57 / 117
第五章その6 ~やっと平和になったのに!~ 不穏分子・自由の翼編
あいつが憎くて仕方がない…!
しおりを挟む
(鳴瀬、あいつだ……! ずっと気に食わなかった……!)
不是は憎い少年の姿を思い浮かべた。
妬ましくてたまらない。
何度八つ裂きにしてやりたかったか分からない。
けれど出来なかったのは、あいつが鬼みたいに強かったからだ。
同じ隊にいたから分かる。あれは本物の化け物だったし、直感で天敵だと理解していた。
模擬戦でもシュミレーションでも、こっちがどうあがいても絶対にそれを上回ってくる。
先読みしてこちらの行動を待ち、ケガせぬよう絶妙な手加減を加えてくるのだ。
殺そうと思えば一瞬でやられるだろうし、何をやっても通用しない。
こっちは生きるために操縦を覚えたのに……他のヤツより適性があって、ようやく秀でた特技を得たのに。絶対に手放したくない、たった1つのメシの種だ。
……なのにあいつはそれを上回るのだ。
あれが怖くて仕方なかったし、何度出撃中に殺そうとした事だろう?
しかし殺意を見せた瞬間、ヤツは感じ取って反応するのだ。
餓霊がいる時に狙ったから、敵の殺意だと勘違いしてくれたが……そうでなければ即座にブッ殺されていただろう。
だが幸運な事に、あいつは突然弱くなった。
憧れていた先輩パイロットの明日馬を、自分のせいで死なせたと思ったからだ。
バカなヤツだが、こっちにとっては最高の幸運だった。
もちろん何度も始末しようと思った。
でもしなかったのは、惨めなあいつを見ていたかったからだ。
あいつを蹴り飛ばし、地べたに這い蹲らせる。その至高の快楽を、永遠に味わっていたかったからだ。
絶対的な強者から奪い取り、下克上で踏みにじる。それこそが、自分の生を全肯定する瞬間だからだ。
……だがその油断のおかげで、自分はこんな事になったのだ。
あいつは再び牙を剥き、この俺を地獄に落とした。
このままでは何もかも終わりだ。
ただ淡々と刑を執行され、名も無い番号として処分されていくのだ。
「~~~~~っっっ!!!!!!!!!」
次第に呼吸が荒くなった。鼓動がどんどん高まって、爪を噛み、必死に宙を睨みつける。
(駄目だ、殺らなきゃやられる……! このままじゃ何も変わってねえっ……!)
眼前の光景は次第に歪み、過去の記憶と入り乱れていく。
殴られ蹴られ、血で染まった赤い視界。
凶暴な大人から逃げ回り、喰い物を盗んでは半殺しにされる日々。
避難区での暮らしは地獄そのものだった。
……だから殺した。殺して奪った。
いかな綺麗事も美辞麗句も、自分を救ってくれなかった。
信じられるのは力だけ、自らの暴力だけだ。
あの横須賀の避難区で……初めて人を殺めた時、不是はその事に気付いたのだ。
不是は憎い少年の姿を思い浮かべた。
妬ましくてたまらない。
何度八つ裂きにしてやりたかったか分からない。
けれど出来なかったのは、あいつが鬼みたいに強かったからだ。
同じ隊にいたから分かる。あれは本物の化け物だったし、直感で天敵だと理解していた。
模擬戦でもシュミレーションでも、こっちがどうあがいても絶対にそれを上回ってくる。
先読みしてこちらの行動を待ち、ケガせぬよう絶妙な手加減を加えてくるのだ。
殺そうと思えば一瞬でやられるだろうし、何をやっても通用しない。
こっちは生きるために操縦を覚えたのに……他のヤツより適性があって、ようやく秀でた特技を得たのに。絶対に手放したくない、たった1つのメシの種だ。
……なのにあいつはそれを上回るのだ。
あれが怖くて仕方なかったし、何度出撃中に殺そうとした事だろう?
しかし殺意を見せた瞬間、ヤツは感じ取って反応するのだ。
餓霊がいる時に狙ったから、敵の殺意だと勘違いしてくれたが……そうでなければ即座にブッ殺されていただろう。
だが幸運な事に、あいつは突然弱くなった。
憧れていた先輩パイロットの明日馬を、自分のせいで死なせたと思ったからだ。
バカなヤツだが、こっちにとっては最高の幸運だった。
もちろん何度も始末しようと思った。
でもしなかったのは、惨めなあいつを見ていたかったからだ。
あいつを蹴り飛ばし、地べたに這い蹲らせる。その至高の快楽を、永遠に味わっていたかったからだ。
絶対的な強者から奪い取り、下克上で踏みにじる。それこそが、自分の生を全肯定する瞬間だからだ。
……だがその油断のおかげで、自分はこんな事になったのだ。
あいつは再び牙を剥き、この俺を地獄に落とした。
このままでは何もかも終わりだ。
ただ淡々と刑を執行され、名も無い番号として処分されていくのだ。
「~~~~~っっっ!!!!!!!!!」
次第に呼吸が荒くなった。鼓動がどんどん高まって、爪を噛み、必死に宙を睨みつける。
(駄目だ、殺らなきゃやられる……! このままじゃ何も変わってねえっ……!)
眼前の光景は次第に歪み、過去の記憶と入り乱れていく。
殴られ蹴られ、血で染まった赤い視界。
凶暴な大人から逃げ回り、喰い物を盗んでは半殺しにされる日々。
避難区での暮らしは地獄そのものだった。
……だから殺した。殺して奪った。
いかな綺麗事も美辞麗句も、自分を救ってくれなかった。
信じられるのは力だけ、自らの暴力だけだ。
あの横須賀の避難区で……初めて人を殺めた時、不是はその事に気付いたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる