4 / 5
克服(続 )
しおりを挟む
あの頃はただ必死に師匠を越える作品を作ることに没頭していた。
1日師匠の家の家事をして、時間が余ったら小説を読んでもらう。
そんな毎日を過ごしていた。
「昼ごはん出来ましたよ」
「おーさんきゅー」
師匠はパソコンを閉じ、書類をまとめて昼ごはんが用意された机の前に来た。
「おー!今日は素麺か!いただきまーす!」
勢いよく昼ごはんを食べ進める師匠を見るとなんだかほっこりした。
「それにしても師匠の家結構広いし、家事もまともに出来ない師匠が今までどうやって1人で生活してきたんですか?」
師匠の家は都会から電車で1時間、そこからバスで30分かかかる結構田舎なところに住んでいた。
THE日本の木造建築というような家、しかも結構広く敷地面積も結構あった。
「家事がまともに出来ないというのはひどい言われようだなぁ」
「俺がこの家に来たときは床はごみとほこりだらけだし、皿も使ったまんまで洗いもせず、洗濯物も乱雑にしてた人が何をおっしゃるのやら…」
「君は口だけは達者だなぁ…その個性をもっと小説を書くのに活かさんかい…」
師匠が素麺を勢いよく食べていると、いきなり苦しそうな表情をしだした。
「慌てすぎですよ!はい、お茶!」
師匠がお茶を飲み干した。
「いやー、やっぱり君の気遣いと家事は素晴らしい
本当にいつも助かってるよ」
少し照れくさくなった。
あの師匠に褒められるとは…本当に嬉しかった。
「家事とか、料理も母から教わって…」
「君のお母さんは相当すごい人であり、君のことを誇りに思うだろうね
こんなにも完璧に自分が教えたことを理解できて、それを実行出来るんだから」
「俺なんか小説家としても売れてないし、頭もよくない、出来るのは家事くらいですから…本当に親には迷惑かけてますよ…こんなドジな俺を誇りには思ってないと思いますよ」
「そんなことないさ」
師匠に言われると少し真実味が増してきた。
そういえば師匠のお母さんやお父さんとは会ったことがないが…
どんな人だったのだろうか…
こんなにも優秀な作家の育ての親だ、なにかすごいものを持っているに違いない。
「師匠のお母さんはどんな人だったんですか?」
師匠は箸を置き、注ぎなおしたお茶を一口飲んだ。
「私の母は普通の人だよ、そんな頭が桁外れで良い人でもないし…でも父は結構頭も良かったよ…人望もあったからみんなに好かれていたよ、でも私が中三の夏に病気で倒れてそのまま帰らぬ人となったけどね…」
俺が黙り込むと師匠は「ごちそうさま」と言い皿を片付け始めた。
「過去から学べる知識はたくさんある、だけど過去をいつまでも見返してたら先へは進めないだろう?」
「そうですね…」
俺も皿を片付け始めた。
「よし!私は皿を台所に運んだから後は頼む!」
師匠はそそくさと作業机に戻った。
「師匠…そんなんじゃいつまでも家事、身に付かないですよ!俺がいつまでも師匠の家にいるわけでもないんですから!」
「君がいつまでも売れる小説が書けなかったらずっとここにいるつもりだろう?
