魔法使いと少女の冒険記

ニガツノヱキ

文字の大きさ
2 / 3

一日目 その二

しおりを挟む
それは六年前
「トラジゼイシオン騎士団魔法第零部隊所属、レヴィ・エリニュスだ。本日より君たち第五部隊の教導役として就任した。よろしく」
訓練兵たちが集まる教練場の壇上に立ち挨拶する男。レヴィ。
レヴィはかつてトラジゼイシオン騎士団に所属していたのである。
「第零部隊ってあの…?」
「王の直属部隊ってやつですよね…なんでこんな僕達第五部隊の教導役に…?」

「なぜ第零部隊の俺が第五部隊の教導役になったのか、を説明する前にまず改めてトラジゼイシオン騎士団の仕組みについて説明する」
教練場の黒板にピラミッドのようにいくつかの図形を書いていく
「みんな知っての通りトラジゼイシオン騎士団には剣術等の対人制圧を得意とする騎士部隊と魔法等の対軍制圧を得意とする魔法部隊の二つが存在する。そしてその各部隊には一から七の番号が振り分けられる。基本訓練兵に属するのは第七から第五の部隊だ。君たちは第五部隊だからもうすぐ訓練兵卒業だな。」
簡単に言えば第七部隊は一回生、第六部隊は二回生のような感じだ。そこから成果をあげるなりすれば少しづつ昇進という形で第四、第三と上がっていく。
「あの、教官。質問の許可を得たく存じます」
「許可する。けど教官っていうのなんか変な感覚だな…まぁそうなんだけどさ」
「あの…教官…?」
「あぁ質問だね。許可するよ」
「ありがとうございます。第一部隊から第七部隊については騎士団加入段階で説明を受けたのですが、教官は第零部隊に所属されているとお聞きしました。第零部隊というのはなんなのでしょうか?」
当然の疑問である。
第一から第七部隊があると言いながらレヴィは第零部隊所属という話を聞いているからだ。
「第零部隊というのは簡単に言えば王直属の部隊であり、基本は第一部隊の中から優れた人材と判断されれば稀に選出される王の近衛隊に近い。有事の際以外はこの王城近くの訓練所で君達訓練兵の教導を行うということになっている。何かあっても近いしな。納得出来たか?」
「あ、はい。ありがとうございます教官。」
「はい。それじゃ説明も終わったし訓練内容について説明する。」
再度黒板に向き直り今後の課題と訓練内容を書いていく。
後ろからどよめきと焦りの声が聞こえてくる。
「というわけで、君達第五部隊には半年でここまでやってもらう。」
それなりに訓練を重ねてきた第五部隊の兵士達をどよめかせるほどのその訓練内容とは……

翌日
「昨日訓練内容を伝えたが、まず君達の実力を見たい。とりあえず剣を抜いてこちらに構えて。」
また第五部隊の兵士達に動揺が走る。
訓練用の木剣ではなく実践用の真剣を抜けと指示されたからである。
「第五部隊からは今までより更に実戦に近い訓練が要求される。それに木剣と真剣じゃ重さも違うし振った時の感覚も違う。まず日常的に真剣を振ることに慣れてもらう。」
説明に納得したか兵士達はしっかりと真剣を構える。
その中の一人がレヴィに尋ねた
「教官、まずは誰からですか?」
「んー…そうだな、とりあえず全員でいいよ」
「は……?」
質問した兵士は理解が出来ないといった表情でレヴィを見つめる
「だから、君達第五部隊全員。大丈夫、怪我はするかもしれないけど死にはしない。」
「ですが……この場にいる訓練兵は四十人は居ますが……」
「軍人として君は自分より上の人間の言う事に反抗するように教わったのか?」
「い、いえ…そのようなことは…」
「なら、君達全員で来なさい。」
その会話を聞いていた第五部隊の兵士の一人が恐る恐る駆け出し上段から真っ直ぐ剣を振り下ろす
その一撃を弾くと兵士はレヴィの後ろへ飛んでいった
いや、弾いたのではなく受け流しその力を一点に集めその勢いを利用して投げ飛ばしたのだ。剣一本で
その光景を目の当たりにし兵士達は呆然としている。
「一対一だとこうなるから全員で来いと言ったんだ。理解したならさっさと来い。」
その言葉に意を決した兵士達は一呼吸の間に一斉に斬りかかる。
「連携がなってない。それではただの有象無象だ。」
一斉に斬りかかる兵士達の剣筋を見極め受け流し、弾き飛ばし、その弾き飛ばした勢いを別の兵士へぶつける。
十秒程度で四十人の兵士達は飛ばされ倒れ尻もちをついてレヴィを呆然と見つめている
「全員で来いとは言ったが、同時に斬りかかれとは言ってない。」
やれやれといった仕草で兵士達に言う。
「とりあえずお前達に足りないのは個人の技術ではなく仲間同士の連携だ。剣術や魔法の訓練なんか腐るほどしてきただろう。俺の訓練ではまず仲間同士で共に戦うことから学んでもらう。」
それを聞きながら兵士達は立ち上がり再度整列する。
「とりあえず少しだが君達の振り方は見えた。
剣筋に関して伸びしろがありそうな者が三人いる。」
レヴィは一人一人の目を見ながらその名前を呼ぶ
「アナスタシア・アンネローゼ。エレン・ザイア。アルト・エーデルガルト。この三人はこの四十人の中でマシな部類だ。」
レヴィはその三人に前に出るよう促し兵士達へ向き直らせる。
「今後の訓練は彼ら三人をリーダーとした三つの班で行ってもらう。」
突然リーダーをやれと言われたからか三人は驚いた様子である。
「それぞれ好きなリーダーを選び、班を形成しろ。
その後それぞれの班での訓練メニューを伝える。」

というようにレヴィに訓練兵時代様々な事を教わっていたのだがこの話はまたいづれすることにしよう。
そして時間は六年後に戻る

「レヴィがこんな辺境の村にまでいるなんて珍しいですわね?何かの任務ですの?」
「いや、実は俺は騎士団を辞めたんだ。」
「えぇぇぇ!?そうでしたの!?貴方程の人が騎士団を辞めるなんてなぜですの……?」
「まぁ、色々あってね。」
心なしかレヴィの表情は曇っているように見える。
「そう…でしたの……では今は何をされていらっしゃるの?」
「あるものを探して旅人ってところかな。」
「あるもの、ですの?」
「うん、あるもの。」
エリスタシアは一瞬考え込み思いついたようにし
「よろしければわたくしにもレヴィの探し物を…」
そう言いかけた時
「隊長!!彼らの拘束と馬車への積み込み完了致しました!!」
「あら?ありがとう。」
エリスタシアは優しく微笑みながら返してやると再度レヴィへ向き直り
「ごめんなさいね。そろそろ行かなくてはなりませんの。」
「あぁ大丈夫だよ。立派になったなエリスタシア。」
「いえ、そのようなことは…で、では失礼いたしますわ……」
そそくさと兵士達の待つ馬車へ乗り込んで行ってしまった
「褒められると言動が変になる癖は相変わらずか。ふっ…」
昔を懐かしみつつ食堂の惨状をどうしたものかと眺める

「これはひどいな」
粉微塵になった机だったものやもはや黒い粉になった椅子など到底食事どころではない状態だ。
「大丈夫ですか?」
先程殴られかけていた女性に確認する
「あ、はい……大丈夫です……」
先程の男達は騎士達に捕らえられこのようなことが起こるとは思えないがなぜだか元気がない。
「騎士団の人達があいつらを捕らえましたから、もうこんなことはないですよ。安心してください」
「いえ…そうはならないと思います……」
「それってどういう…?」
途端に周りで見ていた宿泊客だろうかその中の一人が声をあげる
「若いの。そうはならんよ」
白髪を生やし軽装の老剣士らしい男がそう告げる
「あいつらは業火の鼠の下っ端じゃよ。さっきのように各村から金をせしめて親玉に献上する。いわば盗賊の大きな組織じゃ。」

「つまりこの村からの金の流れが来なくなれば上の人間か別の仲間が来ると?」
「おそらくそうじゃろう。じゃが君の行為は無駄ではない。ここ最近のあいつらの行動は度が過ぎていた。騎士達に追われていたのもこのまま放っておけば死者が出る可能性が高いからじゃ。」
「なるほど。つまり親玉を潰せばいいと。」
「そう上手くはいかん。あいつらはフィレロウンジ帝国の庇護を受けているとも聞いたことがある。もしそうなら国一個相手にすることになるやもしれぬ。」
思案に耽るような仕草で老剣士はそう淡々と語る。
「フィレロウンジ帝国か……」
聞きたくない名前だ。過去の嫌な記憶が呼び覚まされそうになるが深呼吸で落ち着かせる。

「ふむ……」
このまま放っておけばまた同じような奴らがここに来る。
旅人である以上村の事情に深くのめり込むべきではないがあの状況がまた起こるとなると看過できない。
どうしたものかと考えているとその時
「ビエラおねえちゃぁぁぁぁん!!」
ドガァァンと扉を開けとばし聞き馴染みのある声が聞こえてきた
リリィだ。
「リリィちゃん!?どうしたの!?」
宿屋の女性はビエラという名前だったらしい。
「あのえっと、よろいきた人たちがたびげいにんさんをつかまえていったのを窓からみてしんぱいで」
焦って来たのか息も切れて肩で息をしながら話している。
「大丈夫だよリリィちゃん。あの人が助けてくれたから。」
ビエラはレヴィを見ながらリリィに優しく教えてやる。
「え?あ!!まほうのおにいさん!!」
どうやら魔法のお兄さんと認識されたらしい。
レヴィと名乗ったはずなのだが。
「あぁ、うん。ただ俺の名前はレヴィだからレヴィって呼んでくれるとありがたいよ」
「あ、ごめんなさい!えっとレヴィさん、おねえちゃんたちをたすけてくれてありがとうございます」
リリィは律儀にぺこりとお辞儀をしながらそう感謝を述べた。母親に注意でもされたか。
「大丈夫。こんなの昔に比べれば全然…」
「むかし?」
「あぁいや、気にしないでくれ」
「……?」
リリィは不思議そうな顔をしている
「あの……」
ビエラが話に入ってきた
「どうしました?」
「助けていただいてありがとうございます…今日のお礼として本日分のお代は結構ですので……」
「え、いいんでしか?」
しまった。宿泊費無料という言葉に興奮して噛んでしまった。
「えぇ、ここまでして頂いた方からお金をとるなんて……」
そう言いかけた時
「あー!!れゔぃさんかんだ!!でしかでしか!!」
茶化すようにレヴィを指さしながらリリィが笑っている。
「こ、こらリリィちゃん失礼でしょう!?」
まるで可愛らしい悪戯好きの精霊のような言動にその場の空気が一気に軽くなった。
「まぁまぁ落ち着いてくださいビエラさん」
「ふふ…ふ……」
リリィはまだ噛んだことで笑っているようだ。どれだけツボが浅いのか。
「と、とりあえずお客さん達はお部屋にお戻りくださいお片付けとか全部やっておきますので!!」
リリィのおかげで空気が軽く明るくなったからか安堵した表情で宿泊客達は部屋に戻っていった。
先程の老剣士も部屋に戻ったようだ。
「レヴィさんもお部屋にお戻りくださいね。一晩で完璧に綺麗にしておきますから!!」
やるぞっといった感じで気合いを入れながらビエラは掃除の準備を始めた。
「無理はしないでくださいね。」
「大丈夫ですよ!!これでもこの宿屋の主ですから!!ちゃんとしないとお父さんに怒られちゃいますし!!」
「そんな若いのに宿屋の主だなんて凄いですね。そういえばそのお父さんは今日はいないんですか?」
そう聞きビエラは少し困ったような表情をうかべる
「えっと、二年前にお父さんは買い出しに隣町まで行く途中で盗賊に襲われて……」
「なるほど…それは悪いことを聞きました……すいません…」
「え、いやいやお父さん生きてますよ!!」
「へ?」
「隣町の修道院で療養中でお手紙でしばらく宿屋は任せたぞ。  父よりって。」
「それは…なんとも………」
「なので無事生きてます」
「よかったです。そろそろ俺も寝ますね。」
「あ、はい!!ごゆっくりおやすみください!!」
「リリィも家に帰るんだぞ。」
「えぇー」
「あぁお掃除大変だなぁ…どこかに暇そうな子はいないかなぁ…?」
ビエラがリリィを見ながらそう言うと
「あ、もうこんなじかん!!ばいばい!!」
猛ダッシュで逃げるように帰って行った。
なんともわかりやすい子だ。
それを見送りレヴィはビエラに会釈をし部屋へ戻っていった。
「ふぅ……今日はなんか疲れたな……」
ベッドに倒れ込むように寝転がり今日の出来事を頭で整理する
竜人の姫に業火の鼠、そして不思議な雰囲気のあの老剣士。それにリリィの母親の俺に対する態度
「色々とありすぎた。こんな日はいつぶりか……」
溜め息をつきながら天井を見上げる
「フィレロウンジ帝国…か……」
こんなところでもこの名前を聞くとはな
「寝るか……」
今日の出来事の疲労からか色々考えていると睡魔すいまが襲ってくる。
その微睡まどろみに身を任せてレヴィは眠りについた。

一日目 完
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...