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第五章その2 ~おめでとう!~ やっと勝利のお祝い編
鬼の姉妹は覗き見が下手
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「う、うわカノっち、押したらあかん!」
ドサドサと賑やかな音と共に、物陰から人が雪崩出てきた。
難波、カノン、宮島に香川。
そして彼らの上に乗っていたであろう、神使達もずっこけている。
「えええっ!?」
誠も鶴も驚いたが、更に次の瞬間。
「こら剛角っ、押すんじゃないよっ!」
反対側の物陰から、またも数人が倒れ込んで来た。
頭に角の生えた鬼神族で、1人は勝気そうな女性風、1人は大柄で筋肉質。もう1人は小柄な子供の姿だった。
つまりは鬼の3精鋭……もとい3バカ達で、カノンは身を起こしながら彼らを指差す。
「あっ、あんた達、こんな所で何やってるのよっ!?」
「いやいやカノンっ、それはお前らも同じだろっ!」
「うっ! それはっ……」
カノンは絶句したが、すぐに赤い顔で言い訳する。
「そっそそそ、それはあれよっ、護衛よっ! あんたは病み上がりだし、また敵に襲われたらこっちが困るし。ほんとフラフラして傍迷惑なんだからっ!」
「カノっち、あんたデレたんやなかったんかいな?」
難波が呆れてツッコミを入れている。
香川もようやく身を起こし、スキンヘッドについたホコリを落としながら言った。
「で、鬼の皆さんはどういうご用で? まさか仲良く観光とか、お釈迦様でも思うまいに」
そこで一同の傍らに光が閃き、女神・岩凪姫が現れた。
「私が許可して、さっき連れて来たのだ。鶴や黒鷹、カノンに会いたいと言ったのでな。私はまあ、サボり魔の神使達も探しに来たわけだが」
そーっと退散していく神使をジト目で眺めながら、岩凪姫はそう言った。
「その鬼達は……まあ、いい意味で阿呆だからな。因果を見ても、武芸者との勝負以外で人を殺めておらん。そもそも餓霊が占領した中国地方にいたから、ほぼ戦う機会も無かったわけだが……」
リーダー格であり、勝気な風貌の刹鬼姫も、女神に怯えつつ口を開いた。
「……そ、そうですっ、あたしらもう、鬼の里は抜けましたんで。後は適当に狩りでもして生きていきます。その前にまあ、姉上に挨拶を……」
刹鬼姫はそう言って気まずそうに頭をかいた。
「一応まあ、実の姉ではあるわけだし……そっちの神人にも、それなりに世話になったんで、その……」
刹鬼姫は真っ赤になって、顔から湯気を立てている。
こりゃあカノっち以上の意地っ張りやな、と難波が呟き、一同は……剛角や紫蓮も含め、うんうんと頷いている。
巨漢の鬼・剛角は、頷いた事で刹鬼姫に殴られながら言った。
「ぐはっ! わ、わしらはそもそも、強い奴と戦うのが好きなだけじゃい。あんなネチネチした里なんぞ、金輪際ご免なんじゃ」
そこで髪の長い童のような鬼・紫蓮が続けた。
「そうじゃとも! それはそうとして、さっそくそやつと再戦したいんじゃが」
紫蓮は目を輝かせて誠を指差すが、すぐに剛角と揉め始める。
「何を抜け駆けしとるか紫蓮、ワシが先じゃい!」
「いや、わしじゃ剛角、お前では無理じゃ!」
「んだとお!?」
「……いえほんと、そういうのは勘弁して欲しいんですけど……」
誠は大変に青ざめて訴えかけるのだが、当の鬼達は聞いていない。
女神はそんな一同を眺め、まんざらでもなさそうに肩をすくめた。
「やれやれ、本当に賑やかだが……そろそろ帰らないと、皆待っているぞ? 雪菜や夏木達も呼んでおいたから、今頃家に着いてるだろう」
「えっ、雪菜さんもですかっ!?」
誠は一気にテンションが上がった。
幼い誠を助けた命の恩人であり、初恋にして最愛の人。
戦いが終わったら、何より会いたい人だったのだが……そこでふと何かが引っかかった。
