魔法使いと少女の冒険記

ニガツノヱキ

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一日目

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「ここが竜の目撃情報があったっていう辺りか…」
旅人風の服装の男が一人歩いている
名はレヴィ。
「しかしこんな辺境にまで目撃情報が出るとは…だが、本当にいるのなら今度こそは逃がさない。のためにも」

しばらくすると小さな村にたどり着く
「そこそこ歩いたし、今日のところはここで泊まれる場所でも探すか」
「しかしこんな辺境にある村だというのに人や物の行き来が多いものだな。なにかあるのか…?」
レヴィが不思議そうにその光景を眺めながら考えていると先程まで行き来していた流れが止まりそれらが道の脇へ引いていく
すると、聞き馴染みのない楽器の音色が村の奥側から聞こえてくる。
「みんな道の真ん中を開けて、なにかくるのか?」
同じように道の脇へ引いてその光景を眺めていると薄い布がかけられた馬車がゆっくりとこちらへ道を進んでくる
「あれが竜人の姫か…」
「実物を見るのは初めてだ…」

「竜人…?竜…まさか…」

「待ちなさいリリィ!!」
道の中央へ果物を落としたのだろうか少女が慌てて走り出す
「ふぅ…りんごさん無事に拾えました…」
リリィと呼ばれた少女は安心したようにその場で大事そうにりんごを拾いあげる
「あっ…」
突然飛び出したからか、御者ぎょしゃの反応が遅れたせいか、馬車が寸前で止まりきれずリリィにぶつかるその寸前
飛行制御フライエっ!!」
レヴィはそう叫び飛行制御フライエの魔法を発動する
飛行制御フライエとはかけた対象を飛行させ移動させる魔法だ
「へ…?」
何が起きたかわからない様子でリリィはレヴィを見ている
「なんだ今の…?」
「女の子が急に飛んだぞ…」
飛行制御フライエの魔法でリリィを助けたレヴィは周りから不思議そうに見られている
「なんだこの感じは…?」
飛行制御フライエ は荷物の運搬等によく使われる魔法のため見慣れているはずだがこの反応は何か違う。
「こらリリィ!!だめでしょう!?」
先程リリィを止めようとしていた母親だろうか、こちらへ駆け寄ってくる。
「あ、おかあさん…」
「りんごなんて気にしないでいいの!!それで怪我したらいけないでしょう!?」
「ご、ごめんなさい…」
母親は一頻ひとしきりリリィを叱るとこちらへ向き直る
「娘を助けていただいてありがとうございます!!」
そして、母親はレヴィへ頭を下げ感謝した
「あぁいやそんな大したことじゃ…」
頭を上げるよう促していると途端に何者かの鋭い視線を感じた
竜人の姫と呼ばれた人物からだ
「………」
ただ静かにこちらを見ていることはわかるが馬車にかけられた布のせいで表情がわからない
「進め。」
「あ、はいっ!!」
一頻ひとしきりこちらを見たあと御者ぎょしゃにそう言いその場を去っていった。
「あの……」
「ん…?」
リリィがレヴィへ恐る恐る話しかける
「ごめんなさい…あと、助けてくれてありがとうございます…」
「あぁいや、全然大丈夫だよ。まぁ怪我とかないならよかった。」
そう言ってやると先程とはうって変わってぱぁっと表情が明るくなり
「あの、さっきのってまほうですか?」
リリィが好奇心を孕んだ眼差しでレヴィを見る
「さっきのって、飛行制御フライエのことか?」
「ふらいえ…?たぶんそれです」
聞いたことがないといった様子だ
先程の反応を見る限り魔法が一般的ではないのだろうか?
「うん、魔法だよ。この村では魔法は使われないのかな?」
「えと…」
少し考え込むリリィ。少し考えたあとに
「たまに村に来るたびげいにんさんがまほうっていっていろいろみせてくれます!!」
