4 / 160
第六章その1 ~絶対勝てない!?~ 無敵の邪神軍団編
最悪の邪神・千里眼
しおりを挟む
「千里眼!? どういう相手だコマ」
誠の問いに、コマは冷や汗を流しながら答えた。
「千里眼……千里巌徹之神だよ。邪神の中でも最悪の相手だ。なんでこんなに早く復活……」
コマの言葉はそこでさえぎられた。
邪神が発した矢が、凄まじい邪気を帯びてこちらをかすめていったのだ。
例えるなら光の柱、極太のレーザー光であり、被災者を乗せたバスも、それを守ろうとした人型重機も、一瞬のうちに蒸発していた。
光が通り抜けた大地は、大きくえぐり取られている。
他の隊の指揮官が、懸命に指示を送った。
「ぼ、防御をっ! 属性添加機が焼きついてもいいっ、フル稼働でシールドを張れ!」
車両は全ての属性添加機を稼働させ、後方に光の障壁を……強固な電磁シールドを発生させた。
だが次の矢が発せられると、そのシールドごと貫かれた。
「さっ、散開して蛇行っ、狙いを絞らせるな!」
また別の隊で指示が飛んだ。
車両班は複雑な軌道で蛇行するが、それすらも無意味だった。
再び矢が発射されると、光は幾筋にも分裂する。
そのまま各車両を追尾して、一撃の元に破壊したのだ。
強固な電磁シールドは、まるで薄い飴細工に熱湯をかけたように易々と射抜かれていた。
これが邪神の……地の底に封じられ、全神連がその復活を恐れてきた者達の力である。
「見える範囲なら、どこまででも当てて来るよ。蛇行しても必ず当てる、そういう能力なんだから……!」
コマは前足を上げ、鬣をくしゃくしゃと掻き毟った。
「まだ完全に具現化してないのに、ここまで強いなんて……」
「完全に復活したらどうなる?」
「遠距離戦なら、ディアヌスよりもずっと上だよ! このままじゃ……」
「くっ……!」
誠は歯噛みし、懸命に考えた。
追いすがる強力な餓霊の集団、更には防御不可能な邪神の攻撃。
鶴もコマもどうする事も出来ず、頼れる女神は今はいない。
誠は決断し、隊員達と鶴に告げた。
「このままじゃ全滅する! 俺が囮になるから、ヒメ子とコマは機体から降りろ!」
「なっ……!?」
隊員達は画面上で絶句したが、やがて難波が怒鳴り返した。
「バカ鳴っち、何考えとんねん!? あんた1人で何が出来るんよ!」
カノンも、宮島も香川もわめいていたが、誠も引くつもりはない。
「他に方法が無いっ、全滅よりマシだ!」
誠は振り返り、鶴の座席のベルトを外した。
「ヒメ子、降りろ」
「嫌っ!!!」
鶴は誠の座席の背もたれにしがみついた。
「嫌よっ、私も一緒に行くっ!」
「駄目だ降りろっ、お前まで死んだら、」
「嫌っ、絶対絶対っ、ぜったい嫌っ!!!」
鶴は泣きながら首を振った。
「私、ずっと後悔してた! あの500年前、なんで黒鷹を見送ったんだろうって……だからもう嫌なの、離れ離れで死ぬのは嫌なのっ……!!!」
必死の嘆願、懸命の表情だった。
汗ばむ頬に髪が張り付き、涙がとめどなく伝い落ちている。
「ヒメ子…………」
誠は呆然と彼女を見つめていたが、そこで再び爆発が起こった。
「黒鷹っ、言い争ってる時間は無いよ!」
誠の肩でコマが叫んだ。
「…………っ!」
誠はしばし戸惑ったが、再び前に向き直る。
「べ……ベルト締めろ、ヒメ子……」
辛うじてそれだけ言うと、機体を操作し、輸送車の荷台から飛び上がらせる。
爆風や強烈な邪気の影響が激しかったが、それでも懸命に姿勢を保つ。
手にした銃を構えると、邪神に向けて一撃を放った。
だが邪神の周囲に光のバリアが輝くと、当然のようにこちらの攻撃を弾いた。
「…………っっっ!!!」
次の瞬間、遠く離れていながらも、邪神に睨まれたのが直感で分かった。
巨大で恐ろしい目で見据えられたように、全身が萎縮し、レバーを握る手が硬直する。
殺気を込めた視線だったが、別にこちらを憎んでいるわけではない。
ただ飛び交う蝿を見るように、何の感慨もない殺意なのだ。
背負う矢がまた1本消え、邪神が弓を構える。
邪神の上半身に模様が浮かび……胸に浮かんだ顔型の紋章が、笑うように牙をむいた。
(……っ!!!)
誠は咄嗟に機体を右に動かした。
機体に備わる全ての属性添加機を作動、全力の慣性力を発生させて。
それでも光は迫っていた。というより、誠の動きに合わせて誘導され、カーブを描いていたように思う。
やけにゆっくりと、スローモーションで……けれど光の軸の中心は、ほんの数ミリのズレすらもなく誠の機体の操縦席を狙っている。
機体の前に電磁シールドを展開したが、そんなものが通用しないのは分かっていた。
完全にやられた……そう思ったのだが、次の瞬間、誠の機体を白い光の球が包んだ。
射撃は恐ろしい勢いで押し寄せ、光の球を激しく叩いた。
誠の問いに、コマは冷や汗を流しながら答えた。
「千里眼……千里巌徹之神だよ。邪神の中でも最悪の相手だ。なんでこんなに早く復活……」
コマの言葉はそこでさえぎられた。
邪神が発した矢が、凄まじい邪気を帯びてこちらをかすめていったのだ。
例えるなら光の柱、極太のレーザー光であり、被災者を乗せたバスも、それを守ろうとした人型重機も、一瞬のうちに蒸発していた。
光が通り抜けた大地は、大きくえぐり取られている。
他の隊の指揮官が、懸命に指示を送った。
「ぼ、防御をっ! 属性添加機が焼きついてもいいっ、フル稼働でシールドを張れ!」
車両は全ての属性添加機を稼働させ、後方に光の障壁を……強固な電磁シールドを発生させた。
だが次の矢が発せられると、そのシールドごと貫かれた。
「さっ、散開して蛇行っ、狙いを絞らせるな!」
また別の隊で指示が飛んだ。
車両班は複雑な軌道で蛇行するが、それすらも無意味だった。
再び矢が発射されると、光は幾筋にも分裂する。
そのまま各車両を追尾して、一撃の元に破壊したのだ。
強固な電磁シールドは、まるで薄い飴細工に熱湯をかけたように易々と射抜かれていた。
これが邪神の……地の底に封じられ、全神連がその復活を恐れてきた者達の力である。
「見える範囲なら、どこまででも当てて来るよ。蛇行しても必ず当てる、そういう能力なんだから……!」
コマは前足を上げ、鬣をくしゃくしゃと掻き毟った。
「まだ完全に具現化してないのに、ここまで強いなんて……」
「完全に復活したらどうなる?」
「遠距離戦なら、ディアヌスよりもずっと上だよ! このままじゃ……」
「くっ……!」
誠は歯噛みし、懸命に考えた。
追いすがる強力な餓霊の集団、更には防御不可能な邪神の攻撃。
鶴もコマもどうする事も出来ず、頼れる女神は今はいない。
誠は決断し、隊員達と鶴に告げた。
「このままじゃ全滅する! 俺が囮になるから、ヒメ子とコマは機体から降りろ!」
「なっ……!?」
隊員達は画面上で絶句したが、やがて難波が怒鳴り返した。
「バカ鳴っち、何考えとんねん!? あんた1人で何が出来るんよ!」
カノンも、宮島も香川もわめいていたが、誠も引くつもりはない。
「他に方法が無いっ、全滅よりマシだ!」
誠は振り返り、鶴の座席のベルトを外した。
「ヒメ子、降りろ」
「嫌っ!!!」
鶴は誠の座席の背もたれにしがみついた。
「嫌よっ、私も一緒に行くっ!」
「駄目だ降りろっ、お前まで死んだら、」
「嫌っ、絶対絶対っ、ぜったい嫌っ!!!」
鶴は泣きながら首を振った。
「私、ずっと後悔してた! あの500年前、なんで黒鷹を見送ったんだろうって……だからもう嫌なの、離れ離れで死ぬのは嫌なのっ……!!!」
必死の嘆願、懸命の表情だった。
汗ばむ頬に髪が張り付き、涙がとめどなく伝い落ちている。
「ヒメ子…………」
誠は呆然と彼女を見つめていたが、そこで再び爆発が起こった。
「黒鷹っ、言い争ってる時間は無いよ!」
誠の肩でコマが叫んだ。
「…………っ!」
誠はしばし戸惑ったが、再び前に向き直る。
「べ……ベルト締めろ、ヒメ子……」
辛うじてそれだけ言うと、機体を操作し、輸送車の荷台から飛び上がらせる。
爆風や強烈な邪気の影響が激しかったが、それでも懸命に姿勢を保つ。
手にした銃を構えると、邪神に向けて一撃を放った。
だが邪神の周囲に光のバリアが輝くと、当然のようにこちらの攻撃を弾いた。
「…………っっっ!!!」
次の瞬間、遠く離れていながらも、邪神に睨まれたのが直感で分かった。
巨大で恐ろしい目で見据えられたように、全身が萎縮し、レバーを握る手が硬直する。
殺気を込めた視線だったが、別にこちらを憎んでいるわけではない。
ただ飛び交う蝿を見るように、何の感慨もない殺意なのだ。
背負う矢がまた1本消え、邪神が弓を構える。
邪神の上半身に模様が浮かび……胸に浮かんだ顔型の紋章が、笑うように牙をむいた。
(……っ!!!)
誠は咄嗟に機体を右に動かした。
機体に備わる全ての属性添加機を作動、全力の慣性力を発生させて。
それでも光は迫っていた。というより、誠の動きに合わせて誘導され、カーブを描いていたように思う。
やけにゆっくりと、スローモーションで……けれど光の軸の中心は、ほんの数ミリのズレすらもなく誠の機体の操縦席を狙っている。
機体の前に電磁シールドを展開したが、そんなものが通用しないのは分かっていた。
完全にやられた……そう思ったのだが、次の瞬間、誠の機体を白い光の球が包んだ。
射撃は恐ろしい勢いで押し寄せ、光の球を激しく叩いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる