バルコニーに飾ってあった、重厚な石膏の彫像(天使像)だった。
「いい加減にしなさいよ、このバカ男どもがあぁぁぁッ!!」
ドガァァン!!
私のフルスイングした天使像が、ハインリヒの頭に直撃した。
「ぐべっ」
ハインリヒが白目を剥いて倒れる。 雷帝、陥落。
そして、その勢いのまま、私はアレクセイ様の方へ向き直った。
「あなたもよ! すぐに剣を抜く癖、直しなさいって言ってるでしょう!」
私は天使像(の残骸)をアレクセイ様に突きつけた。
「わたくしは! 平和に! 穏便に! ただ単に! 不純異性交遊がしたかっただけなんですのよーーッ!!」
シーン……。
バルコニーに沈黙が降りる。 気絶したハインリヒ。 ポカンとするアレクセイ様。 そして、息を切らして仁王立ちする、天使像を持った私。
あ。 やっちゃった。 隣国の皇太子を殴って気絶させちゃった。
これ、打ち首? 戦争?
私は血の気が引いていくのを感じた。
しかし。 倒れていたハインリヒが、むくりと起き上がった。 頭から血を流しながら。
「……すげぇ」
彼は、朦朧とした意識の中で、私を見上げてニヤリと笑った。
「俺を一撃で……? しかも、あの堅物のアレクセイにも説教を……?」
彼の瞳に、ハートマークが浮かんでいるように見えた。
「本物の……女帝だ……」
「へ?」
ハインリヒはその場に土下座した。
「参った! 俺の負けだ! リリス、お前こそが最強だ! 俺はお前の強さに惚れた!」
「……は?」
「俺を殴った女は、母上(帝国のゴリラ女帝)以来だ! お前なら、俺の手綱を握れる! 頼む、俺を躾けてくれ! 俺をご主人様のものにしてくれ!」
「いやぁぁぁぁッ! なんでドMに覚醒してるのよーーッ!」
アレクセイ様が、納得したように頷く。
「なるほど。リリス、君は暴力によって彼を屈服させ、帝国の支配下ではなく、彼個人を君の配下に置くことで、戦争を回避したんだね。……『力による平和』。まさに帝国の流儀に合わせた完璧な外交だ」
「違う! もう何もかも違う!」
こうして。 私の「浮気作戦」は失敗に終わり、代わりに「帝国の皇太子(忠犬)」という、とてつもなく厄介なペットを手に入れてしまったのだった。
◇
翌日。 学園には、私の後ろをついて回る、巨大な赤髪の男の姿があった。
「リリス様! カバン持ちます!」 「リリス様! 邪魔な奴は消しますか?」 「リリス様! 今日の靴の味はいかがですか?(舐めようとしている)」
ハインリヒ。 完全に懐いている。 そして、その横には、ニコニコ顔のアレクセイ様。
「やあ、ハインリヒ。リリスの靴を舐めるのは僕の特権だから、君には譲れないな」 「ああん? 減るもんじゃねぇだろ。片足ずつシェアしようぜ」 「ふふ、君とはいい酒が飲めそうだ」
なぜか意気投合している。 私の所有権を巡る協定(平和条約)が結ばれたらしい。
私は空を見上げた。
「……お母様。私はただ、嫌われたかっただけなのに……どうして世界征服への道を歩んでいるのでしょうか」
帝国の脅威は去った(というか吸収した)。 しかし、私のストレスはマッハで加速していた。
そして、この騒動を遠くから見つめる、一人の影があった。 ハインリヒに付き従っていた、帝国の宰相補佐官である冷徹そうな男。
「……ほう。あのハインリヒ殿下を手懐けるとは。リリス・フォン・ローゼンバーグ。彼女こそが『予言の子』か……?」
男が怪しげな水晶玉を取り出す。
「計画を修正する。彼女を『魔王の器』として覚醒させるのだ」
新たな勘違いのフラグが立ったことに、私はまだ気づいていなかった。
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