89 / 90
~エピローグ~ 鎮西のジャンヌダルク
いざ決戦の地、日本海へ!
しおりを挟む
突如、室内の明かりが激しく点滅し、モニターにノイズが入った。
「何? 状況を確認して!」
天草は素早く指示を出すが、そこで画面に何者かが映った。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
瞬間、一同は戦慄した。
漆黒の空間に、着物姿の童女が座している。
一見して髪の長い日本人形のようであるが、その目は人ならぬ狂気を帯びていた。
口元にのぞく幾多の牙、顎から頬にかけて刻まれた、古代化粧のような刺青。
全員が本能的に理解した。
魔族。それもとてつもなく高位の存在である。
この相手こそが災厄の始まり。
冥界の魔を従える頂……ディアヌスの名を持つ覇王なのだ。
「……そろそろ小競り合いも飽きてきた。小ざかしい人間ども、決着を付けようぞ」
子供は……いや、子供の姿をとる魔王は、そう言って大きく目を見開いた。
眉間に深い皺を寄せ、牙を剥き出した童女は、物凄い大音量で叫んだ。
「来たれ、決戦の地へ、魂を打ち砕いて食ろうてやろう!!!」
童女の姿が消えると同時に、地響きが日本列島を揺さぶった。
各地の地震計が大きな揺れを記録し、巨大な力の顕現を示したのだ。
やがて通信技士の青年が、慌しく読み上げる。
「報告! 餓霊の大軍勢が、第2・第4船団の共同避難区付近を襲撃しているとのことです!」
「さすが魔王だ、休ませてくれないね」
コマがそう言うと、モニターに女神・岩凪姫の姿が映った。
女神は誠達に言い放つ。
「鶴、黒鷹、第4船団側に救援申請が受け入れられた。動ける者はどれだけいる?」
「隊員達の機体は修理が必要ですが、俺とヒメ子ならすぐ行けます!」
誠は即断して答えた。
「それではただちに急行だ! 目標、能登半島付近、詳しい事は追って指示する!」
「了解っ!」
誠と鶴、それにコマは、弾けるように駆け出した。
「鳴っち、気いつけや!」
「ケガしたら、今度こそ許さないわよ!」
人ごみの向こうで、難波やカノンが叫んでいる。
宮島も香川も、そして志布志隊の面々も。
彼らの声を聞きながら、誠は不思議な高揚感にとらわれていた。
体が熱い。足が勝手に動いていく。
さっきの童女……以前見た風貌とは違うが、間違いなく魔王ディアヌス。
いよいよなのだ。
いよいよこの災厄の始まりである餓霊の総大将と、対決する時が来たのだ。
今度こそ絶対にあれを葬り、この10年に及ぶ災厄を終わらせるのだ。
格納庫に戻ると、心神のコクピットに飛び乗り、機体を急速起動させる。
「ヒメ子とコマは、着くまで休んでてくれ!」
「分かったわ、お昼寝は得意中の得意よ!」
鶴は補助席に陣取ってそう答える。
機体のモニターには、既に味方の輸送機との合流地点も示されていた。
「翼部属性添加機起動、収束斥力場展開。防御及び消音、空気抵抗軽減式、全身保護……J―X2試作型心神、鳴瀬誠、いきます!」
機体は急速に加速し、一気に空へと舞い上がった。
誠はもう一度、目に焼き付けるように景色を見る。
晴れ渡る九州の空、そして青い鹿児島湾。
煙を上げる桜島は、人類の反撃の狼煙のように誠には思えた。
誠は機体の属性添加機を操作し、進路を北東へと向けた。
いざ、決戦の血、日本海沿岸へ……!
※※第2章の九州奪還編はここまでです。お読みいただきありがとうございました。
一つ一つが長いため、次章も別ブックにて再開する予定です。
どうぞよろしくお願いします。
「何? 状況を確認して!」
天草は素早く指示を出すが、そこで画面に何者かが映った。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
瞬間、一同は戦慄した。
漆黒の空間に、着物姿の童女が座している。
一見して髪の長い日本人形のようであるが、その目は人ならぬ狂気を帯びていた。
口元にのぞく幾多の牙、顎から頬にかけて刻まれた、古代化粧のような刺青。
全員が本能的に理解した。
魔族。それもとてつもなく高位の存在である。
この相手こそが災厄の始まり。
冥界の魔を従える頂……ディアヌスの名を持つ覇王なのだ。
「……そろそろ小競り合いも飽きてきた。小ざかしい人間ども、決着を付けようぞ」
子供は……いや、子供の姿をとる魔王は、そう言って大きく目を見開いた。
眉間に深い皺を寄せ、牙を剥き出した童女は、物凄い大音量で叫んだ。
「来たれ、決戦の地へ、魂を打ち砕いて食ろうてやろう!!!」
童女の姿が消えると同時に、地響きが日本列島を揺さぶった。
各地の地震計が大きな揺れを記録し、巨大な力の顕現を示したのだ。
やがて通信技士の青年が、慌しく読み上げる。
「報告! 餓霊の大軍勢が、第2・第4船団の共同避難区付近を襲撃しているとのことです!」
「さすが魔王だ、休ませてくれないね」
コマがそう言うと、モニターに女神・岩凪姫の姿が映った。
女神は誠達に言い放つ。
「鶴、黒鷹、第4船団側に救援申請が受け入れられた。動ける者はどれだけいる?」
「隊員達の機体は修理が必要ですが、俺とヒメ子ならすぐ行けます!」
誠は即断して答えた。
「それではただちに急行だ! 目標、能登半島付近、詳しい事は追って指示する!」
「了解っ!」
誠と鶴、それにコマは、弾けるように駆け出した。
「鳴っち、気いつけや!」
「ケガしたら、今度こそ許さないわよ!」
人ごみの向こうで、難波やカノンが叫んでいる。
宮島も香川も、そして志布志隊の面々も。
彼らの声を聞きながら、誠は不思議な高揚感にとらわれていた。
体が熱い。足が勝手に動いていく。
さっきの童女……以前見た風貌とは違うが、間違いなく魔王ディアヌス。
いよいよなのだ。
いよいよこの災厄の始まりである餓霊の総大将と、対決する時が来たのだ。
今度こそ絶対にあれを葬り、この10年に及ぶ災厄を終わらせるのだ。
格納庫に戻ると、心神のコクピットに飛び乗り、機体を急速起動させる。
「ヒメ子とコマは、着くまで休んでてくれ!」
「分かったわ、お昼寝は得意中の得意よ!」
鶴は補助席に陣取ってそう答える。
機体のモニターには、既に味方の輸送機との合流地点も示されていた。
「翼部属性添加機起動、収束斥力場展開。防御及び消音、空気抵抗軽減式、全身保護……J―X2試作型心神、鳴瀬誠、いきます!」
機体は急速に加速し、一気に空へと舞い上がった。
誠はもう一度、目に焼き付けるように景色を見る。
晴れ渡る九州の空、そして青い鹿児島湾。
煙を上げる桜島は、人類の反撃の狼煙のように誠には思えた。
誠は機体の属性添加機を操作し、進路を北東へと向けた。
いざ、決戦の血、日本海沿岸へ……!
※※第2章の九州奪還編はここまでです。お読みいただきありがとうございました。
一つ一つが長いため、次章も別ブックにて再開する予定です。
どうぞよろしくお願いします。
0
あなたにおすすめの小説
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた
季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】
気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。
手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!?
傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。
罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚!
人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる