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第五章その10 ~何としても私が!~ 岩凪姫の死闘編
女神を守れ!
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女神の窮地は、誠達の目にも見えていた。鶴がなけなしの霊力を使い、神器で映していたからだ。
「ナギっぺ!!!」
機体の後部座席から身を乗り出し、鶴が叫んだ。
「黒鷹っ、どうしよう、ナギっぺが危ないわ!!!」
鶴はもう泣いていた。その声が外部拡声器から漏れて、夜の闇に物悲しく響いた。
「くっ……!!!」
誠も焦った。
今すぐこの場を離れ、女神の元に駆けつけなければ。
けれど出来なかった。
迫る黄泉の軍勢は、もうすぐ傍まで来ているのだ。
これを放置して誠達が行けば、残された被災者がどうなるか。
「隊長っ、早く行かねえと!」
画面に映る宮島が言うが、そこで香川が口を挟んだ。
「無茶言うな宮島。隊長も、行きたいのはやまやまだろう。だが俺達が行けば、ここは地獄だ……!」
だがその時、守備隊の兵が叫んだ。
「鳴瀬少尉、皆さん、行って下さい! この場は何とかしますから!」
「そうです、行って! 夏木中佐も言ってました、後は任せるって! 俺達もう半人前じゃないんです、ちゃんと人々を守れるんです!」
死を意味するかもしれない言葉を、彼らは発してくれている。
そして鶴の叫びが、最後の後押しをしてくれた。
「黒鷹、お願いっ!」
「…………すまない、ここは頼むっ! 行くぞ!」
誠達の機体は大地を蹴り、素早く宙に舞い上がった。
「全機、全力で岩凪姫を守れ! どんな被害が出ても構わない! 何があっても、責任は全部俺が取る!!」
「任せとき、ずっと助けてもろてたんやもん!」
「ここで恩返ししなきゃ、宮島様の名がすたるぜっ!」
隊員達も口々に答えた。
…………だが誠は忘れていたのだ。
最悪は……恐ろしい事態というものは、重ねてやって来るのである。
「……っ!? 駄目だっ、全機止まれっ!!!」
飛行の最中、誠は自らを狙う殺意を感じた。
長い戦いで磨き上げた直感かも知れないし、後ろに座る鶴の幸運によるものかもしれない。
いずれにしろ誠は急制動をかけ、隊員達もそれに倣った。
その瞬間、黒いオーラを纏った射撃が、唸りを上げて行き過ぎていく。
(この射撃……!?)
誠は瞬時に理解した。
誠達が機体を向き直らせると、そこには黒い人型重機が浮かんでいた。
「……外れたかよ。つくづく『運のいい』ヤツだぜ」
恐らく皮肉のつもりだろう。不是はそう嘲笑うように言った。
その間にも、次々他の人型重機が舞い上がってくる。
不是の配下の機体であり、ディアヌスの細胞を奪われた際、襲ってきた連中だった。
誠は外部拡声器で叫んだ。
「今お前に構ってる暇はない、そこをどけっ!!!」
「どいてくれると思ってるのか?」
不是はますます面白そうに答えた。
「あの女、俺がぶっ殺してやりたかったが……まあいいさ。ここで俺らと遊ぼうぜ……!」
そう言うと同時に、不是の機体は突進してきた。
取り囲む他の機体も同じで、誠達は応戦を余儀なくされたのだ。
「ナギっぺ!!!」
機体の後部座席から身を乗り出し、鶴が叫んだ。
「黒鷹っ、どうしよう、ナギっぺが危ないわ!!!」
鶴はもう泣いていた。その声が外部拡声器から漏れて、夜の闇に物悲しく響いた。
「くっ……!!!」
誠も焦った。
今すぐこの場を離れ、女神の元に駆けつけなければ。
けれど出来なかった。
迫る黄泉の軍勢は、もうすぐ傍まで来ているのだ。
これを放置して誠達が行けば、残された被災者がどうなるか。
「隊長っ、早く行かねえと!」
画面に映る宮島が言うが、そこで香川が口を挟んだ。
「無茶言うな宮島。隊長も、行きたいのはやまやまだろう。だが俺達が行けば、ここは地獄だ……!」
だがその時、守備隊の兵が叫んだ。
「鳴瀬少尉、皆さん、行って下さい! この場は何とかしますから!」
「そうです、行って! 夏木中佐も言ってました、後は任せるって! 俺達もう半人前じゃないんです、ちゃんと人々を守れるんです!」
死を意味するかもしれない言葉を、彼らは発してくれている。
そして鶴の叫びが、最後の後押しをしてくれた。
「黒鷹、お願いっ!」
「…………すまない、ここは頼むっ! 行くぞ!」
誠達の機体は大地を蹴り、素早く宙に舞い上がった。
「全機、全力で岩凪姫を守れ! どんな被害が出ても構わない! 何があっても、責任は全部俺が取る!!」
「任せとき、ずっと助けてもろてたんやもん!」
「ここで恩返ししなきゃ、宮島様の名がすたるぜっ!」
隊員達も口々に答えた。
…………だが誠は忘れていたのだ。
最悪は……恐ろしい事態というものは、重ねてやって来るのである。
「……っ!? 駄目だっ、全機止まれっ!!!」
飛行の最中、誠は自らを狙う殺意を感じた。
長い戦いで磨き上げた直感かも知れないし、後ろに座る鶴の幸運によるものかもしれない。
いずれにしろ誠は急制動をかけ、隊員達もそれに倣った。
その瞬間、黒いオーラを纏った射撃が、唸りを上げて行き過ぎていく。
(この射撃……!?)
誠は瞬時に理解した。
誠達が機体を向き直らせると、そこには黒い人型重機が浮かんでいた。
「……外れたかよ。つくづく『運のいい』ヤツだぜ」
恐らく皮肉のつもりだろう。不是はそう嘲笑うように言った。
その間にも、次々他の人型重機が舞い上がってくる。
不是の配下の機体であり、ディアヌスの細胞を奪われた際、襲ってきた連中だった。
誠は外部拡声器で叫んだ。
「今お前に構ってる暇はない、そこをどけっ!!!」
「どいてくれると思ってるのか?」
不是はますます面白そうに答えた。
「あの女、俺がぶっ殺してやりたかったが……まあいいさ。ここで俺らと遊ぼうぜ……!」
そう言うと同時に、不是の機体は突進してきた。
取り囲む他の機体も同じで、誠達は応戦を余儀なくされたのだ。
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