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第一章その5 ~負けないわ!~ 蠢き出す悪の陰謀編

鳴門地区防衛戦1

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「これだけ揃うと壮観だな」

 周囲の友軍を眺め、誠は素直に感嘆した。

 集まった味方部隊は、鳴門避難区を背にして平野に広く展開している。

 居並ぶ車両や人型重機は雄々しく、神話をかたどる群像劇のオブジェのようだ。

「ここまで大所帯の戦いは初めてよね。ちょっと緊張するかも」

 画面に映るカノンの顔は、いつもより少し不安げである。

「一番心配なのは指揮系統だな。寄せ集めの戦力だから、非常時に乱れが出ないか気になる。それに今までは自由に動き回れてたけど、この大所帯で勝手が効くのかも疑問かな」

「一応その辺は、鶉谷司令が念押ししてくれたわよね?」

「一応はな。変な政治がらみで覆らなければ」

 ……と、その時、誠のモニターに通信が入った。後方の中継車からである。

 通信技士の少年は、やや緊張した面持ちで一同に告げる。

「鳴門戦闘司令部より通達、敵のジャミング粒子がこちらに伸びてきているとの事です。敵は徳島自動車道を東進、美馬インターチェンジ付近に到達と予測。予定通り待ち伏せし、敵の第一波を迎撃します」

「了解、こちらも適時対応する」

 誠は通信を終えると、防護手袋ガードグラブを強く締め直した。

「展開が早いな。ヒメ子、コマ、そろそろいいか?」

 誠は後ろの補助席に目をやるが、そこに2人の姿はない。

「えっ、ヒメ子!? まずいだろ、こんな肝心な時に!」

 慌てる誠に、画面上で難波が語りかけてくる。

「鶴っちなら、さっき外で手ぇ振っとったで。特務隊のとこに行く言うてた」

「と、特務隊!? 一体何しに行ったんだよ?」
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