というかいつまでもいてくれていいんだよ、君が売れる小説が書けたとしても…」
師匠が作業机から台所へと向かってきた。
「師匠…やっと家事をする気に…」
突然師匠が後ろから抱きついてきた。
師匠の良い匂いと、温もりが体全身に伝わって、急激に恥ずかしくなった。
「師匠…!?」
師匠は「そのままで聞いてくれ」と言い話し始めた。
「君が来る前は私の母が家事をしてくれていた、
私は昔から家事だけはできなかった、その事を私の母も亡くなった父も悪いことではないと言っていた。
人間は不完全なものだから私だってお父さんみたいに頭がよくないし…と母は言ってくれて、父も俺だって、頭は良くてもお母さんみたいに家事が出来ないからなぁ、といつも家事が出来なくて泣いていた私を慰めてくれた、そんな母と父が大好きだった。
でも、父が亡くなってから母はより一層私を愛してくれた。私がやりたいことをなんでも叶えてくれた。
でもある日母が倒れた。過労だと医者から言われた。
…私は母をずっと拘束していたんだなぁ、その時から覚悟していた。私は母に自由に生きて欲しい、そう願った。だから、私は小説が売れたお金を渡して母に好きに生きて欲しいと言った。
これで何もかもが解決すると思っていたが、それは間違いだった、その先に残っていたのは孤独だけだっだだよ…」
「師匠…」
「だから、私を1人にはしないでくれ…」
「俺は師匠のことを1人にはしませんよ」
「…」
師匠は何も言わなかった。
「…師匠?」
反応がなく、少し焦ったがその理由はすぐにわかった。
師匠の方を見ると、俺に抱きついたまま夢の世界へと旅立っていた。
そして妙にお酒の匂いがしたので、師匠の作業机を見ると飲みかけのビール缶がおいてあった。
「昼間っから…」
皿洗いを中断し、師匠をそのままベットに寝かせた。
「皿洗い再開ー」
そして皿洗いに戻った。すると電話が鳴った。
「…マナからか」
高校生の頃から付き合っている彼女のマナからだった。
「どうした?」
「…ごめん…」
1日師匠の家の家事をして、時間が余ったら小説を読んでもらう。
そんな毎日を過ごしていた。
「昼ごはん出来ましたよ」
「おーさんきゅー」
師匠はパソコンを閉じ、書類をまとめて昼ごはんが用意された机の前に来た。
「おー!今日は素麺か!いただきまーす!」
勢いよく昼ごはんを食べ進める師匠を見るとなんだかほっこりした。
「それにしても師匠の家結構広いし、家事もまともに出来ない師匠が今までどうやって1人で生活してきたんですか?」
師匠の家は都会から電車で1時間、そこからバスで30分かかかる結構田舎なところに住んでいた。
THE日本の木造建築というような家、しかも結構広く敷地面積も結構あった。
「家事がまともに出来ないというのはひどい言われようだなぁ」
「俺がこの家に来たときは床はごみとほこりだらけだし、皿も使ったまんまで洗いもせず、洗濯物も乱雑にしてた人が何をおっしゃるのやら…」
「君は口だけは達者だなぁ…その個性をもっと小説を書くのに活かさんかい…」
師匠が素麺を勢いよく食べていると、いきなり苦しそうな表情をしだした。
「慌てすぎですよ!はい、お茶!」
師匠がお茶を飲み干した。
「いやー、やっぱり君の気遣いと家事は素晴らしい
本当にいつも助かってるよ」
少し照れくさくなった。
あの師匠に褒められるとは…本当に嬉しかった。
「家事とか、料理も母から教わって…」
「君のお母さんは相当すごい人であり、君のことを誇りに思うだろうね
こんなにも完璧に自分が教えたことを理解できて、それを実行出来るんだから」
「俺なんか小説家としても売れてないし、頭もよくない、出来るのは家事くらいですから…本当に親には迷惑かけてますよ…こんなドジな俺を誇りには思ってないと思いますよ」
「そんなことないさ」
師匠に言われると少し真実味が増してきた。
そういえば師匠のお母さんやお父さんとは会ったことがないが…
どんな人だったのだろうか…
こんなにも優秀な作家の育ての親だ、なにかすごいものを持っているに違いない。
「師匠のお母さんはどんな人だったんですか?」
師匠は箸を置き、注ぎなおしたお茶を一口飲んだ。
「私の母は普通の人だよ、そんな頭が桁外れで良い人でもないし…でも父は結構頭も良かったよ…人望もあったからみんなに好かれていたよ、でも私が中三の夏に病気で倒れてそのまま帰らぬ人となったけどね…」
俺が黙り込むと師匠は「ごちそうさま」と言い皿を片付け始めた。
「過去から学べる知識はたくさんある、だけど過去をいつまでも見返してたら先へは進めないだろう?」
「そうですね…」
俺も皿を片付け始めた。
「よし!私は皿を台所に運んだから後は頼む!」
師匠はそそくさと作業机に戻った。
「師匠…そんなんじゃいつまでも家事、身に付かないですよ!俺がいつまでも師匠の家にいるわけでもないんですから!」
「君がいつまでも売れる小説が書けなかったらずっとここにいるつもりだろう?
というかいつまでもいてくれていいんだよ、君が売れる小説が書けたとしても…」
師匠が作業机から台所へと向かってきた。
「師匠…やっと家事をする気に…」
突然師匠が後ろから抱きついてきた。
師匠の良い匂いと、温もりが体全身に伝わって、急激に恥ずかしくなった。
「師匠…!?」
師匠は「そのままで聞いてくれ」と言い話し始めた。
「君が来る前は私の母が家事をしてくれていた、
私は昔から家事だけはできなかった、その事を私の母も亡くなった父も悪いことではないと言っていた。
人間は不完全なものだから私だってお父さんみたいに頭がよくないし…と母は言ってくれて、父も俺だって、頭は良くてもお母さんみたいに家事が出来ないからなぁ、といつも家事が出来なくて泣いていた私を慰めてくれた、そんな母と父が大好きだった。
でも、父が亡くなってから母はより一層私を愛してくれた。私がやりたいことをなんでも叶えてくれた。
でもある日母が倒れた。過労だと医者から言われた。
…私は母をずっと拘束していたんだなぁ、その時から覚悟していた。私は母に自由に生きて欲しい、そう願った。だから、私は小説が売れたお金を渡して母に好きに生きて欲しいと言った。
これで何もかもが解決すると思っていたが、それは間違いだった、その先に残っていたのは孤独だけだっだだよ…」
「師匠…」
「だから、私を1人にはしないでくれ…」
「俺は師匠のことを1人にはしませんよ」
「…」
師匠は何も言わなかった。
「…師匠?」
反応がなく、少し焦ったがその理由はすぐにわかった。
師匠の方を見ると、俺に抱きついたまま夢の世界へと旅立っていた。
そして妙にお酒の匂いがしたので、師匠の作業机を見ると飲みかけのビール缶がおいてあった。
「昼間っから…」
皿洗いを中断し、師匠をそのままベットに寝かせた。
「皿洗い再開ー」
そして皿洗いに戻った。すると電話が鳴った。
「…マナからか」
高校生の頃から付き合っている彼女のマナからだった。
「どうした?」
「…ごめん…」
0
あなたにおすすめの小説
幽縁ノ季楼守
儚方ノ堂
キャラ文芸
「季楼庵当主の代理を務めてもらう」
幼少期、神隠しにあった過去を待つ青年ユメビシ。
迷い込んだ先で、事件に巻き込まれ両手を失い、生死を彷徨うことに。
ただ「死にたくない」と望んだ願いは、ある故人の手を移植することで実現した。
これを境に不死の体質へと変貌したユメビシは、約70年の時を経て、因縁の土地『瞑之島(みんのとう)』へ帰還する。
しかし、どうして今自分がここにいるのか、その理由となる記憶がすっぽり抜け落ちた状態で……。
奇妙な忘却に焦りを抱えながら、手がかりを求め探索するさなか、島の中枢を担う組織『季楼庵(きろうあん)』の面々と関わりを持ち、次々と巻き起こる騒動に身を投じていくのだった。
現代において、人と人ならざる者が共存する瞑之島を舞台に、半ば強制的に当主代理に据えられたユメビシの非日常。
異色の現代ファンタジー✖️和風奇譚✖️ミステリー
様々な思惑が交錯する中、彼の帰還を以て、物語は一つの結末へ動き出す。
その約束は、何十年何百年経ち、たとえ本人達が覚えていなくとも。
幽かな縁で繋がり続け、決して解けない糸となる。
それを人は、因縁――またの名を『呪い』と呼ぶのだった。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
致死量の愛と泡沫に+
藤香いつき
キャラ文芸
近未来の終末世界。
世間から隔離された森の城館で、ひっそりと暮らす8人の青年たち。
記憶のない“あなた”は彼らに拾われ、共に暮らしていたが——外の世界に攫われたり、囚われたりしながらも、再び城で平穏な日々を取り戻したところ。
泡沫(うたかた)の物語を終えたあとの、日常のお話を中心に。
※致死量シリーズ
【致死量の愛と泡沫に】その後のエピソード。
表紙はJohn William Waterhous【The Siren】より。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる