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第六章その7 ~みんなで乾杯!~ グルメだらけの大宴会編
大人ってすごい。いつの間にかくっついてる
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「…………つ、津和野……さん???」
誠達の視線に気付き、津和野は真っ赤になって取りつくろった。
「あっ、いえですね、ディアヌスを倒した後、全部の船団が関東に集ったでしょう? その時にご縁がありまして、おほほっ、おほほほほほっ」
「まあ、うまい事やるもんだわ。私も見習わなきゃ」
鶴はしたり顔で頷くが、誠はそこで、台車を押す少年少女が片目を閉じているのに気が付いた。
「あっ! もしかして小豆島の守備隊……!?」
彼らは嬉しそうに敬礼してきた。
「はい、お久しぶりです。あれから色々ありましたが、自分達も1人前ですよ」
彼らの肩にはしょうゆの瓶やそうめんがいて、手を腰?に当てて誇らしげにしている。
「そりゃそーさ。四国の防衛戦で、俺や香川が鍛えたかんな」
「いや、ほんと何度死を覚悟した事か。事あるごとに、宮島が変なフラグを立てる立てる。その度に強い餓霊が出てきてなあ」
「いーじゃんか香川。強いのが俺らのとこに来たら、他の部隊が怪我しないだろ」
宮島が言うと、そこで池谷中佐が口を挟んだ。
「……いや、すまない宮島君。本来なら、そのセリフは私達が受け持つべきものなんだ。子供の君に言わせるなんてな」
池谷中佐は、その場の一同を見渡して言った。
「私達は大人だ。君達の盾になって守るべき存在だ。それがこんな事しか出来ないんだから……」
「そ、そんな事ないですよ。ずっと守ってもらってたし……夏木さんだって、その」
誠達はしんみりするが、そんな少年少女を励ますように、木崎少佐はわざと明るい口調で言った。
「まあ俺達もね、最後の最後は我儘になろうと思ってるんだよ。夏木にだけ格好付けさせるのも癪だから」
「……そういう事だな。その時は私も参加するつもりだ」
池谷中佐もニヤリと笑う。
「それじゃみんな、私達は撤退するから。部下達が探しに来たら、旅に出たとでも言ってくれ」
中佐達はそれだけ言うと、夜の闇へと消えて行ったのだ。
誠達はしばしその後ろ姿を見送ったが、やがて宮島が呟いた。
「……大人ってすげえよな」
「何やの急にしみじみと」
難波がツッコミを入れると、宮島はスプーンを掲げながら説明する。
「いや、隊長も言ってたじゃんか。あのパワーアップした餓霊とか、ヨモツなんたらに追いかけられた時にさ。最初の餓霊って、このぐらい絶望的だったんだって。それでも守ってくれたんだもん」
「確かに……俺達はまだ多少は効く武器があったけど、最初は何も無かったからな」
誠が言うと、皆はぽつりぽつりと思い出を語り始めた。
あの日突然訪れた生物災害。
家族も友達も遊び場も、日常が文字通り音を立てて崩れ、絶望の色に染まったのだ。
それでも生きてこられたのは、助けてくれた大人達がいたからだ。
「そりゃーたまに嫌な奴もおったけど、考えてみたら、みんなむっちゃ親切やった気がするわ。みーんな並んで順番守ってたし、悪いやつも殆どおらんかった」
難波の言葉に一同は頷く。
確かに恐ろしい事も沢山あった。
でもそんな苦しい時でも、映画で見たような争いは殆どなかった。
みんな並んで物資を受け取っていたし、他人の家の物にもほとんど手をつけなかった。どうしても必要な時は、お金や手紙を置いていった人もいた。
悪い奴や窃盗団もたまにいたけど、それ以外には略奪もほとんど起きなかったのだ。
「別に不思議な事じゃないわ。ずっとそうしてきたのよ、きっと」
鶴はコマにキャメラを渡し、少し神妙な顔で言うのだ。
「ずうっと昔、それこそ何千年も前から、みんな助け合って生きてきたのよ。チラッ……だから今があるんだし……チラッ……どんな恐ろしい事があっても、その絆の糸は切れないわ」
「いい事言ってるけど鶴、そのドヤ顔はやめてよ」
コマのツッコミに誠達は笑うのだったが、そこでまたも訪問者があったのだ。
「あれっ、もう始めてたんですね。しかもこれはカレーの匂い?」
目をやると、入り口には小柄な白衣の少女・ひよりと、おさげの髪でツナギを着たなぎさが立っていた。
2人とも船団長の二風谷氏の娘であり、バリバリの道産子なのだが、縁あって第5船団で働いていたのだ。
しかも2人の後ろには、20代半ばほどの2人の女性が……つまりは雪菜と天草までいたのである。
全員が白い発泡スチロールの大箱を持っていたが、雪菜は体力があるため、山積みの箱を降ろしながら微笑んだ。
「みんなお疲れ様。仕事はまだあるんだけど、いてもたってもいられなくて。ちょっとだけ抜け出してきちゃった」
「わ、私も……雪菜の付き添いでね」
天草氏も少し照れくさそうに後を受ける。
蓋を取ると、降ろされた発泡スチロールの大箱には、見事なカニが詰まっていたのだ。
『う、うわあああっ、カニだあああっっっ!!!!!』
一同のテンションはクライマックスに達した。
ひよりはイタズラっぽく皆に言う。
「折角持ってきたんですけど、もう満腹ですかね?」
『ノーノー、食べる!!!』
「でしょ?」
全員が首を振るのを満足げに眺め、ひよりはさっそく調理を始める。
「今日はこのカニをたっぷり入れて、お味噌汁にしちゃいましょう。あとはカニイクラ丼!」
瞬く間に料理は出来上がり、みんなで豪華なメニューに舌鼓をうった。
誠達の視線に気付き、津和野は真っ赤になって取りつくろった。
「あっ、いえですね、ディアヌスを倒した後、全部の船団が関東に集ったでしょう? その時にご縁がありまして、おほほっ、おほほほほほっ」
「まあ、うまい事やるもんだわ。私も見習わなきゃ」
鶴はしたり顔で頷くが、誠はそこで、台車を押す少年少女が片目を閉じているのに気が付いた。
「あっ! もしかして小豆島の守備隊……!?」
彼らは嬉しそうに敬礼してきた。
「はい、お久しぶりです。あれから色々ありましたが、自分達も1人前ですよ」
彼らの肩にはしょうゆの瓶やそうめんがいて、手を腰?に当てて誇らしげにしている。
「そりゃそーさ。四国の防衛戦で、俺や香川が鍛えたかんな」
「いや、ほんと何度死を覚悟した事か。事あるごとに、宮島が変なフラグを立てる立てる。その度に強い餓霊が出てきてなあ」
「いーじゃんか香川。強いのが俺らのとこに来たら、他の部隊が怪我しないだろ」
宮島が言うと、そこで池谷中佐が口を挟んだ。
「……いや、すまない宮島君。本来なら、そのセリフは私達が受け持つべきものなんだ。子供の君に言わせるなんてな」
池谷中佐は、その場の一同を見渡して言った。
「私達は大人だ。君達の盾になって守るべき存在だ。それがこんな事しか出来ないんだから……」
「そ、そんな事ないですよ。ずっと守ってもらってたし……夏木さんだって、その」
誠達はしんみりするが、そんな少年少女を励ますように、木崎少佐はわざと明るい口調で言った。
「まあ俺達もね、最後の最後は我儘になろうと思ってるんだよ。夏木にだけ格好付けさせるのも癪だから」
「……そういう事だな。その時は私も参加するつもりだ」
池谷中佐もニヤリと笑う。
「それじゃみんな、私達は撤退するから。部下達が探しに来たら、旅に出たとでも言ってくれ」
中佐達はそれだけ言うと、夜の闇へと消えて行ったのだ。
誠達はしばしその後ろ姿を見送ったが、やがて宮島が呟いた。
「……大人ってすげえよな」
「何やの急にしみじみと」
難波がツッコミを入れると、宮島はスプーンを掲げながら説明する。
「いや、隊長も言ってたじゃんか。あのパワーアップした餓霊とか、ヨモツなんたらに追いかけられた時にさ。最初の餓霊って、このぐらい絶望的だったんだって。それでも守ってくれたんだもん」
「確かに……俺達はまだ多少は効く武器があったけど、最初は何も無かったからな」
誠が言うと、皆はぽつりぽつりと思い出を語り始めた。
あの日突然訪れた生物災害。
家族も友達も遊び場も、日常が文字通り音を立てて崩れ、絶望の色に染まったのだ。
それでも生きてこられたのは、助けてくれた大人達がいたからだ。
「そりゃーたまに嫌な奴もおったけど、考えてみたら、みんなむっちゃ親切やった気がするわ。みーんな並んで順番守ってたし、悪いやつも殆どおらんかった」
難波の言葉に一同は頷く。
確かに恐ろしい事も沢山あった。
でもそんな苦しい時でも、映画で見たような争いは殆どなかった。
みんな並んで物資を受け取っていたし、他人の家の物にもほとんど手をつけなかった。どうしても必要な時は、お金や手紙を置いていった人もいた。
悪い奴や窃盗団もたまにいたけど、それ以外には略奪もほとんど起きなかったのだ。
「別に不思議な事じゃないわ。ずっとそうしてきたのよ、きっと」
鶴はコマにキャメラを渡し、少し神妙な顔で言うのだ。
「ずうっと昔、それこそ何千年も前から、みんな助け合って生きてきたのよ。チラッ……だから今があるんだし……チラッ……どんな恐ろしい事があっても、その絆の糸は切れないわ」
「いい事言ってるけど鶴、そのドヤ顔はやめてよ」
コマのツッコミに誠達は笑うのだったが、そこでまたも訪問者があったのだ。
「あれっ、もう始めてたんですね。しかもこれはカレーの匂い?」
目をやると、入り口には小柄な白衣の少女・ひよりと、おさげの髪でツナギを着たなぎさが立っていた。
2人とも船団長の二風谷氏の娘であり、バリバリの道産子なのだが、縁あって第5船団で働いていたのだ。
しかも2人の後ろには、20代半ばほどの2人の女性が……つまりは雪菜と天草までいたのである。
全員が白い発泡スチロールの大箱を持っていたが、雪菜は体力があるため、山積みの箱を降ろしながら微笑んだ。
「みんなお疲れ様。仕事はまだあるんだけど、いてもたってもいられなくて。ちょっとだけ抜け出してきちゃった」
「わ、私も……雪菜の付き添いでね」
天草氏も少し照れくさそうに後を受ける。
蓋を取ると、降ろされた発泡スチロールの大箱には、見事なカニが詰まっていたのだ。
『う、うわあああっ、カニだあああっっっ!!!!!』
一同のテンションはクライマックスに達した。
ひよりはイタズラっぽく皆に言う。
「折角持ってきたんですけど、もう満腹ですかね?」
『ノーノー、食べる!!!』
「でしょ?」
全員が首を振るのを満足げに眺め、ひよりはさっそく調理を始める。
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