「ん?旅芸人?」
「えっと口から火をふいたりほうきで空とんだりとか
あっ、もしかしておにいさんもたびげいにんさんですか?」
急に早口になるリリィ。何かを隠しているようにも見える
「旅芸人か……」
「もしかして、おにいさんもほうきで空とんだりできるんですか!?」
「できないことは無いけど俺はそういうのじゃ」
「できるんですね!?やっぱりたびげいにんさんだ!!」
「いや、あの……」
レヴィが困っていると傍にいたリリィの母親が話に割り込んでくる
「リリィ?お兄さん困ってるからやめなさい?」
「えぇー…」
「さっきのことに関してお家でたっぷりお話しようね?」
「うー……」
そう言い母親がレヴィに話しかけた
「あの」
「ん?」
「お名前をお聞きしても?」
「レヴィ。レヴィ・エリニュスです」
「エリニュス…?どこかで聞いたような…」
一瞬母親は考えると、ハッとした様子でレヴィへ向き直り
「改めてレヴィさん。娘を助けて頂いてありがとうございます。このお礼はまたさせていただきます」
深々と頭を下げ感謝する
「あぁいや、そんな大したことじゃないので頭上げてください」
それを聞き頭を上げ母親とリリィは帰ろうとする。
その瞬間母親からこう告げられた
「レヴィさん、お気をつけて。」
「え?」
聞き返そうとしたが人混みに紛れて見失ってしまった。
「どういうことなんだ…?それにしてもやけに丁寧だったな……」
「俺の家の人間みたいな対応だったな…はぁ……」
つい溜め息が盛れるが気にしないことにして辺りを見回す。
「宿屋でも探すか……」
しばらく歩くと宿屋 星見の家 が見えてきた。
「あっ、いらっしゃいませ!!」
夕食の時間だろうか、宿泊者達の食事を運びながらレヴィに元気よく挨拶をしてくる女性。
「今からのお泊まりですか?」
「そうです。お部屋空いてますか?」
「はい!!空いてますよ!!」
常に笑顔で雰囲気のいい宿屋である
「ありがとう」
部屋の鍵を受け取り泊まる部屋に入る
「おぉ綺麗な部屋だ」
辺境の村ということであまり期待はしていなかったがかなりいい宿屋を引いたようだ。
「これなら心ゆくまでゆっくり休めそうだ」
部屋の快適さに微睡まどろみ心地よい眠りにつくその寸前。
ドガァァァン!!と辺りに響くような大きな音が聞こえ目が覚める
「なんだ!?」
宿屋の食堂の方からだ
「おいおい、こんなんじゃ腹の足しにもならんぜ。なぁ?」
駆けつけるとそこでは刺叉のような先端がいくつかに分かれた槍や炎の魔法を使っている男達が数人食堂で暴れているようだった。
「ですが、市場で一番状態のいい食材を集めてしっかり調理しました……」
「うるせぇ!!んなこたぁどうでもいいんだよ!!」
机や椅子を蹴りあげ料理が床に散乱する。
その様子に周りの人間も宿屋の女性も萎縮しているようだった。
「あぁ冷めたなぁ。おら姉ちゃん、わかってるよな?」
「いやでも、昨日いつもの倍は渡して……」
「あぁ、聞こえねぇなぁ…なんか言ったか?」
リーダー格の男が手に炎を纏わせ女性を睨む
「い、いえ何も……すぐにご用意します……」
大慌てで宿屋の奥から売上金が入った袋を男に差し出す
「あぁ?少ないんじゃねぇのか?もっとあんだろ」
「ですがこれ以上取られると私達の生活が……」
「めんどくせぇなぁ」
男は舌打ちをしたかと思うとその数秒後炎を纏わせた拳を女性に振り下ろす。
しかし、レヴィがそれを受け止めていた。
「なんだ、お前?」
「いや、ちょっと見てられなかったもので。」
その光景を眺めている周りの人達がざわつき始める。
「お前ここの人間じゃねぇだろ」
「ただの旅人だけど?」
「生意気な野郎だな。おいお前ら」
男の後ろに控えていた武装した子分らしき男達がレヴィへ武器を向けてくる。
「俺様の拳を止めたことは褒めてやる。もうお前の幕は終わりだ。そろそろ退場しとけ」
