姉様の身代わりになります。砂の国へ嫁ぐ日、私は復讐を決意した…なのに溺愛されてます。

紫陽花

文字の大きさ
7 / 14

復讐する女

しおりを挟む
3日間の婚礼の儀を終え、
やっと2人きりになれた月の美しい夜だった。

『さてさて、どーしようかなぁ…』

ギムレットがニヤニヤしながら言ってくる。

あのベランダでの出来事以来、ギムレットはメイファを茶化すように扱っている。

「なんの事です?ギムレット」

メイファは、開き直ったように素知らぬ顔でケイトとして過ごしている。

『いやー、落ち着いたら愛しのお姉様に会えるよう新婚旅行でも行こうかなーと君に相談しようと思ってさ…』


(フンッ!引っかかってなるものですか!!)

「私には、妹しかおりませんわよ、どこかのご令嬢とお間違いになってるのでありませんか?」

『そーか、、でも旅行に行きたいのはホントだよ、2人でのんびり過ごしに行こう。貴方の故郷のエーゲ海を旅してみたいのもホントなんだ…砂は見飽きた…』

そう言いながら、メイファの頬を優しく撫でる。

「ヒャッ…」

このスキンシップにはいつまでたっても慣れない…

その度に身を硬くし、青く澄んだ瞳を見つめ返すことも出来ずにいた。

(この男は、敵だ…必ず弱点を見つけてやる…)
 
メイファは自分に言い聞かせるようにしていた。
だが、ケイトとしての役割がある以上、無下にするわけにもいかない。



2人は、ベランダのベンチに座り、月を眺めながら、たわいも無い話を続けた。

『祖国パナギア王国はどんな所なんだ?』

「ここほど裕福な国では無いけれど、海と空が美しく、人々も温和で素晴らしい国です。港には貿易で色々な人が出入りして…」

故郷の話になりメイファはついつい饒舌になってしまっていた。

『さぞ、海産物も美味しいのだろうな…』

そんなギムレットの呟きに…

「そうなんです…海の幸は素晴らしく美味しいですわよ…何せ新鮮ですもの!」

『……釣り場は何処がオススメなのかな?』

「そーね!パレット湾のイエロービーチが穴場なの!魚はもちろん、イカやタコだって採れるのよ!」

『竿で釣るのかい?』

「そーね!竿も面白いし、あ、エサはね、、、」
  
そこまで言って、メイファは黙った…。喋りすぎてしまった事に気づいたのだ。

『ハハハッ!メイファは、すぐに猫かぶりできなくなるな…ハハハッ!』

メイファは、ギムレットのツッコミにハッとした。
そして調子に乗って喋ってしまったことを後悔した…。

「むむむ…なによ…嵌めたのね!」

メイファは涙目になりながらギムレットに悪態をついた。

「ほんっと、貴方って悪評通りの策略家ね!そうやってパナギア王国もはめたんでしょ!!??」

メイファは、もう取り繕うことは出来ないと観念して立ち上がり、ギムレットに向き合った。

「そーよ!私は貴方が伴侶として望んだケイトではないわ!お転婆メイファよ。フンッ!」

ギムレットも立ち上がった。
そして興奮するメイファを抱きしめた。

「離して離して!」
メイファはジタバタしている。

『落ち着け、メイファ…』

メイファはますます悔しくなり、握りしめた両手の拳をギムレットの厚い胸にドンドンっと打ち付ける。

長身のギムレットには何の効果もない…

ギムレットは、ハハハッと笑い、両手を挙げて降参のポーズをとっている。


自分で言って悲しくなった。

ギムレットが妻として選んでいたのは姉のケイトなのだ。

何故かその事が引っかかり、益々ギムレットにムカついた。


この男は復讐するべき敵なのに…

なんで2人きりになると、恥ずかしくなるの…

なんで2人きりになると、楽しくなるの…

なんで触れられると、嬉しいの…

なんで嘘を突き通すことが心苦しいの…

なんで…なんで…私を選んでくれなかったの…



「もういい。バレちゃったんなら、仕方ないわ。その通り、私はメイファ。
私は貴方に嫁ぎ、貴方に復讐する女よ」

「覚悟しなさい!!!貴方に向かって、ざまぁぁぁって言ってやるんだからぁーーーーー」

大声で叫び、言い逃げるようにして自分の部屋に逃げ込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛

三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。 ​「……ここは?」 ​か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。 ​顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。 ​私は一体、誰なのだろう?

【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。

櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のセラフィーナには生まれつき前世の記憶があったが、覚えているのはくだらないことばかり。 そのどうでもいい知識が一番重宝されるのが、余興好きの国王が主催する夜会だった。 毎年余興の企画を頼まれるセラフィーナが今回提案したのは、なんと「借り物競争」。 もちろん生まれて初めての借り物競争に参加をする貴族たちだったが、夜会は大いに盛り上がり……。 気付けばセラフィーナはイケメン王太子、アレクシスに借りられて、共にゴールにたどり着いていた。 果たしてアレクシスの引いたカードに書かれていた内容とは? 意味もなく異世界転生したセラフィーナが、特に使命や運命に翻弄されることもなく、王太子と結ばれるお話。 とにかくツッコミどころ満載のゆるい、ハッピーエンドの短編なので、気軽に読んでいただければ嬉しいです。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。 小説家になろう様への投稿時から、タイトルを『借り物(人)競争』からただの『借り物競争』へ変更いたしました。

二度目の初恋は、穏やかな伯爵と

柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。 冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。

処理中です...