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第三章
55. タイムリミット
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グリーゼルは彼女の執務室にいた。
護衛騎士たちに目配せすると、言葉を発しなくても部屋の外で待機してくれる。
「いかがなさいましたか?」
「僕は君に相応しい男になりたかったんだ」
グリーゼルは分からないといった様子で、首を傾げた。
「君はその気高い心で誰でも救ってしまうから」
「? それはレオポルド様のことですわ」
バートのような美辞麗句は僕には言えないかもしれないけれど、ちゃんと本当の気持ちを伝えよう。
「いいや、グリーゼル。君のことだよ。君は僕の呪いにも怯まずに向かってきてくれた。誰にも近づくことすらできなかった僕の呪いに。……そして僕を孤独から救ってくれた」
今度こそ僕の言葉で。
「君が毒で倒れた時は気が狂いそうだった」
偽らない本当の気持ちを。
「君のまっすぐな瞳が好きだ」
まだ足りない。
「君の照れた顔が可愛い」
もっと。
「呪いが解けても、ずっと僕の側にいてほしい」
ずっと伝えたかった気持ちを。
「グリーゼル……愛してる」
グリーゼルはその瞳を見開いたまま、時が止まったようだった。
そして時が動き出すように、その瞳から一筋の雫が零れ落ちる。
僕は今までにないくらい激しく動揺した。
バートが求婚した時の反応とは、全く違う反応。
やはり困らせてしまったかな……。
僕からでは嫌だったか…………。
グリーゼルの気持ちを考えずに、焦ってしまったことを後悔し始めたとき――。
「嬉しいです」
後悔が一気に希望に変わった。
「え……じゃあ……」
「でもわたくし、は……きっと、レオポルド様が別の女性といるだけで……嫉妬して、呪いをかけてしまうかも、しれません」
(……なんて可愛いことを言ってくれるんだ……!!)
「君になら呪われたって構わないよ」
「いけませんっ……」
僕はグリーゼルの反応を確かめるようにゆっくり近づく。
「それにきっと僕の方が欲深い」
手が届く至近距離まで来ると、優しく抱き寄せた。
そして顎に手を添えてゆっくり顔を上向かせる。
「君がバートの求婚を受けるのかと思った時、閉じ込めてしまいたいと思った」
鼻が触れる寸前で見つめ合う。
触れてもいいか同意を求めるように。
「怖くなった?」
グリーゼルが少しも逃げる素振りも嫌がる素振りも見せないことが、僕の胸を焦がす。
そのまま唇を近づけて――。
――唇が触れ合う寸前、嫌な気配がぶわっと溢れるのを感じて、動きを止めた。
次の瞬間、ヒュルルッと聞き覚えのある音と共に、呪いの風が出現する。
「――っ!?!?」
すぐさまグリーゼルを風魔法で離れさせ、自らも距離を取った。近くに風を払える剣はない。
「ダニーロ! ミカエル!!」
呼ばれた護衛騎士たちがすぐ部屋に入ってきた。
鋭い剣技でミカエルが風を切り裂き、消し去る。
「お嬢様! お怪我は!? レオポルド様、これは一体……」
「分からない。突然風が……呪いがまた発動したんだ」
ダニーロがグリーゼルを気遣い、怪我がないか確認する。
怪我はないようでホッと安心した。
「なぜ風が……!」
近づいてこようとするグリーゼルに、慌てて防御魔法を重ねがけする。グリーゼルが僕の胸に手を当てて呪文を調べると――。
「…………三秒ですって!?」
グリーゼルが叫ぶと同時に、またヒュルルと呪いの風が出現する。三秒に一度風が出ては、防御魔法をかける魔力の方が先に尽きる。
ダメだ! このままではまた傷付けてしまう!!
再びミカエルが剣で風を払ったのを見て、僕は窓ガラスを割って外に飛び出した。
護衛騎士たちに目配せすると、言葉を発しなくても部屋の外で待機してくれる。
「いかがなさいましたか?」
「僕は君に相応しい男になりたかったんだ」
グリーゼルは分からないといった様子で、首を傾げた。
「君はその気高い心で誰でも救ってしまうから」
「? それはレオポルド様のことですわ」
バートのような美辞麗句は僕には言えないかもしれないけれど、ちゃんと本当の気持ちを伝えよう。
「いいや、グリーゼル。君のことだよ。君は僕の呪いにも怯まずに向かってきてくれた。誰にも近づくことすらできなかった僕の呪いに。……そして僕を孤独から救ってくれた」
今度こそ僕の言葉で。
「君が毒で倒れた時は気が狂いそうだった」
偽らない本当の気持ちを。
「君のまっすぐな瞳が好きだ」
まだ足りない。
「君の照れた顔が可愛い」
もっと。
「呪いが解けても、ずっと僕の側にいてほしい」
ずっと伝えたかった気持ちを。
「グリーゼル……愛してる」
グリーゼルはその瞳を見開いたまま、時が止まったようだった。
そして時が動き出すように、その瞳から一筋の雫が零れ落ちる。
僕は今までにないくらい激しく動揺した。
バートが求婚した時の反応とは、全く違う反応。
やはり困らせてしまったかな……。
僕からでは嫌だったか…………。
グリーゼルの気持ちを考えずに、焦ってしまったことを後悔し始めたとき――。
「嬉しいです」
後悔が一気に希望に変わった。
「え……じゃあ……」
「でもわたくし、は……きっと、レオポルド様が別の女性といるだけで……嫉妬して、呪いをかけてしまうかも、しれません」
(……なんて可愛いことを言ってくれるんだ……!!)
「君になら呪われたって構わないよ」
「いけませんっ……」
僕はグリーゼルの反応を確かめるようにゆっくり近づく。
「それにきっと僕の方が欲深い」
手が届く至近距離まで来ると、優しく抱き寄せた。
そして顎に手を添えてゆっくり顔を上向かせる。
「君がバートの求婚を受けるのかと思った時、閉じ込めてしまいたいと思った」
鼻が触れる寸前で見つめ合う。
触れてもいいか同意を求めるように。
「怖くなった?」
グリーゼルが少しも逃げる素振りも嫌がる素振りも見せないことが、僕の胸を焦がす。
そのまま唇を近づけて――。
――唇が触れ合う寸前、嫌な気配がぶわっと溢れるのを感じて、動きを止めた。
次の瞬間、ヒュルルッと聞き覚えのある音と共に、呪いの風が出現する。
「――っ!?!?」
すぐさまグリーゼルを風魔法で離れさせ、自らも距離を取った。近くに風を払える剣はない。
「ダニーロ! ミカエル!!」
呼ばれた護衛騎士たちがすぐ部屋に入ってきた。
鋭い剣技でミカエルが風を切り裂き、消し去る。
「お嬢様! お怪我は!? レオポルド様、これは一体……」
「分からない。突然風が……呪いがまた発動したんだ」
ダニーロがグリーゼルを気遣い、怪我がないか確認する。
怪我はないようでホッと安心した。
「なぜ風が……!」
近づいてこようとするグリーゼルに、慌てて防御魔法を重ねがけする。グリーゼルが僕の胸に手を当てて呪文を調べると――。
「…………三秒ですって!?」
グリーゼルが叫ぶと同時に、またヒュルルと呪いの風が出現する。三秒に一度風が出ては、防御魔法をかける魔力の方が先に尽きる。
ダメだ! このままではまた傷付けてしまう!!
再びミカエルが剣で風を払ったのを見て、僕は窓ガラスを割って外に飛び出した。
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