先ほどの鶴の姿が……夕日に照らされた悲しげな彼女の顔が、今も心から消えていなかったのだ。
ドサドサと賑やかな音と共に、物陰から人が雪崩出てきた。
難波、カノン、宮島に香川。
そして彼らの上に乗っていたであろう、神使達もずっこけている。
「えええっ!?」
誠も鶴も驚いたが、更に次の瞬間。
「こら剛角っ、押すんじゃないよっ!」
反対側の物陰から、またも数人が倒れ込んで来た。
頭に角の生えた鬼神族で、1人は勝気そうな女性風、1人は大柄で筋肉質。もう1人は小柄な子供の姿だった。
つまりは鬼の3精鋭……もとい3バカ達で、カノンは身を起こしながら彼らを指差す。
「あっ、あんた達、こんな所で何やってるのよっ!?」
「いやいやカノンっ、それはお前らも同じだろっ!」
「うっ! それはっ……」
カノンは絶句したが、すぐに赤い顔で言い訳する。
「そっそそそ、それはあれよっ、護衛よっ! あんたは病み上がりだし、また敵に襲われたらこっちが困るし。ほんとフラフラして傍迷惑なんだからっ!」
「カノっち、あんたデレたんやなかったんかいな?」
難波が呆れてツッコミを入れている。
香川もようやく身を起こし、スキンヘッドについたホコリを落としながら言った。
「で、鬼の皆さんはどういうご用で? まさか仲良く観光とか、お釈迦様でも思うまいに」
そこで一同の傍らに光が閃き、女神・岩凪姫が現れた。
「私が許可して、さっき連れて来たのだ。鶴や黒鷹、カノンに会いたいと言ったのでな。私はまあ、サボり魔の神使達も探しに来たわけだが」
そーっと退散していく神使をジト目で眺めながら、岩凪姫はそう言った。
「その鬼達は……まあ、いい意味で阿呆だからな。因果を見ても、武芸者との勝負以外で人を殺めておらん。そもそも餓霊が占領した中国地方にいたから、ほぼ戦う機会も無かったわけだが……」
リーダー格であり、勝気な風貌の刹鬼姫も、女神に怯えつつ口を開いた。
「……そ、そうですっ、あたしらもう、鬼の里は抜けましたんで。後は適当に狩りでもして生きていきます。その前にまあ、姉上に挨拶を……」
刹鬼姫はそう言って気まずそうに頭をかいた。
「一応まあ、実の姉ではあるわけだし……そっちの神人にも、それなりに世話になったんで、その……」
刹鬼姫は真っ赤になって、顔から湯気を立てている。
こりゃあカノっち以上の意地っ張りやな、と難波が呟き、一同は……剛角や紫蓮も含め、うんうんと頷いている。
巨漢の鬼・剛角は、頷いた事で刹鬼姫に殴られながら言った。
「ぐはっ! わ、わしらはそもそも、強い奴と戦うのが好きなだけじゃい。あんなネチネチした里なんぞ、金輪際ご免なんじゃ」
そこで髪の長い童のような鬼・紫蓮が続けた。
「そうじゃとも! それはそうとして、さっそくそやつと再戦したいんじゃが」
紫蓮は目を輝かせて誠を指差すが、すぐに剛角と揉め始める。
「何を抜け駆けしとるか紫蓮、ワシが先じゃい!」
「いや、わしじゃ剛角、お前では無理じゃ!」
「んだとお!?」
「……いえほんと、そういうのは勘弁して欲しいんですけど……」
誠は大変に青ざめて訴えかけるのだが、当の鬼達は聞いていない。
女神はそんな一同を眺め、まんざらでもなさそうに肩をすくめた。
「やれやれ、本当に賑やかだが……そろそろ帰らないと、皆待っているぞ? 雪菜や夏木達も呼んでおいたから、今頃家に着いてるだろう」
「えっ、雪菜さんもですかっ!?」
誠は一気にテンションが上がった。
幼い誠を助けた命の恩人であり、初恋にして最愛の人。
戦いが終わったら、何より会いたい人だったのだが……そこでふと何かが引っかかった。
先ほどの鶴の姿が……夕日に照らされた悲しげな彼女の顔が、今も心から消えていなかったのだ。
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