74 / 117
第一章その5 ~負けないわ!~ 蠢き出す悪の陰謀編
現れた大地の穴
しおりを挟む
その報せは、稲妻のように第5船団を駆け巡った。旧徳島県西部の山あいに、突如敵の大部隊が発見されたのだ。
密集した敵が発生させる色濃い霧は、超高空から観測すると、あたかも台風の渦のようであった。
既に本拠地と化した天守閣には、女神や鶴や鳳、そして誠達人型重機部隊が集まり、持ち込まれた巨大スクリーンに見入っていた。
女神・岩凪姫は、頬杖をついたまま画面を見据える。
「予想通り、中央構造線に近い場所だな。恐らく敵の龍穴がある」
「龍穴?」
聞き慣れぬ言葉に、誠は問い返した。
「大地の気が噴き出す所だ。餓霊が生まれる魔力の穴と思えばいい。ここを潰す……というより清めて封印すれば、敵軍は大幅に弱体化するだろう」
女神はそこで傍らの鶴を見る。
「鶴、まだ距離は遠いが、大まかな敵の布陣は見えるか」
「やってみるわ」
鶴が半透明の地図を映すと、巨大な赤い円が確認できた。
そこから赤い点が次々生まれ、餓霊の群れが湧き出ているようだが、敵軍はやや東方にその戦力を傾けているようだ。
「全体的に隙がないが、やはり東の備えが厚いな。当然ながら、敵が最も嫌がるのは、すぐ東の徳島自治区の存在だ。讃岐平野の防衛線が先に狙われたのも、恐らく同じ理由であろう」
鳳が女神の後を続ける。
「代行様のおっしゃる通りですね。問題はこれに対して、船団内の他の勢力がどう出るかです。現在、佐々木氏やその一派を交え、話し合っているようですが……」
その時、モニターに佐々木の姿が映り、鳳は少し驚いた様子で尋ねる。
「これは佐々木殿、会議中ではないのですか?」
「それが鳳さん、存外に早く終わりましてな。全てとんとん拍子です。徳島の阿波丸氏とも共同して、敵勢力に対抗する事に決まりました」
佐々木の言葉に、鶴は目を丸くして感心している。
「まあ、あの意地っ張りのおじさんにしては素直ね」
「きっとご飯がおいしかったんだよ」
鶴とコマが囁き合っているが、女神は気にせず佐々木に言う。
「それで佐々木よ、蛭間一派はどうした?」
「それが、蛭間達は相変わらず欠席しておりまして。ただ先ほど連絡があり、本部戦力の一部と、特務隊からも数名を派遣するとの事です」
「特務隊も?」
誠は驚いて声を上げた。
「なんでそんな、急に協力的になったんですか」
「さてな。だがこれを否定すれば、こちらの立場がおかしくなる。今は受け入れるしかあるまい」
女神は顎に手を当てて言った。
「取り急ぎ第5船団としましては、対抗戦力を徳島自治区に移し、防衛線を形成します」
「分かった佐々木、ご苦労だった。鶴、お前達も行ってやりなさい」
「任せといて。ここが大勝負だし、いつも通り頑張るわ!」
いつもは遊んでるじゃないか、とツッコミを入れるコマをよそに、誠が尋ねる。
「龍穴のおかげで、今度の敵、凄い頭数ですよね。いつもなら敵の少ない西側から攻めるんでしょうけど、手薄と言っても凄い数だ。味方部隊の援護があっても、突破できると思えないんですが」
「……そうだな、無茶をすれば、その間に徳島の自治区がやられるだろう。差し当たってお前達も、味方の陣に加わって避難区を守れ。龍穴のエネルギーも限りがあるし、短期間で一気に餓霊を生み出し過ぎれば、後で必ずしっぺ返しが来る。守り抜けば、反撃のチャンスはあるはずだ」
女神はそこで少し強い語気で告げた。
「皆、今回は味方も油断がならぬぞ。十分に警戒するのだ」
「了解しました!」
誠達も答え、一同は戦いの準備に取り掛かった。
密集した敵が発生させる色濃い霧は、超高空から観測すると、あたかも台風の渦のようであった。
既に本拠地と化した天守閣には、女神や鶴や鳳、そして誠達人型重機部隊が集まり、持ち込まれた巨大スクリーンに見入っていた。
女神・岩凪姫は、頬杖をついたまま画面を見据える。
「予想通り、中央構造線に近い場所だな。恐らく敵の龍穴がある」
「龍穴?」
聞き慣れぬ言葉に、誠は問い返した。
「大地の気が噴き出す所だ。餓霊が生まれる魔力の穴と思えばいい。ここを潰す……というより清めて封印すれば、敵軍は大幅に弱体化するだろう」
女神はそこで傍らの鶴を見る。
「鶴、まだ距離は遠いが、大まかな敵の布陣は見えるか」
「やってみるわ」
鶴が半透明の地図を映すと、巨大な赤い円が確認できた。
そこから赤い点が次々生まれ、餓霊の群れが湧き出ているようだが、敵軍はやや東方にその戦力を傾けているようだ。
「全体的に隙がないが、やはり東の備えが厚いな。当然ながら、敵が最も嫌がるのは、すぐ東の徳島自治区の存在だ。讃岐平野の防衛線が先に狙われたのも、恐らく同じ理由であろう」
鳳が女神の後を続ける。
「代行様のおっしゃる通りですね。問題はこれに対して、船団内の他の勢力がどう出るかです。現在、佐々木氏やその一派を交え、話し合っているようですが……」
その時、モニターに佐々木の姿が映り、鳳は少し驚いた様子で尋ねる。
「これは佐々木殿、会議中ではないのですか?」
「それが鳳さん、存外に早く終わりましてな。全てとんとん拍子です。徳島の阿波丸氏とも共同して、敵勢力に対抗する事に決まりました」
佐々木の言葉に、鶴は目を丸くして感心している。
「まあ、あの意地っ張りのおじさんにしては素直ね」
「きっとご飯がおいしかったんだよ」
鶴とコマが囁き合っているが、女神は気にせず佐々木に言う。
「それで佐々木よ、蛭間一派はどうした?」
「それが、蛭間達は相変わらず欠席しておりまして。ただ先ほど連絡があり、本部戦力の一部と、特務隊からも数名を派遣するとの事です」
「特務隊も?」
誠は驚いて声を上げた。
「なんでそんな、急に協力的になったんですか」
「さてな。だがこれを否定すれば、こちらの立場がおかしくなる。今は受け入れるしかあるまい」
女神は顎に手を当てて言った。
「取り急ぎ第5船団としましては、対抗戦力を徳島自治区に移し、防衛線を形成します」
「分かった佐々木、ご苦労だった。鶴、お前達も行ってやりなさい」
「任せといて。ここが大勝負だし、いつも通り頑張るわ!」
いつもは遊んでるじゃないか、とツッコミを入れるコマをよそに、誠が尋ねる。
「龍穴のおかげで、今度の敵、凄い頭数ですよね。いつもなら敵の少ない西側から攻めるんでしょうけど、手薄と言っても凄い数だ。味方部隊の援護があっても、突破できると思えないんですが」
「……そうだな、無茶をすれば、その間に徳島の自治区がやられるだろう。差し当たってお前達も、味方の陣に加わって避難区を守れ。龍穴のエネルギーも限りがあるし、短期間で一気に餓霊を生み出し過ぎれば、後で必ずしっぺ返しが来る。守り抜けば、反撃のチャンスはあるはずだ」
女神はそこで少し強い語気で告げた。
「皆、今回は味方も油断がならぬぞ。十分に警戒するのだ」
「了解しました!」
誠達も答え、一同は戦いの準備に取り掛かった。
0
あなたにおすすめの小説
汚部屋女神に無茶振りされたアラサー清掃員、チートな浄化スキルで魔境ダンジョンを快適ソロライフ聖域に変えます!
虹湖🌈
ファンタジー
女神様、さては…汚部屋の住人ですね? もう足の踏み場がありませーん><
面倒な人間関係はゼロ! 掃除で稼いで推し活に生きる! そんな快適ソロライフを夢見るオタク清掃員が、ダメ女神に振り回されながらも、世界一汚いダンジョンを自分だけの楽園に作り変えていく、異世界お掃除ファンタジー。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる