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第二章その5 ~絶対守るわ!~ 熱血の鹿児島防衛編
押し寄せる大軍勢
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鹿児島を目指す餓霊軍は、休み無く進撃を続けた。
九州自動車道を南下……鹿児島湾に面する加治木インターチェンジから西へ進めば、簡単に薩摩半島に迫れる。
人間達の整備した高速道路、また周囲の道のおかげで進撃はスムーズであったが、それも通常サイズの餓霊のみである。
陣の中ほどを進む巨大餓霊……人間側が『城喰い』と呼ぶそれは、道路には収まらないため、大地を大きく削りながら前進していた。
「あーあ、道も何もあったもんじゃねえな。頼もしいっちゃ頼もしいがよ」
鎧に乗り込んだ焔は、粉塵を巻き上げる城喰いの姿にニヤついた。
行軍は順調に進み、旧地名でいうところの姶良を通過。最後の山地に差し掛かった。
ここを越えれば、もう鹿児島は目の前である。
「……さて、どこから来るか。山手から来るなら良し、海から来るならそれも良し。どっから来ても問題ないぜ」
「だから調子に乗らないで。相手はあの神人よ?」
焔の眼前が揺らめくと、女の顔が映し出された。
「これはあなたの私闘じゃなく、一族の浮沈がかかった戦なの。そこのところは自覚して頂戴」
「あーあー、悲しいねえ。燐火ちゃんも不知火のおっさんと同じだ、俺の事信用しないでやんの」
「普段の言動が物を言うのよっ」
映像の燐火はそれだけ言うと、揺らめいて消えてしまった。
山岳部にさしかかったところで、人間側の抵抗が始まった。
配置された砲撃部隊からの波状攻撃で、餓霊の軍勢に次々損害が出ている。
だが今回は、そんな事で揺らぐような陣容ではないのだ。
城喰いを覆う強力な電磁バリアは、全く攻撃を受け付けなかったし、人間側はやむなく後退していく。
「適当に進めば逃げてくだろ? 地雷がないのが何よりの証拠だ、俺達を誘い込むのが目的なんだから」
焔の読みはことごとく当たっていた。
戦闘開始後、人間達はしばらく応戦するも、数に押されてあっさりと退いていく。
鹿児島の防衛線を抜かれれば最後だというのに、やけに淡白な抵抗である。
特にこちらを阻む地雷原もなく、餓霊の軍勢は、苦労なく鹿児島市付近まで進んだ。
城砦都市の壁が遠目にも確認出来、危険を報せるサイレンが鳴り響いている。
餓霊の主戦力は、鹿児島インターチェンジから平地へと降りると、そこで一時集合した。陣形を整えるためだ。
城喰いは地響きを上げて大地を削りながら、陣の先頭に出た。
山椒魚をずんぐりさせたような形状。
各所に伸びた巨大な角。
太い足はワニのそれに似ており、背中に並ぶ突起からは、邪気の霧が阿蘇の噴煙のように噴き出されていた。
更に全身を幾重にも覆う、赤い幾何学模様の電磁防御は、いかな人間側の兵器でも貫く事は困難だろう。
無理やり多数の邪霊を合体させているため、どのみち長時間はこの世に存在できない歪な存在だ。
そのため特に名を与えていなかったのだが、人間は名付けるのが好きな生き物のようである。
焔は嗜虐の快感で口元を歪め、呼びかけた。
「さあ城喰い。お前に名をくれた連中が待ってるぜ。礼に一人残らず、三途の川まで乗せてってやれ」
城喰いは無数の目を光らせ、大地を軋ませながら鹿児島城砦都市へと迫る。
九州自動車道を南下……鹿児島湾に面する加治木インターチェンジから西へ進めば、簡単に薩摩半島に迫れる。
人間達の整備した高速道路、また周囲の道のおかげで進撃はスムーズであったが、それも通常サイズの餓霊のみである。
陣の中ほどを進む巨大餓霊……人間側が『城喰い』と呼ぶそれは、道路には収まらないため、大地を大きく削りながら前進していた。
「あーあ、道も何もあったもんじゃねえな。頼もしいっちゃ頼もしいがよ」
鎧に乗り込んだ焔は、粉塵を巻き上げる城喰いの姿にニヤついた。
行軍は順調に進み、旧地名でいうところの姶良を通過。最後の山地に差し掛かった。
ここを越えれば、もう鹿児島は目の前である。
「……さて、どこから来るか。山手から来るなら良し、海から来るならそれも良し。どっから来ても問題ないぜ」
「だから調子に乗らないで。相手はあの神人よ?」
焔の眼前が揺らめくと、女の顔が映し出された。
「これはあなたの私闘じゃなく、一族の浮沈がかかった戦なの。そこのところは自覚して頂戴」
「あーあー、悲しいねえ。燐火ちゃんも不知火のおっさんと同じだ、俺の事信用しないでやんの」
「普段の言動が物を言うのよっ」
映像の燐火はそれだけ言うと、揺らめいて消えてしまった。
山岳部にさしかかったところで、人間側の抵抗が始まった。
配置された砲撃部隊からの波状攻撃で、餓霊の軍勢に次々損害が出ている。
だが今回は、そんな事で揺らぐような陣容ではないのだ。
城喰いを覆う強力な電磁バリアは、全く攻撃を受け付けなかったし、人間側はやむなく後退していく。
「適当に進めば逃げてくだろ? 地雷がないのが何よりの証拠だ、俺達を誘い込むのが目的なんだから」
焔の読みはことごとく当たっていた。
戦闘開始後、人間達はしばらく応戦するも、数に押されてあっさりと退いていく。
鹿児島の防衛線を抜かれれば最後だというのに、やけに淡白な抵抗である。
特にこちらを阻む地雷原もなく、餓霊の軍勢は、苦労なく鹿児島市付近まで進んだ。
城砦都市の壁が遠目にも確認出来、危険を報せるサイレンが鳴り響いている。
餓霊の主戦力は、鹿児島インターチェンジから平地へと降りると、そこで一時集合した。陣形を整えるためだ。
城喰いは地響きを上げて大地を削りながら、陣の先頭に出た。
山椒魚をずんぐりさせたような形状。
各所に伸びた巨大な角。
太い足はワニのそれに似ており、背中に並ぶ突起からは、邪気の霧が阿蘇の噴煙のように噴き出されていた。
更に全身を幾重にも覆う、赤い幾何学模様の電磁防御は、いかな人間側の兵器でも貫く事は困難だろう。
無理やり多数の邪霊を合体させているため、どのみち長時間はこの世に存在できない歪な存在だ。
そのため特に名を与えていなかったのだが、人間は名付けるのが好きな生き物のようである。
焔は嗜虐の快感で口元を歪め、呼びかけた。
「さあ城喰い。お前に名をくれた連中が待ってるぜ。礼に一人残らず、三途の川まで乗せてってやれ」
城喰いは無数の目を光らせ、大地を軋ませながら鹿児島城砦都市へと迫る。
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