リーダー格の男が一歩引くとレヴィへ一斉に襲いかかる。
刺叉の突きを寸前でかわし、柄を掴みその勢いを利用して床に投げる
「なるほど、ほうきとはよく言ったものだ」
「何をよそ見してんだ!!炎熱噴出フレアブレスっ!!」
もう一人の男が魔法陣を描き炎のブレスを模した魔法を放つ
「火吹きか…氷結結界ブリザイアガード
氷属性の結界魔法を展開し中和する
「お前たちが旅芸人か」
「何をわけのわからないことを言ってやがる!!来い!! 召喚魔法火炎蜥蜴サモンサラマンダー!!」
「召喚魔法まで使うとはこれはすごいな」
「命乞いするなら今のうちだぜ?こいつと戦って生きているやつは一人としていねぇからな!!」
先程炎熱噴出フレアブレスを使った男は召喚魔法までできるとはそれなりの実力者らしい。
「なら俺がその生きている一人目だな」
「抜かせっ!!死んじまいな!!やれ火炎蜥蜴サラマンダー!!」
先程よりも勢いも魔力も強い炎がレヴィに襲いかかる。
「残念ながら」
「なっ!?」
レヴィはそれを先程よりも強固にした氷結結界ブリザイアガードで防いでいた
「この程度なら昔嫌になるほど経験した。」
氷結結界ブリザイアガードの出力を更に上げ火炎蜥蜴サラマンダーを囲むようにして閉じ込める。
「おいっ!!なにしてる火炎蜥蜴サラマンダー!?」
「呼ぶならもう少し上位の魔物なり精霊を呼べ。その程度ならこれで終わる。」
さらに出力を上げていき氷結結界ブリザイアガードを狭めていき火炎蜥蜴サラマンダーを消し去る
「なんだお前……」
召喚した男やその仲間たちは呆然とレヴィを見る
「魔力の使い方が荒い。召喚魔法はもっと繊細に扱え。」
「お前何者だ!!ただの旅人に火炎蜥蜴サラマンダーが消されるはずがねぇ!!」
「はぁ……でも実際そうなんだけど……」
「もういい俺様がやる。」
苛立った様子でリーダー格の男が前に出る
「お前が腕の立つ奴ってのはわかった。だがこいつらより強い程度で自慢気にされても困るんだよなぁ」
苛立ちを含んだ笑みをしながら両手に炎を纏わせ拳を合わせる。
すると炎の勢いが数倍にも増す。その熱で付近の椅子や机が燃えるほどだ。
「お前も燃えちまいなぁ!!」
心臓を狙った致命の一撃
正確に真っ直ぐ放たれたその一撃。
「んなっ…!?」
レヴィは氷結結界ブリザイアガードを纏わせた手で受け止めその炎を封じた。
「いい一撃だけど狙いがあからさますぎる。」
炎を封じられ一瞬呆気にとられたが後ろに飛び退き理解が出来ないといった表情で自分の拳とレヴィを見ている。
「お前……本当になんなんだ……俺様の炎を封じるなんて……」
「だから、ただの旅人だよ」
「んなわけあるか!!そんな嘘ついても誤魔化せるわけがねぇ!!お前まさか騎士団の……」
男がそう言いかけた瞬間
「大人しくしろ!!トラジゼイシオン騎士団である!!」
勢いよく扉が開かれ武装した騎士が十数人ほど流れこんでくる
「なっ…騎士団っ!?」
男達を即座に手際よく拘束していく
「やっと捕らえることが出来ましたわ」
騎士達の隊長だろうか
常に微笑んでいるかのような表情の糸目の女性が男達を眺めながら言う
「どうやら今日はツイてなかったようですわね?」
屈んで男達に話しかける
「お前ら騎士がここで泊まってるなんて知らねぇぞ!!」
「あら?私は騎士を宿屋に泊めさせた覚えはないのですけれど…?」
隊長らしき女性はレヴィを見て驚いたような言動をとった
「あら?あらら!?貴方レヴィ!?」
レヴィの元へ駆け寄ってくる
「私です!!エリスタシアです!!覚えていらっしゃいますか!?」
「あぁ………」
レヴィはエリスタシアをよく覚えている。
それは六年前に遡る………

一日目 終
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