新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART4 ~双角のシンデレラ~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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第四章その4 ~守り切れ!~ 三浦半島防衛編

きっとこれが罰なんだ

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 カノンはぎゅっと手を握り締め、謝罪の言葉を口にした。

「……ごめんなさい…………私が抜けたばっかりに……」

「だから何だ、その気色の悪い物言いは!? 人の世に染まり、誇りを捨てるからそうなるのだ!!」

 最早カノンが何を言っても、刹鬼の怒りは収まらないだろう。

 もし守る物が無ければ、このまま首を差し出しても良かった。

 だが今の自分には、守るべき物がある。そして守りたい人がいるのだ。

「……そっちが退けないのは分かった。でも私はここを通さない。これはこの国の人達の希望だから」

「だったらここで果てるがいい!!」

 刹鬼は叫ぶと、右から刀を振り降ろしてくる。

 それは人ならぬ力と速さ。けれどカノンは懐に飛び込み、左手で刹鬼の右手を押さえる。

「貴様……!!!」

 刹鬼は怒りをあらわにするが、カノンが右の拳を握ると、危険を察して飛び退すさった。

 カノンは刹鬼を傷つけたくない、向こうも迂闊うかつに飛び込めない。配下の鬼も動けない。

 しばし膠着こうちゃく状態が続いたが、そこで傍らから声が聞こえた。先ほど刹鬼が薙ぎ払った台から落ちたモニターである。

 しばし映像が乱れた後、画面には関東のパイロットである弥太郎が映った。

「春日部隊から守備隊へ! 数が多すぎ、餓霊の別働隊に抜かれています! 進行方向から倉庫区画へ向かうと予測……」

 無理もない。いかに手練てだれの彼らと言えど、強力な武器が使えない自陣なら、全ての餓霊を足止め出来るはずがないのだ。

「!!!」

 次の瞬間、横手から爆風が起こった。

 瓦礫と粉塵が舞い上がると、巨大な餓霊が雄たけびを上げながら、格納庫へと踏み込んできた。

 生き残った人々は悲鳴を上げ、刹鬼は歓喜の声を上げた。

「おお、ようやく来たか! さあやれ、人間どもを薙ぎ払え! 小ざかしい切り札とやらを打ち砕いてやるのだ!」

 餓霊は唾液をしたたらせながら、片手の爪を振り上げる。足元に倒れる衛兵達を狙っているのだ。

 だがそれが振り下ろされそうになった時、カノンは再び身を躍らせた。

 受け止める? あんな巨大なヤツの攻撃を?

 一瞬、自分でも無茶だと思ったが、やはり体は勝手に動いていた。

 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 交差させた両腕は、餓霊の巨腕をまともに受け止め……けれど砕けずそこにあった。

 思いがけず小さな生き物に防がれたせいか、それとも己を指揮する者と似た気配を、今のカノンに感じ取ったのか。

 餓霊は戸惑ったように腕を引き、一歩後ずさった。

「……っ!」

 カノンはたまらず両手をつき、荒い呼吸で背を揺らした。

(駄目だ、今の力じゃ防げないし……このまま戦い続けたら、ほんとに人に戻れなくなっちゃう……!)

 だが次の瞬間、別の餓霊の爪が横殴りにカノンを襲った。

 カノンは玩具のように吹っ飛んで、激しく機器に頭をぶつける。さすがに意識が遠退とおのきそうになった。

 餓霊は狩りの喜びに震え、大口を開けて迫って来る。

(…………そうか、これが罰なんだ……)

 遠退とおのく意識の中、カノンはふとそう思った。

 一族の責務を捨て、全てを妹に押し付けてしまった。そして呪われた身でありながら、人と同じ幸せを欲した。

 ……だからバチが当たったのだ。

 ゆっくりと振り下ろされる餓霊の手、しかし体は動かない。

 だが次の瞬間、激しい衝撃がカノンの周囲に撒き起こった。

 そこから先は、まるでスローモーションのように感じた。

 壁を突き破って現れた白い人型重機は、餓霊どもを体当たりでふっ飛ばす。

 態勢を崩し、混乱している餓霊達。

 白い機体は素早く踏み込み、手にした強化刀で次々敵を両断した。

「遅れてすまないカノン、無事か!?」

 その懐かしい愛しい声を、カノンは生涯忘れないだろう。
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