新説・鶴姫伝! 日いづる国の守り神 PART6 ~もう一度、何度でも!~

あさくらやたろう-BELL☆PLANET

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第六章その1 ~絶対勝てない!?~ 無敵の邪神軍団編

呼びかけは亡者の誘(いざな)い

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 ひとしきり再会を喜んだ後、誠は鳳に事情を伝えた。

「なるほど、それは吉報ですね。避難を誘導してくれる隊が見つかるなんて」

「そうなんです。かなり近くなってますし、周波数バンドを合わせたら聞こえるはずですよ」

「それなら鶴ちゃんの出番ね。みんなと逢えて、更に元気が出てきたもの。霊力でちょちょいのちょいと映してあげるわ」

 鶴は虚空から神器のタブレット画面を取り出す。

「うーん……ムムム? この感じかしらね」

 鶴がしばらく念じると、画面に波のようにノイズが走った。

 神使達は誠の頭や肩に乗り、今か今かと心待ちにしている。

 やがて画面のノイズが薄れ、少しずつ声が聞こえ始めた。

 あの時よりずっと雑音が減って、かなり聞き取りやすくなっている。

(………………ん……?)

 誠はそこで妙な違和感を感じた。

(雑音が減ったせいか? 前聞いた時より、声がおかしい気がするけど……)

『こチラ………旧陸自ショゾクの初山ユウタです。現在、ポイント80621…東海ヒナンク北部を避難中………アンゼンな…アアンゼン…ヒナンケイ路を発見シマシタ。付近のブブ部隊は、コチラまでレレ連絡されタシ……』

 明らかにおかしい喋りだった。

 酩酊めいてい状態か……それともモルヒネなどを投与され、呂律ろれつが回っていないのだろうか?

 ……いや、そういうおかしさではない。

 響きそのものが異常だったし、呼気がかなり漏れているのだ。

 口腔や舌に、大きな裂傷でもあるような印象だった。

「……黒……鷹…………」

 鶴が何かを言いかけた。横顔はかなり緊張している。

 皆、凍りついたようにタブレットを見つめていたが、程なく画面に声の主が映し出された。

『!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』

 瞬間、一同に戦慄が走った。

 映されたのは、青年男性の頭部である。けれど胴体は見えず、頭だけが浅い盆にのっているのだ。

 死後かなり経過しているのか、皮膚はまだらに変色しており、所々歪んで肉が垂れ落ちていた。

 目は空洞で、中から百足ムカデが這い出している。

 しかし何より不気味だったのは、その首が……頭部が、今も唇を動かしていた事だ。

『こチラ……旧陸自ショゾク……初山ユウタです。現在、ポイント80621』

 彼はしばらく口を動かしていたが、やがて定型句を発するのをやめた。

『……あれ…………バレたのか……おかしいな……』

『……でも釣れた。たくさん釣れた……』

 彼は最後に口元を歪め、空恐ろしい笑みを浮かべた。

「すぐ逃げろっ、退避だ!!!」

 誠達が走り出すのと、地響きが起きたのがほぼ同時だった。

 何か巨大な化け物が、地を踏み鳴らして迫ってくるのだ。

 誠達は機体に飛び乗り、輸送車は唸りを上げて発進した。被災者のバスも同じだ。

「殺した人間の……記憶を使って喋らせてたのか……!」

 誠が歯噛みすると、肩でコマが頷いた。

「そうだと思う。恐らく無明権現が、配下の動物霊に憑依させてたんだ」

「邪神の奴ら、そこまでやるのか……!?」

「やるよ、あいつら何だってやる。それにあの人が記憶を抜かれたって事は、この辺りの道も全部ばれてる。当然追撃がガンガン来るよ」

 誠は通信回線を開き、鶴の霊力を借りて電波を遠距離に飛ばす。

「木崎少佐! 合流は失敗、敵の罠です! こちらを待つ時間はありません、すぐに出発して下さい!」

『りょ、了解、無事を祈る! おい、すぐ出るぞ!』

 少佐は周囲に指示を送り、画面から姿を消した。

 そこで山あいの木々が吹き飛んだ。

 現れたのは、しわがれた老婆のような巨体だった。

 ほとんど四つん這いになるほどに背をかがめ、ぎらぎら輝く目で周囲を見回している。

 ぼろ布からのぞく体はやせ細っていたが、その挙動は異常に素早い。

 そして何より、身にまとう邪気の色濃さは、かつて見た事も無い程のものだった。

 その姿を見た途端、コマが叫んだ。

「よ、黄泉醜女ヨモツシコメだっ!!! 嘘だ、なんでこんなに早く!!?」
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