姉様の身代わりになります。砂の国へ嫁ぐ日、私は復讐を決意した…なのに溺愛されてます。

紫陽花

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ギムレットの回想

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職務に追われる日々。

この乾いた砂漠を豊かにするべく、石油採掘や貿易協定など、様々な仕事に着手してきた。その過程で敵も多く作ってきた。

しかし、その甲斐あって、国力を伸ばし、周辺諸国を牽引する立場にのし上がる事ができていた。

夕暮れ時…宮殿のベランダへ出て、夕焼けで赤く染った砂漠を眺めるのは、仕事終わりの習慣であった。

しがらみが増え、私利私欲のため近づいてくるものも多い…人間関係に疲れていた。

そんな時、エーゲ海の宝石と称される姉妹の話を聞いた。
病弱だが聡明な長女と活発で明るい次女の姉妹だという。

周囲から身を固めるようにうるさく言われていた事もあり、結婚を申し込むことにした。

相手には聡明な女の方が私に相応しいだろうと思い、長女を指名した。

財政が逼迫しているパナギア王国に支援を条件に出すと、いとも簡単に手に入れることが出来た。

なんだ…エーゲ海の宝石と言っても、手に入れるのは容易いものだな…フンッつまらない。



間もなくやってきたケイトは、私の想像とはやや違っていた。

流れるような金髪と華奢な後ろ姿ではあったが、やや日に焼けているように思った。

初謁見の時、よろけた彼女を抱きとめた。

「1人で立てます。」

と、彼女はキリッとして言った。

(助けてやったのに可愛くない)

その軽やかで柔らかい身体とは違い、目つきはしっかりして、芯の強さを感じさせられた。

(まぁ、たまにはこんな女もよいか…)

美しいだけの花嫁だろうと思っていたが、国王となる私の伴侶に相応しい顔つきだと感じた。


改めて個人的にケイトと話そうと思い、花束を携えてケイトの部屋を訪ねた。

ドアの向こうから、キャッキャッと元気な話し声が廊下まで聞こえてきた。

(旅の疲れは取れたのだろうか…元気だな…)

『…メイファ様………ケイト様として…』

(ん?なんだこの会話は…アンリがケイトをメイファと呼んでいるように聞こえたぞ?…)

気になってしまい、ドアをノックと同時に開けてしまった。

ケイトはさっきまでの楽しそうな声とはまるで違う態度だ。

私の行動を失礼だと叱りつけ、2人きりになると、今度は緊張して身体を硬くする。

抱き上げると、しっかりとしがみつき、

「望むところですわっ」

などとうそぶく。

どうしてくれようか…この娘。

少しのスキンシップでうぶな反応をする当たり、男慣れしていないのは明らかだ。

面白い。

立場もあるから無茶は出来ない。

まあ、ゆっくり私好みにすればいいさ。


婚礼の儀を終えた私たちは挨拶回りでとても忙しかった。

それぞれ声をかけられる度に、決まった文句のお祝いに対しお礼を述べシャンパンをかたむける…の繰り返しだった。

ふと見ると、アンリの傍にケイトがいない…。

窓から、ベランダへでてフラフラしているケイトを見つけたので、驚かそうと近ずいた。

ケイトは何やら叫んでいた。酔っているのだろう。

最後に、
「ケイトおねえーさまー、あいたーい、」と…。

私は自分の耳を疑ったが、おそらく聞き間違いではない、今度ははっきり聞こえたのである。

『アハハハ…オイオイッ!それ言っちゃバレるんじゃないのか?』

私は、少々面食らったが、これで納得できた。

今まで感じた違和感はそういう事だったのだ。

替え玉なんだろと真相を探ったが、なかなか白状しない。

ケイトだと言い張るこの娘…どうしてやろうかな…

知らず知らずのうちに、私は微笑んでしまっていたようだ。

つい、追い込むように問い詰めてしまった。
私は、怯えさせてしまったメイファの頭を撫でて取り繕った。





カラカラに乾いたギムレットの心に、この日、オアシスができた。

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